特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』

今朝は寒かった~。
よく考えれば、今年もあと3週間、稼働ベースの実質は2週間足らず。年末はなぜか出費も多い。うんざりです(泣)。

さて、デモの帰りなど、たまに遅く帰ってくると(と言っても夜9時頃ですが)、こういう風景に出くわすことがあります。

 自由が丘の駅から近く、学習塾が終わった後、塾の職員や警備員が駅まで中学生くらいの子供たちの交通整理をしていました。毎年有名校に沢山合格する、沿線では有名な塾だそうです。びっくりです。
 ボクもそれくらいの時 学習塾に通ってましたが、こんな交通整理はありませんでした。そもそも子供は人の言うことは聞かないのが普通ですよね!(笑)。勝手に余所のビルの中に入り込んだり、塀の上に登ったり、本屋で漫画を立ち読みしたり、いろいろ遊びながら帰ったことを覚えています。勿論 自動車には子供なりに注意してましたけど、信号なんか気にするわけないじゃないですか(笑)。


 でも、今は違う。子供たちは文句も言わず、大人たちの指示に従っている。塾の入り口まで迎えに来ている親も大勢いる。気持ちはわかりますけど、別に治安が危ない場所じゃありません。昔と比べて交通量が増えているわけでもない。まるで軟禁ですよ。

 日本の将来は真っ暗だなー、と思いました。これじゃあ、外国の子供たちには絶対勝てません
 フランスでもアメリカでも、先進国の子供たちは自分で考えてデモへ行くし、新興国の子供たちは日本の子供たちより遥かにたくましい。ところが、日本では自分の頭で考えるという習慣を大人たちが寄ってたかって、子供から奪っている。しかも、そのコストは塾の月謝に跳ね返っている。その一方で相対的貧困で塾にも通えない子も少なからずいる。
 愚かな善意ほど恐ろしい物はありません。自分で物事を考えられない、精神的奴隷の製造工場みたいな光景でした。これでは日本にこんな子供たち↓が増えるのは当たり前かもしれません。


と、いうことで、新宿で映画『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!
sergiosergei.com
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 1991年、冷戦時代の末期、キューバの大学教授、セルジオマルクス哲学を教えることで生計を立てていた。彼の趣味はアマチュア無線だが、夢中になって違法な周波数でアメリカ人作家ともおしゃべりをしていたために 当局から目をつけられてしまう。ある日セルジオは宇宙ステーション、ミールに長期滞在中のソ連宇宙飛行士セルゲイからの無線を受信、二人は親友になる。そんな時 ソ連が崩壊、セルゲイは予算不足から帰還の無期限延長を宣告されてしまう。

 宇宙ステーションに滞在中にソ連が崩壊、帰りのロケットの打ち上げ予算がなくなり何度も帰還が延期され、最終的にアメリカのスペースシャトルで新生ロシアに帰還した実在の宇宙飛行士、セルゲイ・クリカロフをモデルにしたキューバ映画です。


 主人公のセルジオキューバ生まれ、モスクワに留学してマルクス哲学を勉強、帰国後はアンゴラにも従軍したのち、今は大学でマルクス哲学を教えています。彼は本気で社会主義の理想を信じている。キューバの社会ではエリートと言っても良いのですが、平等主義のキューバでは大学教授や医者などのエリートと言えども豊かな暮らしはできません。妻は病気で亡くなってしまいましたが、幼い一人娘と老母との3人で、貧しいながらも楽しく暮らしています。
●セルゲイと娘。物質的にはともかく、楽しく暮らしています。 

 そこに、ソ連崩壊という事件が起こります。アメリカの経済封鎖によって締め上げられてきたキューバ経済は、ソ連からの援助に頼っていたため、セルジオたちの暮らしは一層 厳しくなります。元々バカ安の給与の遅配に加えて、出版予定だったマルクス主義に関する彼の著書もいつ出版されるか判らない有様。社会主義国キューバですら、マルクス主義は人気が無くなってしまったのです。

 ここで描かれるキューバの貧しい暮らしは驚くばかりです。とにかくビルがぼろい。車もぼろい。革命前のものばかりなんでしょうキューバはクラシック・カーの宝庫として世界中からマニアが訪れるそうです)。電気もしょっちゅう止まる。物資不足で牛乳だって滅多に手に入らない。育ち盛りの娘も空腹を訴えています。
●でも日常の足が車ではなく自転車、れるというのはうらやましいです。


