特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『棺桶に無事たどり着くために』と映画『魔女がいっぱい』

 昨日は神戸の地震があった日でした。
 前にも書きましたが、その日はTVを付けたら神戸の街を映す画面が真っ赤だったのをよく覚えています。寒い朝でした。

 出社したら、神戸支店の様子を確認しろということになって、火中の栗を拾うのが大好きなボクはその日の午後 大坂から神戸へ入りました。救援物資以外の交通が遮断される前、ギリギリのタイミングでした。
 地元の人の運転で警察の非常線を突破しながら入った尼崎や神戸の街にはところどころ、まだ煙が立ち上っていました。煙の下にはまだ、人が埋まっている場合もあったかもしれない。その時の風景はボクなりに忘れたことはないから、その後 復興した真新しい街並みを見たときはむしろ理不尽な感じがしました。
 あれから26年も経ったなんて信じられない。
●震災から10年後の神戸を描いたこの映画/TVドラマで地震の印象は一層深くなりました。

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 神戸の震災以来 何年に1回か、世の中には『危機』というものが訪れるようになりました。97年の山一ショック、00年のITバブル崩壊から04年頃までの小泉不況、08年のリーマンショック、11年の東北大震災と原発事故、そして20年のコロナ禍。

 日本経済の『失われた30年』と見事にシンクロして、『明日のことはわからない』を実感させる出来事が数年おきに、次から次へと起こっています。元来 世の中はそういうものなのかもしれませんが、子供の頃はこんな世の中になるとは思わなかったなあ。

 そんな人生を説明する言葉って昔から色々あるじゃないですか。 『人生とは選択の連続である』(シェイクスピア)とか、ね。
 そういう言葉の中でボクが最も納得できるのはアメリカの小説家ジョン・アーヴィングのベストセラーガープの世界の中の一節、『人生は死に至る病である』(元ネタは哲学者キルケゴールみたいですが)です。

ガープの世界〈上〉 (新潮文庫)

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 人生には辛いことや苦しいこと、どうしようもない悲劇もあるけれど、自分の人生なんてその程度、と思えば、あまり期待したり、高望みしたりしないで程々のところで我慢すればいいかって思えるようになります。定年になったら人付き合いとか仕事とか嫌なことはしないで済む、それまではある程度我慢して毎日をやり過ごそうって思うんです。

 ただ、昨今のようにいつ死ぬか判らない状況だと、時にはそれでいいのか?って思えることもあります。ウンザリしながら毎日をやり過ごすのもいいんだけど、そうやって自分の一生を逃げ続けるのもどうか、と、たまに焦ることもある。自分は何もしてないし、何も残してない。

●コロナ禍の国会初日からこれだもん。


 この前の日経新聞土曜版の人生相談『なやみのとびら』で芸人の山田ルイ53世(笑)が『人生とは棺桶に無事たどり着くまでの逃走劇』って言っていました。彼は一発屋の芸人?として一瞬 陽の目を見たものの、人付き合いに疎く『芸人に向いてない』と毎日ため息をついて暮らしているそうです(笑)。

 なるほど、と思いました。これが正しいかどうかは判りませんが、そうやって逃げ続けるのもアリ、なのかもと思いました。そういう人が居て心強かった(笑)。

 こんなに厳しい世の中です。しょっちゅう危機が訪れるし、政治家は菅や小池のようにバカ揃い、理不尽な苦労をしている人や困っている人を他人事のように自己責任と片付けてしまう風潮もウンザリ。
 中村哲氏みたいな立派な人はいますけど、無力ではないけど微力な凡人にとっては、政治家や新自由主義に負けずに、棺桶に無事たどりつくことそのものが人生の目的かもしれない。そして、棺桶に無事辿り着くためにあれこれ思い悩むプロセスそのものが人生なのかもしれません。
 


 ということで、 新宿で映画『魔女がいっぱい
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wwws.warnerbros.co.jp

