特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

複雑さに『耐える』:★1101 再稼働反対!首相官邸前抗議!

山本太郎園遊会天皇に手紙を手渡ししたことが騒ぎになっている。確かに礼儀としてはどうかと思うし、幼稚な行動ではある。けれど誰かを傷つけたりしたわけでもなし、それほど大騒ぎする問題だろうか? 天皇の政治利用だという話はあるが、手紙の内容がフクイチで働いている人のことなら政治とは関係ない。むしろ、主権回復式典やオリンピック招致に皇族を担ぎ出したことのほうがよほど露骨な政治利用ではないか。
下村と言う文科相山本太郎を『(明治天皇足尾銅山鉱毒を直訴した)田中正造に匹敵する』と言って非難しているらしい。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131101/edc13110110070000-n1.htm
田中正造って、文字通り日本史に光り輝く偉人だろう。そんなに山本太郎を絶賛してどうするんだよ(笑)!


                                                 
ちょうど昨日、ネット版の日経ビジネスでこんな記事を見かけた。

新潟県にかつて巻町という町があった(現在は新潟市の一部)。ここは日本で初めて、住民投票によって「我が町に原発は不要」という決断を下した町だ。
当初は、町長や議員の反対にあって、原発の賛否を問う住民投票ができなかった。そこで、95年2月に住民団体が手作りで住民投票をやった。勝手に投票箱を作り、住民だけで民意を問うたのである。その結果、投票率は45%に上り、その有権者の43%が、原発建設反対に票を投じた。これが契機となって、反対運動に火が付き、賛成派の町長のリコールなどを経て、ついに正式な住民投票を行った。投票率は89%にも及び、反対派が61%を占めた。その結果、ついに町は原発建設をやめると決めたのである。
これが日本初の住民投票の誕生の物語である。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131029/255224/?P=3&mds

このことについては、A0153さんから頂いたコメント返しで触れたことがあるが、ちょっと自分の体験を書いてみる。
                  
95年だか、96年だったか、巻町で原発の賛否を問う住民投票をやるかどうかが焦点になっていた。決定者は町長。そのとき、ネットでグリーンピースが『今度の月曜に実施の有無がきまるので巻町の町長宛にメールを送ろう』という呼びかけをやっていた。土曜日にそれを見て、ボクもメールを送った。組織に関わるのは嫌だけど、冷静に文章を書くことならボクにもできる。中身の細かいことは忘れたけど、『原発は今 町に住んでいる人たちだけでなく、子どもたちの運命にも関わることだ。ひとたび事故が起これば、子どもたちや、これから子どもが生まれる若い人にまで影響を与える。見ず知らずの都会の人間が言うのは生意気だけど、せめて住民投票をやって住人の本当の気持ちを確認したほうが良いのではないか』ということを書いたと思う。もちろん他人に対する礼儀として、実名で、丁寧な表現で。このブログとはちょっと違います(笑)。
                                
週が明けて月曜、町長は住民投票を実施することを決断した。嬉しかったな。そのあと原発の建設が止まったのは上の記事の通りだ。地方紙によると住民投票の実施を発表する際 町長はこんなことを言っていたそうだ。『この週末、全国から50通くらいメールが届いた。それを読みながら良く考えてみた。』
今ほどネットが広がってない時期だからメールがもの珍しかったせいもあるし、何よりも町長さんは見識がある人だった。だから、こんなやり方が常に通用するとは思わない。だけど、各自がやれることをやっていけば出来ることがある、というのはボクの中に体験として残った。

                                                      
同じく昨日の朝日朝刊の言論面は大変充実していた。右半分を占める『論壇時評』という記事では作家の高橋源一郎美智子皇后が講演で述べた、ある言葉に感動したことを書いていた。彼女はこう言ったそうだ。『読書は人生のすべてが、決して単純でないことを教えてくれた。私たちは複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人との関係においても、国と国との関係においても』。
http://www.asahi.com/articles/TKY201310300733.html
税金がもったいないと思うのでボクは天皇制はきらいだし、皇后がそんなことを言ったのも全然知らなかったけど、大変示唆に富んだ発言だと思う。はっきり言って、この人、やるな(笑)。
                                              