 そんな暮らしですが、セルジオは倉庫で見つけた第二次大戦前の無線機を使って、アメリカ人のルポライターロン・パールマン!)と話をするのを楽しみにしています。遠い国の広い世界の話を聞けるからです。しかし、彼はポーランドユダヤ人です。第2次大戦当時 ソ連によるユダヤ人虐殺から逃れてアメリカに逃げてきた彼は、セルゲイが信じる共産主義とは絶対に相いれない。そこだけは二人にわだかまりがあります。
●相変わらず、ロン・パールマンのルックスはインパクトがありすぎます。顔が大きすぎて、着ぐるみを着ているとしか思えない(笑)。

 セルゲイはある日 たまたま宇宙ステーションに滞在しているソ連の宇宙飛行士と無線が混信、話をするようになります。折しもソ連経済は厳しい状況でセルゲイの帰還も度々延期される。彼自身も地球に残した家族の暮らしを案じているところでした。生活苦と将来への不安を抱えたセルジオも同じです。二人は意気投合します。
●予算不足で帰還が度々延期されている宇宙飛行士のセルゲイは地球に残してきた家族のことを案じています。

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 キューバから見た冷戦崩壊ということで、視線は非常にユニークです。厳しい境遇だし、人々も大きな不満を抱えています。でも、明るいんです。陽の光も明るいし、セルジオも、まあ、いいかって感じでそれほどは深刻に考えない。


 やがてセルジオアメリカ人やロシア人と無線交信していることが当局に知られ、度々呼び出しを受けます。また、無線も盗聴される。でも当局が持っているリール式の録音機(笑)はぶっ壊れるし、しょっちゅう停電で傍受もままならない。上司に忖度する担当者はセルジオを無理に罪に問うことで出世を狙っているんですが、基本的に当局自体ものんびりしています。とにかく登場人物全員がのんびりしている。この映画で最も良いのがここなんです(笑)
●当局の忖度役人はセルジオの通信を盗聴しますが、度重なる停電でうまく行きません(笑)


 少子高齢化と財政危機で、これからの日本は貧しくなっていきます。この映画で描かれたように、街には古いビルが立ち並び、明かりがつかない朽ちた看板が放置される。水道や電気などメンテがされないボロボロのインフラを騙し騙し使う世の中になるかもしれません。

 将来の我々も、90年代になっても第2次大戦当時の無線機を使っていたセルジオのように、今使っているようなスマホやPCを50年後に使っていたりするかもしれません。まあ、テクノロジーはこれくらいでも構いませんけど。今だって充分使いこなせていないわけだし。

●食うのに困ったセルゲイは悩んだ末に隣人↓の誘いで密造ラム酒の製造に手を出します。国からの給与や配給では食えないため、多くのキューバ人が副業をしているそうですが、監督もラム酒の密造で糊口をしのいだことがあるそうです。

●一方 セルゲイの教え子(右)は自由な意見を述べることができない社会に耐えかねて、アメリカへの亡命を企てます。

 世の中全体が厳しくなる時もあるし、個人として厳しい時、不遇の時もあります。月に満ち欠けがあるように、誰にでもそういうことはある。そういう時の過ごし方として、のんびり、まあいいか、と過ごすのもいいんじゃないか、と思いました。主人公たちにしてみれば必死に悩んでいるんですが(笑)、第3者的に見たら違う景色も見えるかもしれない。分単位で時間に追われるボクの普段の生活がバカバカしく見えてくる。
●それでも、みんなで踊れば、何とかなる(笑)

 地球に帰れなくなったセルゲイのために、セルジオアメリカ人ルポライターに連絡します。そこからつてをたどってNASAへ連絡。NASAはPRのためにセルゲイ救出のためのスペースシャトルを打ち上げます。アメリカのスペースシャトルで帰還したのは実際のセルゲイと同じです。
 社会主義キューバ映画なのに良く、これだけネガティヴな面も描いたな、と思いました。キューバの社会も想像以上に変わってきているのかもしれません。傑作とか良くできた作品ではありませんし、怪作の部類かもしれません。でもなんとなく好きな映画でした。

宇宙ステーションと地上との大気圏を超えた交信から始まるハートフルコメディ/映画『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』予告編

読書『貧困を救えない国 日本』と『1207再稼働反対!首相官邸前抗議』、『まともな国会運営をもとめる#1207国会前抗議』

今週は温かくなったり、寒くなったり、不安定なお天気でした。
駒沢公園の紅葉。少し前のCMで白石なんとかって女の子が歩いていた辺り(笑)です。
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 月曜日にあった今年1回目の忘年会の時、取引先の部長さんに『今年は忘年会は何回くらいあるのですか』と聞いてみたら『週3回くらい』とのことでした。他の人もそんな感じみたい。

