特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

他人事じゃないよな:ウルムチ訪問記?と映画『逃亡者』

楽しかった3連休も今日で終わり。あ〜あ、お休みが過ぎるのは早いなあ。さて、今週8日の官邸前抗議は珍しく(笑)仕事で、行くことができません。最初にお断りしておきます。

                                                   
さて、このところ北京の天安門ウイグル族の人たちが車の突入・炎上事件を起したというニュースが大きく報じられている。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131030-OYT1T00625.htm
ボクは5,6年前 仕事で、ウイグル族の人たちが数多く住んでいる新疆ウイグル自治区ウルムチ周辺を訪れたことがある。ウルムチ自体は高層ビルや地下街もある(日本人の企業家が地下街を運営している!)近代的な街だったが、郊外へ行くと半分砂漠のようなド田舎だった。家も土作りのものが結構あったように記憶している。
現地の食べものは唐辛子を多用した素朴なものだったが、羊中心の肉は全て骨付き、野菜は不ぞろいだけど、素材の味がやたらと濃い、本来の食べものってこういうもんだよなあ、と感激した。同行の人たちは特に羊肉が口に合わないみたいだったが、ボクは喜んで食べていた。
                                              
郊外にある工場は工員さんはウイグル族、それを監督しているのは漢族、それも上海や広東など沿岸部からやってきた人たち、という組み合わせだった。ウイグル族の人たちは皆 鼻が高くアラブ風の顔立ちをしているのに対して、漢族の人は鼻が丸いし服装も違うから、違いは一目瞭然だ。
ウイグルの人が働く作業現場では、工具は旧式で刃物がむき出しになっているような安全装置もないもので、工員さんたちは安全手袋もヘルメットもユニフォームもないまま危険な作業をしている。それとは対照的に漢族のマネージャーはウイグルの美人秘書(女性はきれいな人が多い)を侍らせて、のんびりやっている。言葉は通じないようで工員への指示は美人秘書経由、直接の会話はほとんどない。傍で見ていても『大丈夫か』とハラハラしながら工員さんたちの表情を覗き込んだのをよく覚えている。
                             
途中 道路工事の現場を通ったらウイグルの作業員の人が裸足で土木作業をやっていた。脇には彼らが脱いだ靴がそろえて置いてある。日本で言うと100円ショップで売っているようなビニールの上履きみたいなものだ。ガイドの人に『なんで彼らは裸足なんだ』と聞いたら、『靴が大事なので裸足で作業をしている』という答えだった。
                                     

こうやって、ちらっと現地を訪れてみただけでも圧倒的な貧富の差があるのは良くわかる。漢族とウイグル族で法的に差別があるのかどうかは知らないが、沿岸部で資本を手にした漢族の人が内陸のウイグル族が住んでいる貧しい地域へ進出して、安い労働力でこき使っているということらしい。何が共産主義だよ(笑)。
これでは現地の人からしたら両者の間には絶望的な格差があるようにしか感じられないだろう。その時も『将来 揉めるだろうな』ということは強く感じた。
案の定 ボクが訪れて1,2年後にはウルムチで大暴動が起きたし、今回の事件を見てもその流れは今も続いているということだろう。
                                        

こういうことは全然 他人事とは思えない。ウルムチで起きていることは日本にも通じるのではないか以前も書いた9/27の国税庁の発表によると非正規社員の年収平均は168万円、そういう人たちが日本全体では2000万人弱、労働者全体の3分の1にも昇るのだ。ウルムチで起きているようなことが、将来 日本で同じことが起きるかもしれない、という想いをボクはどうしても拭い去ることができない。


                                                        
渋谷でロバート・レッドフォード監督・製作の映画『ランナウェイ(逃亡者)』不動産の色々※住宅ローンの仕組みやお得な物件の探し方を大公開!
原題の『The Company You Keep』が内容をよく表している。


