特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『アバウト・レイ 16歳の決断』と『スリー・ビルボード』

オリンピックが始まったようですが、全く興味がありません(笑)。
普段からあまり見ないTVはいよいよ見たくなくなりました。今の国会では、ある意味 残業代ゼロを拡大させる裁量労働制の拡大など、重要な問題が扱われていると思うのですが、TVニュースにはほとんど取り上げられません。バカの一つ覚えで日本選手ばかり放送しているTV局は恥ずかしくないんですかね。


TVが恥ずかしいといえば、東大の自称政治学者、三浦瑠麗がワイドナショー?というTV番組で堂々と『大阪には北朝鮮工作員が大勢潜伏している』というヘイト・デマを飛ばしたそうです。根拠があるのならいいんですけど、もちろん根拠や証拠があるわけがない(笑)。


三浦瑠麗氏のワイドナショーでの「北朝鮮テロリスト」発言に批判殺到してる模様 - NAVER まとめ


この三浦というバカ女、以前 著書を一冊読んだことありますが、だらだらと自分の意見を述べるだけで根拠が書いてない文章で『最近の東大の学者ってこんなに頭が悪いのか』と驚いた記憶があります。それ以来 完全無視してきたので、こんな発言をしても驚きませんが放送で流しちゃいけませんよね。最近のTVはこういうバカばかり出演してるんですか↓。番組を作る方もよほど劣化しているのでしょう。こんな頭が悪い学者や芸能人もTV局も長くは続かないでしょうね。

●まあ、野党にも期待はしませんが、日本にもCNNみたいなニュース専門局というのはあっても良いですよね。


そういうバカからは遠く離れた(笑)ボクの3連休は静かに過ぎました。家の近くでご飯を食べに行って映画を見て、あとはゴロゴロしてただけですが、実に楽しかったです。ある人に言われたんですが、やりたくないことで忙しいよりは、ヒマな方が幸せですよね!早く定年にならないかなあ。
●ご飯屋にて。泥酔(笑)、うそです。ボクはお酒弱いですが、人前では酔っぱらうのは嫌い(笑)







●目の前で作る和菓子。作りたてはふわふわです。牛蒡のきんとんは野趣があって美味しかった。


●庭では梅が綻び始めていました。




ということで、新宿で映画『アバウト・レイ 16歳の決断映画『アバウト・レイ 16歳の決断』公式サイト

舞台はニューヨーク。シングルマザーのマギー(ナオミ・ワッツ)はレズビアンの母親(スーザン・サランドン)とそのパートナー、そして自分の娘のトランスジェンダー、レイ(エル・ファニング)と暮らしている。16歳のレイは今後は男性として生きていくことを決意し、医者にホルモン治療を受けることにするが、そのためには同意書への両親のサインが必要となる。マギーは10年以上も音信不通だった元夫を訪ねることにするが。


エル・ファニングナオミ・ワッツスーザン・サランドンと世代の異なる美人女優3人が出演する、祖母と母、娘(息子)の3世代を描いた家族ドラマです。原題はThree Generations
●左から娘(息子)(エル・ファニング)、シングルマザーの母(ナオミ・ワッツ)、レズビアンの祖母(スーザン・サランドン


まず、シングルマザーの母親、レズビアンの祖母、トランスジェンダーの娘(息子)の組み合わせというのが面白いです。日本初公開のゲイビー・デラル監督は『一つの家に自分が男だと思っている3世代のドラマを描いたら面白いと思った』と言っています。アカデミー賞女優というより超リベラルな活動家としても有名なスーザン・サランドンが出演しているというだけで、映画の雰囲気は判りますでしょ(笑)。シングル・マザー役のナオミ・ワッツがプロデューサーも務めています。
レズビアンの祖母とそのパートナー


絶世の美少女エル・ファニングちゃんが演じる16歳の高校生、レイは自分の本来の性である男性として生きるためホルモン治療を受けることを決断します。母親も祖母も最初は戸惑います。レイの強い意志は判るけれど、もう引き返せない道です。気まぐれを起こしやすい高校生のことを大人が心配するのは当然だし、トランスジェンダーということ自体 理解が難しい。
●娘(ナオミ・ワッツ)と母


レズビアンの祖母ですら、レイのことを完全に理解していない。『可愛い彼女を作りたい』というレイのことを、レズビアンじゃないのかと考えたりもする。人間ってそうですよね。自分のことに置き換えたがる(笑)。すごくよく分かります。まあ、エル・ファニングちゃんより可愛い女の子っているのか?とは思いますけど(笑)。
●この美少年ぶり!


レイを取り巻く登場人物たち、ナオミ・ワッツ演じるシングルマザー、スーザン・サランドン演じるレズビアンの祖母、それに音信不通だった父親、父親の弟、誰もが問題があるのが、お話が進むにつれて明らかになっていきます。特に母親はレイを女手一つで孤軍奮闘しながら育ててきましたが、生活面では祖母に頼りっぱなし、かなりだらしない人間です。
レイだけは意志がはっきりしています。差別やいじめ、周りの無理解を受けながらも、自分が自分であるためにまっすぐに生きようとする。その姿は周りの問題ある大人たちを巻き込んで、大人たちをも成長させていきます。


演技力に定評があるエル・ファニングちゃんですが、ここでは見事な美少年ぶりを演じています。中盤以降は正直、男の子として見ていたくらいです(笑)。他の作品でも男役、充分行けるなと思いましたもん。また、この人のこと好きになっちゃった(笑)。


