特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『BOTTOM UP DEMOCRACY 10.09 新宿アルタ前大街宣』と、心と頭を刺激するエンターテイメント:映画『ドリーム』

三連休は穏やかな陽気で楽しかったです。と言っても ぼーっと過ごして、やりたいことの半分も出来なかったんですけど。早く定年にならないかなあ。
●近くの駅前広場ではお祭りをやってました。ま、可愛いぬいぐるみは嫌いじゃないですが、人だかりはちょっとなあ。



選挙の話でびっくりしたのが希望の党の立候補者。まず、東京七区(渋谷、中野)に立候補するのは熊本県議の荒木章博。この男は熊本県議時代に女性スポーツ選手に性行為を強要して訴訟を起こされ300万円の賠償金支払い命令を受けています。

さらに驚いたのは、上杉隆が東京ブロックの比例で立候補するというのです。自称ジャーナリストのこの男は原発事故当時、おしどりマコと一緒に『福島、郡山はもう住めなくなる』というデマをばらまいたのを筆頭に読売記事盗用問題、元NHKなどの経歴詐称、捏造・虚偽報道のデパート、 文字通りのペテン師です。

●こいつがどんなことを言ってきたかの一端はこれでも見てください。
archive.md
30秒で分かる上杉隆氏のインチキ @uesugitakashi - Togetter

上杉隆が引用したウォールSt.ジャーナル記者の「(福島市と郡山市に)人は住めない」発言は無かった - Togetter


さすが『希望』の党です(笑)。前科があったから立候補しちゃいけないということはありませんが婦女暴行や病的な嘘つきはいくらなんでも議員には向いてないでしょ。政治家の酷さは今に始まったことじゃありませんが、どんどんひどくなる。確かに政治なんて普通の人は関わりたくないし、それはボクもそうですが、これじゃあ、社会人失格者の吹き溜まりじゃないですか。あんまり無関心だとこういう連中に滅茶苦茶な世の中にされてしまいかねません。


●付記。ここまで悪口書いた後 9日夜 上杉が出馬辞退。こんなクズが議員にならなくて冗談でも良かった〜。

●『マクロ経済の視点でマーケティングベースで考える』ってさすがに意味が分からない(笑)。この人も頭は空っぽなんですね。


さて、憂鬱な3連休終わりの夕方、こんな催しに行ってきました。#BUD09 #新宿アルタ前大街宣『BOTTOM UP DEMOCRACY 10.09 新宿アルタ前大街宣

BOTTOM UP DEMOCRACY on Strikingly


元SEALDsの奥田君らが呼び掛けた催しです。街宣車もステージもなく、脚立の上にのってスピーチしよう!というものです。ホントかいなって思ってたら、ホントでした。


●元SEALDsの大学生、本間君


脚立に立ってスピーチする枝野氏と福山氏を観てもらえば判ると思いますが、彼らは本気だと思います。声に力があります。ボクは立憲民主党の全ての議員を支持するわけじゃありません。今の立候補者の顔ぶれを見ても正直 おかしな奴もいます。しかし、やっとまともな政党ができた、市民の声を汲み取ろうとする政党ができた、そう思うのはボクだけでしょうか。
●ま、個人的にはこれが理想です(笑)


さてさて、他にも映画の感想が溜まっているんですが、素晴らしい作品があったので、これを優先させたいと思います。

新宿で映画『ドリーム

1960年代の初め、冷戦真っただ中の時代。公民権運動が始まる寸前のアメリカではまだまだ人種差別が横行していた。世界初の人工衛星、有人宇宙飛行をソ連に先に越されたアメリカは、大統領の至上命令で有人宇宙飛行計画に乗り出す。NASAに集まられた数学の天才、キャサリンタラジ・P・ヘンソン)、黒人女性たちのリーダーであるドロシー(オクタヴィア・スペンサー)、エンジニアを志すメアリー(ジャネール・モネイ)は黒人に対して、そして女性への差別や偏見と闘いながら、アメリカ初の有人宇宙飛行、マーキュリー計画を成功させるため奔走する。


アメリカ初の有人宇宙飛行、マーキュリー計画の陰で大活躍した黒人女性3人の実話です。
監督は秀作『ヴィンセントが教えてくれたこと2015年の夏を振り返って&映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』 - 特別な1日などのセオドア・メルフィ。ミュージシャンのファレル・ウィリアムスが製作と音楽を担当。

この作品はアメリカでは『ラ・ラ・ランド』を遥かに超える大ヒット作品です。それにも関わらず 日本であまり知られていないテーマに怖れを為した日本の映画会社が当初『ドリーム 私たちのアポロ計画』という邦題をつけたところ、『なめんじゃねえ』という抗議が殺到したのが話題になりました。そりゃ、この映画とアポロ計画は何も関係ないですから、映画会社は観客をバカにしていますよ。原題は『Hidden Figures』(隠された人々、隠されたもの)。


映画は黒人女性3人がオンボロ車で通勤の途中、エンストしているシーンから始まります。なんとなくほのぼのとしたシーンです。ですが、彼女たちが車に乗る理由が判ると愕然とする。バス通勤だと後ろの黒人専用席に座らなければならないからです。当時NASAの研究所はアメリカ南部、バージニアにありました。人種差別が盛んな地域です。インテリが集まる研究所でも差別は変わらないんですね。
●黒人女性が運転しているだけで警官から疑いの目を向けられます。60年前のアメリカは今年 女性の運転が解禁されたサウジアラビアと大して変わらなかったわけです。左からドロシー、キャサリン


