特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

日本はどうだろう?:映画『共犯者たち』

先週はとびっきり、寒い週末でした。


最近は犬用のダウンベストがあるんですね。週末散歩している犬たちはみんな、こんなのを着てました。多少の違和感はないでもないんですが、犬でも風邪を惹きますからね。笑っちゃいました。


 今年もあと2週間。毎度のことながら時間が過ぎる速さには驚くしかありません。
 でも、時間が過ぎ去るままに任せていけないこともあります。県民投票前に地元と対話をしようともせず辺野古の埋め立てを進める政府の強権的な姿勢は、抵抗しても無駄と諦めさせることを狙っているのでしょう。今 沖縄で起きていることは本土でも起きることです。


ということで、それとも関連して、東中野で映画『共犯者たち
映画『共犯者たち』『スパイネーション/自白』公式サイト
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韓国のイ・ミョンバク、パク・クネ政権下で行われたTV局に対する言論弾圧を取り上げたドキュメンタリー。解雇された記者たちが創った独立メディア「ニュース打破」のジャーナリストが、政府のメディア介入の黒幕と共犯者らを追い、その経緯を検証したもの。

 映画はイ・ミョンバク政権が成立直後からTV局の人事に介入し始めるところから始まります。
 2008年に持ち上がったアメリカ産牛肉BSE問題などでデモが起きると、このままでは国民の支持を失いかねないと、政府はKBS、MBCなどTV放送局を主なターゲットにして、あからさまにメディアに介入し始めます。
 政権に批判的な報道番組を認めていた上層部は徐々に追い出されます。社長ですらクビにされ、政権に忖度する人間が幹部になっていく。映画は社長を辞任させる理事会の場や辞任する社長の姿を見事にとらえています。文字通り迫真の場面です。
 ここでのポイントは人事は徐々に行われる、というところです。日本でもそうなのかもしれません。
●社屋に警官が導入された中で、辞任を強要された社長が社屋を去っていきます。
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●政府から送り込まれた新社長(中央)は、全く議論をしようとしません。
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 TV局では調査報道の番組が次々と打ちきりになります。代わりに大統領のコメントを垂れ流す番組や、スポーツなど娯楽番組がどんどん増えていく。セウォル号の事故でも当初は全員救助という偽報道がなされ、犠牲者がいるという取材結果が現場から来てもTV局の上層部は黙殺していたそうです。
 やがて報道番組のアナウンサーやキャスターが度々降板、報道現場の調査チームも解散を強いられて、記者やスタッフたちはスケート場など制作に関与しない部門へと異動させられる。

 それに対して、局内で二つに別れていた組合は団結してストライキを起こします。しかもMBCでストが起きたら、他のTV局でも連帯してストをやっている。韓国では組合がまともに機能しているんです。これは驚きでした。それでも多くの社員たちが解雇されました。
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組合は経営陣と本気で戦っています。日本の御用組合とは全然違う。
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若い女性社員やアナウンサーたちもストや集会に参加しています。日本とは権利に対する考え方が違うのでしょうね。
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 感動的だったのは、意見の発表を封じられたMBCの社員がスマホフェイスブックの実況中継機能を使って、『社長は辞めろ』と社屋内で意見を表明するところ。『妻からは止められているけど、自分ひとりでも黙るわけにはいかない』と言いながらスマホでネット実況するのですが、それを見ていた大勢の社員が彼に続いて、スマホで『社長は辞めろ』と意見表明を始めます。MBCのロビーで、廊下で、社屋の入り口で社員たちの『社長は辞めろ』の声が響きます。こんなシーンを良く撮ったなあ、と思いました。

 解雇された記者やスタッフたちはスポンサーに頼らず、市民たちの寄付で運営するネットメディア「ニュース打破」を設立。自由な報道を求めて、タブーなしの取材を進めていきます。その成果の一つがこの映画です。
 監督はテレビ局MBCで調査報道番組を作っていた元プロデュ―サー、チェ・スンホ。韓国のTV局MBC,KBS、YTNではイ・ミョンバク、パク・クネ政権時代、政権の都合の悪いことを奉じる記者やスタッフが大勢、政府が送り込んだ経営陣にクビにされました。映画の最後に出てくる、その数は200人。彼もその一人です。
チェ・スンホ
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映画のタイトルの『共犯者たち』とは政府に迎合して、言論を弾圧したTV局の社長たちや幹部たちのことチェ・スンホはまるでマイケル・ムーアのようにアポなしで彼らに肉薄していきます。
●元社長にも、ィ・ミョンバクにもインタビューを試みます。
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 でも、彼らは一様に自分たちの責任を認めようとはしません。曖昧な言葉でお茶を濁す言論の自由を奪ったのは権力ですが、TV局の経営陣や関係者もまさに『共犯者』であることが判ります。
●それでも、韓国の『共犯者たち』はこれよりはマシでした(笑)。

