特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『ディキシー・チックスの最新ライブ』と映画『パーティーで彼女に話しかけるには』

週末から今朝にかけて寒かったですねー。今朝は地面にも霜が張ってました。
地球温暖化とか言ってますが、昔より寒い気がします。どうなんでしょう、寄る年波で余計に寒く感じるのでしょうか。
●週末は有楽町の慶楽で角煮焼きそば。蒸し上げて作るふわふわの角煮(東坡肉)は自分では作れないですからね。


今朝の東京新聞によると、原発に使うMOX燃料が値上がりしているそうです。最安値から5倍に値上げって報じられていますが、直近(4年前)と比べても10%以上値上がりするって企業の経営ではなかなか大変です。
●取材というより丹念に統計を見ていれば判るんだけど、良く記事にしたと思います。


東京新聞:原発MOX燃料が高騰 99年最安値から5倍に:経済(TOKYO Web)
●ボクは見てないんですが、この週末、フジテレビのThe Manzaiと言う番組で、ウーマンラッシュアワーの村本という人が原発や米軍基地のネタをやったそうです。これくらいでニュースになるんだからどうにもなりません



さて、『アメリカのオンライン英語辞典「ウェブスター」は12月12日、2017年の「今年の言葉」として「フェミニズム」が選ばれたことを発表しました。


女性に対する差別発言などを繰り返すトランプに対する史上最大規模の抗議デモ「ウィメンズ・マーチ」が世界各地で広がったことや、ハリウッドのセクハラ・性暴力の告発などで、検索回数が前年より70%も増えたからだそうです。日本のどこかのバカ坊主が『北』とか寝ぼけたことを言ってるのとは大違いです。先週も共和党金城湯池だったアラバマ州の上院補選でセクハラの共和党候補が落選したばかりです。アラバマのような保守的な土地で共和党が負けたのですから、少し驚きました。



この週末は最近発売されたディキシー・チックスのライブのCD/DVD''DCX''を見ていたんです。日本では知らない人も多いかもしれませんが、ディキシー・チックスはカントリー・ブルーグラスの女性3人組で、女性グループでは史上最多のCD売上を誇るバンドです。もちろん アメリカではスーパースターです。


カントリーというと日本の演歌みたいに音楽も歌詞も保守的で、女性は家で料理をしながら家に居る、みたいな女性像が多いのですが、ディキシー・チックスは違います。彼女たちのヒット曲は、妻がDVを振うバカ旦那をブチ殺したり、女性が愛人のところへ飛んでいく気持ちを歌ったり、戦争に行った恋人を歌う反戦歌だったりします。メンバー3人中2人がシングルマザーですからね。

ブッシュがイラク戦争を始めたとき、彼女たちが『ブッシュと同じテキサス出身なのが恥ずかしい』と公言したのは全米中で大きなニュースになりました。ロックだったら反政府的なことを言う歌手はいますけど、保守的なカントリー音楽のスーパースター、しかも女性がそういうことを発言したため、彼女たちはバカウヨどもの攻撃の標的になったのです。男だったらここまで叩かれなかったでしょう。彼女たちは男社会の虎の尾を踏んだんです。
脅迫されたり、コンサートが中止になったり、酷いバッシングを受けましたが、次のCDでは『私はいい子ちゃんではいられない(Not Ready To Make Nice)と歌って大ヒット、年間最優秀アルバム、最優秀楽曲、最優秀レコードと、2007年のグラミー賞主要部門を独占したのは語り草になっています。


ほぼ10年ぶりの全米ツアーの模様を収めた今回のDVDは演奏が充実しているだけでなく、黒人歌手であるビヨンセやプリンスのカバーをやったり、ユニークで面白かったです。
とにかく会場には女性客がやたらと多い。昔から女性ファンは多いバンドですが、一段と比率が高まりました。その女性客たちは肩組んで踊ったり、歌ったり、非常に楽しそうなんです。カントリーやロックの世界では異様と言っても良い。バカ旦那を毒殺して湖に放り捨てるヒット曲『グッバイ、アール』では観客もみんなで楽しげに合唱している(笑)。スクリーンにはトランプをコケにする絵が出てきて、観客は大笑い。怒りを表現するのも楽しげにやっているというのは本当にいいです。ブッシュ批判で頭の悪いカントリーファン(主に男)が居なくなった替わりに、女性たちが応援してるんですね。
DVDは演奏後 彼女たちが舞台裏で待っていた子供たちを抱き上げているところで終わります。女性が色気や美貌を武器にしたり、男に媚を売ったりする世界とは対極の世界です。

Dcx Mmxvi Live

Dcx Mmxvi Live


アメリカも日本もまだまだ女性差別男性差別も)はあるし、安倍晋三と懇意なジャーナリストに暴行されたのを警察が握りつぶした伊藤詩織さんの件のように、許しがたい話はあります。それでもこういうDVDを見ると、世の中は着実に変わっていっているなーと思いました。トランプのような差別バカはジジイばかり、あとは死ぬだけです。長い目で見ればこちらの方が強いに決まっています、フン(笑)。
●DVDはLAですが、こちらはロンドンでの演奏。Not Ready To Make Nice(いい子ちゃんではいられない)



ということで、新宿で映画『パーティーで彼女に話しかけるには』 原題も''HOW TO Talk TO GIRLS AT PARTIES''