ヴェトナム戦争反対を唱え連続爆破事件や銀行強盗を起こした過激派グループ『ウェザーマン』。彼らはFBIの指名手配リストに載ったにも関わらず忽然と姿を消していた。それから30年後、そのメンバーの一人(スーザン・サランドン)が突然逮捕される。そのニュースを追う新聞記者(シャイア・ラブーフ)は弁護士ジム(ロバート・レッドフォード)の正体を疑い始める。ニューヨーク州の片田舎の町で良心的な弁護士として働く彼は男手一つで娘を育てている模範的な市民だった。だがジムは危険を察知して突如 逃亡する。新聞記者とFBIは執拗にジムを追跡するが、物証を残しながら各地を逃亡するジムは真剣に姿を隠しているようには見えなかった。やがて事件の真相が明らかになってくる- - - -

ウェザーマンという過激派は実在した組織で、依然逮捕されていないメンバーも居るというのも実話だそうだ。お話はそれをもとに展開される。

ロバート・レッドフォードも爺さんになったなあと言う感じ。それでも男前なんだけど(笑)。

                                           
レッドフォード演じる弁護士ジムを始め、スーザン・サランドンジュリー・クリスティニック・ノルティらが演じる、かって反戦運動にかかわっていた登場人物が、その後 どういう風に生きてきたか、内心の葛藤も含めて、非常に丁寧に描写されている。
ボクより一回り上のヴェトナム反戦世代の人たちのことってよくわからないけれど、日本ではさっさと転向して企業の手先に転身した輩が多いという話はよく聞く。だが、この映画で描写される人物たちは合法、非合法にかかわらず自分に恥じない生き方をしている人ばかりだ。やり方はさまざまだが、かって犯してしまった過ちを自分で引き受け、未来につなげようとする生き方を今も模索しているイラクへの侵略戦争を推進したネオコンは元左翼が多いそうだが、アメリカにだって色んな人はいるだろう。けれど監督は敢えて、自分に誠実に生きる人たちを描いたのだ!
それを演じているのが実生活でも思い切りリベラルな人たちだから、すごくリアルに見えてしまう(笑)。収監先に訪れた新聞記者に『当時の行動は間違っていたが、動機は間違っていなかった』と堂々と信念を述べるスーザン・サランドンや今も反政府活動をしている役のジュリー・クリスティは実生活そのまんまとしか思えない(笑)。今もカリフォルニアのビック・サーに住んでマリファナの密売をしてる設定って、思わず笑ってしまった(笑)。建設業者役のニック・ノルティもオールドタイムな武骨な男らしさを体現していて恰好よかった。その老優たちが抱える謎を映画トランスフォーマーシリーズで有名になった今どきの若手俳優シャイア・ラブーフ)が謎解きをしていくという対照的な構図だ。あと前半、『マイレージ・マイライフ』の美人アシスタント役、アナ・ケンドリックちゃんが出てくるのも嬉しかった。ベテラン俳優と有望な若手俳優を対比させるという、明らかな意図が見て取れる。
レッドフォードを始めとした、この映画の作り手側は当時の出来事は現在にも通じるのではないか、と言っているようにしか思えないのだ。

●逃亡中の彼の謎を追って、若手新聞記者(シャイア・ラブーフ)がやってくる

                    
ロードムーヴィーの楽しさとサスペンス、それに丁寧なプロットを織り込んだ脚本は職人芸でとてもよくできていた。俳優それぞれに見せ場のシーンを作ってあげた感が漂っているのは親切すぎるかなとは思ったけど、そういうところもレッドフォード色が濃厚に漂っている。監督だから当たり前だけど。

●元過激派の40年ぶりの再会(笑)。ジュリー・クリスティ

●オキュパイ・ウォールストリート運動にも参加したスーザン・サランドン姉御。ボク、好きなんです(笑)。

                                                        
良くできた職人芸の脚本と丁寧な演技と、それに作り手のリベラルな信念が貫かれていて、さわやかな後味が残った。サスペンスなんだけど見ていて、ボクはすごく楽しかった。