政府のやっていること、そして政府の都合の悪いことを報じないマスコミに、やがて市民の怒りが巻き起こります。それが政権交代につながったのは皆さんのご存知の通りです。この映画は2017年夏に公開され、観客動員26万人とドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録しました。
 パク・クネ政権の時代までを描いたこの映画では描かれませんが、政権交代後 チェ・スンホは公募によってMBCの社長に就任、解職者の復帰やかって政府によってつぶされた番組の復活など、会社の立て直しを行っています。

 今年見て、非常に感動した映画『タクシー運転手』、『1987 ある闘いの真実』で描かれた韓国の軍事政権は3S政策(スポーツ、セックス、スクリーン)を取って、国民に政治への関心を向けさせないようにしていたことは知られています。

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でも、民主化後の最近まで、韓国でこんな言論弾圧が行われていたのは、恥ずかしながら全く知りませんでした。では日本はどうなのでしょうか。

 上映後は元NHK堀潤氏、ドキュメンタリー監督の森達也氏のトークショーがありました。森達也氏が開口一番、『日本の場合は韓国以前の状況だ』と述べました。
韓国の場合は権力が調査報道の番組に介入した。日本はそれ以前に、まともな調査報道の番組はTBSの『報道特集』くらいしかなくなっている』。
 なぜそうなってしまったかと言うと、権力の介入以前に『視聴率が取れないからだ。』というのです。通常のニュースは日本にもありますけど、新たな事実を掘り起こしたり、丁寧に事情を説明するような調査報道の番組は確かにほとんどなくなってしまった。『報道特集』、それに『NHKスペシャル』を除けば、ドキュメンタリーという形で深夜にしか放送されません。日本の場合 3S政策が行われているというより、視聴者が自ら3Sを選んでいる(笑)。

 そういう意味で、『日本では視聴者も共犯者である。そこまで考えることで、この映画を日本で上映することの意味が出てくるのではないか』ということで30分ほどのトークショーは締めくくられました。
●革ジャンにブーツの元NHK堀潤氏(右)からは実際に取材したKBSのストの模様やクローズアップ現代の裏話、ドキュメンタリー監督の森達也氏(左)からは過去に安倍晋三従軍慰安婦を取り上げたNHKの番組に介入した話もありました。


 映画としては、ボクには韓国のTV局の名称や右派と左派の状況など事情が分からないので、とっつきにくかった部分はありました。また事象を『ニュース打破』の側からしか取り上げていない、という点もあったのですが、それでも当事者たちに直接迫っていく取材と貴重な記録は興味深かったです。
 『タクシー運転手』や『1987 ある闘いの真実』で取上げられたことはまだ終わっていない。というより、人々が絶えず求め続けていなければ民主主義は成立しえない、ということを実感させてくれる映画です。韓国にはメディアにも市民にも権利のために闘う人たちがいますけど、日本人の多くはもう、民主主義を欲しがっていないのかもしれません。我々の生活を相対化させる、まさに!一見の価値がある映画です。
●日本の記者クラブでの上映会のリポート
www.jnpc.or.jp


映画『共犯者たち』本予告編

『#軍事政権だっていいじゃない』と映画『コスタリカの奇跡』

 いよいよ寒さも本番という感じですね。特に朝 出勤時などの手がかじかむような寒さには、何が地球温暖化だよ、と言いたくなります。

今週は勤務先のパーティーで、ボクは金曜官邸前抗議は欠席です。

 パーティーと言ってもボクは一滴もお酒を飲まず、ニコニコ仮面で作り笑いをしながら1時間半座っているだけです。周囲と取り立てて話すこともないし、楽しいこともないし、無駄に過ぎていく時間は毎度のことながら苦痛です。ああ、生まれ変わったら、パーティーや宴会の無い世界に行きたいです。
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日比谷のクマちゃん🐻サンタにお祈りしてみます。

