今日の東京は大雨。ボクが住んでいる辺りは雨が強かったのは夜中だったのは幸いでした。
伊豆七島の方は大変みたいですけど、大きな被害がありませんように。
今日はこのお話しかしません。というか、したくない。
おそらく 今年の最重要映画。先週末の日経の映画評では評論家の春日太一が『21世紀公開作品ではベスト級』とも評していました。公開が待ち遠しかった。
渋谷で、映画『ヒンド・ラジャブの声』
2024年1月29日、ヨルダン川西岸にある人道支援組織「パレスチナ赤新月社」の下に緊急通報が入った。イスラエル軍の銃撃下の車内に閉じ込められた6歳の少女ヒンド・ラジャブからのものだった。イスラエル軍の避難指示に従っていたにも関わらず、ヒンドと親戚の家族は乗っていた車はイスラエル軍に攻撃され、ヒンドをのぞく全員が命を落としていた。赤新月社のボランティアたちはまだ生きている彼女を救出するため、電話をつないだままあらゆる手段を尽くすが……
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映画『ヒンド・ラジャブの声』9.4公開 (@Hindrajab_film) / X
『24年1月、ガザでイスラエル軍に攻撃された6歳の少女が電話で助けを求めるも救援に向かった救急車は攻撃され、そのあと彼女もイスラエル軍に殺された』という耳を疑うような酷いニュースは、ボクもリアルタイムで耳にしていました。
事件は電話を受けた赤新月社が音声データを公開したことで世界に発覚しました。この作品はその電話の音声データをそのまま使い、事件を再現した劇映画です。
監督はチュニジアの女性、カウテール・ベン・ハニアという人。25年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞。今年のアカデミー賞では国際長編映画賞にノミネート。
8分の距離で救えなかった6歳の命…アカデミー賞ノミネートの衝撃映画『ヒンド・ラジャブの声』監督が語る、ガザの生音声と「傍観者でいられない」私たちの責任(田幸 和歌子) | 現代ビジネス | 講談社
制作総指揮はブラッド・ピット 、 ホアキン・フェニックス、 ルーニー・マーラ 、ジョナサン・グレイザー 、アルフォンソ・キュアロンなどの名だたる有名人が名を連ねています。監督曰くイスラエルの妨害が予想されたので、映画を守るために彼らが加わってくれたそうです。
24年1月、イスラエルはガザ北部の住民に避難指示を出します。多くの人が避難しようとしますが、イスラエルは一般住民にも攻撃を加えるのが常です。
その中に6歳の少女、ヒンドちゃんが居ました。親戚一家と一緒に車で避難する途中、イスラエル軍戦車に攻撃を受けたのです。
ガザから80キロ離れたヨルダン川西岸地区にある人道支援組織、パレスチナ赤新月社のコールセンターに助けを求める彼女からの電話が繋がります。
コールセンターの面々は彼女の話を聞き、彼女がいる場所に救援の救急車を送ろうとしますが、イスラエル軍の許可がなければ出発することができません。
コールセンターの人達は軍の通行許可を得るために手を尽くします。その間はヒンドちゃんの訴えを聞き、励ますことしかできない。
怯えるヒンドちゃんとコールセンターの責任者がコーランの一節を一緒に唱えるシーンがあるのですが、こういうときは宗教も価値があるとは思いました。
たった8分の距離でも救急車を送れないのは、今まで大勢の救急隊員がイスラエル軍によって殺されているからです。民間人への攻撃だけでなく、新聞記者、医療関係者、人道支援団体への攻撃もイスラエルは平気で行っています。時には故意に行っている。
勿論 国際法違反ですが、イスラエル軍のような連中には国際法は通用しません。
彼女のところまでたった8分のところで待機している救急車を送るために、赤新月社のメンバーは赤十字社や政府機関だけでなく、非正規ルートの政治家を頼ってイスラエル軍から通行許可を得ようとします。しかし調整は進まず、時間は刻一刻と過ぎていく。
映画では戦場となったガザは直接 描かれません。実際に赤新月社の中で起きていたこと、助けを求めるヒンドちゃんの声を聴きながら、赤新月社の人たちがどのように感じていたかを描いています。そこにあるのは焦燥、苦悩、怒り、涙、そして深く傷ついた心です。
この映画を見る観客も彼らと同じ体験をすることになります。
