特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『鯵の干物のパスタ』と『新・階級社会、上級国民と中流貧民』

 緊急事態宣言が延長になりましたが、そんなもの、誰も気にしませんよね(笑)。
 やっと感染者が減り始めたのは少しホッとしますが、人流は大して変わってないし、ワクチン効果なのでしょう。
 しかし、先行する他国を見ているとワクチンが普及すると一時的に感染者は減るけれど、その後また 感染の大きな波がやってくる。変異株が生まれるからです。
 今のうちにザル状態の検疫の見直しと医療体制の充実が重要ですけど、無能な政府や知事連中にそんな先読みが出来るでしょうか。昨日も菅が『万全の医療体制』と言ってたけど、この1年『万全な医療体制』だったことがあるのでしょうか。


 先日の千葉真一チャーリー・ワッツストーンズ)の逝去に続いて、今週はジャン・ポール・ベルモンド(『気違いピエロ』、そして『ルパン三世』のモデル)、歴史家の色川大吉先生までお隠れになりました。

 デヴィッド・ボウイにしろ、プリンスにしろ、ロバート・パーマーにしろ、中村哲氏にしろ、好きな人、尊敬する人が亡くなるのに慣れてはきましたが、やっぱりガックリ来るものです。
 色川先生は約140年前の明治期 自由民権運動が盛んだった頃 民間で作られていた民主的憲法草案、『五日市憲法』を発掘した人として有名です。日本国憲法の遥か前から日本人にも民主的な意識はあった、ということを実証した。ボクは高校生の時 雑誌『話の特集』で先生の謦咳に接して以来、立派な見識の人だなーと思ってました。
 近年は音沙汰がなく、既に亡くなっていたのかと思っていた程でしたが、今改めて訃報を聞くと『現代のような時代を先生はどう考えておられたのだろう』と思ってしまいます。


 また、近所のイタリアンへ行ってきました。ちょうど今週8日の水曜日、珍しくTV(BS-フジ)でこの店が取り上げられたばかりです。
www.bsfuji.tv

●雑誌dancyuの編集長(左)が店で料理の作り方を習う、という番組。今月の雑誌にも店が載っているそうです。

 TVに出るのは先月から聞いていましたが、お店の人は『収録は釣りのロケもあって朝から大変だった』と言ってました。放送では料理より釣りのシーンの方が多かったので、ロケじゃなく遊んでるじゃないか(笑)、とは思いましたが。
●お店の入り口。知らない人は絶対に判りません(笑)。


 ボクが行った日も少し前に店の人たちが釣りへ行ってきた、とのことで、図らずも、皆の釣果の自慢大会?になりました。

 まずは太刀魚の炙り。ホールの女性が釣ってきた大物です。表面だけ炙ったレアの太刀魚を梨と一緒に和えたもの。太刀魚って脂がのったものは実に美味しいです。鱧、アナゴ、ウツボ、ウナギ、細長い魚ってボクは大好きです。獰猛な魚って美味しいのかな?(笑)。

 大間のマグロのフライ。ソムリエ氏が青森の大間まで釣りにいったお宝。赤身と大トロの食べ比べです。自分で釣ってきたから使う部位は自由自在だそう(笑)。ボクは大トロはあまり好きじゃありませんが、フライにしたら脂がとろけるようで美味かった! 店の人は『衣をつけて火入れするからこそ、丁度良いレア加減にできる』と言ってました。

 鯵の干物のパスタ。シェフが釣ってきた鯵を自家製の干物にして、下にオリーブオイルで和えた大根おろし、その下に冷たいパスタを敷いたもの。一番上には青唐辛子。

 地味ですが凄く美味しかった。大根おろしがソースになって鯵とパスタを滑らかにつないでいるんです。これは家でもやってみようと思いました。

 とにかく徒歩圏に美味しい店があるのは助かります(笑)。いつまで経ってもコロナの先は見えないけれど、個人経営でまじめにやっているお店は街の文化財みたいなものです。大事にしないと。



 今週の 週刊ダイヤモンドは『新・階級社会 上級国民と中流貧民』というショッキングなタイトルの特集でした。
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dw.diamond.ne.jp

 内容は格差を研究している早稲田大の橋本健二教授の研究を元にしたものです。タイトルはショッキングですが、ボク自身は橋本教授の著作は大体読んでいるのでそれほど目新しくはなかった。ただ、今までの彼の著作にコロナ禍の影響をアップデートしたものです。


