特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『私にふさわしいホテル』

 あああ、楽しかったお正月休みも終わってしまいました。
 嫌々会社へ行ったら、アホの将軍様がミサイル撃ってました。食い物もないのによくやるよ。

 だけど、ちょっと前まで『Jアラート』とか馬鹿みたいに騒いでた日本も、北の将軍様のことを言ってる場合じゃないんですがね。

 楽しいことが過ぎるのはあっと言う間です。もう何年か仕事を我慢してリタイアできたら『人生はさぞや素晴らしい』と感じられると思うのですが、実際はどうなんでしょうか。

 仕事より人間関係というものが嫌なんですよね。幸いボクの場合、誰が嫌いとかいうことではないけれど、それでも人間と関わるだけで疲れる。混んだ電車も嫌、街の人ごみも嫌。届いた年賀状だって普段の嫌なことを思い出すから見たくもない。

 ストレスがたまる都会を離れて、残された人生を人里離れた山の中で暮らしてみたらどうなんだろう、って思わないでもありません。ネットがあって宅急便が届く程度の田舎なら文化的な生活も何とかなる。ただ、寒いのは嫌なんですが(笑)。


 と、いうことで、何となく新年らしい(笑)おめでたい映画です。
 新宿で映画『私にふさわしいホテル



 舞台は80年代、新人賞を受賞したものの大御所作家、東十条(滝藤賢一)に酷評され、小説発表の場すら得られなくなった新人作家・加代子(のん)。未だに小説家気取りの彼女は文豪御用達の憧れのホテル、「山の上ホテル」に宿泊した際、部屋の上階に東十条が泊まっていることを知る。彼女は大学の文学サークルの先輩である編集者(田中圭)、遠藤の助けを借り、東十条の執筆を邪魔して雑誌の締め切りに原稿を落とさせ、代わりに自分の作品をねじこむことに成功する。そこから現在に至るまで加代子と東十条の醜い戦い(笑)が始まる。

watahote-movie.com

 同名小説の実写映画です。監督は『SPEC』シリーズなどの堤幸彦、主人公はご存じのんちゃん。編集者の遠藤を田中圭、大物作家の東十条は滝藤賢一、他には田中みな実、髙石あかり、橋本愛

 普段だったら見ないタイプの映画ですが、のんちゃんが出てるから、やっぱり気になります(笑)。

 相手役の田中圭と言う俳優は名前は聞いたことがあるけど顔は知りません。ボクのいるマンションに住んでいると聞いたので顔を見てみようと思いました(笑)。

 それに昨年テレ東でドラマ化までされた映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの主人公、脱力系の女子高生殺し屋を演じた高石あかり(今年後半のNHK朝ドラ『ばけばけ』の主演が決まったそうです)、

 それに橋本愛ちゃんも出ている。


 舞台は最近閉館したばかり、作家の川端康成池波正太郎らが使っていたことで有名な御茶ノ水の「山の上ホテル」です。最後の撮影なんでしょう。
 泊まったことはありませんが、雰囲気も食べ物もクラシックで良いホテルでした。

 映画の前半はテレビドラマのようなドダバタ劇で、のんちゃんが出てなかったら途中で席を立ったかもしれません。滝藤賢一の文豪役、というのも流石に現実味がない。

 演出は問題ある、と思いながらも、のんちゃんの千変万化の演技やファッションは結構楽しい(笑)。特にボコボコに相手を殴ってるところはマジで楽しそうでした(笑)。

 中盤から話は段々深く、面白くなってきます。主人公をサポートしていたイケメン編集者(田中圭)に『(女性に親切にしているのは)自分が優位に立ちたいだけなんだろう』と主人公が啖呵を切るところなんか、かなり鋭い。のんちゃんを起用した甲斐があるってなものです。

 段々、山の上ホテルはどうでも良くなってきます(笑)。

 本人も判ってやってるんでしょうけど、田中みな実のホステス役というのも似合ってます。うまい、怖い(笑)。銀座の飲み屋なんて知りませんけどね(笑)。

 文学界の事情が実際にこんな感じなのかは知りませんが、出版不況や商業主義、それに権威にヘイコラする保守的なところ、

 そんなバカ男達のマスタベーション社会に立ち向かうシスターフッドまで描かれます。
 最初は??でしたが、最後はちょっと感心しました。

 のんちゃんの演じる主人公は性格悪いというか、他人に関係なく、自分の思うがままに生きている人間です。近くに居たら嫌ですが(笑)、傍目でみる人物像としてはかなり興味深い。ここまで振り切れていれば、さすがに痛快です。

 演技がうまいのか、なりきっているのか、地なのか判りませんが、この人が全部持っていきます。怪優だな(笑)。というか、演出でこの人が生きています。主人公の二面性が良く表現されています。
 声だけのこの世界の片隅にを別にすれば、のんちゃんが今までに出演した映画ではピカイチじゃないですか。

 と、いうことで、粗がない訳じゃありませんがお正月にふさわしい、痛快な映画でした。映画というか『のんちゃん映画』です。


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