特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『バーナデット ママは行方不明』

 この週末、菅直人が引退すると言っていました。デモなどで度々能天気なスピーチを聞いていると『こいつはバカ』と思っていたのですが、後継に道を譲るという点では立派です。

 ボクも歳を取ってきて特に最近は色々な人を見るけれど、やっぱり退き際には人間の本質が出ると思います。77歳の菅直人がどういう風に退くのかはまだ判らないけれど、79歳で議員にしがみついている壺の細田よりはマシ(笑)。

 衆参補選は与野党が一勝一敗という結果に終わりました。コロナ、物価高というアベノミクス負の遺産少子高齢化無為無策を続ける岸田も勘弁だけど、自民党の中もダメ、野党が代わりになる訳でもありません。
 与党の議席を減らして政治に緊張感をもたらす、が唯一の策なのでしょう。

 ただ、日本の民度の低さでは与党が勝とうが野党が勝とうが関係ない?、という気もしてきました。この記事を読んだからです。

asahi.gakujo.ne.jp

 かってアルゼンチンは一人当たりGDPが世界で4位のラテンアメリカの最富裕国でした。それが今や9回も(笑)財政破綻する国に転落した。あの国で起きたことはこう、です。

 経済は、産業の不振+労働者層優遇などのバラマキ→財政赤字→通貨安→財政破綻増税+インフレで財政再建→再分配重視→財政破綻で福祉カット→?
 政治は、ポピュリズム(ペロン主義)→軍事独裁→左派→新自由主義→左派

 というパターンが繰り返されている。80年間ずっと政情は安定しない。軍事政権下では市民への拷問、誘拐・殺人、国民の不満を逸らすための戦争もありました。
 経済がダメだと出てくるのは独裁政権ポピュリズムの二択かもしれない。どちらも最悪です。

 世界で最も政府債務が大きい日本も他人事ではありません。今はまだ貿易と投資を合わせた対外収支は黒字だけど、円安で赤字になったら大変です。既に日本の貿易収支は赤字です。

 選挙で新自由主義的な与党が勝とうが、再分配を主張する野党が勝とうが、消費税廃止のような過度なバラマキを主張していれば、また競争力のある国内産業がなければ、どちらが政権を取ろうと関係ない(笑)。
 かように日本の行く末は厳しい(笑)。


 と、いうことで、六本木で映画『バーナデット ママは行方不明

 舞台はIT企業が集まるアメリカ・シアトル。元建築家の主婦バーナデット(ケイト・ブランシェット)は、とあることからキャリアを諦め、マイクロソフトに勤める夫エルジービリー・クラダップ)と娘ビー(エマ・ネルソン)と共に幸せな日々を過ごしているように見えた。しかし彼女は大の人間嫌い、隣人やママ友たちとうまく付き合えず、トラブルを起こしてばかりいた。次第に息苦しくなってきたバーナデットは、突如家を飛び出し南極へ向かう。

 『6才のボクが、大人になるまで。』などのリチャード・リンクレイター監督がベストセラー小説を映画化。今年『TAR』で観客の度肝を抜いたオスカー俳優ケイト・ブランシェットが自ら出演を熱望したコメディです。大女優とハートウォ―ミングな作品を得意としてきた名監督とのコラボですが、中々異色な作品でもありました。

 バーナデットはシアトルに住む主婦。夫はマイクロソフトに勤めるエリート技術者で多忙を極めています。娘は賢く、可愛らしい。娘にねだられて、一家は南極大陸を巡る観光船ツアーへ出かけることになります。

 しかし、バーナデットは内心 複雑な思いです。彼女は大の人間嫌い。客船に長期間押し込められる旅行で食事やレクリエーションなどで他の乗客と付き合いを強いられるのが憂鬱なのです。

 ただでさえ、彼女は、近所や娘の学校で接しざるを得ない、いけ好かないIT成金連中との付き合いが嫌で嫌でたまりません。

 ただ嫌なだけでなく、明晰な頭脳を生かして徹底的な攻撃も加えたりするから始末が悪い(笑)。

 お話が進むにつれ、彼女は将来を嘱望された有名建築家だったがキャリアを諦めて家庭に入っていることが判ってきます。

 極端な行動で誤解を受け、周囲からは精神病扱いされるようになったバーナデットは自分が本当は何をしたいのか、判らなくなってきます。
 

 IT企業に勤めるエリート一家が舞台、ということで、やや違和感があります。

 家族旅行で南極へ出かけたり、でかい家で慈善パーティーを開いたりする暮らしは、ボクには想像できません(笑)。伝統的な金持ちと違い、会社の方向性が変わったり、自分のやりたいことが変われば、会社や職、家が頻繁に変わるのも違和感がある。新鮮と言えば新鮮ですが、こういう世界は見たことがないから嘘くさく見えなくもない。

 日本でも外資IT企業に勤めていれば転職することで給与や地位が上がっていく(下がっていく)のは当たり前ですが、その程度が違います。嫌味に感じる人も居るかもしれません。

 導入部という割には、その部分の描写が長すぎる、というのはこの映画の欠点かもしれません。
 その代わりにケイト・ブランシェットの演技、それにファッション、これはかなり楽しいです。長回しでまくしたてるのは『TAR』を思い出させますし、中産階級よりちょい上を狙ったファッションもカッコいいです。

 バーナデットがブチ切れてからのお話は結構良いです。やっとリチャード・リンクレーターらしいハートウォ―ミングな家族ものになっていきます。ただ分量的にこの部分は30分くらい?だから、あまり印象に残らないのも確か。主人公がブチ切れてからがお話の本番です(笑)。

 映画の完成度は微妙だけど大女優と名監督のコラボなので、普通に面白いです。特にリンクレーター演出の得意技、子役の子は良かった。映画が提示してくる価値観も嫌な感じはないし、ボクが知らない新鮮な世界も味わえました。南極のシーンもかなり良いです。
 と、同時に西海岸のITエリートの暮らしぶりをみていると、日本はどんどん貧しい国になっているのも実感しました(笑)。


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