特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

40年間の宴の後に@青山

 パレスチナの戦争はますますひどくなっています。
 毎日犠牲が増えているのもそうですが、これがヨルダンのヒズボラ、シリアやイランに飛び火したら大変なことになる。

 このままイスラエルが強圧的なことを進めればアラブだけでなく世界中の人々の反感が高まるし、各地でテロが起きるかもしれない。一息ついた資源価格にも影響がある。

アメリカの国会議事堂がイスラエルに抗議するユダヤ人の反戦グループに占拠されました。数千人が屋外で抗議する中、屋内では20人のラビを含む350人以上が祈りながら停戦を求めて座り込んだそうです。ユダヤ人もナチみたいな連中だけではない、ということです。昨日NHK7時のニュースでもこの光景は流れましたが、抗議したのがユダヤ人だったことには触れませんでした。

 ウクライナもそうですが、我々は戦争に取り巻かれて生きていたんですね。自分もそうですが、日本人はやはり緊張感が足りないかもしれません。『平和を守れ』、『九条を守れ』と念仏のように唱えてもそれだけでは役に立たない。

 水曜日 珍しく日本がアメリカに反して国連安保理の休戦決議に賛成しましたが、平和を守るためには具体的にどうしたら良いか、我々は考え続けなければいけないのでしょう。
 


 先週 の金曜日 久方ぶりに青山へ行ってきました。
 コロナ以来 徒歩圏以外で夜に街を出歩くことは殆どなくなりました。感染の心配に加えて、夜に出歩くのが年々バカらしくなってきたからです。
 外で美味しいものを食べるのは嫌いじゃないですが(大好きですが)(笑)、六本木だの渋谷だの銀座だの、盛り場に出ていく気力も体力もない。

 この日は地方の病院勤務の友人が半年ぶりに帰京したので、青山なら空いているだろう、と思って出かけたのです。渋谷から暫く歩いたのですが、やはり青山は比較的空いています。ビルや店は変わっても、基本的にはボクが幼稚園へ通っていた約50年前(笑)と変わらない。

 その頃からある古いビルの上には怪しい大看板が立っていました。

 東急は東急不動産、ヒューリックはみずほ銀行の不動産子会社、本業はからきしダメなみずほ銀行の稼ぎ頭です。東急とヒューリックは青山に隣接する宮益坂の20万㎡という大規模再開発を行うことが発表されています。土地を収用する側とされる側、どっちがどうだか知りませんが、地上げで揉めているのでしょう。

 バブル期は六本木や原宿にはこういう看板がいくつも立っていました。お金は人を狂わせる。きっと今もバブルなんでしょうね。
 いずれまた、何らかの形でバブルが崩壊するとは思うのですが、どんな形になるのでしょうか。次の戦争もそうだと思いますが、バブル崩壊も過去と同じ形では起こらない、と思うんですよね。
 
 お店はビルの中にあるにも関わらず、屋外に面したテラスがあります。元はダンパで有名な(笑)青山のベルコモンズがあったビルです。ボクらの年代には懐かしいところです。今は老朽化で取り壊されてホテルになっている。

 照明が暗くてよく判りませんが、前菜からパスタ、肉のローストまで一通り出てきました。

 味はフツー(笑)。上手くもなく、不味くもなく。オーストラリアの安いピノ・ノワールを飲みながら酔っぱらってバカ話が出来たから良し、とします。

 自分で会社をやってる友人は『銀行からの借金を如何に誤魔化して返済を延ばすか』(笑)、ベンチャー企業から大学病院に転職した友人は『ベンチャー企業は手続き無視で酷かったが、大病院も書類至上主義でいかに無駄な事ばかりやっているか』、会社勤務のボクは『さっさと隠居したい』。
 話は全くかみ合わないですが(笑)、それでいいんです。

