特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と傑作『ラスト・ムービースター』

 毎度のことですが、愉しい3連休はあっという間に過ぎてしまいました。寂しいよー(笑)。
 旧敬老の日、9月15日あたりは昔からお天気がはっきりしません(少なくとも東京では)。でも、だいぶ涼しくなったし、凌ぎやすい陽気になりました。
気候も楽だし、食べ物は美味しい、これからが1年のうちで最も楽しい時期かもしれません。

●爽やかな朝の日比谷公園
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 ただ、ですね、一言は言っておきたい。政治家もマスコミも相変わらずクズばかり。
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 ということで、今回はどちらも、同一人物、一人のかってのスターをテーマにした作品です。日比谷で映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
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http:// www.onceinhollywood.jp
 舞台は1969年、ハリウッド。かってのTV西部劇の人気スター、リック・ダルトンレオナルド・ディカプリオ)は映画俳優への転身を図っているが、なかなかうまく行かない。付き人で専属スタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)と飲んだくれながら、ハリウッド暮らしを続けている。ある日、売出し中の映画監督、ロマン・ポランスキーと妻で女優のシャロン・テートマーゴット・ロビー)がリックの家の隣に引っ越してくるが。


 タランティーノ監督の新作です。この人が脚本を書いて、世に出るきっかけとなった『トゥルー・ロマンス』は大好きなんですが、それ以降の作品はあまり好きではないんです。細部へのこだわりは理解できるし、良いなーと思うんですけど、お話がつまんないことが多くて。

 しかし最近の作品、ユダヤ人の特殊部隊がナチを文字通りブチ殺すブラッド・ピット出演の『イングロリアス・バスターズ』、黒人ガンマンが人種差別白人をブチ殺す『ジャンゴ』、黒人の賞金稼ぎ人が元南軍の差別白人をブチ殺すディカプリオ出演の『ヘイトフル・エイト』と続いた近作群は、歴史のifを叶えるという面白さもあって悪くなかった。

 
  今作もその系図にある作品です。
 かってのハリウッド黄金時代をを代表するような元大スターと専属のスタントマン、その隣に新時代のスターに上り詰めようとする若手女優、シャロン・テートが引っ越してくる。シャロン・テートと言えば、ヒッピーでカルト集団のマンソン・ファミリーに惨殺された事件が有名です。
 映画はその直前、1969年、ニューシネマがやってくる前、黄金期のスタジオシステムが残っていた最後の時期のハリウッドでの3日間を淡々と描いています。

 

 2時間くらいは延々と当時のハリウッドが描写されます。主人公リック・ダルトンとクリフ・ブースのコンビは見ていて何とも楽しいです。まったりしている(笑)。

●まったりと、のんびりした、いいコンビでした(笑)。

 リック・ダルトンのモデルは肉体派スターのバート・レイノルズだそうです。落ち目のリックはかっての栄光を取り戻そうと必死ですが、うまく行かず、酒浸りです。余計にうまく行かない。一方 クリフのほうは生きていければいい、と、今の境遇に満足しています。その対比がうまく出来ている。

●かってのスターダムを取り戻したいんですが、酒浸りです(笑)
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 ●こっちは野心もなく、淡々とした人生を過ごしている。
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 二人を取り巻く環境はブルース・リーだったり、当時の広告やTV番組だったり、細かいネタがいっぱい仕込んであります。ボクは詳しくありませんが、それでも見ていて楽しいです。判らないけど(笑)。

 かって隆盛を誇ったハリウッドは終わりつつあります。大ヒット映画も生まれず、街にはリックたちには理解できないヒッピーたちが闊歩するようになった。

●当時を再現したファッションも面白いです。
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 いっそのこと、金のためにイタリアでマカロニ・ウェスタン映画に出演しようかと悩むリック。これはイーストウッドを意識してますね。
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 ディカプリオ君もブラッド・ピットも少しだけマヌケで、少しだけカッコいい。スター映画として嫌味がありません。
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 あと、マーゴット・ロビー。文字通り輝くような美しさ。

 やがてシャロン・テートがマンソン・ファミリーに襲われる日がやってきます。深夜 武装したヒッピーたちが豪邸街にやってくる。隣の家で泥酔しているマヌケなリックとクリフ。さあ、どうなるでしょうか。


 クリフの飼い犬・ブランディ(ブル・テリア)が大活躍するのも嬉しい。この作品はカンヌ映画祭で上映されましたが、ブランディはこの映画で唯一、パルムドック賞を受賞しています。

