特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『大統領の執事の涙』と0309NO NUKES DAY 原発ゼロ★大統一行動

今日は『0309NO NUKES DAY 原発ゼロ★大統一行動』ということでしたが、せっかく街に出るので、まず映画を見に行きました。

六本木で映画『大統領の執事の涙』。原題は『The Butler』。この方が判りやすいです。

主人公は南部の農園育ちの黒人。自分の目の前で母は農園主の息子に乱暴されて廃人になり、父は殺された。そんな生い立ちを持つ彼はやがて農園を出て、裕福な家庭の家事全般を仕事にするようになる。一生懸命に仕事に取り組んだ彼はワシントンの高級ホテルの執事、やがてはホワイトハウスの執事にスカウトされる。折りしも時代は1950年代後半。激動の時代が始まる中で彼は何を見たのか。
これも実話をベースにした物語。監督は、貧困にあえぐHIVキャリアのシングルマザーの物語を全く暗くならずに描いた!傑作『プレシャスPush It Yourself:プレシャス - 特別な1日(Una Giornata Particolare)リー・ダニエルズ
主人公はフォレスト・ウィテカーという人だが、取り巻く配役がとても豪華です。主人公の母はマライア・キャリー、妻はオプラ・ウィンフリーアイゼンハワー大統領はロビン・ウィリアムスニクソン大統領はジョン・キューザックレーガン夫人のナンシーはジェーン・フォンダ(笑)。
●主人公とアイゼンハワーロビン・ウィリアムス

                                                               
基本的には父と息子の物語では、あります。奴隷同然ハウス・ニガーだった主人公は自力でホワイトハウスの執事にまで上り詰めます。ホワイトハウスでも勤勉に勤め上げて妻と二人の子を養い、子どもたちを大学へ行かせるまでになる。自力でキャリアを構築した人にありがちなように彼も保守的です。黒人への差別にはもちろん反対だが、生活を守らなければならない彼には差別反対のために身を投じて戦う発想はありません。だが優秀な成績で大学へ通う理想主義の息子にはそれが我慢できない。折りしも1950年代後半、人種差別への反対が盛り上がってきたところです。息子は人種差別への反対運動へ身を投じます。
                                                               
文字でしか読んだことがなかった様々な事件が映像で描かれていきます。南部のアーカンソー州で白人が通う高校へ黒人が通うことを州軍が阻止したため、アメリカ陸軍が出動して黒人を登校させたリトルロック高校事件、公共施設やレストランなどでの人種別座席への座り込み長距離バスの人種別座席を無視して乗り込むフリーダム・ライドなど非暴力の抗議運動です。警官やアホな白人が暴力で弾圧してくるのに対し、彼ら・彼女らは抗議がいかに効果的になるか研究しながら非暴力で抗議を続けていたことが良くわかりました。彼らは座り込みに対する様々な嫌がらせに耐えるためのリハーサルまでやっていたんです!プラグマティックな彼らと比べて、ただ反対だけしているような日本の運動はどうだったんでしょう。そして今はどうなんでしょう。こういうシーンがわざわざ描かれていることで作者の人種差別と言う問題に対する思いの深さ、切実さが痛いほど伝わってきます。また、この映画ではそのような運動に理解ある白人男女が必ず加わっていたことが懇切丁寧に描かれていたのにも非常に感動しました。
 
入獄も辞さないような激しい抗議活動を続ける息子に対し、父は心配するし納得もできません。彼は多くの人と同じように政治は自分には関係ないことだと思っています。また執事として歴代の大統領の意思決定に立ち会っているから、大統領たちが少しずつでも人種差別をなくそうと試みているのも判っているからでもあります。軍人出身のアイゼンハワーは高校へ黒人を通わせるために州軍との内戦覚悟で合衆国軍に黒人学生を護衛させたし、苦労人のニクソンはゴリゴリの保守派だが身近な黒人召使たちには優しかった。金持ちのボンボンのケネディは当初は人種問題に理解がなかったが、キング牧師の運動を見ているうちに次第に心を動かされるようになります。余談だがケネディが暗殺されたときに主人公がケネディの娘、キャロラインを抱きしめるシーンがありましたが、その娘が今の大使そっくりで、ああいう人たちは幼児のうちから歴史上の人物なんだ、と思いました。
ケネディの娘、キャロラインに本を読んであげる主人公

                                              
公民権法が成立しても、ホワイトハウス内では人種差別が続く。黒人の執事たちは白人より給与は安いし管理職への昇進もありません。歴代の大統領の信頼が厚かった主人公が訴えても変えることが出来ない。奇しくもそれは、公民権法が制定されても依然続いている黒人差別に抵抗する息子の立場と重なります。それでも父親は職務に専念し、息子は自由のための活動を続けます。時には彼はブラック・パンサー(マルコムXの)のような武装主義にも走ります。親子は和解できないまま、長い時が流れます。
                                                                       
レーガン時代になってやっと主人公はホワイトハウス内の黒人の待遇改善を勝ち取ることに成功します。南アの人種差別を擁護する差別主義者のレーガンだが、夫妻そろって身近な黒人たちには優しかったのです。やがて主人公は老齢のため職を辞し、在職中は参加できなかったデモに参加します。それはネルソン・マンデラ解放を訴えるデモで、主催者は平和的な運動家になっていた息子だった!ここで、ボクは号泣(笑)。そして映画はオバマが大統領に就任し、引退した主人公がホワイトハウスに招かれるところで終わります。このころにはもう、涙が止まりません(笑)。
●妻役のオプラ・ウィンフリーマイケル・ムーアは、『勿体なさすぎるけど、本当はこの人か、スプリングスティーンに大統領になってほしい』と発言している。