舞台は1968年。両親を交通事故で亡くした少年は優しい祖母(オクタヴィア・スペンサー)に引き取られて暮らしていた。ある日 少年は魔女に取りつかれてしまう。身の危険を感じた祖母は少年を連れてアメリカ南部アラバマ州の豪華なホテルに非難する。そこへ若くおしゃれな女性たちの団体がやって来る。彼女たちは、美しく邪悪な大魔女“グランド・ウィッチ”(アン・ハサウェイ)と世界中に潜む魔女たちだった。魔女は普段は人間として生活し、魔女と気づいた人間を魔法で動物にしていた。大魔女は魔女たちを集め、ある邪悪な計画を実行しようとしていた - - -



 『チャーリーとチョコレート工場』などの原作者ロアルド・ダールの児童文学を『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなどのロバート・ゼメキスが監督、製作・脚本に『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロと『ローマ』のアルフォンソ・キュアロンとアカデミー監督賞受賞者二人が加わった超豪華仕様です。
アン・ハサウェイが世界中の魔女を取り仕切る大魔女を喜々として演じています。ブラック風味ですが、怖くないところが良いです。


 お話は子供向けですが、怖いシーンもあって、ちょっとブラック風味の利いた作品。そこにロバート・ゼメキスの誰が見ても判りやすい明るさとギレルモ・デル・トロらのマニアックな所が組み合わさって独特のテイストが出ています。
●両親を事故で亡くした少年はおばあちゃん(オクタヴィア・スペンサー)(左)に育てられることになります。

 ファミリー向けのおこちゃま映画と思いきや、想像以上に良かったんです。
 何といっても、主人公の少年が最初の30分くらいであっさり、魔女にネズミに変えられてしまい、あとの主要登場人物はオクタヴィア・スペンサーアン・ハサウェイだけ、というところがいいです。だって見たいのはこの二人だけだもん(笑)。

 少年はCGのネズミで充分、あとは脇役だから景色みたいなもの。人間なんて見たくもないです(笑)。二人の大女優を見たいと言う観客の欲求にこたえる見事な展開です。
●ネズミのCG、表情の変化もあって可愛いです。人間より、良かった。

 アン・ハサウェイは極悪非道でおどろおどろしい魔女を本当に楽しそうに演じています。数々のゴージャスな衣装を着こなすだけでなく、口裂け顔や禿頭など汚れ役でも喜々としています。彼女が演じると怖くなりすぎないところも良いです。微笑ましい。


 『ドリーム』『シェイプ・オブ・ウォーター』など最近売れっ子のオクタヴィア・スペンサーが祖母役というのは年齢的にちょっと違和感があったけど、思慮深くて包容力のある女性というキャラはこの人によく合っている。

●創世記のNASAを支えた3人の黒人女性を描いた『ドリーム』、今考えると圧倒的な名画のような気がします。

ドリーム (字幕版)

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 お話も1968年、しかも人種差別が激しい南部アラバマ州の描写も見る人が見れば政治的なメッセージが込められていることも判ります。人種差別を告発するような描写がしょっちゅう出てきます。
●高級ホテルにアフリカ系が泊まることができたのはコネがあったから、という設定です。ここではアフリカ系は使用人ばかりです。

 また前半 フォー・トップスやオーティス・レディングで気分が上がっていくところはカッコよかった~。ファミリー向けだから難しいんでしょうけど、このペースで全編通してくれれば傑作になったのに。


 ということで、いつかTVでやるであろうメジャーな作品。でもポイントも押さえているし、ポリティカルコレクトネスもきちんとしている。文字通り安心して見られる。色々な観客の欲求にこたえる良い映画だったと思います。

映画『魔女がいっぱい』本予告 2020年12月4日(金)公開

食べ物の恨みは恐ろしい:『中華ランチ』と『かぶら蒸し』、それに『IBD』

 いやいや、寒いですねー。
 でも、そろそろラナーニャ現象が終わって偏西風が収まれば寒波も減り、暖かくなる、と言う説もあります。ラニーニャ現象に解消の兆し 天候は次第に平年に近い状態へ(エルニーニョ監視速報) - ウェザーニュース
 そうなれば感染の勢いも多少は削がれるでしょう。少しでも希望を持ちたいです(笑)。
●朝陽が登る時間も段々早くなってきました。