 すごく感動するという訳でもありませんけど、のんびりした夏の終わりを描いたかのような印象的な、楽しい作品です。この監督お得意のブチ殺しシーンはありますが、スプラッター、残酷描写が少ないのも良かった。痛快です。タランティーノ作品で最も面白い作品という声があるのもうなずけます。

ダコタ・ファニングがマンソン・ファミリーのメンバーに!『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』


 

 そして、もうひとつ。こっちがメインです。
 『ワンス・アポン・ア・タイム・ハリウッド』の主役、ディカプリオ君が演じるリック・ダルトンのモデルでもあり、出演もする筈だったが、その前に亡くなってしまったバート・レイノルズの最後の主演作です。
 新宿で『ラスト・ムービースター
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lastmoviestar2019.net-broadway.com

 かってハリウッドの大スターとして一時代を築いたが、今は落ちぶれたヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)のところに、ある映画祭から功労賞受賞の知らせが届く。歴代の受賞者がイーストウッドら、と聞いて、ヴィックははるばるナッシュビルまで出かけるが、行ってみると映画オタクの若者による自主上映会のような映画祭だった。腹をたてたヴィックは映画祭を抜け出し、近くにある故郷のノックスビルへ向かう
 

 バート・レイノルズはテレビの西部劇スターから転身、70年代ハリウッドのマネー・メイキングスター1位を何年も続けた売れっ子でした。ジェームズ・ボンド役やスター・ウォ―ズのハン・ソロ役を断ったのも有名です。マッチョイズムを前面に出した人で、雑誌でヌードも披露したこともあるそうです。


 でも彼のヒット作トランザム7000』とか、キャノンボールなどのアクション作、今は面影もありません。ボクも名前だけは聞いたことありますが、見たこともないし、興味もない。そう思うのはボクだけではないらしく、この映画の中でも貴重なモチーフになっている。

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 ただし彼が刑務所のアメフトチームを演じた、ロバート・アルドリッチ大監督の不朽の名作『ロンゲスト・ヤード』だけは見たんです。その作品で権力に立ち向かうバート・レイノルズはまさに好漢、漢の中の漢、最強にカッコ良かった。その幻影がありますから(笑)、遺作と聞いてスルーはできなかった。

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 映画が始まると、往時の大スター、バート・レイノルズの姿が映ります。肉体派スターの名をほしいままにした当時のTVインタビューです。
●全盛期のバート・レイノルズ

 ふんふん、と思って見ていると、画面が切り替わる。現在の彼、です。年老いて杖を突いた老人が老犬を抱いて、獣医の待合室に座っている。疲れ切った、その表情。これが今のバート・レイノルズ。これにはびっくりした。
●今はこんな爺さんになってます。

 主人公の元大スター、ヴィックは一人で大豪邸に住んでいます。かっては華やかな暮らしをしていましたが、家族とも別れ、訪ねてくる人もおらず、世の中からは忘れられた存在です。

●このボケ演技はまさに迫真です。マジかと思った(笑)

 そんな彼の元に『国際ナッシュビル映画祭』という団体から功労賞を授与するので、授賞式に出席してほしい、という手紙が来ます。今までの受賞者はデニーロに、イーストウッドと聞いて、喜ぶヴィック。彼ははるばるナッシュビルにまで出かけていきます。ナッシュビルと言うのは今、再開発が進んでアメリカの中でも勢いがある街の一つです。まさに老スターとは対照的です。
●大スターも、今はかっての芸能人仲間(左、チェビー・チェイス)と愚痴をこぼしあうくらいしか、やることがない。

 

 ところが、空港に迎えに来たのは錆だらけのボロ車にのったパンクねーちゃん(アリエル・ウィンター)。
●ダメ男に引っかかりっぱなしのパンクねーちゃん役のアリエル・ウィンター(左)も名演だと思います。この人はアメリカのTVドラマ『モダン・ファミリー』でエミー賞をとった人ですが、実際に母親から虐待を受けていました。彼女も映画の役柄とそのまま重なっています。これも凄い

 あてがわれたホテルはハイウェイ沿いのオンボロ・モーテル、授賞式の会場は場末のバーでした。名称こそ国際映画祭でですが、映画オタクの若者たちによる自主上映会に毛が生えたようなものだったのです。
●映画オタクたち

 うんざりしてバーで泥酔したヴィックは『お前らは人生の負け犬たちが映画をみているだけの集まりだ』と啖呵を切ります。翌日 ヴィックは迎えに来たパンクねーちゃんに車を運転させ、生まれ故郷に向かいます。