時々 背後で銃声が響く中、『迎えに来て』、『もうすぐ暗くなる』、『ひとりぼっちなの』と不安を訴えるヒンドちゃんの実際の声には言葉もありません。赤新月社の面々と同じように、我々も何もできない。
6歳の彼女を救うために、どうして直ぐ近くにいる救急車を送ることができないのか。なぜイスラエル軍の許可が下りないのか。
赤新月社の面々には焦燥感と理不尽への怒りが沸き起こります。それでも出来ることは、許可を得るために各方面に懸命に訴え、不安を訴えるヒンドちゃんを励まし続けることしかない。彼らは諦めずに懸命に努力を続けます。
3時間以上たって、やっと軍の許可が下り、救急車が出発します。しかし、救急車が現場すぐ近くまで迫ったところで、通話中の救急隊員の携帯の音声から銃声が聞こえます。そこで救急車の消息が途切れる。やがてヒンドちゃんの声も聞こえなくなります。
映画の最後にヒンドちゃんが隠れていた車や救急車がどうなったのかを示す実写フィルムが差し込まれます。
それから12日たってイスラエル軍が撤退した後に報道陣が現場に入ったときのものです。救援の救急車は現場近くで砲撃で破壊、頭部や脚部など救急隊員の損傷した身体の一部が発見されます。そしてヒンドちゃんが乗っていた車には300発以上の銃弾が撃ち込まれ、一家の腐敗した死体も見つかります。
これはアルジャジーラが報じた実際の映像ですが、映画で見たときはびっくりしました。ここまでする必要があるのか。
イスラエル軍の銃撃を330発以上受けた車両の中で絶命したヒンドちゃん(6歳)。https://t.co/B1F7DzQ4tO#ヒンド・ラジャブの声#TheVoiceOfHindRajab
— 💫T.Katsumi@X 🌍🌏🌎 (@tkatsumi06j) 2025年9月4日
救急隊員とのやりとりでヒンドちゃんが語った言葉が今、『ラジャブ・ヒンドの声』として映画となり、喝采を浴びている。pic.twitter.com/6HSwgBrdM8… https://t.co/lK35Ky9ZN3
映画ではイスラエル軍は赤外線スコープでヒンドちゃんが生きていたことを把握していたこと、恐らく電話も盗聴していたことも示唆されます。連中は全てを知った上で救急車を攻撃し(希望を奪い)、それからヒンドちゃんを撃った。
#ヒンド・ラジャブの声 の着地点は「戦争反対」ではない。
— 藤森太一/Taichi Fujimori ENOTERA店長 (@Taichi_handsome) 2026年9月5日
手を尽くして調整に調整を重ねてついにたどり着いた救急車が攻撃されたのは偶然ではなく、ヒンド救出の動きを把握しているイスラエル軍が希望を持たせた上で寸前で打ち砕くという非人道的な行いによるものと解釈できる。…
これが彼女の写真です。通っていた幼稚園の名は『しあわせ幼稚園』。彼女は海が大好きだったそうですが、映画の最後に彼女が海で遊ぶ姿が映し出されます。
映画としての完成度は高いです。事実だけを、赤新月社の中で起きていたことだけを淡々と描いた、いわば密室劇ですが、パレスチナ人の俳優さんたちの演技は迫真に迫っています。実際に難民キャンプで育った人もいるそうです。
携帯電話を巧みに使った演出も素晴らしい。特に俳優さんたちの表情が携帯の画面の中と外とではまったく違って見える演出には舌を巻きました。
ですが、この映画の価値は完成度とか演技にあるのではありません。
ニュースでは知っていましたけど、こんな酷いことが起きていていいのでしょうか。停戦後もイスラエル軍は虐殺を続けています。ヨルダン川西岸でのパレスチナ人へのイスラエルの暴力や収奪も一層激しくなっている。
ネタニヤフの汚職をごまかすために虐殺を続けているという側面もあるにしろ、現実にイスラエルのシオニストのような連中は言葉で止めることはできません。イスラエルはかっての大日本帝国やナチスと同類です。
ボクには、寄付をしたり、イスラエル関連の製品やサービスをボイコットするくらいしかできない。悔しくてなりません。
ハニア監督は「観客が戦争犯罪を“目撃”するために作りました」と語っています。この映画がつくられたことでヒンドちゃんは世界中の人の心の中に生き続ける。
この映画は我々観客に『今も起きている戦争犯罪から目を背けない、そして忘れないでいることが出来るか』と静かに問いかけています。













































