特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『0311 原発ゼロ☆国会前大集会』と『0312官邸前抗議』、それに映画『ブラックパンサー』

この前 新宿の映画館のエレベーターで若い女の子たちが『空海って日本人なの?』って話してました。染谷将太君が空海の役をやる日中合作映画の予告編を見たからでしょうけど、さすがにびっくり。その子たちは小中学生とかじゃなく、20歳を超えていたと思います。ま、日本の教育なんてそんなものかもしれませんが、カルチャーショックで逆に勉強になりました(笑)。
●国会前の公園はもう、桜が咲いていました。



さて 3月11日の日曜日は原発に反対する国会前の抗議集会へ行ってきました。
『0311 原発ゼロ☆国会前大集会 -福島・共に未来へ- 』 #0311福島・共に未来へ


集会が行われる国会へ近づくと軍歌が流れています。パチンコ屋かと思ったら、バカ右翼の街宣車が押し寄せてきているんです。それだけ安倍内閣が危うくなっているということだと思いました。バカは相手にしないで国会の南側へ行きます。今日の参加者は主催者発表で5000人。主催者あいさつの後 政治家がスピーチしました。ちょうど立憲民主党が作った『原発ゼロ基本法』が民進、希望を除く野党4党の共同提案で国会に提出されたところです。通るかどうかはともかく、国会で原発の廃止が議論になるのは初めてのことです。
●抗議風景


金曜官邸前抗議と同じく、参加者は組合とかじゃなく個人参加の人たちばかりで、それは素晴らしいんですが、年齢層は相変らずちょっと高いです。いい歳こいたボクが若い方に数えられるのは個人的には気分がいいですが(笑)、やっぱり問題が大きい。ボクなんかは、自分の好きなミュージシャンも俳優もデモに行ってるのだから自分が行くのは当然、と10代の頃から思ってるんですが、『デモはカッコいい』という文化にしていかなければいけないと思います。昨日は暑いかなと思いつつ、今年初のスカーフ巻いて行ったんですが、夕方になるとちょうどいいくらいでした。
前半はバカ右翼の軍歌(宇宙戦艦ヤマトまでやってやんの)が流れる中、負けないように声を張り上げる政治家のスピーチは、いつもより気合が入っていて かえって良かったと思います。
●順に落合恵子民進党の大島、社民党福島瑞穂



共産党は志位委員長と国会議員(吉良ちゃん、藤野、山添)。志位は自分がしゃべった後、隣の吉良ちゃんに『君は話さなくていいの?』と聞いていたみたいで、上位下達の共産党も少しはマシになったのかと思いました。


土曜日のTBS「報道特集」で被災地でもあり、原発も立地している宮城県女川のことがやってました。すっかり忘れていました。街の予算の数割が原発由来の女川では今 再稼働を望んでいる人も多いようです。びっくりしたんですが、女川って人口が6000人しかいないんですね。以前は1万以上居たがどんどん過疎化が続いている。原発がなければやっていけないとする人たちのことも判るんですが、そういうところは原発があっても将来は厳しいでしょう。じゃあ、どうするか、今はその議論すらもありません。番組では『(住民の)覚悟』と言っていましたが、常に事故や被曝と隣り合わせで成り立っている。現状の政府がやってることは原発立地の人たちは事故や被曝のリスクにおびえながら原発の下請け仕事に甘んじろ、ということです。立憲民主党原発ゼロ基本法廃炉後 原発立地の支援をどうするか、国会で検討するということも含まれています。良いきっかけじゃないでしょうか。
立憲民主党菅直人、大河原ともう一人

●希望の柿沢未途。希望と民進は今回の立件民主党原発廃止法案の共同提案に加わっていません。『どの面下げて、ここへきたのか?』とも思うのですが、言っていることは『原発を止めて自然エネに自然エネにシフトしなければ日本の未来はない』という柿沢が一番マトモに聞こえました。

●立憲、共産、民進、希望、社民、自由、野党6党がそろいました。民進とか自由とか社民とかはなんで未だ存在してるんだろうとは思いましたが。


東京新聞:脱原発、諦めない 国会前集会:社会(TOKYO Web)



今回は もうひとつ。この週末、森友の文書改竄に抗議しよう、というネット上で呼びかけがありました。元SEALDSsの奥田君たちです。どうせ財務省がろくでもない報告をするでしょうから、間髪入れず、月曜日に抗議しよう、という話です。#0312官邸前抗議