 今回は食べ物のお話です。
 緊急事態宣言とやらで夜の営業を諦めた店は多いけど、お昼はボクは普通に外食しています。
 出来立てのものを食べるって基本的人権、とボクは思っています。時間がないときは仕方ないけれど、作り置きでどんな薬や添加物が入っているか判らないコンビニやファーストフードなんて、ボクには人間の食べ物とは思えません。
 実際 商社でセ●ン・イ●●ンの弁当の原料調達の担当をやってる人が、『自分は絶対にコンビニのものは食べない』って言ってましたからね。

 


 何回か話題にしていますが、ボクが普段 お昼を食べているのは、消費税なし、東京都の禁煙条例守らない、日本語通じない、殆ど無法地帯みたいな中華料理屋です。とても怖くて入れない雰囲気ですが、店の前を通ったら中国人のお母さんに強引に連れこまれて(笑)食べてみたら、実にうまかった。

 それ以来 ほぼ毎日 出来立ての中華定食を食べてます。材料は違うけど高級中華の中国飯店や福臨門より美味いんじゃないか、と カルチャーショックを受けた店です。値段が10分の1以下でこちらの方が美味しいと感じるのは、何かやばいクスリでも入っているんじゃないか(笑)。
●五目焼きそば。800円そこそこですが、スープも料理の出汁も辣油も手作りです。


 ところが今週 西村のアホがこんな寝ぼけたことを言ってました。昼のランチも控えろ、というのです。

www.jiji.com

 今 飲食店はランチとテイクアウトで生き延びることに望みを託しています。まともな補償もしないくせにそんなことを言えば、当然こういう反応になります。
www.fnn.jp

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 もちろんマヌケ連中が大勢でぺちゃくちゃ喋って飯を食ってれば、昼だろうと夜だろうとリスクは高い、に決まってます。でも感染対策が行われた店で一人で食べることにどんなリスクがあると言うのか。

 ちなみにボクは、その中華屋には空いてる時間に行って一人で食べてます。

 そもそも、中国の人はコロナに関しては滅茶苦茶神経質です。
 ボクの勤務先の中国の人は中国/日本の飛行機の中では機内食も食べないし、トイレも行かないって言ってました。
 その店で唯一日本語が通じるお母さんは、他はともかくアルコール消毒だけは(笑)几帳面だし、咳してる奴が居ると頭の上からアルコールスプレーぶっかけます。ある意味安心です(笑)。
 マスク外してタバコ吸ってたり、デカい口を開けて喋っているバカな日本人の方がよっぽど危ない

 偉い、と思うのはこの店は皆が働き者なことです。お客さんが多くて忙しいときは本当に嬉しそうな顔をしています。コロナ前 混んでいる時はお昼の時間帯、100人以上の客をお母さん一人で捌いていましたが、お母さんも厨房の人も忙しくて嫌そうな顔をしてることなんか見たことがない。
●なんの変哲もないニラ玉ですが、家ではどうしても真似できません。

 このこと一つとっても今の日本人は中国の人に全く敵わないと思うんですが、逆に感染者が増えてお客さんが少ないときは、実に哀しそうな顔をしています。
 こうなると、お客のボクが日本政府の無能さを、日本人を代表してお詫びしなくちゃいけないような気持になる(笑)。彼女の出身の福建省(人口4000万)なんか新規感染はほぼ数人に抑え込んでますからね。マジで情けない。


 そもそも外食だけがリスクが高いのではありません。BS-TBS『報道1930』によるとクラスターの発生が一番多いのは教育関係、飲食店、それから職場↓だそうです。それに飲食店だって、フルに客を入れる等まともに対策をしてない店と、真面目に対策している店の扱いが同じっていうのはおかしい。

 十分な補償をするのなら兎も角、きちんと対策をやっている店まで営業不可にしてしまうのは理不尽です。

 確かに学校や会社をロックダウンしてしまうのは社会的・経済的に問題が大きい。満員電車を放置しているのもそれが理由でしょう。だけど旅行業などと違って、組織化されてないため政治力が弱い飲食店だけを狙い撃ちするのは恣意的、としか言いようがない。
●零細店が多い飲食業は、旅行業のように二階が業界の会長だったり、ぐるなびのようにトップが菅と懇意だったりはしない訳です(MXテレビ、モーニングクロス)。