 自分の生まれた家、学生時代活躍したフットボール場(本物のバート・レイノルズフットボール選手でした)、スターになる前 最初の妻にプロポーズした川辺、そして彼女が入っている老人ホーム。

 かっては大スターだったヴィックですが、今は自分こそが人生の負け犬であることを理解しています。世の中からは忘れ去られ、金銭面でも不如意をかこっています。度々の女遊びで家族もいない、唯一の友だった老犬すら旅立ってしまった。

 作品だって後世に残るものはありません。彼は言うのです。『自分が出演した作品は始まって30秒で結末が想像できるようなものばかりだった』
●後半は老若の負け犬同士のロード・ムービーになります。

 この映画はまさにバート・レイノルズのセルフ・パロディ、彼の人生そのものを描いたような作品です。主人公は度々 かって彼が出演した作品の中に入り込みます。もちろん合成ですが、観ている側も良い意味でフィクションなのか、ドキュメンタリーなのか判らなくなってくる。

 老境を迎えた、かっての大スターを苦渋の表情で演じるバート・レイノルズ、ドラマ前半のボケ演技も含め、まさに魂の演技としか言いようがない。そして、それを生かした演出も脚本も見事です。

 身体も精神も衰え、既に終わりかけている、後悔だらけの自分の人生をどうやって落とし前をつけるか。どうやって取り戻すか。前半で見せた苦渋の表情が最後にどう変わるか。80歳の主人公が本当の希望を見せてくれます。映画でも一幕目、二幕目は凡作でも、最後が良ければ感動できます。人生のあらすじは途中で変えられる! 

 かっこいいまま、爽やかに引退した同じ年のレッドフォード、今も超現役でベッドシーンまで演じる(笑)イーストウッドと異なり、バート・レイノルズが演じる不器用で誠実な主人公像は実に味わい深い。彼は正直、この3人の中では一番評価は低いと思いますけど、この作品でぶっちぎりの大逆転を見せる。

 

 超名作ロンゲスト・ヤード』の主人公が帰ってきたんです。絶望的な状況に追い込まれて、本人も観客ももうダメだと思っても、知恵と勇気とユーモアで運命に立ち向かう。まさに『漢の中の漢』。最後はもう、うれし泣きです。涙が止まりませんでした。
 

 バート・レイノルズはこの作品が公開されて半年後に亡くなりました。小品だし、公開館数は少ないけれど、人生の最後を飾るにふさわしい、本当に素晴らしい大傑作!。
 これだけ爽やかな後味がある映画は珍しいだけでなく、人生の終盤を描いた様々な映画の中でも正にベスト級に素晴らしい。こんな映画、中々ないです。機会がありましたら是非是非。


「ラスト・ムービースター」予告編

『小泉純一郎の講演:日本の歩むべき道』(笑)と『0913再稼働反対!首相官邸前抗議』

 そっかー、今日は13日の金曜日~(笑)。台風明けの今週 月曜日、夕焼けがきれいだなーと思ってたのが、遠い昔のようです。
●今にして思えば、この綺麗な夕焼けの下で困っている人が大勢いたわけですが。
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 今週初めのマスコミは内閣改造のニュースばかり、週の半ばからやっと台風被害が報じられるようになりましたが酷いじゃないですか。
 千葉や神奈川の一部では停電になりましたし、未だに20万戸近くも復旧していないだけでなく、水、ゴミ収集、病院や福祉施設に影響が出て、死人まで出ている。

 そんな時に内閣改造をやってる方もやってる方です。かっての小渕内閣では『改造予定日の前日9月30日に茨城県東海村の核燃料工場で臨界事故が発生して、その時の官房長官野中広務さんの進言によって小渕総理大臣は改造の期日を5日間延期するんです。その間に官邸で危機管理を一手に引き受けてかつての手慣れた大臣で乗り切った』そうです
「報道ステーション」コメンテーター後藤謙次氏、千葉の停電に「政府の危機管理が見えてこない。いまだに官邸に対策本部すら設置されていない。これは異常」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース

 被災地のことを報じる代わりに、内閣の人事ごときを臨時ニュースで出しているNHKもどうかしている。夜7時のニュースでは新大臣を『さん』づけしていやがったし。殆ど南米の独裁政権みたいになってきた。


 例えば今話題になってるのがIT担当大臣
 日本は、自分でスマホSNSに投稿できるらしい、ということで選ばれた78歳のジジイ(笑)、一方 台湾のデジタル担当大臣は38歳、中卒、トランスジェンダー、だけど天才プログラマーと言われる人物。