 月3回の忘年会で怒りに身を震わしているボクからしたら信じられませんが、サラリーマンの相場はそんな感じかもしれません。勿論 頻度は業種や企業、その人の年代にもよるでしょうが、そんなペースで宴会なんかやっていれば、家事や趣味、勉強など仕事以外のことをやったり、物事を考えたりすることなんかできません。つまり、まるっきりのアホ状態になってしまいます。


今週 国会を通ってしまった、水道を民営化可能にしてしまう法案や通過目前の入管法もそのせいでもあるでしょう。忘年会のせいだ!(笑)。

 水道については老朽化したインフラの更新費用の問題はわかりますが、民営化して更新費用が解決するわけはありませんし、むしろパリ市など水道民営化の失敗例は多く聞こえてきます。

 また現場のブラック待遇を改善しないまま外国人労働者を受け入れる入管法は将来 第二の徴用工や慰安婦の問題にもなりかねない。競合する分野の日本人の給与も下がるに決まっている。
 こんな問題だらけの法律を通してしまったのは、一義的にはまともに審議をしない与党、それにくだらないニュースばかりでまともな報道をしないマスコミに罪がありますが、最も大きい原因は国民が政治に関心を持たないことです。
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 何で水道を民営化可能にするのか、なんで外国人を家族も連れてこれない奴隷状態で受け入れるのか、ボクにはさっぱり理解できませんが、理解できないのは、かっての郵政民営化もそうだし、特定秘密保護法もそうだし、共謀罪も安保法制も同じです。

勿論 法案が通ったとしてもまだ、終わりじゃありません。水道の民営化だったら地方議会からの発議が必要だし、市民にやれることはたくさんある。パリのように市長を社会党に代えて水道民営化をひっくり返すことだって出来るわけですし。

だけど、やはりこの国というか、日本人には明るい未来があまり感じられません(笑)。他人をどうこういう気はありませんが、やはり自分の頭で考えようとしないくせに、他人の足を引っ張る人ばかり、目につきますもん。権威に弱いというか、要は無責任なんですね。自分に対して。





さて、読書の感想です。
貧困を救えない国 日本

貧困を救えない国 日本 (PHP新書)

貧困を救えない国 日本 (PHP新書)

 社会政策学者の阿部彩氏とルポライター鈴木大介氏の対談本です。国立社会保障・人口問題研究所を経て首都大学東京の教授になった阿部彩氏は貧困の研究者として著名です。たまにNHKでも出てきますし、この人のことはブログでも何度か取り上げました。クールな頭脳と熱いハート(笑)を持った人です。
spyboy.hatenablog.com


 鈴木大介氏を取り上げるのは初めてですが、貧困現場を取材するルポライターとして著名な人です。TBSラジオの荻上チキの番組でも良く取り上げられています。鈴木氏原作の映画「ギャングース」を見る前に一冊、著作を読もうと思ったんです。
gangoose-movie.jp

 本の内容をアマゾンからコピペします。
日本の相対的貧困率は15.7%(2015年)にも上るが、日本には本当の貧困なんてないと言う人もいる。そんな人にこそ伝えたい現実がある。一時的にせよ「飢えた」状態に置かれてしまい、万引きをしなければ食べ物にありつけない貧困家庭の子どもは少なくないのだ。本書では、貧困問題のリアルと本質について、社会調査とデータのエキスパートと貧困家庭の現場を徹底して見聞きしてきたライターが語り合う。貧困への無理解に対抗するための本音対談。


 対談本なので、論点が拡散するところは多いのですが、ボク自身学ぶところが多い本でした。今の子供の相対的貧困率は13.7%(7人に1人)ということは判っていても、物質的な面だけでなく子供の居場所があることが重要とか、貧困に陥っている人は精神的ストレスで脳が正常に働きにくい状態になっていることがあるとか、役所の貧困対策窓口に配置されるのは専門家どころか素人の新人が多いとか、貧困対策の窓口と精神医療の連携が重要である、と言った現場ならではの話は理解できていませんでした。

 日本全体の相対的貧困率がおよそ6人に1人、15.7%もあるにも拘わらず、一部の政治家や人間は、日本には貧困がない、もしくは自己責任のように思い込んでいるんですね。対象者は1900万人もいるのに!