 政府が発するべき正しいメッセージは『マスクをしろ』、『手を消毒しろ』、そして『集団行動するな』、『でかい声でしゃべるな』でしょう。
 スーパーで喋りながら家族連れで買い物してる奴とかマジで腹立つもんなあ。
news.yahoo.co.jp

 なにより、市中感染がこれだけ広まってしまったのですから検査を拡充していかない限り、もうどうにもならないでしょう。政府は今年の3月から医療や介護機関の検査は拡充すると言ってましたが、遅すぎます。昨年の3月にやるような話じゃん(笑)。
 医療体制の整備だって、法的な問題、政治力による開業医偏重の医師会の構造も含めて、7か月間何をやってたんだ、と言う話です。
toyokeizai.net

diamond.jp

 国民に協力を求めるなら、まず政府の対策の遅さとGOTOキャンペーンの失敗のお詫びから、でなければ説得力も信頼もあるはずがありません。

 



 さて、年末ぎりぎりに、いつものご近所のイタリアンへ行ってきました。仕事が終わった年末くらい徒歩圏でのんびり美味しいものを食べようと思ったのですが、今にして思えば緊急事態宣言が出る前、最後の夜の外食になってしまいました。

 これは蒸した甘鯛に蕪の白いソースを添えたもの。緑は蕪の葉っぱ、つまり、『かぶら蒸し』です。

 肉もそうですが、お魚も身が厚いと肉汁が閉じ込められて美味しいです。全然違う。普通の甘鯛とは違う種類で『白川甘鯛』と言われたんですが、帰宅してからググってみたら、収穫量が少ないので『幻の甘鯛』と言われているそうです。食べてるときは美味しいなあーというだけで、有難味なんか感じてないのが我ながら恥ずかしい(笑)。

 こちらの店は客足は戻ったと言ってました。良かった~。店が出来てまだ十数年、働いている人の若さに加えて、銀座や青山などの繁華街と郊外という立地の違いもあるのでしょう。元々自由が丘マダム(笑)で賑わうランチが盛況、というのもあります。昼はさっきの中華屋とは別の意味で、怖くて入れないもん(笑)。

●白トリュフの茶わん蒸し。中には白子が


 今夏 この店の若いスタッフがクローン病という病気を発症して、油や食物繊維を取れなくなったそうです。
 安倍晋三潰瘍性大腸炎と症状はほぼ一緒、両方とも腸の粘膜に炎症が出来るIBDという病気だそうです。治療法が見つかっていない難病らしい。しかし国会で嘘ばかりついていても許されてしまう総理大臣とは違って、料理人としてはかなり厳しい。
ibd.qlife.jp

 しかし、お店はコロナ禍の中でも彼を正社員のまま雇い続けています。そして彼はIBDの人向けの油や食物繊維控えめの料理を作るという新たな夢をもって頑張っているそうです。店では年末に彼の第1弾作品、IBD患者さん向けの低脂質パスタソースを通販で販売、完売しました。


 病にくじけなかった若いスタッフは立派です。同じIBDでも安倍晋三とは月とスッポンです。また雇用を守ったオーナーシェフ氏も立派です。と、同時に経営がちゃんとしてないと、こういうこともできません。やっぱり、この店は応援しよう、と改めて思いました(笑)。
●網で捕った真鴨とセリ。鴨鍋の組み合わせですね(笑)。真鴨ですから脂も薄いし、肉が実に柔らかかった。銃で捕るのと網で捕るのとでは味が全く違うそうです。
 


 このお店も先週から夜の営業は断念、ランチとテイクアウトで急場をしのぐようです。お客の手指消毒は2回、席は通常の半分で対面ではなく斜めに座らせる、窓を開けて換気(寒いので温かい格好で来てくださいと言われます)と万全の対策を取っていたのに、巻き添えもいいところ、気の毒です。
 以前書いた青山の店もそうでしたが、まじめな店ほどアホの政治の巻き添えを食っている。ふざけんなよ(怒)。


 政治は我々の食事にすら影響を及ぼします。
 アホが政治をやってるとうまいもの、まともな料理を口にすることすら難しくなる
 と、同時に、経済の重要さ。経済がちゃんとしてないと福祉や教育も充実することができない、ロックダウンの補償もできない。困っている人を助けることもできません。自分自身も一緒ですね。健康も生活もちゃんとしてないと。

 与党だけでなく野党もいまいちの現状では、政府のゴミ政治家は当面どうにもならないかもしれないけど、文句は言い続けよう。そして自分も頑張ろう、と言う気になりました。
食べ物の恨みは恐ろしいぞ!