 今週 ニュースを見ていると、今後の防衛力の整備方針を決める新しい防衛大綱が話題になっていました。
毎日新聞

●読売新聞

●NHK

●日経

「多次元統合防衛力」 防衛大綱、与党に提示 (写真=共同) :日本経済新聞


 各社の見出しを並べてみたのは、取り上げ方がずいぶん違うからです。毎日、NHKは護衛艦の空母化、読売は宇宙空間やサイバー防衛、日経だけが防衛費も含めて多少は総合的な観点から報じています。

 はっきり言って、空母の話なんかどうでもいい。中途半端な空母を持つこと自体、実に馬鹿げている、ミサイルの的になるだけで全く頭がおかしい、とボクは思いますが、ニュースで報じられている『空母かどうか』なんか、枝葉末節に過ぎない。もっと大事な、空母が必要かどうかの議論がない。必要なら持てばいいし、不必要なら税金のムダ、それだけのことです。

 問題なのは膨れ上がる一方の防衛費、それに費用の使われ方が安全保障に有効かどうかです。そういう観点からみたら、日経が多少マシなだけで、あとは全部ダメじゃないですか。

 野党の追及も与党の言い訳も空母がどうとか、F35がどうとかばかりで、どうすれば環境変化に応じた安全保障ができるのか、そういう議論が全然ない。あんなに騒いでいたイージス・アショアはペイするんでしょうか?今どき自衛隊の戦車なんか何でリストラしないんですか?まして安全保障のための国際世論つくりなどの議論など聞いたことがない。
*ちなみに自衛隊の空母保有尖閣などの問題ではなく、アメリカと一緒に南シナ海に出すため、という話をマスコミからオフレコで聞きました。なるほど~


 今 『#軍事政権だっていいじゃない』というハッシュタグがバズっています。元ネタの記事は朝日の日曜版のものです↓
globe.asahi.com

 大学の教員が書いたもので、内容は『選挙で多数を取った政党に反対するのは間違っている』、『経済成長などの成果を出してくれるのなら、軽い軍政でもいいんじゃないか』という学生たちが最近 増えてきている。以前はクラスで1~2人しかいなかった、そんな連中が今はクラスの半分くらいにまで増えているというのです。

 世論調査でも、若い子の間に安倍晋三支持率が高いという話もありますが、ボクにはこの子たちはあんまり物事を考えていないように見えます。いや、思考を放棄している。

 しかし、思考放棄は9条を守りさえすれば平和が守れると思っているオールド左翼の爺さん連中も一緒です。物事を考えない若者は思考放棄したまま現実的な解を示せない野党や市民運動を本能的に拒否しているのかもしれません。思考放棄には思考放棄で対抗する、という訳です(笑)。賢いとは思わないけれど、それはそれで判らないでもない。

 もちろん、かっての学生運動の連中だって、多くはあまり利口ではなかったし、与党の一部や官僚、マスコミは論点をずらして、わざと本質的な議論をしないようにしている可能性もある。
●答えは簡単なのですが(笑)
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 いずれにしても安全保障に限らず、日本人って何が大事で大事でないか、考えようとしないのか、と思ってしまいます。
 日中戦争も太平洋戦争も、思考放棄、国民の『空気』で始まりました。その空気は戦前の議会の与野党の不毛な抗争と部数優先のマスコミの扇動で醸成されました。
 今の世の中も安倍晋三の独裁云々というより、国民の思考放棄、『空気』こそが戦前に似てきているのかもしれません。もっと端的に言うと、戦前の日本人と現在の日本人、同じくらいアホになっているのかも(笑)。


入管法だってそうでした。現在いる技能実習生27万人の期限を延長して働かせたかった。それが今回の与党の強行採決の本質だったと思います。もちろんふざけているし、実習生制度なんか廃止すべきです。ですが、今すぐ廃止したり、期限が切れたらどうするのか、実習生をいっぺんに強制帰国させるのか、そんな現実的な議論は野党の側からも全然ありませんでした。あとは騙されて日本に来る不幸な人たちが少しでも減ることを願うのみです。



ということで、青山のイメージフォーラムでドキュメンタリー『コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~
www.cinemo.info