以前 「今や 労働者階級の下に非正規労働者+パートからなる『アンダークラス』という階級が出来ている」という橋本健二早大教授の話をご紹介しましたが、もはや格差といった生易しい状態ではなく、日本には二つの国がある状態になっているのかもしれません。良く言われる、貧困が見えない、見えにくいということは、それ以外の人々にとっては彼らの生活が想像すらできない状態になっている、ということなのですから。
『裁量労働制の拡大』と読書『新・日本の階級社会』、それに『0216再稼働反対!首相官邸前抗議』 - 特別な1日エキタスの『新宿アルタ前大街宣』と、ユーモアは病気にも差別にも負けない:映画『ビック・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』 - 特別な1日

 絶対的貧困だけでなく、他との格差によって生じる相対的貧困(日本の場合、定義は所得の中央値の半分以下。概ね月収10万以下)も社会に与えるダメージは変わりません。特に都会部で月収10万では栄養も教育も事欠くでしょう。子育てなんかとんでもない。少子高齢化とか騒いでいる割に、そういうところに対策を打とうとしない。このこと一つ取ったって、貧困を無視することは社会全体の利益にとっても有害であることが判ります。

東大で感じた「学力の差=経済力の差」 現役東大生が目指す、教育格差のない社会 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス

 尚且つ、他人を叩くことで自分の立場を正当化する人々があまりにも多い。そういう性癖は自分たちも決して豊かとはいえない、地方のマイルドヤンキー層に多いそうです。最近は地元意識が強く東京に出ることすらリスクと考えている年収300万以下の層が増えている。
 孤立をリスクと本能的に感じている彼らは身内、仲間に対しては濃厚な付き合いをするが、それ以外には超攻撃的だそうです。その矛先が貧困層に向いている。自分たちの仲間ではないからです。

 世の中が厳しくなっていった結果、そのような人たちが増えているのは、貧しかった昔の日本への先祖がえりというか、退化というか、絶望的な気持ちになります。
 でも、彼らにも一理ある。今の日本では例え高給をもらえる就職先に勤めたって、健康や事故で問題が起きれば、あっという間に奈落の底です。地元という目に見える安定にすがるのは短期的には合理的な面もある。ただし、緩やかに衰退していくんですけどね(笑)。マイルドヤンキー層は刹那的で自分が50歳を過ぎたときのことを考えていない、と鈴木大介氏は指摘しています。


 あともう一つ、鈴木大介氏が貧困を作り出す社会システムとして、『婚姻、新築の家、教育』の出費を挙げています。婚姻や新築の家、行きたくもない大学などにムリして出費させる風潮や宣伝が人々を一層貧しくしている、というのです。最近は「豪華な結婚式向けのローン」なんて馬鹿げたものがあるそうですし、大学の学費だって私立では学費だけで4年で5~600万はかかる(かといって、就職しても厳しいのですが)。大金を払ったにも関わらずブラック企業にでも就職してしまったら大変なことになります。
 それに家は大きな出費です。日本は土地が狭いということが言われていますけど、公共住宅への政府支出がヨーロッパ諸国に比べてはるかに少ないのも事実。家への出費が日本人を奴隷にしているというのは言えているかもしれない。
 貧困を作り出す社会システムの一つとしてボクはそれに加えて、コンビニやファーストフードを挙げたい。低品質だったり、身体に悪いものを高価格で売りつける、あれも貧困の罠、とボクは思っています。単価は小さいけど積み上げれば出費は小さくないはず。特に24H営業のコンビニはやり過ぎです。その無駄なコストが我々に転嫁されているだけでなく、エネルギー浪費の面からしたっておかしい。原発に反対しながらコンビニ使うなんて矛盾してるじゃないですか。


 雑駁な感想でしたけど、非常に興味深いし、他人ごとではない、という感想です。マクロで数字を押さえている阿部教授と現場を知っている鈴木大介氏の組み合わせも非常に良い。二人は相互補完しながら、実務的に問題を解決する、という共通点に立っています。現実的でなければだめなんです。
文中、二人は貧困問題を阻害する要因の一つとして『(元来 貧困問題に取り組むべき)左翼が311後 オカルト化して、ますます社会的に相手にされなくなった』という指摘をしていますが(おしどりマコのような連中です)、貧困が酷くなっているのは安倍晋三だけでなく、無能な左翼にも責任がある。
 