キャサリンは子供の時から数学の天才と呼ばれていました。しかし当時の南部で黒人の女の子が高等教育、特に理数系の教育を受ける機会はなかなかありません。飛び級で大学を卒業した彼女はNASAに就職しますが、黒人にあてがわれる職は臨時雇いだけ。しかもオフィスは黒人専用の敷地の片隅のオンボロビルです。トイレも食堂も黒人と白人のものは別れています。
黒人用のバス座席やトイレ、食堂の差別のことは知識として知っていても、画面で見ると全然印象が違います。黒人用座席に座ることを拒否したローザ・パークスという人の行動から公民権運動に火が付いたことは有名ですが、この映画を観ると黒人用座席に座るということがどんな気持ちがすることなのかが、良くわかります。


●キャサリンが数式を使って軌道の計算を解説するところは全く分かりませんでした(笑)。


当時はまだコンピューターがなかった時代。軌道など複雑な計算は人力です!そこで優秀な黒人女性たちが集められて計算作業に従事していました。ドロシーはそのリーダー格です。数十人の人を束ねている彼女は管理職への昇進を希望していますが、黒人には管理職の道は閉ざされています。
●ドロシー(中央)はこれだけの女性たちを纏めていても管理職どころか臨時雇いのままです。やがて彼女たちの職場はコンピュータの導入で雇用の危機にさらされます。


メアリーは理工系の大学を出た優秀な女性です。宇宙船の設計などに貢献している。しかし彼女はアシスタントとしてしか雇用されません。黒人、しかも女性にはエンジニアになる道は閉ざされていたからです。
NASAを訪れた宇宙飛行士、ジョン・グレンと握手するメアリー。人種を問わず、カッコいい男が大好きというキャラです(笑)。ちなみに他の飛行士たちは出迎えた黒人たちの存在を黙殺しますが、ジョン・グレンだけは黒人とも握手をします。


折しも1961年 ソ連人工衛星ばかりか、有人宇宙飛行まで先を越されて NASAには多大な圧力(笑)が加えられます。国の威信がかかっています。NASAの本部長、ハリソン(ケビン・コスナー)はなりふり構ってられないとばかり、マーキュリー計画の特別チームに計算係だったキャサリンを抜擢します。しかしチームには白人男性ばかりで女性は白人が一人、秘書でいるだけ。そこに黒人女性のキャサリンが配属されると摩擦が起こります。

●ボクだって男しかいないような会合とかに行くと雰囲気が悪くてウンザりします。


彼女は男性連中から冷たい目で見られるばかりでなく、なんとコーヒ―ポットまで白人用、黒人用と別けられています!(怒)。職場には女性のアクセサリーは真珠だけ、という職務規定がありますが、安く設定されていた黒人の賃金でそんなものは買えるわけはありません。良く、『決まりは決まりだから』と言う人がいますが、決まりやルールそのものが差別的だったり、根本的に間違っていることなんかいくらだってあるんですよ。
白人男性と同等に働くキャサリンですが、トイレは800メートルも歩いて離れたところにある黒人専用トイレに行かなくてはなりません。片道20分近くかかる距離です。その距離で自転車も使わせてもらえない。大雨の日もあるんですよ。思わず『ひでぇ』という言葉が思わず口を突きます。
本部長のハリソンは仕事第一、結果第一と言う人で差別意識はありません。だが無知だった。ある日 怒りが爆発したキャサリンの訴えを聞いて初めて状況を理解する。そこで彼が起こした行動が超カッコいい。もう泣いちゃいました。ケヴィン・コスナ―はダンス・ウィズ・ウルブズ』以来の名演という声もありますが、全くその通りだと思います。

●この映画の鋭い点の一つは差別は無知・無関心から生じるということをちゃんと描いているところです。『知らなかった』、『悪気はなかった』は全く理由にならない。現実としてそういう態度が差別を助長する。他にも度々そういうシーンが出てきます。



キャサリン、ドロシー、メアリーはそれぞれの職場で差別と障害を乗り越えていきます。黒人としての差別だけではありません。女性としての差別もあります。女性は会議すら出られない。アシスタントとして扱われ、担当者とは認められない。成果を出しても認められない。2重の差別に晒された彼女たちは何度も絶望に襲われます。でも、この映画はそれだけじゃなく、彼女たちの愉しみも描かれてるのが良いんです。物語が進むにつれて3人の女性がどんどん綺麗に見えてくる。ルックス云々の話じゃなく、人間としての輝き、だとボクは思います。
●憂さを忘れるためのガールズ・パーティー(笑)


この映画は人種差別、女性差別、2重の差別と闘ってきた女性を描いた物語です。根底には怒りが込められています。こんな酷いことがあったのかと驚くような場面も一杯あります。しかし登場人物たちは あっと言わせるような方法で乗り越えていきます。彼女たちの行動は観客を驚かせ、笑わせ、楽しませ、スカッとさせてくれます。キャサリン、ドロシー、メアリー、それにハリソン、それぞれに素晴らしい見せ場があります。それも思わず大拍手してしまいそうなものばかりです。クライマックスが4回以上あると言っても良い。映画は見事なエンターテイメントとして着地しています。
ちなみにキャサリンは昨年 オバマ大統領から文民最高の栄誉である自由勲章を受章しました。オバマって立派な人だなあーと改めて思いました(笑)。
●シングルマザーのキャサリンは黒人で初めて佐官になったジョンソン中佐と恋に落ちます。女性らしさも忘れないキャサリンですが恋人と言えども差別は黙認しません。ジョンソン中佐を演じるマハーシャリ・アリは『ムーンライト』で今年のアカデミー助演賞を取りました。


まだまだこの映画の素晴らしいシーン、素晴らしいところは一杯あるんですが書ききれません(笑)。とにかく圧倒的に素晴らしい映画です。誰が見ても泣いて笑って楽しめる。最後は大拍手。確かに興行面ではライバルだった『ラ・ラ・ランド』なんか全く問題にならない。今年を代表する1本であることは間違いありません。