 ということで、今週の金曜官邸前抗議もお休みです。

全ては嘘から始まった:ドラマ『チェルノブイリ』

 寒いですね~。仕事も始まって、のんびりしたお正月は遠い昔の事のようです(泣)。
 流石にこの頃はコロナに感染した人の話をそこいら中で聞くようになりました。自分だって症状が出ていないだけで感染しているかもしれません。

 政府はやっとPCR検査を拡充する方針を出してきたようですけど、はっきり言って『1年遅い』。



 飲食業や非正規雇用の人など多くの人が苦しんでいるというのに、未だに日本の政治家からは危機感なんか感じられません。

 感染を防ぐ有効な対策どころか、国民に説明しようという言葉すら、政治家にはない。そりゃあ、国民に協力しろと言ってもムリに決まってます。

 感染を抑え込むことができた国は検査をバンバンやって、感染者を隔離してます。そして国民に理を尽くして説明し、協力を要請しています。台湾やニュージーランド、とは言わないにしても、日本の政府はどれだけ無能なんだよって思います。

 昨日も、感染者が発生した中国河北省で1000万人のPCR検査を一気に行う、それも複数回、というニュースが流れていました。

mainichi.jp

 明治維新にしろ、戦後の復興にしろ、他国の後追いはかって日本のお家芸でした。しかし今や他国の成功事例に学ぶ、そんなことすらできない、認知が歪み劣化した国になってしまったんですね、日本は。

 先日のアメリカでの暴動について今日、シュワルツェネッガーが『オーストリア育ちの自分はクリスタル・ナハト(水晶の夜)を思い起こした』と発言しました。初めて告白したという自分の父親によるDVの事にも触れながら、DVも暴動も『全ては嘘から始まった』と述べている感動的なスピーチです。
 クリスタル・ナハトとは1938年にナチが扇動したユダヤ人を標的にした暴動で、割られたガラスが水晶のようだったということから『クリスタル・ナハト』と呼ばれています。ユダヤ人弾圧が進む切っ掛けになった事件です。


www.huffingtonpost.jp


 今回 ガラスを割って議会に乱入した連中にはネオナチ、白人至上主義者が大勢いたことが判っています。ナチスのよう、ではなく、現代のナチそのものです。
 自分たちの主張を通すために暴力を用いる連中は民主主義を脅かす存在、ただのテロリストです。彼らを産んだのは『嘘』、そして『陰謀論』です。嘘やデマを振りまくことは言論の自由ではありません。暴力は民主主義とは両立しないし、デマを振りまく自由を認めてしまったら言論は成り立たないからです。
●これ、面白い視点です。如何に日本人がデマに弱いかを数字で示しています。

 そういうことすら判らない連中がアメリカにも日本にもいるようです。そこまでいかなくても、デマやフェイクを流したりリツイートしている連中が右でも左でも大勢います。百田尚樹とか山本太郎なんかその典型です。
●れいわの大阪公認候補のtweet。もはやカルトの吹き溜まり、オウムみたい(笑)。

 ボクは右でも左でも嘘やデマ、フェイクには出来るだけ目くじら立てるようにしています(笑)。

 嘘やデマはウィルスと一緒で放っておけば増殖し、やがて世の中の空気がおかしくなっていくからです。

 これはハーバード大を卒業して民主党下院議員の秘書になったがもっと世の中を変えたい、と、ロック・ギタリストになったトム・モレロレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの今回の暴動を受けてのtweetです。『ナチには生きる資格はない

 ボクもそう思います。




 と、いうことで、今回は配信のTVドラマです。お正月に見てびっくりしたのがこれ。アメリカのTVドラマのミニシリーズ『チェルノブイリ
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www.hbo.com