1948年に憲法で軍隊を廃止。軍事予算を教育の無料化、医療の無料化に充てる道を選んだ中米コスタリカのドキュメンタリー。

 昨年 公開された映画ですが、映画館ではなく、各地で自主上映会という形が行われているため、中々見る機会がありませんでした。今回は予定されていた、ワクチン関係のドキュメンタリーが事実関係に疑問アリ、ということでボツったため、配給元の緊急上映という形で映画館での上映が実現しました。ラッキー(笑)。


 非常に面白かったです。
コスタリカは人口約500万人、面積は51000平方キロ、四国と九州を合わせたくらいの小国です。人口で言えば兵庫県くらいでしょうか。
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*googleより

 1948年、中米の国コスタリカは新たに憲法を制定、軍隊の廃止を宣言します。当時、社会民主主義を信奉する大統領が選挙に負けたにも拘わらず居座ったことに対して、フィゲーレス・フェレールが反乱を起こして大統領に就任、憲法を制定したのです。フィゲーレスは軍隊に使う金を医療や教育に回そう、として軍隊を廃止しました。素晴らしい(笑)。
 ただ、現実的には前大統領が既に大幅な軍縮を進めていたこともあったし、またフィゲーレス自身に対する軍のクーデターを防ごうとする狙いもあったようです。

 ご存知のように、中南米は政情が不安定です。軍事独裁政権、アメリカの経済的支配と政治介入、麻薬カルテル、不安定な要素が沢山あります。

 どちらが卵で鶏かはわかりませんが、中南米の多くの国では、アメリカが農園など経済的に支配、搾取していました。それを邪魔しようとする民主的な政府が出てくると、アメリカが裏で手を引き、クーデターを起こさせて軍事独裁世間を樹立させる。基本的にはそういうパターンです。
 この150年間 中南米の国の政府の転覆にアメリカは60回以上も加担していたそうです。またアメリカが手をまわすまでもなく、独裁政権がうじょうじょある。近年はコロンビアやメキシコの麻薬カルテルの暗躍もあります。


 そのような状況でコスタリカはどうやってきたか。
 軍事予算を教育や医療の無料化、さらに近年は環境保護に充てる、素晴らしい考え方ですけど、きれいごとだけでは世の中やっていけません。

 この映画の優れた点は、そのためにコスタリカ常備軍を廃止しながらも平和を守るために、どういう努力をしてきたかを描いているところにあります。現実に常備軍を廃止してから、コスタリカは何度も安全保障上の危機に見舞われています。その厳しさは日本の比ではありません

 まず、コスタリカ常備軍は廃止していますが、南米各国と集団的自衛権を保証する条約に加盟しています。
 実際 1965年にドミニカで内乱が起きたとき、コスタリカは警備隊を派遣、積極的に集団的自衛権を行使する立場を示しています。さらに常備軍はなくても、武装警察や民兵は持っています。いざという時は、大統領は国会の同意を受けて徴兵制を敷く権限が与えられているそうです。現に常備軍廃止後に前大統領派がクーデターを起こそうとしたときは民兵武装警察が戦っています。

 またニカラグアとの国境紛争もありました。ニカラグアは軍を派遣し、国境沿いの土地を占領します。コスタリカ国際司法裁判所に提訴、国際法の下での解決を粘り強く追及、10年以上かけて平和的に解決します。

 更に南米ではお決まりのアメリカからの圧力もあります。
 ニカラグアでサンディニスタ革命が起きたとき、アメリカは隣国のコスタリカに革命転覆のための基地を設置させようとします。コスタリカはいったんは米軍基地を設置させたものの、新たに選挙で選ばれたアリアス大統領は自国の中立を宣言、基地を撤去させます。もちろん国内世論の猛烈な支持があったことは言うまでもありません。

サンディニスタ!

サンディニスタ!