 最も恐ろしいのは貧困は民主主義そのものを破壊することです。民主主義は自分の頭で考えられる人々によって支えられることが前提です。でも、貧困による物理的、文化的欠乏やストレスは正常な判断力を破壊する橋本健二教授の本ではアンダークラスの人は保守指向が強いことが指摘されていましたが、トランプに投票したラストベルトの人々も同じですよね。日本も一歩一歩 自らの民主主義を破壊する道を進んでいる。既に6人に1人が相対的貧困なんですから。

 それにしても、この国には人々を貧しさに引き込む罠が広がっています。生まれた家にお金がなければ、普通に働いていても危なくてしょうがない、じゃないですか。ボクなんか、毎日が綱渡りのロープを歩いているようなものです。自分にできることは、連中の罠に陥らないよう、まず、自衛する。でもそれには限りがあることも判っている。しかし、今の政府のやってることにどうして皆、怒らないのかなあ。
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ということで、今週も官邸前へ。#金曜官邸前抗議
来週は勤務先行事の忘年会(怒)で抗議へ行けないので、今日はその分まで文句を言ってきました。午後6時の気温は15度、参加者は500人。
●抗議風景


 今週は原発関連の良いニュースがありました。
まず、三菱重工のトルコへの原発輸出がポシャったこと(笑)。


www.nikkei.com


安全対策の費用などで総工費が当初予定の2倍、5兆円に膨らみ、なおかつトルコの政情不安によるリラ安で、事業が不可能になったそうです。
バンザーイ(笑)。代わりにCO2排出量を抑える最先端の石炭火力発電所の新設などを提案するそうですが、トルコの人にとっても三菱重工にとっても、もちろん税金で穴埋めしなくて済む日本人にとっても良かったんじゃないですか(笑)。


もう一つは日立のイギリスへの原発輸出が著しい困難に直面していることを日立の社長が認めたこと。
diamond.jp


 日立はイギリスへの原発輸出は、『事業を行う英子会社ホライズン社への増資を行い、自社の持ち分比率を減らして、決算に大きな影響がない非連結子会社にすることを事業の条件』にしていました。
●2017年6月の時点で、日立は『2019年中に英原発事業を自社から切り離せなければ計画を中止する』と、投資家に約束しています。

www.nikkei.com


 既にホライズン社からは最初にアメリカ最強のゼネコン、べクテル社が逃げ出しました。その後 必死に日英両政府の融資や東電や政府系金融機関からの出資をかき集めたもののの、更にホライズン社に出資する企業が中々現れないそうです。
そりゃ、そうですよね(笑)。原発事業の採算を取るのは難しいって判ってるから政府や政府系金融機関が金を出しているのだし、日立自身だって自社の連結子会社から外そうとしているわけです。
 脳味噌がまともだったら、そこに出資するバカな民間企業が居るわけありません。そういう金があるのは中国くらいでしょう。

 現時点で撤退すると、日立には2700億円の損が発生、当期利益のかなりが吹き飛ぶそうです。勿論 東芝のように損失が1兆くらいに膨らまないだけマシなんですけど。
この記事では『日立は今後もホライズンへの出資者を探すが、国の支援拡充などウルトラCがなければ計画実行は難しそうだ』と結ばれています。
イギリスがこければ、日本の原発輸出は全滅です!(笑) もう一息!


 今日はもう一つ。『まともな国会運営をもとめる#1207国会前抗議

 昨日の木曜日も国会前で抗議行動があったのですが、ボクは木曜は金曜の分も含めて2日分 夕食を作らなければいけないのでパス。今日はその分も抗議してきました(笑)。
議席数を考えれば法案は通ってしまうにしても、黙っているわけにはいきません。組合でも市民運動(笑)でも、なんでもいいけど、こんな時に声を挙げないような連中は偽物でしょ!

 マスコミがまともに問題点を伝えないんですからしようがない、肉声とトラメガで伝えるまで! です😄。共産党小池晃氏が言ってましたが、国会内にも抗議の声は聞こえているそうです。
 木曜日の参加者は500人だったそうですが、今日は延べで1000人以上、2000人近くはいたんじゃないでしょうか(追記:主催者発表、延べ2000人)。豚議員ども、ざっけんなって!(豚さん🐷、ごめんなさい)
●抗議風景2. みんな怒ってるわ😄

www.asahi.com


[:600]

