特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『海を見ていた午後』(読書『日本人の勝算』)と『0315再稼働反対!首相官邸前抗議』

 異動の季節です。必ずしも自分が異動しなくても、自分の周囲、同僚や取引先、プライベートでも友達や友達の友達(笑)まで異動や退職したりします。昨日は顔なじみのスーパーの店員さんにまで異動の挨拶をされました。
 誰に対しても『今までありがとうございました。これからも頑張ってください。』と言う言葉しか、かけようがないんですが、こちらまでセンチメンタルな気持ちになります。いかにも春、の光景です。それより安倍晋三をはじめ、為政者の顔ぶれが変わってくれないかなー。
●今週 河津桜と梅のアーチが出来ていました
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 そういう、せわしい日常が嫌になって(笑)、熱海の方へ行ってきました。
 一時期 熱海は文字通りゴーストタウン化していました。昔は団体旅行、大規模ホテルのメッカだったそうですが、今どき団体旅行なんかありえない(笑)。ボクは絶対に嫌です。1983年度には205軒あったホテル・旅館は2015年度には116軒にまで減ったそうです。
toyokeizai.net

今も熱海の一等地?『お宮の松』の辺りはこんな光景が残っています。

 が、近年は少しずつ復活の兆しが見えているそうです。実家が熱海で旅館をやっている友人に聞くと、理由の一つは 再開発されないまま放置されていた土地を中国資本が買いとっていること、もう一つの理由は 箱根の噴火があって以来、箱根の客が熱海の方へ回ってきていること だそうです。
 そんなこともあって、最近は小さくても料理や景色に特徴があるホテルもできているので、ちょっと出かけてきました。東京から新幹線でたった40分です。

 と言っても、名所や観光地などは全く興味ないので、午後に宿に着いてからずっと海を見ながら、寝転がって本を読んでいました。ボクのいつものパターンですが(笑)、刻々と変わっていく海と空の色を見ているのは全然飽きません。

●夜になると天城のイノシシがお皿の上に載って出てきました


 平日だったせいもありますが、10部屋もない小さい宿の客は約半分がおひとりさまの女性だったのが衝撃的でした。あとは外人。いつも書いている話ですが、日本で文化を享受しようとしているのは女性ばかりですよね。食い物だけが文化じゃありませんが、これじゃあ、日本の先行きは暗いに決まってます。

●夜明けの海。
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●まさに春の海という感じでした。


 海を見ながら 読んでいたのがこの本、『日本人の勝算

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

 著者はオックスフォードで日本学を専攻後、ゴールドマン・サックスの金融調査室長。アナリストとして日本のバブル崩壊を早くから予想して話題になりました。その後 マネーゲームを反省し(笑)、日本で国宝、美術工芸品の修理を専門にする小西工藝社に入社、その後 社長に就任。観たことありませんがTVなどでコメンテイタ―もする傍ら、2017年には政府観光局の特別顧問を務めています。

この本の要旨は明快です。
1.人口減少と少子高齢化で日本経済の将来は真っ暗である。
 経済=人口×生産性の掛け算であり、年間数十万人単位で人口が減り、なおかつ高齢化が進む日本が今後も右肩上がりの経済を目指すのは難しい。かっての日本経済の高度成長も多くは人口増によるものだった。今後は生産性を上げていくしか伸び代はない。

2.日本は高生産性・高所得経済を目指していくべき。
 日本経済が右肩上がりの成長をするのはムリだが、経済の規模を維持しつつ『質』を上げていくことを目指すべき。日本経済が縮小したら借金だけでなく、医療費も介護費用も払えなくなる。『良い物を安く』ではなく『良い物を高く』で行くしかない。日本は直ぐアメリカの真似をしようとするが、アメリカは先進国の中では珍しい人口増加国であり『量』の国。単純に真似をするのは間違い。このままでは日本は三流国になり下がる。既に労働者一人当たりの生産性では世界で28位。イタリア、スペインより低い。

3.まず日本は輸出増加を目指すべき。
 日本は他国に比べて輸出比率が低い国であり、まだまだ輸出できるものはあるはずである。日本独自のものを他国に通じるような工夫をすればよい。あとは意欲と能力の問題。インバウンド需要が増えている観光業がその好例である。

4.企業規模を拡大するべき。
 企業規模と労働者の生産性は相関関係があり、中小企業は一人あたりの労働生産性は低い。一方 日本は従来の保護政策や規制のせいで中小企業の比率が世界でも高く、それが日本全体の生産性の足を引っ張っている。今後 ゾンビ企業の退出と中小企業の統合を目指していくべき。人口が減る日本で企業数が減るのは仕方がない。中小企業が減ると言っても減るのは社長だけで、労働者は統合された企業で働けばよい。規模の大きい企業なら生産性も高く、労働者の給料も上げられる。

5.最低賃金を上げるべき。
 日本の労働者の質は国際的には高く評価されている。なのに生産性が低いのは経営者の能力が低いから。かといって市場原理に任せていては彼らは改善しない。先進国の中では低いレベルの最低賃金を全国一律に上げれば、ダメ経営者にプレッシャーを与えることが出来ると同時に、所得格差、女性差別を改善することができる。日本は労働者の質は高いのに給料は安い、『労働者搾取資本主義』である。

