特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『デジタル小作人』と『朧月夜の筍』

 ベランダから見た夕空がきれいでした。澄んだ青色とオレンジが入り混じっているのは、寒さが緩んだ解放感と牧歌的な雰囲気が入り混じっているようにも見える。
 この歳になるまであまり気にもしなかったけど(笑)、春の宵は美しいです。

 


 岸田の 訪米に合わせてマイクロソフトが日本に2年間で4400億円、グーグルが1500億円も投資すると発表しました。昨日はオラクルが10年で1.2兆円の投資、少し前にはアマゾン(AWS)が5年で2兆円もの巨費を日本に投資する、と発表しています。

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www.jiji.com

www3.nhk.or.jp

 政府は『2030年までに対日直接投資残高を100兆円へ高めることを目標』にしています。このことについてはいずれ別の機会に書きますが、今回の巨額投資も岸田は自分の手柄にしたいのでしょう。

jp.reuters.com

 ここ数年、『デジタル小作人』という言葉を良く聞きます。アメリカの巨大IT企業に利用料を吸い取られる日本を『デジタル小作人と言うのです。

www.nikkei.com


 グーグルやアップルのスマホだけでなく、社会のデジタル化、クラウドサービスや生成AIなどの利用が進むと、GAFAを中心とするデジタル企業への利用料がかさんでいきます。しかも殆どの支払いはドル建てですから、今の円安は余計に効きます。
 数年前 ボクも勤務先の情報システムを全てAWSへ移したのですが、その時は円安がここまで酷くなることまで考えてなかった(泣)。

 日本のデジタル関連の赤字は23年に5.6兆円、という予測が出ています↓。実際 財務省が2月8日に発表した国際収支統計によるとデジタルサービスの赤字が2022年の4.8兆円から2023年には5.5兆円に膨れ上がったそうです。
 日本人は毎年 消費税2%くらいをGAFAに上納しているわけです(笑)。

 企業だけではありません。省庁や地方自治体だって、全情報システムを25年度末までに政府が作った『ガバメント・クラウド』というクラウドに移そうとしています。クラウドとは自分でコンピュータを購入するのではなく、データセンターに置かれたコンピュータを色々なユーザーが共同利用するサービスのことです。


ガバメントクラウドとは?自治体が得られるメリットや仕組みを解説|クラウドテクノロジーブログ|ソフトバンク

 ガバメント・クラウドは最初はアマゾンのAWSだけでしたが、グーグル、マイクロソフトやオラクルも対象に追加されています。日本企業も最近一社(さくら)が追加されましたが、技術的にも市場シェアでも全く問題になりません。

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 ついでに公立の小中校も生徒の出欠、成績をクラウドへ移して管理するそうです(笑)。

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 これからは日本の政府も自治体も学校も、情報システムとデータはアメリカ企業のデータセンターに置かれることになります。もともと、ウィンドウズを使っている以上 マイクロソフトの奴隷でしたが(笑)、もっと甚だしい状況になってきた。
 まあ、アメリカ軍もFBIもCIAもシステムはアマゾンやマイクロソフトクラウドの上で動いているから、日本だけの問題ではないのですが。

 60年安保の時代から今に至るまで、日本のオールド左翼の皆さん、それに三島由紀夫のような純朴な右翼(笑)はよく日本の独立とか対米自立と仰います(笑)。でも、コンピュータのこと一つとっても対米自立とか言ってもお笑い草、であることが判ります。ここまで差がついたら、どうにもならない。オールド左翼の発想は昔の日本軍と一緒で、スローガンや精神論だけで現実なんか見ちゃいない(笑)。

 先のコロナの際も政府が作ったワクチン予約システムがうまく動かず、アメリカの某IT企業がシステムをボランティアで無料提供、あっと言う間に動かしたことがありました。みっともないので流石にニュースでは流れませんでしたが(笑)、日本の実力なんて、その程度です。

 生成AIだって同じことで、全てアメリカ企業のクラウドの上で動いています。今後 生成AIが上司になったり、政治をつかさどることも充分あり得ると思いますが、AIの利用が増えればGAFAへの支払いはどんどん増えていきます。

 また、そのAIがどのような性質を持つかもブラックボックスのままです。どんなAIだって読み込ませるデータ次第で政治的バイアスがかかります。例えばチャットGPTは自由主義で左翼的、メタ(フェイスブックやインスタ)のLlamaは権威主義で右翼的だそうです↓。やろうと思えば、AIの政治的傾向は幾らでもコントロールできます。


www.technologyreview.jp
 
 ちょうど今朝 メタがそのLlamaを無償開放するというニュースが流れてましたが、おっかない話です。

www.nikkei.com


 いずれにしても(笑)日本はデジタル小作人、というのは正に正鵠を射た例えです。斎藤幸平が言うように、確かに『召使い』って言い方もある(笑)。


 余談ですが、日本がデジタルで勝てない理由として、先ほどの日経の記事は『日本は不確実性を回避する傾向がロシアなどに続いて高く、世界で2番目に完璧さを好む国だ。逆に変化を恐れない傾向が顕著だったのは北欧。デジタル競争力ランキングの上位に名を連ねる。』と、言っています。スイスの有名ビジネススクールの調査です。

 例えばフィンランドは『国を代表する製造業だった携帯大手ノキアスマートフォンとの競争に敗れると、フィンランド政府は延命ではなく創造的に「壊す」ことを選んだ。巨艦を離れた技術者の新興企業立ち上げを支援し、産業の新陳代謝有機的に起こす戦略に国が舵(かじ)を切った。