役人が文書を改ざんしていたというのは民主主義を根本から破壊するような話です。こんなこと許したら、世の中が滅茶苦茶になります。


急遽の呼びかけでしたが、これは黙っているわけにはいきません。秘密保護法とか共謀罪とかそれ以前の問題です。さっきまで官邸前へ怒りに行ってきました。
●抗議風景(現地ではまだ抗議が続いているはずです)





写真を見て頂くと分かるようにすごい人の数です。始まって10分くらいで官邸前はいっぱいになりました。30分も経つと歩道の向こう側にもフェンスが出来た。年配の人より、若い人、女性も多い。皆 怒ってる。始まる前から自然発生的にあちこちで「安倍は辞めろ」、「佐川よりも麻生が辞めろ」とやっている。立憲民主の尾辻議員や山本和嘉子議員、池田まき議員などが喋っても、あちこちで「安倍政権は全員辞めろ」、「責任とれ」、「ウソをつくな」とやっている。話なんか聞いちゃいない。ボクの一番好きなパターン🤗 2015年夏みたいです。
直ぐ警察に全体の行き来を封鎖されてしまったので人数は数えきれません。5000?8000? 9時過ぎには歩道から人があふれて車道も開放したそうなので1万を超えたかもしれません。TVもTBSとフジは来てましたし、テレ朝は中継するのかな。さすがのNHKの9時のニュースですら放送しました。これはもう止まんないです😄
NHKも速報を打ちました。リンク先と同内容は9時のニュースでも放送。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180312/k10011362111000.html

●抗議風景2.普段の官邸前抗議と同じ場所で写真を撮っています。今回は参加者の数が全然違う(笑)




●人々の熱気に、行く手を阻まれたTBSの金平キャスター(左)も苦笑していました。




ということで新宿で映画『ブラックパンサーブラックパンサー|ブルーレイ・DVD・デジタル配信|マーベル公式|Marvel


アメリカでは公開当初から大ヒットしているそうですね。黒人ばかりのキャストで興行的には冒険と言われていたそうですが、ふたを開けてみると公開4日間の興行収入が映画史上歴代3位となる約2億3,500万ドルの興行成績だそうです。この映画の成功で黒人ばかりの大作でもヒットを作れることが証明されました。画期的な出来事です。


それでも、ボク自身はこういうスーパー・ヒーローものって興味がないです。見に行ったのは監督&脚本が『フルートべール駅で2014-09-29 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)ライアン・クーグラーだからです。
この監督のデビュー作、2014年の『フルートべール駅で』は、サンフランシスコの地下鉄で無実なのに白人警官に射殺された黒人青年の最後の1日を描いた実話をもとにした作品で、斬新な映像と静謐な人物描写が深い悲しみを誘う素晴らしい作品でした。主人公が射殺されるところは地下鉄の乗客が撮った実際の映像、というのも度肝を抜かれました。

フルートベール駅で [DVD]

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ライアン・クーグラーはそのあと ロッキーの続編『クリード』を撮り(傑作だそうですが、ボクシング映画は興味ないので未見)、マーベルの大作、この『ブラックパンサー』に起用されました。と言っても、ただのバカ大作じゃありません。

『フルートべール駅で』は無実の黒人青年を射殺した犯人の警官が無罪になるところで終わります。黒人を巡る人種差別は根強く残り続けている。この『ブラック・パンサー』は『フルートべール駅で』の舞台だった北カリフォルニアの黒人コミュニティーの描写から始まります。しかも、その映画で主人公を演じたマイケル・B・ジョーダンが敵役です。無名だった監督の『フルートベール駅で』に出資したフォレスト・ウィテカーも出演しています。いや、まさか『フルートべール駅で』の続編かよ、と思ったくらいです。
ちなみにブラックパンサ―というと、ボクは昔の黒人解放運動、武力闘争路線の過激派ブラックパンサー党と関係があるのかと思ったんですが、マーベルの漫画としては関係ないそうです。でも、この映画では実は微妙に関係してくる構造になっています。
●全米最高の視聴率を誇るスーパーボウルのハーフタイムショーで、ビヨンセがブラックパンサ―党を意識したコスチュームで行ったパフォーマンスは大きな話題になりました。カッコいいよなあ(クリックするとYouTubeの画面に遷移してビデオが流れます)。