 片や派閥の順送りで選ばれた訳の分からないジジイ、片や学歴や年齢、性別に関係なく能力で選ばれたエキスパート。

 これが日本の為政者の意志・判断です。これで日本が国際競争に勝てますか?(笑)。政治家や国民の愚かさ故に一歩一歩、毎日 負け続けている。今の日本の現実です。

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 今回の台風を見ていれば、緊急事態が起きたらこの国の政府の対応はどうなるか、良くわかります。



 さて、この前、なんと、小泉純一郎の講演を聞いてきました(笑)。
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 某ITベンチャーが自社の箔付けのために開催した?、従業員1000人以上の企業のみに絞ったと言う(感じ悪い)講演会です。招待状をもらったので行ってきました。せっかくなので皆さんとシェアしたいと思います。
 ちょっと長くなりますが、色々裏話もある話そのものが面白かったので、要約せずに文字起こし、極力 忠実に再現します(青字)。途中の黒太字はボクの感想です。


演題:『日本の歩むべき道』
●世の中はうまく行かないものだ
・私は講演ではいつも、『世の中うまくいかないものだ』と話している。周りからは『やりたい放題やってきたでしょう』と言われるが、そんなことはない(笑)。

・例えば10月からの軽減税率。複雑さもさることながら、軽減税率は金持ちほど得をする税制だ。消費税導入前は贅沢品に課税する物品税というものがあったが、世の中が進んでくると何が贅沢かなんて決められないし、そこには利権が発生する。消費税はまんべんなく消費に課税するからこそ意味がある。
 低所得の人を助けるなら社会福祉で行えばよい。軽減税率で減る税金は2兆円もある。軽減税率なんか止めて、その分を社会福祉に回せばよい。しかし、私の意見は通らなかった(笑)。

 全くその通りです。どうしてこういう正論がでてこないのでしょうか。政治家だけでなく、軽減税率適用と引き換えに魂を売った朝日、東京、毎日、読売、産経、バカ新聞どもは爪の垢でも煎じて飲め!

・総裁選も思い通りには行かなかった。私が総裁になったのは3度目で、その前の2回はボロ負けだった。
 橋本龍太郎氏と争った1回目は出る気はなかったが、周りに『このままでは総裁選が無投票になってしまうので、傷がついてもよい小泉が出ろ』と言われて無理やり引き摺り出されたら、案の定(笑)。
 2回目は当時の最大派閥の田中派が小渕氏と梶山氏に分裂したので、少しは勝機があるかと思ったが、1回目より得票数が少ないボロ負け(笑)。
 3回目は4月、小渕氏が亡くなったあとの臨時選挙だった。また総裁選が無投票になると7月の参院選で党のイメージが悪くなるので仕方なく出たが、勝てると思わなかった。そしたら一般党員が街頭演説にどんどん集まってきて勢いがつき、最初は少なかった国会議員票も選挙目当てに集まって勝ってしまった。
 それでも9月の総裁選の本選挙までという裏約束があったのだが、7月の参院選挙も勝ってしまい、そのまま総裁続投となった。
 世の中、そんなもんだ。人間の考えは変わるものだ。

●日本の歩むべき道は原発を無くすことだ。
・私が総理大臣の時は、経産省から『原発は安全、安い、クリーンエネルギー』という説明を受けてきた。特に石油ショックの時バレル当たり2ドルが11ドルになったことを強調してきて、自分でも納得していた。
 しかし、2011年の事故のあと色々調べてみて、経産省が言っていたことは全てウソだったというのが判った。議員も引退していたので黙っていようかと思ったが(笑)、経産省に騙されたのは実に悔しい(笑)。だから黙っていないことに決めた。過ちは改めなくてはいけない
過ちを改めるには憚ることなかれ!』(笑)

 経産省に騙された』は本当に悔しそうでした(笑)。かって郵政民営化に燃やした執念と一緒じゃないでしょうか

・福島では3基が爆発したが、実はもう1基も危なかった。4基目が爆発すれば半径250キロ圏内は避難が必要だったが、その中には東北全域と東京などが含まれて人口は5000万人もいる。そんな人数が避難できるはずがない。311はたまたまこの程度で済んだだけだ。

・国会事故調の委員長、黒川東工大教授に直接話を聞いたが『あれは人災だ』と仰っていた。安全対策の不足を指摘する声は事故前もあったが東電が握りつぶしていたからだ。
 新聞ではあまり報じられなかったが、事故調の報告書にも『東電を監督すべき経産省が立場が逆転して、経産省が東電の虜になっていた』とはっきり書いてある。事実 経産省の役人は大勢 電力会社に天下りしていた。

