特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『0310原発ゼロ☆国会前大集会』と映画『女王陛下のお気に入り』

 そっか~。 今年で8回目の311なんですね。
 もちろん3月11日という日はこれまでも2000回以上あったわけですけど(笑)、2011年以来 311という意味が変わってしまいました。
先週末のTBS報道特集はいつもにも増して力作でした。
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 各地に残っている放射性汚染物を含む土の問題を1時間取り上げたのですが、確かに大きな問題です。どこかに置かなくてはならないし、かといって誰だって近くに置かれても困ります。国が安全性を保障して地域を説得していくしかないのですが(そのために国がある)、責任を取りたくない国・官僚はうやむやにしたままです。
安全だというのなら、汚染土を東京オリンピックの工事や東電や経産省の敷地に使えばいいと思いますが、それすらしないのですから、住民からは信用できないと思われて当然です。

 廃炉作業や除染が続く限り汚染物質は依然増え続けているのをボクもすっかり忘れていました。誰もが満足する解決はあり得ませんが、東電や経産省、政治家など責任者連中は今ものうのうとしている。その一方で避難したままの人がまだ5万人もいるし、避難してなくても生活を破壊されてしまった人たちもいる。責任者が責任を放棄し、下々の国民にツケを回す、この国の醜い悪癖はどこまで続くのでしょうか。


日曜日は国会前へ行ってきました。『0310原発ゼロ☆国会前大集会』

連中がうやむやにしようとしているのは放射性汚染物だけでなく、いまだに原発を再稼働させようというのですからふざけた話です。


 政治家のスピーチとかは興味ありませんでしたが、誰かが『街頭で声を挙げることも政治家に働きかけることも、色々なことをやっていかなければならない』と言っていたのはその通りだと思いました。多くの人は原発に対して拒否感を持っているのだから、面倒でもそれを可視化しておくことは大事です。黙っていたら、この国の権力者には無視されるだけなのですから。
●政治家。順に菅直人阿部知子衆院議員(立憲民主)、共産党の吉良ちゃん、大河原雅子衆院議員(立憲民主)

●台湾の女の子たち


香山リカ立教大教授、西谷修東大名誉教授

 今日の参加者は2800人。ボクはデモなどで自分の声を挙げる方が好きで、独りよがりのスピーチとかが多い集会とかは嫌いですが、この日はそんなに嫌じゃなかった(笑)。つまんない団体やプロ市民運動ではなく、個人の立場で話している人ばかりだったからでしょう。

 この日は、先日行われた『今後の官邸前の活動をどうすべきか』というアンケートの結果が発表されました。金曜官邸前抗議も資金や参加者数の問題もあり、今後の活動方針についてアンケートが行われたのです。回答は400通。普段 官邸前に来ている人は500人くらいですから、殆どの人がアンケートに答えたことになります。
ボクは『抗議を続けて場を温めておくことが大事なので、無理ぜず月1回くらいでいいかも』と回答したんですけど(笑)、圧倒的多数で、金曜官邸前抗議は少なくとも(資金が続く)20年の12月末までは続けることも発表されました(笑)。

this.kiji.is


ということで、渋谷で『女王陛下のお気に入り
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舞台は18世紀の初頭。イギリス、アン女王の時代。イギリスはフランスとスペイン継承戦争を戦っていたが、女王(オリヴィア・コールマン)は肥満体で体も弱く、政治に興味を失っていた。女王は幼馴染のレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)と同性愛の関係にあり、政治も私生活も彼女に従っていた。そんなある日、宮中にサラの遠縁の貧しい娘、アビゲイルエマ・ストーン)がやってくる。

●イギリス版『大奥』。ハイセンスで豪華絢爛、ブラックで悪意に満ちた(笑)宮廷コメディです。
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 ベネチア映画祭で銀賞、アカデミー賞でも主演女優賞を獲得した作品です。この映画を撮ったヨルゴス・ランティモス監督は『ロブスター』や『聖なる鹿殺し』などの作品で有名です。『ロブスター』はボクも見たのですが、男女が期限内にカップルにならなければ動物にされてしまうという奇妙なお話しで、狙ってるんでしょうけど、ボクは面白くなかった。人間に対する悪意に満ちた作風(笑)が特徴です。
 