映画『ギャングース』

 街はそこいら中 イルミネーションだらけです。
 まあ、綺麗なのはいいですが、くだらないと言えばくだらない。一昔前みたいにクリスマスで大騒ぎというのが無くなったのは良かったですが、全然目出度い、なんて気持ちにはなりません。
 嫌な12月は早く過ぎてほしい、でも1月も行事が多くてうっとおしい。塹壕の中で頭を下げ、弾が通り過ぎるのを待つばかり、寒い冬の過ごし方はそんな感じです(泣)。
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丸ビルのイルミネーション

消費税の話は混乱必至・お金持ち優遇の軽減税率と言い、増税対策と言い、目を覆わんばかりです。特に増税対策は公明党が大好きな『プレミアム付き商品券』だけでなく、中小小売店でキャッシュレス決済をした人へのポイント還元率を当初予定の2%から5%に上積み、というのもひどい話です。急に言われたってシステムの改修が間に合わないんじゃないかという話もありますが、使い道もひどい。『増税分は殆ど使ってしまい、財政再建には殆ど使われない』というのです。
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toyokeizai.net

消費増税どころか『ポイント還元率を2%→5%に引上げ』が発表された際はさすがにびっくりしました。安倍晋三はそこまでして自分の地位を維持したいのかと思ったからです。それが反映された結果が上の図です。増税対策の実施期間だけとは言え、増税分は殆ど使ってしまう。それだったら消費増税なんかしなければいいじゃないですか。



ということで、日比谷で映画『ギャングース

gangoose-movie.jp

親に虐待されたり、放置されて、犯罪を犯してしまったサイケ(高杉真宙)、カズキ(加藤諒)、タケオ(渡辺大知)は、少年院で仲良くなった。彼らは出所後 住むところも身元引受人もおらず、定職に就くこともできない。そこで3人は犯罪者だけを標的に盗みを繰り返す「タタキ」稼業で生計を立てることにする。被害に遭っても表沙汰にできない盗品を盗んだり、振り込め詐欺の金を狙って危ない橋を渡るうちに、いつしか三人は後戻りできないところに足を踏み入れていた。
gangoose-movie.jp


 昨年TVドラマになった『サイタマノラッパー』シリーズや興収1位を記録した『22年目の告白』の入江悠監督の新作です。


 今回は貧困問題を専門にするルポライダー鈴木大介氏の取材をもとに、振り込め詐欺などの犯罪に走る少年たちを描いた同名漫画の映画化です。漫画の方は16巻まで刊行されてヒットしたようです。そちらはボクは全く未見。こんな絵が汚い漫画↓読めませんよ。

 漫画が原作と言っても地方の貧困や裏社会をリアルに描いた話ということで、見る前は少し気が重かった。かなり厳しい話だろうと予想したけど、普段の生活とは縁がない裏社会の話なんかわざわざ見たくないじゃないですか。一方 辛い話でも一流のエンタメに昇華させる手腕には定評がある入江悠監督ですから何とかしてくれるだろう、とも思ってました。
●主人公たち。左からカズキ(加藤諒)、サイケ(高杉真宙)、タケオ(渡辺大地)。3人は少年院で知り合いました。
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 衝撃的でした。
原作は漫画でも実際に貧困の実態にあたった鈴木大介氏の取材が元です。ほとんどの登場人物たちには実在のモデルがいる。架空の話だけど、登場人物たちは架空じゃない。

 主人公の3人の少年、サイケ(長髪の子、高杉真宙)、カズキ(デブの子、加藤諒)、タケオ(金髪の子、渡辺大知)は少年院出所後、住むところもなく定職にもつけず、東京近郊で泥棒や詐欺の上前を撥ねる『タタキ』稼業で暮らしています。彼らの感性や暮らし方は我々とはあまりにも違い過ぎる。想像をはるかに超えていた。
 例えばデブのカズキは盗みに入った事務所でお菓子を見つけて大喜びします。 犯行をしている最中にも関わらずチョコの包み紙を破って食べ始めるのです。食い意地が張っているだけか と思ったら違いました。住所不定、空き地に放置されたバスで寝泊まりしている彼らは何日間もまともな食事をとっていない、のです。ケン・ローチの名作『私はダニエル・ブレイク』でシングルマザーがやっとたどり着いた貧困者の支援施設の倉庫で缶詰を開けて手づかみで食べ始めるシーン、あれ以来の衝撃でした。