・イギリスでは老朽原発廃炉に90年~100年かかる、としている。無事故の原発ですらそうなのに、大事故が起きた福島が40年で廃炉が出来るはずがない。

ここいら辺の話は平易だけど実に説得力があると思いました。

フィンランドの廃棄物処分場『オンカロ』を見に行った。廃棄物は10万年保管しなければならないが、岩盤の上にできたフィンランドでも無人島に作るということでようやく話がついて建設できた。しかしオンカロは2基分の廃棄物しか入らないので、残り2基分の廃棄物をどうするか困っている。原発4基のフィンランドですらこうなのに、54基も作ってしまった日本はどうするのか

・しかも日本には高速増殖炉もんじゅ』がある。85年着工、94年に完成したが全く発電できず、17年に廃炉が決まった。『3人寄れば文殊の知恵』と言う言葉があるが、もんじゅの知恵は出てこなかった(笑)。今まで1.1兆円も税金を無駄にしたが、今も毎日5000万円維持費がかかっている。これも税金だ。しかも廃炉費用はこれとは別に何兆円も掛かる。原発のコストが安いなんて大嘘

 ここもその通りです。『もんじゅ』のくだりは場内大ウケ(笑)。

・私が総理大臣当時『自然エネルギーは総需要の2%で、これで需要を賄うなんてムリ』と説明を受けていた。しかし15年には自然エネルギーは全体の15%になっている。原発は最盛期 電力需要の30%を賄っていた。大して力をいれなくても自然エネルギーはこれだけ普及したのだから、自然エネルギー原発の分の30%を賄うなんて10年もかければ簡単に出来るはずだ。
 事実 2013年~15年は原発がゼロでも全く大丈夫だった。やろうと思えば原発は止められる。

・福島の住民は未だに帰れないし、おそらくずっと帰れない。放射能は消えないし、事故処理に莫大な金がかかる。原発を再稼働させて、また事故が起きれば、今度こそ日本は大変なことになる。

・しかしピンチはチャンスだ。
 日本は地熱や水力など自然エネルギーは世界でもトップクラスだ。しかも水力も地熱も全然活用してない。
 少し前 猪瀬直樹のノンフィクション『昭和16年夏の敗戦』という本を読んだ。戦争前に総力戦研究所と言うシンクタンクが『日米戦争をやったら必敗』という結論を近衛首相に報告したが握りつぶされた、その時点で敗戦は決まっていた、という話だった。
 原発も太平洋戦争と一緒だ。ムリなことは判っているのだし、逆に今こそ、自然エネルギーでやっていけるという国であることを示すチャンスだ。

・敗戦で日本は大変なことになったが、今は戦前より盛んな国になった。戦争だけは2度とやってはいけない
 終戦当時は食糧難で平均寿命は50年。だから長生きできる国にしよう、というのが我々の目標だった。その結果 今は食料も医者も衛生環境も改善できた。日本はそれが出来た国なのだから、原発だって止めなくてはいけない。日本の良さを捨ててはいけない。

まさか小泉の口から『戦争だけは2度とやってはいけない』という発言が出るとは思いませんでした。タカ派イメージが強い小泉と言えども、やっぱり戦中派ということなのでしょうか。

・以前 日英貿易交渉の際 サッチャーが『同じ蒸留酒なのに何でスコッチより焼酎の方が酒税が安いのか』とクレームをつけてきた。一方 『焼酎業界は税金を上げたら業界は潰れてしまう』と反対した。
 結局 スコッチと焼酎の税を近づけざるを得なかったが、今 焼酎は高級化を進めて業界は栄えている。日本にはそれだけの知恵がある。

・最後に私の好きな言葉を紹介する。今も揮毫が憲政記念館に飾ってある、憲政の神様と言われた尾崎行雄の94歳の時のものだ。彼と比べれば、私なんかまだまだヒヨッコだ。
『人生の本舞台は常に将来にあり』

 ここから脱線が始まりました(笑)。もう予定の時間なんか、とっくに過ぎています。 

・昔は寿司なんか外人は食べなかった。生魚なんて野蛮な食べ物、ワサビなんて狂気の沙汰と思われていた。でも、今は外人が争って日本に寿司を食べにくる。人間は変わるものだし、変えることが出来る。原発だって止められるはずだ。