またスーザン・サランドンが酸いも甘いも体験してきた大人をユーモアたっぷりに演じています。映画のムードメーカーです。もちろん、この人も昔から大好き(笑)。



人の個性を尊重するって何かを考えさせるだけでなく、非常に暖かな気持ちになります。それに全く説教くさくない。女優さんたちの気合が入った熱演は説得力があります。心の栄養になる映画。人によって異なる多種多様な価値観を尊重する、こっちサイドで生きていきたい(笑)と思わせる、小品だけど、ボクは非常に好きな映画です。



もう一つは 六本木で映画『スリー・ビルボード映画『スリー・ビルボード』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

舞台はアメリカ南部ミズーリ州の田舎町、エビング。7か月前にレイプされ焼き殺された娘の捜査が進まないことに憤った母親(フランシス・マクド―マンド)が、警察を批判する看板を道路沿いに出した。狭い田舎町、末期ガンを患っている人格者の警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下(サム・ロックウェル)や町の人々に脅されても、彼女は屈しない。やがて、容疑者が現れるのだが


今年のアカデミー賞の本命とも言われている、なんとも不思議な映画です。サスペンスでもあり、ブラックコメディでもあり、性や人種による差別を鋭く告発する映画でもあり、人生における普遍的な赦しを描いた映画でもあります。
監督はイギリス人のマーティン・マクドナー。監督の前作『セブン・サイコパス』はシーズー犬を溺愛する狂人が出てくる作品で、絶対 共感できると思って見に行ったボクでさえも、これはいまいちだった(笑)。今作はそれを100倍レベルアップした作品です。


前夫が19歳の女性と浮気して×1になったミルドレッド(フランシス・マクド―マンド)は町はずれの道路沿いに三つの看板を出します。7か月前、彼女の娘がレイプされ、焼き殺されたんです。その捜査が進まないことに対する抗議の広告です。ですが、ガンで余命短い人格者の警察署長(ウディ・ハレルソン)を貶めるような内容に、狭い田舎町の人々はかえって反感を抱きます。セコい日本の社会みたいじゃないですか(笑)!
●マギーは『警察署長は何をやっているの!』、『なんで まだ犯人は逮捕されないの?』、『娘は今もレイプされている』という看板を道端に建てます。ショッキングな看板に何もない田舎町にTVニュースまでやってきます。実際に監督がアメリカを旅した時 3つ並んだ看板を見かけたのが映画のきっかけだそうです。


監督はイギリス人だそうですが、アメリカ南部の感じが非常に出ていると思います。住人がお互いの家庭事情まで見知っている狭い田舎のコミュニティ、仲間同士は仲良しですが、ちょっと違う人間、例えばリベラルな人間、異人種、外国人、同性愛者、それに変わり者に対しては徹底的に残酷になる。日本と似ているし、トランプの支持者とも似てますね。様々な問題を巧みに織り込んだこの映画はアンチ・トランプの作品でもあります(というか、今年のアカデミー作品賞候補作は全てアンチ・トランプかも)(笑)。
●前作では終始 シーズー犬を抱き続けていたサム・ロックウェルが、今度は人種差別主義者の警官を演じています。


かといって、堅苦しいお話かというとそうではない。ブラック・コメディの色彩が非常に強い。アカデミー主演女優賞にノミネートされているフランシス・マクド―マンドの悪口雑言。こんなにF●CKという人は見たことがない(笑)。これだけ口が回れば痛快、です。
●マギー(右)は喧嘩を売られたら、男にも女にも容赦なく股間蹴りを見舞います。


それに人種差別主義者で『ABBA!』が好きな警官を演じるサム・ロックウェルが徹底的に笑いを誘います。中盤までは『この差別主義者の豚野郎、死ね!』と思って見ている観客は、終盤、あっと言わされます。
●マギーと人種差別&性差別主義者の警官(サム・ロックウェル)は当初 激しく対立します。

●いい歳こいて母親と住んでいる、そして始終ビールを飲むか、TVを見るか、漫画を見ることしかやることがないという脳みそ空っぽキャラは、人種差別主義者をよく表現しています。日本のネトウヨと同じですね(笑)


脚本はまさに職人芸、積木細工のように非常に精緻に積み上げられています。人種や性に対する差別、偏見、無知から始まり、次第に頑なになってしまう人間の愚かさ、そして普遍的な人間の感情、最後には赦しにまで着地します。ハート・ウォ―ミングさを訴えるようなトラディショナルな脚本ではないですけど、見事な構成です。
●警察署長(ウディ・ハレルソン)は良心担当(笑)。でも、彼は思いもよらぬ行動に出ます。


観客をあっと言わせる展開が2重、3重にも折り重なっています。見事な脚本と3人の俳優の演技、そして監督のフリークス趣味まで散りばめられた、ユニークかつ、完成度が高い映画です。観客の知性と奥行の深さが試される。個人的に好きか嫌いかといわれると、可愛げがないところが好きではないんですけど(笑)、文句の言いようがない見事さです。アカデミー作品賞をとっても全く不思議ではない、近年の受賞作と比べて勝りこそすれ、劣るような作品ではありません。なおかつ、強烈なアンチ・トランプの映画ですけど、トランプの支持者はまあ、見ないというか、見てもわかんないだろうなあ(笑)。