 寂れた商店街や米作に縋りつく農協を潰すことすらできない日本とは全く対照的です(笑)。
 
 ここまで来ると政府がどうの、と言うより、日本人の民度の問題のように思えます(笑)。
 一つ言えるのは具体策もなしに対米自立なんて悲憤慷慨(笑)しているようじゃどうにもならないってことです。そんなくだらないことにかまけているヒマがあったら、環境変化にどうやって対応し活用するかを考えた方が良い

 かって吉田茂が『アメリカ軍を日本の用心棒として使えばいい』と言っていたように、環境変化に応じてどうやって自国の利益を図るかという戦略的な発想は今の野党やオールド左翼にはない
 ボクは絶対反対ですが、先に挙げた対日投資残高100兆円のような戦略的な発想は自民党の一部や役所にはある。そこが与野党の差です。
 60年代末から60年間思考停止したまま、お経のように『平和』、『対米自立』と唱えるだけで具体策はない(笑)。だからダメなんですよ。国民だって、そんなバカに政権を任せようとは思わない。

 今だったら中国の脅威だけでなく、AIやデジタルの覇権を海外に握られた中で、資源もなく少子高齢化の日本がどうやって生きていくのか、そういう発想が必要です。それこそが安全保障、平和を守る事でもある。

 円安じゃ日本の経済は弱まる一方だし、いずれ安全保障だって危うくなる。ボクの勤務先の人がコペンハーゲンへ出張した際 『デンマークではなるべく石油を輸入しなくて良いようにするために都市部では多くの人が自転車移動をしている』と、驚いていました。通貨安を防ぐために、普段からそれくらいの緊張感がある訳です。

 デジタルを活用しながら、如何に効率的で高付加価値の産業を作っていくか。そのためには農業のように、農協や技能実習生頼みの旧態依然とした構造を変えなければならない産業も出てくるでしょう。ゼネコンを頂点とした建設業界もそうです。規制に守られているにもかかわらず、多くの会社が赤字になっている新聞やテレビなどマスコミも解体・再編でしょう。

 一昨日も経産省が書店の振興策を作る、なんて言ってましたが、税金の無駄でしかない。ボクは特徴があるリアル書店は残ってほしいと思うけど、経産省が何かやってうまくいくとは思えない。全国に無駄金をばらまいた商店街と一緒です。

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 これらは地方経済をどのようにしていくか、という問題でもあるし、原発の問題でもあるし、女性の社会進出の問題でもあります。摩擦は避けて通れない。
 頭の悪い奴には理解できないかもしれませんが、男女の賃金差を固定化する第3号被保険者制度や配偶者特別控除も廃止すべきです。

 その結果がこれ、なんだから。

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 そのためにはまず、政治的立場がどうより、事実を直視し、まともな議論が出来るようにならないと前へ進みません(笑)。

 産業のスクラップ&ビルドを進めて、国際競争力がある高付加価値の産業や経済を作っていくことが日本の最良の安全保障です。それこそが、本当の平和主義だと思います(笑)。


今年の桜 もそろそろ終わりです。葉桜を眺めながら、

 また、近所の和食屋へ行ってきました。料亭の菊乃井の元料理長が独立して開いた小さな店です。

 勿論 最初はシャンパン。何で店で飲むと美味しく感じるんでしょうか(笑)。

 突き出しは朝取れの筍と海鼠、こごみを木の芽で和えたもの。

 前日の朝に京都で掘った筍だそうです。

 八寸。生のホタルイカ紹興酒漬け、桜の葉を巻いた鯛寿司、カラスミを散らした菜の花、初物の枝豆、みょうがの醤油漬け、そら豆etc

 お造り。中央から時計回りに、べったら漬けのペーストを載せたヒラメ、黄身醤油を載せたマナガツオ、煎り酒と一緒に食べるホウボウ、生のホタルイカのペーストを載せたアオリイカ、北海道の毛ガニ。真ん中は新玉ねぎの酢漬け。

 お造りにはやっぱり日本酒です。日本酒はボクにはアルコール度数が高すぎるのですが、こういう時は仕方がありません(笑)。

 お椀。先ほどの筍がどっさり。上にはこごみや独活などの山菜。この時期の筍は甘いそうです。朝取りだからあくをとるための下茹でをせず、そのまま使えるから甘みが残っているそうです。春先の柔らかい穂先と違って、4月の大きな筍なんて敬遠していましたが、この筍は確かに甘かった。

 箸休めは土佐酢のゼリーを載せたタコと黒豆。

 。小田原で獲れたものだそうです。昔は立派な鰆と言えば常磐モノでしたが、原発事故以来 常磐モノという言葉は死語になってしまいました。付け合わせは筍の姫皮煮。

 中がレアなのがポイント(笑)。

 甘鯛。これも小田原で獲れたもの。珍しいそうです。この時期にも関わらず立派な甘鯛でしたが、ボクにはちょっと塩が足りなかった。下にはアスパラのペースト。

 筍と桜エビ、花山椒の炊き込みご飯。うーん、良い香りです。筍も白アスパラと同じで、元来は冬に蓄積した食べ物の解毒のために食べるんだそうです。

 お茶碗に盛ると品が良くなります(笑)。

 付け合わせは筍の土佐煮と筍のすり流し、お新香。筍のすり流しは、ポタージュみたいで美味しかった。

 最後はいつも通り、出来たてのわらび餅

 一流料亭だったら複数の料理で材料が被るのはあり得ませんが、筍もこれくらい食べると満足感があります。ボクはちょこちょこ出てくるより、ドカッと材料を味わう料理の方が好き(笑)。今回の筍は甘くて、美味しかった。

 店を出ると、暖かな春の夜、朧月夜でした。

 葉桜と朧月。今年の桜もお終いです。