 今回集まったのは高校からの友達ですが、同じクラスにいた大学の教授の息子がジャニーズの研修生だったのが話題になりました。
 『あいつは大丈夫だったのか』と話を振ると、親しかった奴が『当時から、あいつは全然平気そうだったし、女の子をナンパしまくっていた』、それに『ジャニー喜多川が狙ったのは主に片親などの家の子で、金もコネもある大学教授の息子なんて狙われない』そうです。

 ジャニー喜多川はジョン・ダワー先生の『敗北を抱きしめて』でも占領軍関連で一旗揚げた人物として名前が出ていましたが、ジャニーの性犯罪も如何にも戦後日本の偽善性を象徴する事件だと思いました。

 日本は戦後 平和と繁栄を続けてきましたが、弱者や女性などムラの外部の排除と引き換えでした。ダワー先生は『日本人ほど外部の人間に酷薄な国民はいない』と言っています。

 原発や米軍基地を地方に押し付け(地方も自ら受け入れ)、多くの女性は低賃金労働でこき使いG7で唯一今も同性婚を認めていないその結果 少子高齢化が進み、自慢だった経済も頭打ちになっている。国の財政破綻だってあり得ない話ではない。

 政治も国民も明らかに劣化したし、自慢だった経済も香港、シンガポールは勿論、台湾や韓国にも抜かれそうな一人当たりのGDPを見ても判る通り、見事に劣化しています。

 そして格差は拡大して、階級間移動は少なくなった。資本家、労働者の場合 子供が親と同じ階級にとどまる確率は75年以来ずっと高まっている。資本家の家に生まれれれば子供は資本家、労働者の家に生まれれば子供は労働者。自営業や専門職などの中間階級は崩壊が続く(笑)。

●早稲田の橋本健二先生の論文。75年以降 資本家と労働者の世襲率が上昇しています。その一方 中間階級は崩壊。

https://www.l.u-tokyo.ac.jp/2015SSM-PJ/03_05.pdf

 今後も日本は平和で繁栄していてほしいけれど、平和憲法とか役所が業界を主導する護送船団方式という過去を守るだけではもうムリ、は誰の目にも明らかです。
 既に実質賃金も労働時間当たり実質賃金も40年前並に下がりました。


news.yahoo.co.jp

 長期安定雇用の維持も難しそうです。貧乏で無能な年寄りだらけの国、という日本の新たな自画像はもう、目に見えている。


 それでも『40年前よりも日本はマシになった』という話になりました。
 事実として、青山のこのビルが典型で、街は多少は綺麗になったし、女性の社会進出も遅々としてではあるけれど進んではいる。街中で歩き煙草をしているようなバカは東京では殆どいなくなったし、犯罪率は下がった。
 依然 日本は低開発国といえども多少は民度が上がった面もあるかもしれない。 
 
 日本が以前よりマシになったかどうかは別にして、以前より良い面もあるのは事実。

 街場の食べ物もそう。牛肉のローストの肉はまずかったけど(笑)、付け合わせのハラペーニョがソース替わりになっているのだけは感心した。

 最後のティラミスがデカいのも嬉しかった(笑)。

 食べ物屋も職人みたいな店主のポリシーが明確な(笑)、超美味しい店、趣味が良い店は絶滅危惧です。今回のコロナがとどめを刺した。でも画一的ではあるかもしれないけれど、平均点は昔より上がった。

 友人もボクもお酒が弱くなりました。9時にはお開きです。遅くなると帰りの電車も混むし、それくらいでちょうどいい。

 ボクも友人も、そしてこの国も40年前とは思いもよらぬ場所に来てしまいました
 IT技術の進歩など良くなったこと、便利になったこともあるけれど、この国がこれほどの格差社会になったり、こんなに急に経済が凋落するとも思わなかった
 日本の将来だって悪いことばかりじゃないけれど、確実に少子高齢化は進むのだから格差や経済はもっと酷くなりそうです。

 ボク自身もそうですが、日本は衰退していくにしても、ひっそりと穏やかに小さくなっていきたいものです。富は減っても、心は穏やかでありたいです。