6.人材育成トレーニングを強制的に行うべき。
 経営・技術レベルを上げるための教育を国が音頭を取って強制的に行うべき。他国に比べてレベルが低い者が多い経営者だけでなく、労働者も新しい技術を身につけていかなければ高生産性など望めない。若い人たちだけでなく少子高齢化が進むのだから高齢者も学び続けることが必要である。また民間に任せておけば格差が広がるだけなので、イギリスのように教育費用を大企業から徴収する等、国が強制的にトレーニングを行うことが必要である。人材育成は日本にとって最も重要な『投資』である。



 一見乱暴に見える意見かもしれませんが、著者はいちいちデータを上げて論考しています。どの項目にも、ちゃんと根拠があります。論理的です。
 特に『最低賃金を上げると失業が増えるなんて嘘っぱち』というのはもっと良く知られて良い。ニュースを見ていれば判るはずです。今 NYなどアメリカ各地で最低賃金を15ドルに上げてますけど、失業率なんかぜーんぜん上がっていません(笑)。本文中では韓国の失敗例も挙げてますけど、あれはいきなり2ケタも上げるなんてバカなことをしたのが悪いんです。何事も適度な速度というものがありますからね。
●反対意見として面白かったので挙げておきます。ただし、論者のみずほ銀行のアナリストは無能な経営者の淘汰と賃上げによる地方の需要増を考慮していません。落第です(笑)。
diamond.jp

 
 必ずしもいつもそうではありませんが、この本での著者の意見にはボクはもろ手を挙げて賛成です。実際はどうやって育成トレーニングをするのかとは思いましたが、大筋は賛成。

 このままアベノミクスなんて呑気なことをやっていれば日本は将来 三流国、四流国になり下がります。別に成り下がっても良いけど食料や資源の輸入が差支えたり、医療や介護の費用が払えなくなるのは困ります。

 それだったら予想される経済の縮小を軟着陸させることを考えるしかありませんが、そのためには生産性を上げていくことが必要です。日本の生産性の低さは政府ですら指摘していますけど、その原因は『経営者と役人、政治家がバカだから』です。あ、賃上げは言うけど、ただそれだけで現実的かつ論理的な論拠を言えない野党や左翼も大バカ、だと思う。無責任というか、逆に足を引っ張っている。


政府は日本企業の問題は利益率が低いと言ってますが、それはビジネスモデルの問題。人、モノ、カネなど経営資源を組み合わせてビジネスモデルを造るのは経営者の責任です。しかもそれを規制や忖度で役人や政治家が足を引っ張っている。働き方改革』とか言ってますけど、労働者より、経営者のケツを蹴っ飛ばすことの方が先決の筈。

 日本人は弱者に冷たい割に、『下町ロケット』?など判官びいきで中小企業が大好きですが、労働者にきちんとした給料を払えない中小企業なんて潰れた方がいいんです。公害を垂れ流したり、脱税と同じで、最低賃金を払えないような企業は社会的責任を果たしてないんです。そんな企業の経営者なんか犯罪者ですよ。

 最低賃金を上げて経営者にプレッシャーを与える。払えないような経営者は無能なんだから市場から退場させていく、その繰り返しでしか日本経済は復活しません。しかも最低賃金を上げれば格差対策、女性差別対策にもなる。

 元ゴールドマン・サックスの著者と意見がこれだけ一致するというのも自分では複雑な気がするんですが(笑)、日本の活路、方向性はこれしかないと思います。とりあえず、最低賃金を1300~1400円くらいまでゆっくりと上げていくこと。とにかく、この本に書かれているようなことを多くの人がもっと議論していけばよいと思います。

 それより電気グルーヴが発売中止になるならストーンズなんかどうすんだよ、ボウイやクラプトンもニール・ヤングも発売禁止にするのかよ(笑)。この国はマジで頭おかしい。
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と、いうことで、今週も官邸前抗議へ。#金曜官邸前抗議
今日の午後6時の気温は12度、参加者は350人。
●抗議風景


 311関連、原発の裁判などの話題は他の人が書くでしょうから、ボクは他の事を書きます(笑)。日経デジタル・日経産業に載っていた、日本製鋼所という会社の社長インタビューがかなり面白かったです。
www.nikkei.com

 この会社は原発の圧力容器を作っていて、90年代は世界の7~8割のシェアを持っていたそうです。すごい。ところが、311以降 原発需要は壊滅(笑)。現在は中国の原発新設とフランスの売上が若干あるだけで、往時は売上全体の2割あった原発関連は今は全体の2%しかないそうです。17年まで赤字経営に陥っていました。何とか他の分野に進出して経営を立て直した社長は原発についてこんなことを言っています。原子力の復活はない、という経営判断』をした、と。

 圧力容器だけは中国も作れないというのは驚きでしたが、それも時間の問題のようです。この会社の役員の佐藤氏はこう言っています。

 日本の産業全体を象徴しているような話ではあります。が、少なくとも原子力には明日がない。政治家や官僚、東電が何を言おうと『現場ではもう、誰もが判っている』ことのようです。