 内容を要約します。日本は80年代以降、ジニ係数が上がり格差が拡大し始めた。しかし国民が1億総中流という幻想に囚われていた結果、手を打つのが遅れた。

 その結果 今の日本は立派な格差社会です。厚労省の調査でもOECDの中で日本はアメリカ、イギリスに次いで貧富の差が大きくなっています

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www.mhlw.go.jp


 橋本教授によると、現在の日本は5つの階級に分化しています。
資本家階級(従業員5人以上の経営者、役員)(全体の3.5%)』、
新中間階級(大企業の管理職、専門職)(全体の23%)』、
旧中間階級(自営業や農業)(全体の11.8%)
正規労働者(単純事務職、販売職、サービス業、マニュアル労働者)(全体の34.5%)』、
アンダークラス(主婦パート以外の非正規労働者)(全体の14.4%)』。

 近年の日本は『新中間階級の台頭と旧中間階級の没落』、『正規労働者の減少とアンダークラスの増加』によって格差の拡大が続いてきました。
 今回のコロナ禍では全ての階級が打撃を受けたが、他の階級では5%程度の収入減にとどまったのに対して、アンダークラス(非正規)と旧中間階級(自営業)では12~14%も収入が減る大きな打撃を受けました

 特集ではアンダークラス以外の、新中間階級や正規労働者もリストラや希望退職が進んでいることにも触れられています。実際 昨年から今年にかけてホンダや武田薬品など超一流の黒字企業でさえ、大量の希望退職を行っています。中流もどんどん崩壊しつつある
 
 かっての一億総中流という言葉は幻想で、今回のコロナ禍でも格差はどんどん開いています。今の日本は既に階級社会で、相続税や資産課税の強化や再配分の強化など格差対策が急務である、というわけです(*念のため言っておくと、消費減税はお金を使う人ほど得をする金持ち優遇政策です)。

 ボクも、今の階級社会のままでいいのか?って、つくづく思います。  
 橋本教授の階級論で言えば、やはり’’アンダークラス’’(非正規労働)は何とかしなければいけないと思います。アンダークラスは就業者全体の約14%、正規労働者約2000万人の約半分の900万人もいる
 派遣社員規制緩和は国内に働き口を作ったと言う面もあるにしろ、こんな歪な社会を作ってしまったのですから小泉内閣の派遣労働の規制改革はやはり、間違いだった。

 アンダークラスの世帯平均年収は約390万。夫婦だったら一人150万/年もない。働き盛りの世代でこれだったら、子育て、教育資金だって厳しい。その結果 少子化は更に進む。勿論 消費も盛り上がるわけがありません。消費税なんか下げても意味なんかないよ、バーカ(笑)。
 
 あと、格差が広がるほど階級間の移動は厳しくなる。どこの階級に生まれるかで人間の一生はかなりの部分、左右されてしまう。
 ただでさえ日本は国が教育にお金を使いません。最近は「子供が金持ちか貧乏か、どんな親の下に生まれるかは『ガチャ』のようなものだ」という『親ガチャ』という言葉があるそうです。どんな親の下で生まれるかで、人生はかなりの部分が決まってしまう。


格差拡大、貧困増大…それでも「若者の生活満足度」が高いこれだけの理由(土井 隆義) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)

 実際 今の子供がアンダークラスに生まれたら、高等教育を受けて新中間階級や資本家階級になるのはかなり困難でしょう。また新中間階級や資本家階級でも健康を害するなど何かの拍子で転落したら、再び這い上がるのはかなり難しい。
 金やコネがあるごく一部の上級国民を除いては、今の日本は毎日が薄氷の上を歩いているようなものです。そんなの、どう考えても不幸せです。
 人材しか資源がない日本です。やる気がある人間が階級の壁(財産やコネの壁)に阻まれて社会で充分に活躍できないのは、何とも勿体ないことです。


 結局 格差が拡大するという事は消費も減るし、少子化も進む。優秀な人材も台頭しにくくなる。治安も悪くなる社会に対してマイナスしかありません
 自己責任とか言って格差を放置するとみんなが損をする。日本人は少しは頭を使って、自分たちのそろばん勘定でもするべきです。明日は我が身なのに、生活保護叩きなんかやってる場合じゃない。
 
 どんどん落ち目になる日本が少しでもそのスピードを緩めようとするなら、格差を拡大させないよう公助を充実させるしかありません。お金持ちの所得税率を昔のように引上げ、資産課税をかける。相続税率も大幅に上げる。それを源資に公助をやっていけばいいんです。
 どうして国民はそういう政治を選ばないのか。ボクは不思議でなりません。