 また彼らが牛丼を食べて、思わず泣きだすシーンがあります。数か月ぶりに肉を食った、というのです。彼らにとっては1杯350円の牛丼が最高のごちそうでした。
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 これはフィクションでも遠い国の話でもない、現代の日本のリアルな話です。イギリスの労働者階級や発展途上国の飢えた人々の話ではない。橋本健二早大教授は『現代の日本には一般の労働者階級の下に、年収100万円台の『アンダークラス』という新たな階級が1000万人単位で出来ている』と言いますが、それを目の当たりにした思いです。
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 彼らは親や家族から捨てられて、身寄りもなく、行き場がない。しかも家族から虐待も受けた。少年院でも苛められた。出所後も不幸にして、公的な機関も含め、助けとなる大人たちに巡り合うことができなかった。まともに教育を受けられなかった彼らはそういうものがあることすら、知らないのです。少年たちは住所不定無職にならざるを得ません。
 
 しかも彼らにはマスコミが騒ぐ『生活保護は恥』という歪んだ自己責任観念だけは植え付けられている。もし自分がそういう境遇に置かれたらどうでしょうか?もし自分が何も知らない、今とは違う自分だったら、現代の日本で生きていくには裏稼業しかないのかもしれない と思いました。
 
 これもまた、現実の日本です。地方の貧しい若者たちを描いてきた入江悠監督が『今まで自分が敢えて見ないようにしていた部分』と言っていた部分です。
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 少年たちは振り込め詐欺の現場を探し、被害者から金を受け取る『受け子』などの後をつけて、カネの隠し場所を探します。で、夜陰、人がいなくなったところに乗じて侵入、金庫ごと盗みだします。振り込め詐欺が組織的に行われているところや『タタキ』の手口も実際のものです。

 振り込め詐欺側の事情も丁寧に描かれます。元手を出資したボス『金主』、その下に給料を払って人を集め、振り込み詐欺を組織的に行わせる詐欺店舗の『番頭』、懸命にシナリオ通りの詐欺電話をかけ続ける『掛け子』、金を受け取りに行く『受け子』、かって同種の詐欺に引っかかった騙されやすい老人の名簿を流通させる『情報屋』など様々な人間が関わっています。『受け子』や『掛け子』はバイト感覚の普通の子も多い。現在の被害金額は年間約500億だそうですが、まさに組織化された産業です。
 
 詐欺店舗の番頭(金子ノブアキ)が、若い掛け子たちに『学歴もコネも金もない俺たちには今の日本では上にのし上がるチャンスはない。日本の金融資産のほとんどは60歳以上の老人が持っている。だから俺たちを搾取する老人から、金を詐欺で奪うのは俺たちの当然の権利だ。そうやって経済を回していくのは世の中のためなんだ!』とモチベーションづけするシーンはこの映画の中の見所の一つです。ボクは納得しました(笑)。
 ボクだって相続税100%が最良の経済対策であり、格差対策だと思ってますもん。
金子ノブアキ、かっこよかったです。入江監督の映画には本当にミュージシャンが多数出演します。
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 3人の少年たちは、苦労して盗んだ金庫に金が殆ど入ってなかったり、車や偽造ナンバー、盗み道具を貸し出す『道具屋』(林遣都)に搾取されたりで、悪戦苦闘します。しかし、ふとしたことから凶暴な半グレ組織『六龍天』の名簿を手に入れたことから、タタキ稼業も軌道に乗っていきます。
●道具屋の高田(林遣都)。おっさんずラブに出ていた人ですが今回は極悪+α。


 ところがある日 強引に誘われて入ってしまったキャバクラで、かっての少年院時代の仲間に見つけられ、彼らの稼業がバレてしまいます。六龍天は対立する相手には手段を選びません。殺人でも人身売買でもなんでもやる。3人はどうしたら良いのでしょうか。
●自分も親に捨てられたキャバ嬢(山本舞香)は危険を冒して、3人に六龍天の情報を教えます。
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 この3人の少年のキャラクターには本当に感情移入できてしまう。
鈴木大介氏の取材では『本当に自分たちだけが悪くて、法を犯している子は一人も居なかった』そうです。彼らはネグレクトであったり、DVであったり、複雑な家庭環境を抱えています。炭鉱労働など親子代々、地域ごと、貧困が連鎖している例も多いそうです。助けになる大人にも巡り合えなかった。

 実際彼らのやってることは賢くないし、実際 どこかに知的障害もあるかのような描かれ方もしている。でも彼らは非合法な稼業でも、振り込み詐欺や窃盗の稼ぎを盗む『タタキ』以外はやろうとはしない。幼いなりにも彼らには倫理観がある。いつかは金をためて偽の身分証明を手に入れ、正業に就く夢を持っている。

