特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『汚染水の放出』と映画『一秒先の彼』

 汚染水の放出で中国から猛反発が来ているようですけど、中国の意図はこれ↓だと思いますね。

 その証拠に中国・北朝鮮以外の国からは汚染水の放出の抗議は来ていない。やっぱり抗議は意図的な物だと思います。

 しかし、汚染水放出がそのままで良いか、というとそんなことはない。意図的だとしても抗議が来ることは容易に予想されるのだから、問題点や疑問点はつぶしておかなければいけないでしょう。余程のバカでなければ(笑)。

 まず、トリチウム以外の核種で汚染されたままの約7割の水を『計画通り』2次処理することを誰が保証するのか?放出を続ける30年間誰がモニタリングし続けるのか?。中国政府じゃなくたって、誰だってそう思うでしょう。



 また、折悪くも9月は中国で反日機運が高まる記念日が2つもある。一つは9月3日の日本がポツダム宣言に調印した日(抗日戦争勝利記念日)、もう一つは9月18日の満州事変が始まった日

 なぜこの時期にわざわざ、汚染水の放出なんかするのか。ボクの勤務先でもそうですが、駐在している人は危なくて、お酒を飲みに行くことすらできません。未確認ですが、税関で嫌がらせが始まっているという現地情報すら、ある。
 役人風情が現地にいる人に『日本語で大声で話すな』なんて注意喚起するくらいなら、自分たちが原因を作らないように配慮することが先、でしょう。

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 このこと一つとっても日本政府の発想は内向き、対外的なことは極めて意識が薄いのがよく判ります。発想が内向きなのは自分たちの意見に固執して国民のニーズには関心が薄い共産党社民党も全く同じ、ではありますけど(笑)。

 日本の政府は国民にまともな説明もせず、決めたことを押し付ける権威主義的な政権であるだけではありません。
 無能、です。

 政治家の能力不足は野党も変わりはないとは思いますが、無能な政治家の尻を叩いて切磋琢磨させる構造(与野党伯仲)が必要であることは間違いありません。


 と、いうことで、新宿で映画『1秒先の彼

 京都の郵便局の窓口で働くハジメ岡田将生)は何をするにも人よりワンテンポ早く、相手から告白されても「イケメンなのになんか残念」と常にフラれてしまう。ある日、街中で路上ミュージシャン・桜子(福室莉音)に惹(ひ)かれて恋に落ち、宇治の花火大会デートの約束を取り付ける。ところが目覚めると、なぜかデートの翌日になっていた。

bitters.co.jp

 邦画の恋愛ものは、普通は完全無視です(笑)。
 が、この映画は公開されて数週間経ってから、傑作だった2年前の台湾映画『1秒先の彼女』のリメイク版で、監督は『もらとりあむタマ子』の山下敦弘、脚本は宮藤官九郎と聞いて、慌てて見に行きました。危うく見逃してしまうところでした。

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 主演は『ドライブ・マイ・カー』の岡田将生と清原果耶、荒川良々羽野晶紀加藤雅也などが脇を固めています。ちなみに山下敦弘宮藤官九郎も台湾のチェン・ユーシュン(陳玉勳)監督の『1秒先の彼女』が大好きだそうです。好みが合う(笑)。

spyboy.hatenablog.com

 郵便局の窓口で働くハジメはせっかちで人よりいつも、ワンテンポ早い。子供の時から周りといまいち上手くやっていけない。

 ある日彼は鴨川の河原で歌うストリートミュージシャンの桜子に惹かれます。

 一方 郵便局の窓口で働くハジメのもとにはカメラを抱えた地味な女の子、レイカ(清原果耶)が毎日1枚だけ切手を買いにやってきます。彼女はなにやら訳ありげですが、桜子に夢中なハジメは気にも留めません。

 ハジメは苦心惨憺してデートの約束を取り付け、有頂天になります。しかしハジメが目を覚ますと、既にデートの翌日になっていました。何故か日焼けしているし、街の写真屋の店頭には見覚えのない自分の写真が飾られている。一体何があったのでしょう。

 主人公が女性から男性に、舞台が京都に置き換わりましたが、お話は原作をかなり忠実になぞっています。舞台を京都にしたのは大正解。原作をなぞったお話に京都という独特な空気が加わることで、また違う映画に生まれ変わったといえるでしょう。

 岡田将生と清原果耶はすごくいい感じです。特に清原果耶はそのイノセンスさが主人公にぴったりで、良い所を全部持って行った。それだけの説得力もあった。
 作品に流れる宮藤官九郎独特の脱力感も健在です。荒川良々羽野晶紀などの脇役が微妙な脱力感がいい感じを醸し出しています。バスの運転手役の荒川良々は今作で運転するために大型免許を取ったそうです。

 しかし、よく考えるとオリジナルも脱力感が絶妙な映画でした。想像もしてなかったけど元々宮藤官九郎と非常に相性が良いお話だったのでしょう。

 単にお話だけでなく、「社会」や「普通」の枠からちょっとはみ出してしまう人々に温かな眼差しを向けているのは原作と共通しています。だからボクは好きなんです。
 それに、劇的な事件に見舞われた人々に着目する作品は数あれど、世の中に一番多いであろう『ちょっとはみ出した』人々に目を向ける邦画って滅多にないと思うんですよね。
 やっぱり作る側の気持ちの温かさ、心の豊かさがあってこそ、とは思います。

 平安神宮の真ん前など、観光客だらけの京都でよくロケができた、と思ったのですが、コロナ禍で観光客がいないために当局の許可が降りたそうです。まさに一期一会。

 それに天橋立京都市内との微妙な距離感も原作をうまく生かした、と思った。

 脱力した空気の中で(笑)、人間のイノセンスを称え、それを信じる原作の精神は見事に生かされています。原作の主題歌、名曲『Lost And Found』が度々インストで流れるのも原作へのリスペクトが感じられて、ボクは心地よかった。

 往々にして邦画には作者の心性が貧しい、と感じることも多いのですが、原作の中に流れるハートの温かさはきっちり受け継いだ、このリメイク版もボクは大好きです。見れば幸せな2時間が約束される、そんな映画です。


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