 アメリカでは19年に放送されて、エミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞など10部門、ゴールデングローブ賞のTVドラマ作品賞、助演男優賞などTVドラマ関連の賞を総なめにした、一部では完全無欠なTVドラマ?と呼ばれているのは聞いていましたが、なかなか見る機会がありませんでした。

 今回 時間が出来たお正月にやっと約1時間のドラマ5本のシリーズを見ることが出来ました。ボクはアマゾンで見ましたけど、スターチャンネルなど色々な配信やレンタルで見られるようですね。
www.star-ch.jp

 dvdも出ているし。

 お話は1986年のチェルノブイリ原発事故の発生から収束、そして原因の追及までを様々な人たちのエピソードをもとに描いたものです。

 中心となるのは3人の人物です。
 実際に事故の収束を指揮した原発の専門家、レガソフ博士(ジド・ジャレット)、

 事故対策の最高責任者として現地で指揮にあたった副首相のシチェルビナ(ステラン・スカルスガルド)、

 彼らをバックアップする科学者のホチェック博士(エミリー・ワトソン)。

 彼女だけは収束にあたった様々な科学者のエピソードを取りまとめた架空の人物だそうですが、その他は実話をかなり忠実に再現したドラマです。
●左からシチェルビナ副首相、レガソフ博士、ホチェック博士

第1話:午前1時23分47秒
第2話:落ち着いてください
第3話:地球よ、広く開け
第4話:全ての人道的行為の幸せ
第5話:永遠の記憶

 86年4月26日深夜の1時23分47秒、チェルノブイリ原子力発電所4号機で爆発が起こります。原子炉が爆発するなど発電所の技師たちも含めて全く想定外でした。
職員たちは何が起きているのか判らない。駆け付けた消防は消火活動に入りますが、通常の火事だと思っている。市民たちは離れたところから大きな火事を見物しています。彼らの頭の上から、白い灰のようなものが降ってくる。しかし、誰も気に留めない。白い灰はもちろん、あれです。
それが事故の始まりでした。

 朝になっても発電所所長や技師長は単に水蒸気のタンクが爆発しただけだと、原子炉の爆発を否定し続けます。地元の共産党は町を封鎖し、人々の出入りを止めると同時に電話線も切って情報を遮断する。もちろん住民に避難なんかさせません。共産党中央部にも事故は大したことがない、という報告がなされる。

 しかし中央では原発の専門家、レガソフ博士が『本当は大事故が起きているのではないか?』と主張します。ゴルバチョフから現地の最高指揮をゆだねられた副首相のシチェルビナはレガソフ博士を連れて現地へ向かいます。

 二人が乗ったヘリから見えたのは原発の建屋の屋根に原子炉の炉心に使われている黒鉛が散らばっている光景でした。原子炉が爆発したことがここで初めて判ります。

 チェルノブイリ事故の収束にはのべ70万人以上の人が関わったといわれています。そして30万人以上の住民が避難を強いられた。
 ですから、ドラマでは様々な人たちの様々なエピソードが展開されます。原発の職員、消防士とその家族、地元住民、兵士、科学者、共産党の幹部たち、KGB
 ビックリするようなエピソードの連続です。例え知っていることでも、映像で見るのとは全然違う。お話も映像も音楽も大迫力です。

 チェルノブイリ発電所の幹部たちは普段から尊大で部下に威張り散らしていました。そして事故が起きても責任逃ればかりやっている。
 
 一方 共産党はとにかく事故を隠そうとします。処罰を恐れる地方幹部は中央に対して、中央は海外に対して情報を隠蔽する。
 当初は『原発の事故など起きていない』と言い張る。放射性物質が海外で探知されると、今度は『事故はアンダーコントロールだ』と言い訳する。
 日本でも政府(これは民主党)も東電もメルトダウンを否定し続けました。アンダーコントロールと国際社会に公言した首相もいました。歴史は繰り返す(笑)。

 放射能が漏れていることすら当初は知らされませんでした。原発事故の知識も装備もなく訓練も受けたことがない現場の人々はどんどん被ばくしていく。最初に駆け付けた消防士たち、発電所の職員たち、動員された兵士たち、見物に集まった地元の人々。