今の世の中は、ものすごいスピードで色々な出来事が起こり、色んな人の色んな利害が複雑に絡み合っているそれを単純化するためにキャッチフレーズやデマ、陰謀論が飛び交っているし、政府や役人、それに左右を問わず政治家自らそういうものを吹聴していたりもする。そういう『単純な結論』に身を任せてしまうのは簡単だ。だけど、それでは複雑に絡み合った問題は解決しないだろう。今の世の中で本当と思えることを見つけるためには、ボクらは複雑さに耐えなければならない。世の中の仕組みや人々の利害の複雑さを解きほぐすことに耐えて、心の底から本当だと思えることを探していかなければならない。

                                                
その論壇時評の左脇の記事で小熊英二氏が『原発反対の民意が強いがゆえに、今現在 日本は結果的に脱原発を実現できている』と述べている。これも確かにその通りだ。
そのことを考えても、巻町のことを考えても、原発を止めることについてボクは楽観視しているところがある。ボクが生きている間は原発を止めることはできないかもしれないが、個人がやれることをやっていけば、多少なりとも世の中を変えていくことは出来るのではないかあとは複雑さに耐えうる個人個人の意志の問題だ。
                                      
                                                     
                  
と、いうことで官邸前へ。★1129 再稼働反対!首相官邸前抗議! | 首都圏反原発連合
前の晩におでんを煮込んで、朝 炊飯器をセットして、夕食の用意は準備万端、大手を振って出かける(笑)。虎ノ門の駅から官邸前へ歩く途中、やたらと警官が目に入った。警官も警備の車両も普段より全然多いし、いつもは何にもない財務省脇の交差点まで道路封鎖用のゲートが設置されている。そろそろ言論の自由なんかなんとも思ってない安倍晋三の化けの皮がはがれてきたか?と、ちょっと緊張しつつ財務省から官邸前へ続く坂を登った。結果としては警官の数が多いだけで、警備が厳しくなったというようなことはなかったけれど、油断も隙も無いからなあ。

6:20頃に官邸前へ着いた時は参加者は1000人くらいで、hatahei666さん官邸前反原発デモ報告 - ハテヘイの日記に行っていただいた先週くらいかと思ったけど、7時頃には2000人弱くらいは人が集まっていた。アホな感激屋のボクはそれを見て気持ちがこみ上げてしまった(笑)。今日の参加者は官邸前2000人弱、国会前+ファミリーエリア1000人弱くらいで合計3000人弱くらいだろうか(主催者発表2000人だが、絶対もっと居たと思う)。
●抗議風景










                                
●取材に来た韓国のTV局。海産物の汚染のことをしつこく聞いていた。デモの中にも大人数でどかどか入り込んでくるのはさすがアグレッシブだと思った。

                             
●おじいさん?と子供

                                         
●国会前

                 
ひとしきり官邸前で抗議した後、さいたまんぞう氏の演歌が鳴り響く(笑)国会前からファミリーエリアへ。3か所に分かれている官邸前抗議で雰囲気が最も良いのがファミリーエリアなのは、スピーチする人が組織や団体とは関係なく、あくまでも個人の立場で話す人が多いからだ。

●ファミリーエリア:1枚目はフクシマから来たおばあさんと司会のお姉さん


今日 印象に残ったのは東電の分社化と秘密保護法に抗議していた女性。東電は分社化ではなく破たん処理をして、株主や銀行に責任を負担させろというのは資本主義の原理として当然だし、秘密保護法については言うまでもない。普段は官邸前でなく、六本木の原子力規制委員会の前で抗議しているという彼女は、この週末は地元の議員に秘密保護法に対する態度を問うファックスを送ってほしいと訴えるとともに、来週 昼間 議員会館を回って議員にプレッシャーをかけるので、来られる人は加わってほしい、と言う。凄い行動力だ。
ボクは流石に平日昼間は動けないけれど、いろんな人が色んな形で抗議していることを改めて認識した。今日も官邸前だけでなく、六本木でも地方でも異議申し立てをしている人が居る。
今 すべての原発が止まっているのは色んな人が各自できることをやっているからだ。それは単に抗議であるだけでなく、現実の複雑さに耐えるための一つの方法でもあるのではないか。

●東電分社化と秘密保護法に対する抗議を訴える女性