舞台は1977年 ロンドン郊外。エリザベス女王50歳の誕生日とパンクブームが盛り上がりつつあるロンドン郊外。内気なパンク少年エン(アレックス・シャープ)はコンサートの打ち上げに行くつもりが、謎のパーティ参加して美少女ザン(エル・ファニング)と出会い、恋に落ちる。しかし、彼女は宇宙人だった。遠い惑星に帰らなければならない彼女と過ごせる時間は48時間のみ。パンク少年のエンも宇宙人のザンも大人たちが押し付けるルールに反発を募らせていく……。
●内気なパンク少年と宇宙人の美少女のファンタジーです。現実にはこんなデートはあり得ません(笑)


舞台劇にもなったカルト映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(ボクは未見)のジョン・キャメロン・ミッチェル監督が短編小説を映画化したものだそうです。
主演のエル・ファニングって女優さんは絶世の美人ってわけじゃないけど、異常に存在感があります。最近の良い映画って、彼女が出ている可能性はかなり高い。まだ19歳そこそこにもかかわらず、『20センチュリー・ウーマン『都議選の結果』と、随分 遠くまで来ちゃった:映画『海辺のリア』と『20センチュリー・ウーマン』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)や『サムウェア』、『トランボ『ローマの休日』に隠された物語:映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)など良質なミニシアターものや『ネオン・デーモン『電力システム改革』のパブコメと映画『ネオン・デーモン』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)のような超マニアックなもの、スピルバーグの『スーパー8』などメジャー作品まで、さまざまな作品に出演する売れっ子ですが、すごーくイノセンスな感じがするんですね。この2,3年、ボクが見るような映画にはこの人、しょっちゅう出てくるんですが、いつも、この人いいなーと思います。

somewhere Blu-ray

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舞台は1977年のロンドン。貧しい労働者階級の暮らし。ボロボロの公営住宅に、空き家だらけの郊外。そこに宇宙人たちが観光旅行にやってきます。内気なパンク少年だったエン(アレックス・シャープ)はパンクバンドの打ち上げに参加するはずだったのが、間違って空き家で行われていた宇宙人のパーティーに迷い込みます。そこで出会ったのが、超絶美少女のザン(エル・ファニング)でした。彼女はパンクの音楽やファッションに興味を示して、二人は盛り上がっていきます。如何にも頭が悪い10代の少年が抱きそうな夢ですよね!(笑)。もちろん10代の少年という生き物はそういうものです(笑)。
●カネもなければ頭も悪い、内気な少年のエン(中央)たちは、パンクにあこがれています。 


こういうお話だけだったら、日本の幼稚なアニメとか、漫画やTVドラマ原作のクソ映画とかでもありそうです。ありえない設定で男と女が都合よく出会って、都合よくうまくいく(笑)。くだらねえ(笑)。でも、この映画は結構 説得力があるんです(笑)。
●最大の説得力はエル・ファニングちゃんの存在感。長い手足と人間離れした白い肌は宇宙人のように見えます。


公共予算がカットされ、不況でまともな仕事もない労働者階級の厳しい環境。仕事もなければ金もない。労働者たちが住む地域はゴミだらけでホント、汚い。その中に忽然と現れたエル・ファニングちゃん。映画の中で彼女を『ミルクのような肌』ということばで表現していますが、まさにそのとおりなんです。人間離れした白い肌と達者な演技、それに醸し出すイノセンスな雰囲気が、無理があるお話に異様な説得力を持たせているんです。彼女の存在感と言ってもいいでしょう。
●こういうファッションってありましたよね。エル・ファニングちゃんが着ると特別なものに見える。


ニコール・キッドマンはビビアン・ウェストウッドみたいなパンクファッションのゴッドマザーを演じています。かっては絶世の美女だった彼女が、この映画では中年女性の心の叫びのような台詞を叫びながら楽しそうに演じているのが印象に残りました。
●二コール・キッドマンは振りきれた好演を見せています。


お話自体はムリがあります。宇宙人がロンドンに観光旅行にやってくるという設定がいまいち面白くない。若者を犠牲にしながら少子化で滅んでいく種族という哲学的な設定も中途半端。日本そっくりではありますが、イギリスも内部にいるとそう感じるのでしょう。
それでも既成概念への反抗という点でパンクの精神と宇宙人の大人たちへの反抗がシンクロするところは見事です。二人とも既存社会からは外れた存在、エイリアンなんですね。


ノー・フューチャーな労働者階級の生活・雰囲気も良く出ていると思います。当時のパンク・ブームのディティールも細かく描写してます。そういう前提を踏まえながら、エル・ファニングちゃんがステージに立つところは良くできています。歌はうまくないんだけど、心の奥底からの思いを表現しているところは、まさにパンクの精神そのものです。まさに演技力の勝利、素晴らしかった。サントラ買いました(笑)
●観客がこの映画を見にいくのはこのシーンを見るためだと思いますが、期待にたがわぬ出来でした。エル・ファニングちゃんサイコー


B級カルトっぽい宇宙人設定・描写も人気を集めるかもしれませんが、ボクは乘れませんでした。でも他は良くできている映画だと思います。
●これが宇宙人。昔のセンスです(失笑)

●この映画で見るパンクスたちはバカっぽくて呑気で、いい感じです


ニコール・キッドマンや主人公の友人らの3バカトリオもすごく良い。当時のパンクの描写もかなりリアルだし、なにより、制作側が伝えたい『何か』はちゃんと観客に伝わってきます。 そして爽やかなラストがマジで泣かせてしまうのも、エル・ファニングちゃんのイノセンスの魔法が画面に作用しているからに違いありません。


エル・ファニングちゃんだけでなく、映画全体がとてもキュートです。切ない気持ちになります。詰めの甘さはあるけれど、良い作品でした。客観的な出来以上に、気持ち的にかなり好き(笑)。