 レガソフ博士は孤軍奮闘を続けます。やたらと『(命令を聞かなければ)銃殺』を連呼する副首相シチェルビナを説き伏せ、軍や資源を投入させる。渋る地方政府に命じて住民避難を行わせる。
 とにかく爆発の火は消さなくてはなりません。まず、火を消すために軍のヘリでホウ素と砂を投下します。投下するにもヘリは放射線が高い原発の真上を避けなければいけない。至難の業です。
 砂とホウ素で火は沈下の方向へ向かいますが、覆われた核燃料の温度が上がってメルトダウンの恐れがでてきます。今度は燃料の温度を冷やすため、日本と同じようにヘリで水を放水します。しかし原子炉の下にその水が溜まり、これまた日本と同じように水蒸気爆発の危険が出てくる。

 原発にたまった水で水蒸気爆発が起きれば4号機の燃料が飛び散るだけでなく、他の炉にまで被害が及ぶ可能性があります。そうなれば東ヨーロッパまで被害が及びます。というか、東ヨーロッパ全滅です。
複数の原子炉が崩壊して東日本全体が死の土地になる可能性は福島でもありました。天皇を関東から避難させることも検討したのですから。

 他に手段はありません。原子炉の下にたまった水を抜くため、職員の決死隊が派遣される。原子炉の地下にたまった水をかき分けながら進んで、手動でバルブを開けるのです。下手なホラーより怖い。
 
 文字通り決死の行動で水が抜けると、核燃料の温度が上がってメルトダウンの危険性がでてきます。溶けた燃料が下へ潜っていき、地下水の層にまで達すれば、東ヨーロッパを流れる大河、ドニエプル川が汚染され、これまた東ヨーロッパ全体が死の土地になりかねない。

 燃料が地下水の層に達するまで残された時間は数週間。ブルドーザーなど重機は使えません。数百人の炭鉱夫が集められ、原発の地下に手でトンネルを掘り、そこから国中の液体窒素を集めて燃料を冷却することになります。高熱と作業性の問題もあって、彼らは防護服を着ませんでした。原子炉の下で彼らは、裸のままトンネルを掘ります。

 こんな感じで次から次へと困難が起こります。事実ではありますけど、息をもつかせぬ展開で、ドラマから全く目が離せません。

 一番の難題は原発の屋根に散らばった原子炉の炉心の黒鉛でした。レガソフ博士たちは無人の月面探査車などロボットを使って処理しようとしますが、あまりにも放射線量が高く、直ぐ壊れてしまう。福島でも炉の中はそうみたいですね。

 結局 防護服を着た兵士たちが人力で90秒ずつ作業して黒鉛を除去することになります。作業に加わったのは約3800人。彼らには恩給が与えられます。

 多くの職員も消防士も炭鉱夫も兵士も後日どうなったか、は推して知るべし、です。しかしそれしか手段がなかった。現場だけでなく 最高指揮官の副首相シチェルビナもレガソフ博士も後日 放射性障害を発症しています。

 ドラマでは現場だけではなく、病院がどうだったか、避難地域がどうだったか、まで丁寧に描かれます。病院だって戦場のようです。それに放射性物資を拡散させないため、避難地域で被ばくしたペットたちを殺して回る任務を受け持った部隊なんて全く想像がつきませんでした。
とにかく、ものすごい迫力のドラマです。
 

 現場での収束作業が進むにつれ、お話は事故原因の謎解きに移っていきます。日本でも伝えられた通り、発電所側が無茶な出力低下実験をやり、オペレーションミスを起こしたのが直接の原因でした。しかし、チェルノブイリでは最後のセーフティネットである緊急停止装置が効かなかった。それは何故だったのか。
 ソ連の中央、それに科学者たちは緊急停止装置の欠陥を長年隠していたのです。
 折しもチェルノブイリの所長や技師長らの裁判が開かれ、レガソフはその証言に呼ばれます。迷いに迷いましたがレガソフはKGBの意向に逆らって、法廷でそのことを告発します。