 この作品ではその悪意が良い方に出ています。宮廷での権力争いを描いた映画です。昼でも暗い古い宮殿の中で、召使同士の諍い、男性、女性を問わずの権力争いが描かれる。
 その中央に鎮座しているのがアン女王。夫、愛人(男です)、それに17人!もの子供を亡くしました。今は子供の名前をつけたウサギを宮廷内で飼うこと、そして同性愛で心を慰めている。肥満体で一人でまともに歩くことも出来ない。フランスとの戦争の真っ最中だと言うのに政治にも興味がない。もちろん国民の生活にも興味がない。ある意味 不気味な存在でもあります。
●アン王女。肥満体で虚弱、政治に興味がなく同性愛。ウサギを飼うことと愛人に心と身体を慰めてもらうことにしか興味がありません。
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 その中で女王を操っているのがレディ・サラ。当時 フランスに派遣されていた英軍の司令官、モールバラ公の奥さんです。レイチェル・ワイズ様が演じるサラは、時にはパンツ姿で射撃に興じる、ある意味男勝りの存在として描かれています。女王とは同性愛関係で私的な面でも公的な面でも実権を握っています。
●レディ・サラ(左)とアン女王。ひざまづいているレディ・サラが政治も私生活もアン女王を支配しています。いわゆる完全な『タチ』役です。
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 ちなみにモールバラ公の本名はジョン・チャーチル。第二次大戦当時の首相チャーチルやダイアナ妃のご先祖様です。歴史では救国の英雄とされていますが、こんな奥さんがいたとは知りませんでした。この映画、衣装などではずいぶん脚色がなされているようですが、起きたことはほぼ史実に基づいています。不気味だが豪華絢爛な時代劇、という側面もあります。
レイチェル・ワイズ。相変らず、お美しい!素敵です。
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 そこに没落した貴族の娘、アビゲイルエマ・ストーン)が宮廷に入り込んできます。サラにとって遠縁の彼女は、最初は召使の間でも苛められますが、持ち前の才覚でのし上がっていく。最初はサラに気に入られ、やがてサラが女王を操っていることに気が付くと、そのやり方を学んで女王を操るようになります。
エマ・ストーンも適役です。一見可哀そうに見える娘ですが、タダでは転びません。
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 周りを取り巻く男たちは徹底的に無能。でかいカツラを被って、白粉を塗り、モノの役に立たない。フランスとの大戦争をやっているというのにアヒルレースと権力争いにうつつを抜かしています。あ、陰険さだけは一人前です。
●戦争反対の野党の党首。アビゲイルと手を結びます。せっかくの美青年、ニコラス・ホルト君なんですが(笑)
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 レイチェル・ワイズエマ・ストーン、二人のアカデミー賞女優が丁々発止と火花を散らす演技合戦は面白いです。そして、我儘でバカにしか見えなかった女王(アン・コールマン)が最後の最後に見せる本当の姿。映画は登場人物すべてに辛辣な、皮肉っぽい視線を向けている。
 この作品の場合、そこが良いんです。結構 えぐい描写もあるんですが、一歩退いて描いているから下品にならない。怖い話ではあるんですが、見ていてきつくなりません。笑えます。全編 薄暗い宮殿(本物)が舞台になっているのもゴージャスです。すべて魚眼レンズで撮られたという映像も独特です。豪華な空間を独特な美しさでとらえています。音楽や映画の章立てもセンスあります。


 本当に超素晴らしかった『天才作家の妻』のグレン・クローズを押しのけて、アン・コールマンがアカデミー主演女優賞を取ったのは??とは思いましたけど、非常に面白い作品であることは間違いありません。
知的で上品、そして下衆さが見事にミックスされている(笑)。豪華絢爛な時代劇(画面は豪華ですが、実際の城を使って尚且つ照明を使わなかったので、実際は低予算)、娯楽作品として、ボクは本当に面白かったです。

『女王陛下のお気に入り』日本版予告編