 湾岸戦争の際は、コスタリカアメリカの圧力に負けて、同志連合に名を連ねます。それに対して国民からは違憲という声がでて、最高裁は同志連合から脱退するよう政府に命じる、ということもありました。軍隊や軍事行動は嫌だというコスタリカ国民の強い意志があるようです。


 付け加えると、コスタリカは終始 反共の、中道国家であったことも大きいと思います。社会主義を奉じる大統領を倒して、平和憲法を持った体制が成立したという国の成り立ちがあるからです。これが社会主義色を出していたら、チリのアジェンデ大統領のようにCIAがクーデターを画策して潰されたかもしれません。

 彼らの常備軍廃止の成功の秘訣を整理すると、このように言えるでしょう。
1.『集団的自衛権』、『国際法遵守』などの国際的な取り決めを尊重、国際世論にアピールする姿勢

2.最低限の武力(民兵武装警察)

3.軍隊は要らないという国民の強い意志"

4.現実主義、プラグマティズム:映画の中で誰かが言ってました。『小国のコスタリカが軍隊を作ってもアメリカのミサイル一発分くらいしか予算がない。そんな国が軍隊なんか持っても国を守れるはずがない』

 これを、キャスターのピーター・バラカン氏がホームページ上の解説で上手く表現しています
「20世紀半ば、ホセ・フィゲーレス・フェレール武装を「制度化」した。
その後継者たちは、教育や医療、福祉を充実させることで、武装を「文化」 にまで昇華させた。21世紀の現在、彼らは環境問題に取り組むことで、その文化をさらに発展させようとしている。」


 日本には武力はありますけど、それ以外はいずれも当てはまりません。憲法9条を守れという人たちにも、文化にまでブラッシュアップすることは出来ていないし、こういう意識、特に現実主義は薄いでしょう。
 一方 スウェーデンデンマークなど北欧諸国が積極的にPKOに参加するのもコスタリカと同じことを考えているからです。集団的自衛権の問題は改憲することも含めて、良く考えてみた方が良いんじゃないでしょうか。もちろんPKOへの貢献は軍隊以外のやり方もあるとは思いますが。

 コスタリカのように軍備を廃止、その金を社会保障環境保護に使う、素晴らしい考え方だと思います。でも、そのためにはそれを実現するための現実的な方策を考えなくてはならない。この映画は自主上映を各地で行うことで広められているようですけど、結構 共産党系の団体の主催も多いようです。もしかして一番 現実から遊離している人たちじゃないですか(笑)。大丈夫か??(笑)。この映画は、コスタリカ集団的自衛権を認めていることで常備軍を失くしたことを描いているんですから、それに従えば憲法は改正すべし、という結論が出るはずです。


 終盤 映画では『近年コスタリカは再び危機に見舞われている。それは格差の拡大だ』と指摘されています。コスタリカは一人当たりGDPは1万ドル程度、世界の平均ぐらい、日本の4分の1強です。それほど豊かな国ではない。その中で国民のおよそ2割程度が貧困状態にある。貧困、格差の拡大は社会の危機をもたらします。軍隊を持たない国家という国民のコンセンサスがどこまで維持できるでしょうか。


 アメリカの左寄りのインテリが作った映画ですが、視点は比較的公平で大変面白く、考えさせられる映画でした。コスタリカの国民には軍隊は要らない、というコンセンサスがあり、更にそれを現実にするにはどうするべきか、という不断の努力を続けたから、軍隊を持たずにいられた。 コスタリカと日本では政治のやり方も国民の意識もあまりにも違いすぎる。憲法9条だけじゃダメなんです。それを認識することから始めなければいけないのかもしれません。

 この映画を見て、ボクは、日本は平和国家なんかじゃない、ということが改めて認識できました。憲法戦争放棄と書いてあるだけでは平和国家でも何でもない。実際 戦後の日本の経済発展には朝鮮戦争ベトナム戦争の軍需も寄与してきたわけですし。沖縄も含めて戦後史を見つめなおすこと、また日本の政府だけでなく野党など平和勢力の欺瞞を見つめなおす努力を続けることが、平和を守るためには重要だと思いました。

『コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~』予告編


●実際に家族でコスタリカに生活したことがあるという配給元ユナイテッド・ピープルの関根氏。自分の子供を公立小学校に連れて行ったら、日本人にも拘わらず直ぐ教科書や教材を無料で渡されて、『明日から来なさい』と言われたそうです。『外国人でも、子供の学習が子供の当たり前の権利として保障されていて感動した』と言ってました。
 でも、学校の先生はいい加減で半分くらいしか学校に来ない(笑)。たまりかねて半年で私立学校へ転向させたそうです。コスタリカ人はとにかくのんびりしてるし、あまり仕事をしない。でも政治と国民との距離が非常に近くて、大臣が日常的に街を回って車座集会をやっているそうです。映画に血肉が付くような解説でした。