 (笑)。しきりに時計を見る、司会のお姉さんの顔が曇ってきました。

・さらに江戸時代の佐藤一斎と言う人の言葉もお伝えしたい。

『若くして学べば、壮にして為す。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば、死して朽ちず。』

 私は今77歳だが、学ぶことに限度はない。皆さんはまだまだ若い。頑張ってください。
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 派遣の規制緩和や緊縮財政など在任中の小泉のやったことには賛成しかねます。いや、許し難い。が、この内容はマトモでしょ?(笑)。まさか小泉が『戦争だけは起こしてはいけない』なんて言うとは思いませんでした。 

 当人は 『老いて学べば、死して朽ちず』とか言ってるぐらいだから、野心も気力も満々(笑)、『原発廃止』という花をもう一花咲かせるつもりでしょう。演壇に登る際も足腰はしっかりしてるし、声も張りがあって、まだまだ元気でした。

 話自体は場数を踏んでいるだけあって、また裏話もあるので、滅茶苦茶面白かったです。1時間の講演で40分以上は原発のことを話してました。ビジネス・パースンばかりの原発に興味無さそうな連中ばかりの聴衆でしたが、終わった後は場内から万雷の拍手でした。

 大きな身振り手ぶりを交えた話は退屈させないし、何よりも本人が本気で話しているところが、客を惹きこむのでしょう。『おれは経産省に騙された』というところは本気で悔しがってました(笑)。当人にとってはそこがポイントらしい(笑)。

 ただし話し方は非常に工夫している。例えば難しい言葉を使っても必ず平易な言葉で言いかえる。大事だと思っていることは2回繰り返す、それに歌舞伎好きらしい間の取り方などプレゼンの仕方は非常に勉強になりました。
 集会などで聞く野党の政治家よりは一枚も二枚も上。もちろん国会答弁どころか、野次からも逃げ回る安倍晋三なんかとは比べ物になりません。


 最初は風邪気味ということで声もあまり聞こえないくらいの大きさでしたが、だんだん声も大きくなり、最後は話も止まらなくなって1時間の講演を15分もオーバー。主催者側も止めるわけにもいかず、困惑しきっていたのが面白かったです(笑)。

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 ということで、今週も再稼働反対の官邸前抗議へ #金曜官邸前抗議
 週末になって、やっと少し涼しくなってきました。助かるなあ。午後6時の気温は23度。快適です😁。参加者はやっぱり200人くらいでしょうか。
●抗議風景

今回の停電復旧が長引いている理由の一つとして、『原発事故で経営が厳しくなった東電が送電関連の設備投資を抑えたこと』が挙げられています。
www.nikkei.com

東電は送電や配電設備に1991年には約9千億円を投じていたが、2015年には約2千億円にとどまっている。耐久性があると判断した電柱への投資を先延ばししてやりくりした結果』だそうです。
 停電自体は天災ですが、復旧が遅れているのは人災じゃないですか!原発はこんなところにまで祟っているわけです。

 311の事故から9年、ずっと稼働出来ない柏崎刈羽原発にこだわってなければ、東電は設備投資を押さえる必要はなく、停電はおこらなかったかもしれないし、範囲も小さかったかもしれないし、復旧はもっと早かったかもしれない。

 ボク自身も、原発が台風の被害にまで影響があるとは思わなかったですが、こんなに天災ばかりの国なんです。やっぱり社会のためには一刻も早く原発をやめる方がいいです。

『数十年ぶりの新宿御苑』と映画『おしえて!ドクター・ルース 』

 思いもよらぬ台風の上陸で今朝の東京は大変でした。真夜中から風が吹き始め、家はずっと地震のように揺れてました(笑)。ここまで強い風は初めてです。朝 眠たい目をこすりながら起きましたが、電車が動かないのでまたひと眠りしました(笑)。

 電車が動き始めてから最寄駅へ行ったら、ホームに登る行列↓が出来ていてびっくりしたんですが、大きな駅ではこんなものではないらしい。半日がかりで出社した人も多かったようです。なんとも日本人的な滅私奉公の光景です。
●台風明けの光景

津田沼三鷹駅の行列。


 この前 親戚の法事の帰り道 数十年ぶり(笑)に新宿御苑へ寄ってみました。小学校の時以来です(笑)。

 
 まだまだ歴史の風格は感じませんが、それでも園内の日本式庭園は広々としているし、立派な枝ぶりの木々もあって中々だと思いました。子供の時はこの有難味が判らなかったなあ(笑)。
●台湾式の建物と日本式庭園のマッチングは素晴らしいと思いました。やっぱり日本の文化はクロスオーバーなんですよ。殆どすべてのモノが海外の影響を受けて成立している。