ブラックパンサーの主人公ティ・チャラはアフリカの架空の国ワカンダの王という設定です。ワカンダはヴィヴラニウム鉱石のおかげで科学が発達した超ハイテク国家ですが、ヴィヴラニウムを悪用されるのを恐れ、鎖国をし、海外には素朴な農業国と思わせています。その陰で全世界にスパイ網もめぐらせ秘密を守っている。つまり この映画は資源が豊富なアフリカが白人の侵略を受けなかったらどうなっていたかか、ということを描いているんです。

お話はワカンダの王位をめぐってブラックパンサーと北カリフォルニアのスラムで育った元王族のキルモンガーと戦いを繰り広げるという設定ですが、単純な勧善懲悪ではありません。
●ワカンダの王子、ティ・チャラ(チャドウィク・ボースマン)は父の急死で、王となり、ブラックパンサーの力を受け継ぎます。


ワカンダは専守防衛の平和国家!として、他国には一切介入しない、武力放棄が国是です。そこに北カリフォルニアのスラムの中から苦学してMITに入学、その後CIAの工作員となったキルモンガーがワカンダにやってきます。実は王族の血をひいていた彼は武力で他国に介入しようとします。彼は言います。『かって黒人たちが自由を求めて戦っていたとき、ワカンダは何をしていたんだ。
●ティチャラとキルモンガー(左)。キルモンガ―は『フルトベール駅で』で人の良い主人公を演じたマイケル・B・ジョーダンが演じています。

ここで映画は実際のブラックパンサー党につながります。ブラックパンサー党は黒人が白人警官の暴力に晒されるのに対抗して武装闘争を進めようとしましたが、警察の弾圧で潰されました。自国の平和だけを優先したワカンダはそれを見殺しにしたというのです。キルモンガーは続けます。『現実に大勢の難民が生み出され、人々が虐殺されている世界で、いくら自国の平和を守るためといっても、何もしなくていいのか』。平和のためという美辞麗句だけで、何もしなくていいのか。日本にもつながる話じゃないですか。


主要キャストは黒人ですが、悪役も善玉も男も女も非常に美しく描かれています。表情もそうだし、とにかく肉体が美しい。これは昨年の傑作『ムーンライト』にも通じるところがあります。見た人は誰でも、黒人ってこんなに美しかったんだ、と思うでしょう。主役の男性2人もカッコいいですが、特に女性陣は超美人揃いというだけでなく、男以上に強い。美しいけれど男になんか頼らない、女性が自分の意思と知性がある自立した人間として描写されていて、非常に魅力的でした。ちなみにラストでティ・チャラに話しかける黒人少年は『ムーンライト』で少年時代の主人公を演じた子だそうです。どこまで泣かせるんだ。
ブラックパンサーより強いという説もある親衛隊長オコエを演じるダナイ・グリラ(左)はウィッグを被るとウルトラ美人でびっくり。本人はモデル並みのルックスに加えて修士号を持つインテリだそうです。ティ・チャラの妹シュリ(レティーシャ・ライト)(右)は天才科学者でメカニック担当です。

●ティ・チャラの元カノで現在はスパイをしているナキアを演じるルキア・ニョンゴは『それでも夜は明ける』でアカデミー助演女優賞を取った人。



映像だけでなく、効果的に使われている音楽も異様にカッコいいと思ったら、先鋭的なヒップホップの第1人者、ケンドリック・ラマ―です。

ブラックパンサー ザ・アルバム [Explicit]

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お話しのラストはまた北カリフォルニアの黒人地区に戻ります。犯人の白人警官は無罪となり、いまだに黒人への暴力が続く『フルトべール駅で』のやりきれない思いを昇華したかのような結末です。そういうことを考えなければ、なんとも思わないかもしれませんが、それを思い出すと涙が出てくる。
 

ということで、面白いというだけでなく、エンタメ性とメッセージが見事に両立された、超完成度が高い作品です。
それにしても、地味な社会派作品を撮っていた新人監督を莫大な予算を投入するエンタメ大作に起用する映画会社はすごい。能力さえあれば人種や年齢やキャリアにかかわらず起用して、チャンスを与える。これが日本とは大違いのアメリカの資本主義の強さでもあります。また志を失わず、メッセージとエンタメ性を見事に両立させた監督も素晴らしい。
裸のイケメン2人が大暴れ(笑)は先日のインド映画『バーフバリ』にも通じます。それだけでも楽しいでしょ。豪快さはあそこまではいかないにしろ、笑って、手に汗握って、スカッとして、なおかつ、よく考えると思い切り泣かせる映画であることは間違いありません。素晴らしいです。