映画『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』

今朝は寒かった~。
よく考えれば、今年もあと3週間、稼働ベースの実質は2週間足らず。年末はなぜか出費も多い。うんざりです(泣)。

さて、デモの帰りなど、たまに遅く帰ってくると(と言っても夜9時頃ですが)、こういう風景に出くわすことがあります。

 自由が丘の駅から近く、学習塾が終わった後、塾の職員や警備員が駅まで中学生くらいの子供たちの交通整理をしていました。毎年有名校に沢山合格する、沿線では有名な塾だそうです。びっくりです。
 ボクもそれくらいの時 学習塾に通ってましたが、こんな交通整理はありませんでした。そもそも子供は人の言うことは聞かないのが普通ですよね!(笑)。勝手に余所のビルの中に入り込んだり、塀の上に登ったり、本屋で漫画を立ち読みしたり、いろいろ遊びながら帰ったことを覚えています。勿論 自動車には子供なりに注意してましたけど、信号なんか気にするわけないじゃないですか(笑)。


 でも、今は違う。子供たちは文句も言わず、大人たちの指示に従っている。塾の入り口まで迎えに来ている親も大勢いる。気持ちはわかりますけど、別に治安が危ない場所じゃありません。昔と比べて交通量が増えているわけでもない。まるで軟禁ですよ。

 日本の将来は真っ暗だなー、と思いました。これじゃあ、外国の子供たちには絶対勝てません
 フランスでもアメリカでも、先進国の子供たちは自分で考えてデモへ行くし、新興国の子供たちは日本の子供たちより遥かにたくましい。ところが、日本では自分の頭で考えるという習慣を大人たちが寄ってたかって、子供から奪っている。しかも、そのコストは塾の月謝に跳ね返っている。その一方で相対的貧困で塾にも通えない子も少なからずいる。
 愚かな善意ほど恐ろしい物はありません。自分で物事を考えられない、精神的奴隷の製造工場みたいな光景でした。これでは日本にこんな子供たち↓が増えるのは当たり前かもしれません。


と、いうことで、新宿で映画『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!
sergiosergei.com
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 1991年、冷戦時代の末期、キューバの大学教授、セルジオマルクス哲学を教えることで生計を立てていた。彼の趣味はアマチュア無線だが、夢中になって違法な周波数でアメリカ人作家ともおしゃべりをしていたために 当局から目をつけられてしまう。ある日セルジオは宇宙ステーション、ミールに長期滞在中のソ連宇宙飛行士セルゲイからの無線を受信、二人は親友になる。そんな時 ソ連が崩壊、セルゲイは予算不足から帰還の無期限延長を宣告されてしまう。

 宇宙ステーションに滞在中にソ連が崩壊、帰りのロケットの打ち上げ予算がなくなり何度も帰還が延期され、最終的にアメリカのスペースシャトルで新生ロシアに帰還した実在の宇宙飛行士、セルゲイ・クリカロフをモデルにしたキューバ映画です。


 主人公のセルジオキューバ生まれ、モスクワに留学してマルクス哲学を勉強、帰国後はアンゴラにも従軍したのち、今は大学でマルクス哲学を教えています。彼は本気で社会主義の理想を信じている。キューバの社会ではエリートと言っても良いのですが、平等主義のキューバでは大学教授や医者などのエリートと言えども豊かな暮らしはできません。妻は病気で亡くなってしまいましたが、幼い一人娘と老母との3人で、貧しいながらも楽しく暮らしています。
●セルゲイと娘。物質的にはともかく、楽しく暮らしています。 

 そこに、ソ連崩壊という事件が起こります。アメリカの経済封鎖によって締め上げられてきたキューバ経済は、ソ連からの援助に頼っていたため、セルジオたちの暮らしは一層 厳しくなります。元々バカ安の給与の遅配に加えて、出版予定だったマルクス主義に関する彼の著書もいつ出版されるか判らない有様。社会主義国キューバですら、マルクス主義は人気が無くなってしまったのです。

 ここで描かれるキューバの貧しい暮らしは驚くばかりです。とにかくビルがぼろい。車もぼろい。革命前のものばかりなんでしょうキューバはクラシック・カーの宝庫として世界中からマニアが訪れるそうです)。電気もしょっちゅう止まる。物資不足で牛乳だって滅多に手に入らない。育ち盛りの娘も空腹を訴えています。
●でも日常の足が車ではなく自転車、れるというのはうらやましいです。