 中にいるのは外国人だらけです。日本人はわざわざ行かないと言うのはあるかもしれませんが、彼らは徒歩で移動、緑が好き、という側面もあると思います。学ぶべき点は多いんじゃないでしょうか。
 入口はD・アトキンソン氏が官房長官の菅にアドバイスして設置したという?(笑)QRコード無人ゲートでした。

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

 入場料500円は高くてびっくりしましたが、国際基準ならそうでもない(笑)。なによりも都心にこれだけの緑地があるのは素晴らしいと思いました。NYのセントラル・パークのことなんかを考えれば、東京には緑地がまだまだ足りません。
●まるで海のように広がる芝生(笑)。

●法事で使った明治記念館の食べものは作り置きばかりで驚くくらい不味かったですが、唯一まともだったのが豆腐のデザート。



と、いうことで、新宿で映画『おしえて!ドクター・ルース

longride.jp

 アメリカで80年代から現代にいたるまでずっと活躍し続けているセックス&人間関係セラピスト、ドクター・ルースことルース・K・ウエストハイマーの人生を振り返るドキュメンタリー。ホロコーストからの逃亡と別れ、従軍歴、アメリカへの移民、タブーを打ち破るということ、保守化するアメリカに抗して、歩み続けるドクター・ルースの生き方に迫ったドキュメンタリー。


 ドクター・ルースはアメリカではTVやラジオで歯に衣を着せぬ発言で大人気のセックス&人間関係セラピストです。80年代から現代に至るまで、視聴者のお悩みに答えるTVのレギュラー番組を持っているばかりか、90歳(撮影当時)になっても著書を執筆、毎日休みなしにTVや講演、ラジオ出演をこなしています。
●90歳になってもラジオに出演するドクター・ルース

 アメリカのTV番組なんて、めったに見たことがないボクでも、この人のことは何となく記憶がありますから、現地では本当に人気がある人なのでしょう。
●1枚目はオバマ大統領と。2枚目は80年代、歌手のシンディ・ローパー💛と。

 監督は涙なくしては見られない感動の超名作ドキュメンタリー『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』を監督したライアン・ホワイトという人。

spyboy.hatenablog.com


 映画はドクター・ルースがアマゾンの『AIスピーカー』に自分のことを尋ねるところから始まります。どんな職業なのか、AIが回答する。流れるような滑り出しです。
 彼女は80年代から最初はラジオで、それからTVでセックスや恋愛関係に関する悩み相談を始めます。
www.huffingtonpost.jp

 歯に衣をきせない、しかし温かな語り口は全米で大人気になり、今や彼女の事を知らぬ人はいないそうです。

 映画撮影当時の彼女は90歳(現在は91歳)ですが、TVのレギュラー番組に出演し、著書を出版し、講演で全米を駆け回り、1週間働きづめです。彼女はどういう人なんでしょうか。
●90歳になってもまだ、名門コロンビア大の大学院で教えています。


 彼女は第二次大戦前 ドイツに生まれたユダヤ人、本名はカローラという名前でした。中産階級の家庭で祖母と父母との4人家族で幸せに育っていました。が、ナチスが政権を取ると、まず父が強制収容所に送られます。

 危機感を募らせた母と祖母はカローラをスイスに疎開させます。10歳そこそこでの寄宿舎暮らしは周りのスイス人の偏見や差別、寄宿舎の管理人の横暴も相まって辛い物でした。それでも、いつか家族と再会できる日を楽しみにしていたカローラでしたが、戦争後、家族はアウシュビッツポーランドで殺され、天涯孤独の身になってしまったことを知ります。
●当時の収容施設を再訪するドクター・ルース。スイスでは、ユダヤ人差別と物資不足、それに女生徒は高校へ行くことも許されない辛い生活だったそうです。


 孤児になったユダヤ人の子供たちは建国間もないイスラエルに送られます。しかしカローラと言う名前はドイツの名前だそうで、恨み骨髄のユダヤ人の間ではその名前で暮らすことは難しかったそうです。ミドルネームのルースを名乗るようになった彼女はイスラエル軍の狙撃兵になります。

 砲弾で負傷した彼女は最初の結婚をしますが、『彼は良い人だったが知性がないので退屈だった』と、1年で離婚。勉強が大好きだった彼女は、戦争で学校へ行けなかった学生向けに講座を開いていたパリのソルボンヌ大学に渡ります。パリで2度目の結婚をした彼女は娘を授かりますが、医学の勉強を諦めてしまった夫に失望して離婚。ルースは娘を抱えたまま、アメリカへ渡ります。