                                                             
前作『プレシャス』同様、全く押し付けがましくないところが良かったです。描写が丁寧であるにも関わらず演出が淡々としているからでしょうか。事前には『暗いかな』と思っていたけど、そんなことは全くなかったし。

大統領の執事の涙』は事実をベースにしながらフィクションを適度に織り交ぜた、黒人の差別に関する雄大叙事詩のような物語です。悪い意味じゃなくて上演時間が実際より長く感じました。差別と言う事実の重さとそれに対する監督らの思いの深さを感じるからです。日本人だって金持ち国になる前は欧米では露骨に黄色人種として差別されてきたのだし、日本国内では今も様々な差別は続いています。たとえばボクは非正規社員という制度自体は否定はしないけれど、同一労働同一賃金でなければ、それは差別です。職場で男女差別や非正規差別を見かけたら、自分ではできる限り闘っているつもりではいるけれど、それでも差別は決して他人事ではありません。
豪華な配役は見ていて楽しいし、お話は誠実で雄大だし、演出は丁寧で押し付けがましくない、見ていて面白いし、心が揺さぶられる素晴らしい映画でした。


                                      
銀座のインド料理『グルガオン』でカレーを食べてから日比谷へ0309NO NUKES DAY 原発ゼロ★大統一行動 | 首都圏反原発連合。常に行列ができているグルガオンは本当に美味しいカレー屋さんだが店内は女性ばっかり、男一人で食べているのはいつもボクだけなんだよね(笑)。

                                                
日比谷では2時まで集会をやったあとデモへ出発するということだったが、ボクが着いたのは2時半過ぎだったので、そのままデモの行先、国会前へ向かった。人の輪による国会包囲と官邸前での抗議が行われた後、国会前で集会が行われることになっている。道すがら警察が『途中からデモには入れません』とか言っている。はあ?どういう法的根拠があるんだよ。流石に頭来て、無視する。
●日比谷〜国会前へ続く抗議風景



●わんちゃんも参加!

                                                
国会前へ着くともう人、人、人。動き回るのは断念して、演壇近くに陣取る。今日の気温は7度で風は冷たいけれど、歩いてきたら汗もかいたし、へんな感じだ。集会は3時半からだけど、3時過ぎにはコールが始まった。

●国会前の光景




3時半に反原連のミサオ・レッドウルフ女史が挨拶をしたあと、集会が始まった。
●生活の党の三宅雪子:悪いけど、演説の内容の無さに失笑も起きた

共産党の吉良ちゃん、志位和夫笠井亮衆院議員。この場所では吉良ちゃんが大人気なのはわかるが、ボクの周りで共産党の支持者みたいなのが共産党にしょうもない絶賛の掛け声をかけるのは気持ち悪かった。どうしてそんなに他人のことを盲信できるんだろう?

民主党生方幸夫衆院議員に菅直人。二人とも気合入ってた。ちょっと驚く。

●生活の党の小宮山泰子衆院議員。生活の党の議員で初めてまともな話を聞いたよ(笑)。

●反原連の人、タンポポ舎の人


                       
今日は色んな議員の話を聞いていて、『皆さんの力が頼りなんです』というニュアンスの話が多かった。質・量とも与党より遥かに劣勢な野党の状況を考えるとそれは本音なのだろう。だが『利益誘導』(某生活の党みたいな)や『私たちが大衆を指導していきます』(某共産党みたいな)みたいな本音が透けて見えるような、人を馬鹿にした演説より、皆で運動をやっていこうという発想のほうが健全であることは確かだ。きっと今は、国会議員がなんとかしてくれる、誰かリーダーが何とかしてくれる、という『お任せ民主主義』を脱却するチャンスなのかも
実際に避難している福島の人は別にして、映画で見た公民権運動と比べたら、ボクらに切実さが欠けているのは間違いない。映画を見てカレーを食べるついでにデモへ出かけるボクが良い例だ(笑)。だけど今の状況で切実だから良い、というわけでもない。集会だけでなく、参加者が気ままに演奏していたり、踊ったり、休んだりしている風景も悪くはない。大事なことは多くの人が参加することだし、しぶとく「NO」ということを続けることだ。さらに言えば『もっと頭を使うこと』だし『自分たちの問題は自分たちで引き受けるぞ』という責任の取り方なのだと思う。
帰宅してTVニュースを見たら、今日1日の参加者は3万2千人。ちなみにTBSは主催者発表通り3万2千人と報じていたが、NHKは集会だけ、と限定して主催者発表1万人、警察発表4000人と報じていた(怒)!ちなみに昨年は1日で4万人の参加者だった。ブログを見返したら、昨年もカレー食べてからデモへ行ってやんの。我ながら進歩してない(笑)。

●国会前周辺。人、人、人。




                           
●踊る人

                                                                                                                            
*付記(3月11日)
ベルギーでも行われた3・09デモの様子をshohojiさんが紹介してくださっています。地球の反対側でも抗議が行われているのを目の当たりにするのは感動的なことです。
ブリュッセルで行われた反原発マニフェスタシオン - (チビコロおばさんの脳みそのシワ保存箱改め)いざとなったら死んだふり

●おまけ:ほころぶ花