 そんな暮らしですが、セルジオは倉庫で見つけた第二次大戦前の無線機を使って、アメリカ人のルポライターロン・パールマン!)と話をするのを楽しみにしています。遠い国の広い世界の話を聞けるからです。しかし、彼はポーランドユダヤ人です。第2次大戦当時 ソ連によるユダヤ人虐殺から逃れてアメリカに逃げてきた彼は、セルゲイが信じる共産主義とは絶対に相いれない。そこだけは二人にわだかまりがあります。
●相変わらず、ロン・パールマンのルックスはインパクトがありすぎます。顔が大きすぎて、着ぐるみを着ているとしか思えない(笑)。

 セルゲイはある日 たまたま宇宙ステーションに滞在しているソ連の宇宙飛行士と無線が混信、話をするようになります。折しもソ連経済は厳しい状況でセルゲイの帰還も度々延期される。彼自身も地球に残した家族の暮らしを案じているところでした。生活苦と将来への不安を抱えたセルジオも同じです。二人は意気投合します。
●予算不足で帰還が度々延期されている宇宙飛行士のセルゲイは地球に残してきた家族のことを案じています。

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 キューバから見た冷戦崩壊ということで、視線は非常にユニークです。厳しい境遇だし、人々も大きな不満を抱えています。でも、明るいんです。陽の光も明るいし、セルジオも、まあ、いいかって感じでそれほどは深刻に考えない。


 やがてセルジオアメリカ人やロシア人と無線交信していることが当局に知られ、度々呼び出しを受けます。また、無線も盗聴される。でも当局が持っているリール式の録音機(笑)はぶっ壊れるし、しょっちゅう停電で傍受もままならない。上司に忖度する担当者はセルジオを無理に罪に問うことで出世を狙っているんですが、基本的に当局自体ものんびりしています。とにかく登場人物全員がのんびりしている。この映画で最も良いのがここなんです(笑)
●当局の忖度役人はセルジオの通信を盗聴しますが、度重なる停電でうまく行きません(笑)


 少子高齢化と財政危機で、これからの日本は貧しくなっていきます。この映画で描かれたように、街には古いビルが立ち並び、明かりがつかない朽ちた看板が放置される。水道や電気などメンテがされないボロボロのインフラを騙し騙し使う世の中になるかもしれません。

 将来の我々も、90年代になっても第2次大戦当時の無線機を使っていたセルジオのように、今使っているようなスマホやPCを50年後に使っていたりするかもしれません。まあ、テクノロジーはこれくらいでも構いませんけど。今だって充分使いこなせていないわけだし。

●食うのに困ったセルゲイは悩んだ末に隣人↓の誘いで密造ラム酒の製造に手を出します。国からの給与や配給では食えないため、多くのキューバ人が副業をしているそうですが、監督もラム酒の密造で糊口をしのいだことがあるそうです。

●一方 セルゲイの教え子(右)は自由な意見を述べることができない社会に耐えかねて、アメリカへの亡命を企てます。

 世の中全体が厳しくなる時もあるし、個人として厳しい時、不遇の時もあります。月に満ち欠けがあるように、誰にでもそういうことはある。そういう時の過ごし方として、のんびり、まあいいか、と過ごすのもいいんじゃないか、と思いました。主人公たちにしてみれば必死に悩んでいるんですが(笑)、第3者的に見たら違う景色も見えるかもしれない。分単位で時間に追われるボクの普段の生活がバカバカしく見えてくる。
●それでも、みんなで踊れば、何とかなる(笑)

 地球に帰れなくなったセルゲイのために、セルジオアメリカ人ルポライターに連絡します。そこからつてをたどってNASAへ連絡。NASAはPRのためにセルゲイ救出のためのスペースシャトルを打ち上げます。アメリカのスペースシャトルで帰還したのは実際のセルゲイと同じです。
 社会主義キューバ映画なのに良く、これだけネガティヴな面も描いたな、と思いました。キューバの社会も想像以上に変わってきているのかもしれません。傑作とか良くできた作品ではありませんし、怪作の部類かもしれません。でもなんとなく好きな映画でした。

宇宙ステーションと地上との大気圏を超えた交信から始まるハートフルコメディ/映画『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』予告編