 50年代のアメリカはまだまだシングルマザーに対する理解がなかった時代。奇しくも以前 映画の感想を書いたRBG、ルース・ベイダー・ギンズバーグと同じ時代、境遇です。

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●ドクター・ルースは学問の傍ら、二人の子供を育て上げました。右の娘は2番目の夫と、左の息子は3番目の夫と設けました。

 NYで時給1ドルでメイドをしながら子育てしたルースは3度目の結婚。

 さらに世の中の役に立ちたいと家族計画を推進していた全米家族協会に就職、社会環境が劣悪だったハーレム地区でカウンセラーとして働きます。と、同時に名門コロンビア大で専門知識を学び、同じく名門コーネル大でカウンセリング技術を学びます。
 そうやって彼女が世に出たのは40代。弱肉強食社会のアメリカですけど、チャンスがあるところは日本とは違います。

 1981年、ニューヨーク。市の当局からの要請で何か公共的な番組を放送する必要に迫られた音楽専門のラジオ局が、仕方なく日曜深夜に相談番組を始めます。カウンセラーたちは出演を嫌がり、彼女だけが手を挙げた。そもそも日曜深夜なんて誰も聞かない時間帯です。
 しかし、誰も教えてくれない性の悩みをズバリと解決する彼女の歯に衣を着せぬ語り口が大人気になります。放送時間は15分が30分、30分が1時間、最後には2時間ものラジオ局の看板番組になります。

 やがて彼女はTVにも進出、映画出演や関連商品も発売され、全米で誰もが知っている有名人になります。

●90歳の誕生パーティ

 なんという波乱万丈の人生でしょうか。生放送で難しい相談を持ちかけられても、ユーモアを交えつつ的確に応えられる理由がここにあるのでしょう。
アウシュビッツの記念館で。犠牲者の写真が天井に飾られています。ドクター・ルースの父もこの中に居るのかもしれません。

 
 とにかく印象に残ったのが彼女の笑顔。なんとも優しい、深い笑顔なんです。性に関する言葉をそのまま使って、率直な回答をする彼女ですが、同時にこの笑顔で微笑みかけられると説得力がでてしまう。
●『どうしたら恋人ができるのでしょう』といった相談には、彼女は70年代から常に『自分が自然のままにふるまうのが良い』と答えます。

 性に関する悩みというのは確かに人には言いにくい。彼女は70年代から『ノーマルなものなんかない。全ては人それぞれ』という信念を貫いてきました。早くからLGBTQの人たちに味方し、特にエイズの患者に対する偏見を解こうと努力してきた。
 相手の意志を尊重する限りにおいては、彼女はどんな性の形でも肯定する。『彼女の存在に救われた』と言う人たちが映画の中でも大勢出てきます。
●右側のラジオDJはゲイ。彼女の人生相談を聞いて『自分は一人ではない』と感じることが出来たそうです。彼女は大勢の人を救っていたのです。

 そういう彼女ですが、政治の事だけは話さなかったそうです。妊娠中絶を肯定し、LGBTQの見方をする彼女ですから政治的立場は超明確にも関わらず、予断を持って聞かれたくないという思いで政治的なことは話さなかったそうです。
 ただ、映画には出てきませんが、今年トランプが移民の親子を引き離す政策を始めた時、彼女は堪忍袋の緒が切れて、トランプ批判を始めたそうです。そりゃあ、そうです。彼女はヒトラーに家族と同じ目に遭わされたのです。それから70年も経って、また同じ過ちが起きるとは彼女でも思わなかったはず。
●この、穏やかな笑顔の奥には深い哀しみが隠されています。

 映画の中では今でも家族と離別したことを引きずる彼女の事が描かれています。アウシュビッツを訪れ、ユダヤ人犠牲者の消息を探す彼女の姿には何とも言えません。90歳になってもワーカホリックのように働く彼女は、哀しい思い出を振り切るように働いているように見える、と娘さんが語っていました。
●成長した子供たちと。


 見る前はなんとなく、胡散臭い人を想像していたんですが、想像以上に深く、温かい、そして哀しみを乗り越えた人ならではの強さを持っている人でした。どんなに悲しいことがあっても、人生は生きるに値する。人を救うことで自分も救われる彼女の生き様がそのことを体現しています。

 RBGもそうですが、こういう人たちのおかげで今、ボクたちは生かされている。彼女の笑顔を見ているだけで、涙が出てきて困りました。実に面白い、ユニークな傑作ドキュメンタリーです!

『おしえて!ドクター・ルース』予告編