 普通にドラマとしても脚本、音楽、撮影、素晴らしすぎる作品です。
 元来 水と油の存在である、科学者のレガソフ博士や共産党幹部のシチェルビナ副首相のキャラは面白いし、その二人の間に次第に信頼関係が出来ていくところは涙なくしては見られません。

 当時のソ連共産党は今の日本政府同様 無能で嘘ばかりついていましたが、副首相自らが命に係わるレベルまで被ばくして現場で奮闘するのは明らかに日本とは違います。

 撮影もここまでやるかと思いました。
 東海村の事故で起きたように、人間は強度の被ばくをすると免疫が壊れ細胞組織が崩れ、徐々に溶けていくそうです。モルヒネも効かずひどい痛みが数週間続く。そうやって亡くなった広島の被爆者の方の写真を原爆資料館で見ましたけど、このドラマはあれを映像で再現してるんです。光をうまく使って正視に耐えられるレベルに加減はしていますけど、ここまでやるのかと思った。しかし、やらないと事故の本質はわからない。
 簡潔で迫力ある音楽もすごいです。

 それに大迫力のセット。チェルノブイリと同型で廃炉になったリトアニア原発でロケをし、CGも多用したそうです。予算もすごいんでしょう。
 欠点がないドラマ、とまで言われていますが、確かにそうかもしれません。

 チェルノブイリの事故が起きたとき 日本政府は『ソ連と日本のものとは違う』という説明をしていました。たしかにソ連原発はコストダウンのために格納容器はありませんでしたから、ボクもそう思ってました。しかし、このドラマを見てはっきりとチェルノブイリも福島も本質は一緒ということが良く判った

 チェルノブイリ事故の本質は嘘の代償』ということでした。
 欠陥を隠していたのも、事故を隠そうとしたのも、事故の被害も嘘でした。ソ連が公式の統計を取ってないのではっきりしませんが、事故の直接の犠牲者は数千から10万人近く、と言われています。副首相のシチェルビナのように数年後に亡くなった人もいますから犠牲者の数は正直 判らない。
アカデミー賞を獲ったドキュメンタリー『チェルノブイリ・ハート』で告発されたように、生まれつき奇形や病気、障害を持った子供もたくさん生まれています。放射性物質が最も多く降り注いだウクライナとベルルーシは事故から6,7年経ってから人口が急減、ともにピーク時から1割減っています(約5~600万人減)。

 ゴルバチョフ回顧録で『ソ連崩壊の原因はチェルノブイリ事故かもしれない』と述べています。『嘘の代償』はあまりにも莫大でした。
 福島だって長年 GEの原子炉の欠陥を隠していたわけです。予想される津波の大きさだって東電は都合の悪いデータを取り上げませんでした。政府や東電は原発は『絶対安全』と嘘をついていた
 チェルノブイリみたいに、いきなり炉心が爆発しなかったから良かったものの、事故の本質としては福島も同じです。福島の事故処理コストは補償まで含めた金額はいまだに公表されていません。公表できないでしょう。相変わらず政府や東電は嘘をつき続けている。

 日本でもう一回福島のような事故があったら、おしまいです。安全性の問題だけでなく、既に世界最大の国の借金を抱え、少子高齢化で今後50年は落ち目が続く日本経済にそんな余裕はない。
 どんなものにでも欠陥や人為的ミスはあるし、ましてや人間は嘘をつく存在です。そして、いざ事故が起きたら、泣こうが喚こうが、お金を払おうが権力が圧力をかけようが銃殺にしようが、コントロールできない。311で我々が体験したことを、このドラマはしっかり追体験させます。
 

 ドラマの中でレガソフは『人々は何が真実かより、誰が悪いのかばかり求めたがる』と述べています。日本人もそれと一緒、いや、真実を見ようとしないのはもっとひどいのではないでしょうか。

 チェルノブイリの事故も福島の事故も全ては嘘から始まりましたソ連の崩壊も嘘から始まったともいえる。日本の衰退も嘘から始まるのではないでしょうか。
 『チェルノブイリ』は日本のTVとは月とスッポン、1億倍は素晴らしい大傑作、必見のドラマです。
www.youtube.com