 そして盗みに入った現場で見つけた、親に放置された女の子に自分と同じ虐待跡を見つけて、思わず連れ帰ってしまう優しさがあります。ここが原作の鈴木大介氏の想いでもあるでしょうし、入江監督のうまいところでもありますし、ドキドキハラハラのこの映画で涙がこぼれ始めた部分でもあります。今まで、まるで動物のように生存するためだけに生きてきた3人の少年たち、それに女の子が、ここから少しだけ変わっていく。
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 全編 緊張感がすごいです。ドキドキ・ハラハラの連続です。ほんと、今にも席を立ってしまいそうなくらい怖かった。ボクは怖いのはダメなんです。でも冷静に見ると、残酷なシーンは殆どありません。人身売買に、リンチに、殺人、裏でそういうことが行われているのを暗示させるシーンは山ほどありますが、直接的な描写はほとんどない。それでこれだけスリルを感じさせるのだから、見事な演出です。

3人の少年と女の子、疑似家族の物語という点では『万引き家族』にも似ています。しかし、ギャングース』はもっと差し迫った切迫感がある。必然性がある。追い詰められた子供たちだからこそ物語の納得性は高いし、切実さが募る。

 主役の3人の男の子役の俳優は良く知りませんが、みんなよかったです。3人とも最近の若手俳優にありがちな、力んでキャンキャン言わないのが良い。時折見せる彼らの笑顔が優しいことといったら!
●長髪の高杉真宙という人は元仮面ライダー加藤諒という人はバラエティにも出ているそうで、来年は『パタリロ』の実写版で主役をやるそうです。ロックバンド、黒猫チェルシー渡辺大地は売れっ子で、年初の『勝手にふるえてろ』では松岡茉優の相手役でした。
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 それに六龍天のボス(MIYAVI)、番頭(金子ノブアキ、般若)、詐欺店舗の総括(篠田麻理子)、キャバ嬢(山本舞香)なども、揃いも揃っていかにも!という感じでした。特に篠田麻理子の怪しい女役は絶品です(笑)。入江監督の作品ではおなじみの俳優やミュージシャンですが、本当に説得力のあるキャスティングでした。
 ネットで見かけた『好演している篠田麻理子や山本舞香の出番が少ないのがもったいない』という感想は同感ですが、全体的には些細な話です。ほぼ全員が好演なんだもん。
●1枚目、六龍天のボス(MIYAVI)、2枚目、店舗の総括役アゲハ(篠田麻理子)、3枚目、番頭役の般若。


 クライマックスはあっと驚く奇想天外な展開の連続です。見事な痛快エンターテイメントになっている。そしてエンディング。
 牛丼屋で『貧困なんて自己責任なんだよ。自分の努力が足りねえんじゃねーの』とTVニュースを見ながら嘯くサラリーマンに、怒ったサイケが殴りかかろうとします。だがカズキにそっと止められる。そんな店の外を何事もなかったかのように、人々が行きかっていく

 サイタマノラッパーでもそうだったのですが、まるで実在の人物のように3人の少年たちの今後が幸せであって欲しい、という気持ちに駆られました。
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 今まで自分が全く縁がなかった世界ですが、頭をぶんなぐられたような衝撃を受けました。遠い国の話のように思えるけれど、これもまた、ボクが生きている日本の現実です。
人々は分断されている。今の日本には、生活も教育も一世代や二世代では追いつけないほどの大きな差ができてしまっている。そして弱者は自分より弱い者を搾取し、格差は毎日広がっていく

 この映画は下手なドキュメンタリーより遥かに現実を伝えてくれます。描写がリアルだったり、情報量が多いだけではなく、登場人物たちに感情移入させ、ハラハラさせて、スカッとさせて、最後は穏やかなエンディングを見せてくれる。文字通り、現実に対する異議申し立ての思いが籠ったエンタメの傑作です。入江監督がここまで社会的な作品を撮るとは思わなかった。
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 時代が悪くなると、生み出される芸術作品には優れたものが多くなる、とボクは思っています。サッチャー時代のことを描いた映画やパンク・ニューウェイヴなどは正にそうです。
ギャングース』は『俺たちを止められるか』と並んで、今年の邦画ベスト1候補です。
 今年は『万引き家族』だけじゃなく、『俺たちを止められるか』、『菊とギロチン』と10年に1回くらいにしか見られないような、熱量の籠った素晴らしい邦画が続きました。それだけ今の日本が危機的なのだと思います。3人の少年たちの姿は他人事ではない。機会がありましたら、ぜひ。


映画『ギャングース』本予告