特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『ポライト・ソサエティ』

 東京には台風は来なかったとはいえ、不安定なお天気でした。被害に遭われた方はさぞや大変だったと思います。
 大変な1週間でしたが、台風明けの日曜日の夕方はベランダからきれいな夕空を見ることが出来ました。そろそろ秋の気配です。

 それにしても未だに『選択的夫婦別姓』の賛否ごときがニュースになるのだから、この国は酷いものです。

 選択的夫婦別姓なんて誰が損するわけでもない、個人の自由に決まってます。議論の価値すらない。政治家はそんなことすら決められない。マスコミも突っ込まない。国民も疑問に思わない。
 経済の停滞も少子高齢化も政治家やマスコミだけが悪いんじゃない国民のレベルが低いから、と最近はそう思うようになりました。


 と、いうことで、渋谷で映画『ポライト・ソサエティ

 ロンドンで暮らすパキスタン系移民の高校生、リア(プリヤ・カンサラ)の夢はスタントウーマンになること。彼女は学校でも落ちこぼれ、変人扱いされると同時に、親からも心配されていた。彼女の唯一の味方は芸術家を志す姉のリーナ(リトゥ・アリヤ)だったが、ある日リーナが富豪で医者のプレイボーイと恋に落ち、結婚して海外へと移住することになる。不審に思ったリアがプレイボーイの家に侵入して調べると、おぞましい陰謀が隠されていた。

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 インド映画のように見えますが、ロンドンを舞台にしたイギリス映画です。監督はパキスタン系女性のニダ・マンズール 。
 因習の中で暮らしているロンドンのイスラム教徒の女の子たちがパンクバンドを結成する『絶叫パンクス レディパーツ!』がアマゾンのプライムビデオで話題になっている人です。
Amazon.co.jp: 絶叫パンクス レディパーツ! (字幕版)を観る | Prime Video

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 当然のことながら、旧植民地だった関係からイギリスにはインド系、パキスタン系の人が大勢います。差別もありながらも、今や首相を輩出するまでになっています。この映画はパキスタン系の比較的裕福だけど因習に囚われた社会=ポライト・ソサエティで育った女子高校生をテーマにしたアクション・コメディです。
 
 リアはスタントウーマンに憧れる高校生。空手道場に通いながら、YouTubeで自分のアクションを流しています。

 憧れのスタントウーマンに手紙を書いて、自分もあなたのようになりたい、と訴えています。学校の教師も友人たちも親もリアには呆れるばかりです。

 唯一 姉のリーナだけはリアの味方です。美大に通っていたリーナは自分の才能に限界を感じて学校も辞め、家に引きこもっていました。そんな彼女だから自分の夢に向かって進むことの大切さを良く判っているのです。

 或る日 リア一家は母親の裕福なママ友が開いたパーティーに招かれます。

 そこで姉のリーナは独身で医者の一人息子に見初められ、トントン拍子で結婚まで決まり、海外移住の話まで出てきてしまいます。

 自分の味方だったリーナが結婚してしまうことへの反発と相手方の一家に不審を感じたリアは、あちらの豪邸に忍び込むと驚くようなことが隠されていました。

 リーナを奪還するために、リアは友人たちの力を借りて結婚式に乗り込みます。
 

 インド映画+カンフー+パンク・スピリッツ+青春映画にフェミニズムの観点が加わったユニークなコメディ映画です。

 ある意味、奇想天外でハラハラするようなところもあるし、やり過ぎでギャグやお話が滑ってしまっているところも多々あります。くだらないと言えばくだらない。

 しかし、『女性は親の言うことに従ってお嫁に行け』、『女性は子供を産むための道具』といった家父長制への批判が強烈に含まれています。パキスタン系の一家の物語ではあるけれど、抑圧された女性が如何に自由を勝ち得るかという世界中普遍的に当てはまる物語でもあります。
 女性を単に子供を産むための存在と決めつけているのは今の日本だって変わらない

 オーディションで選ばれたという主演のプリヤ・カンサラちゃんは目が大きくて存在感があるだけでなく、非常に爽やかです。

 インド映画にカンフーを取り入れたのも華やかな衣装が映えて良かったです。この着眼点は成功でした。

 如何にもパンク以降のイギリスのお話らしく、人種が入り混じった落ちこぼれの高校生たちの友情もほほえましい。優れた青春映画でもあります。

 完成度は高くないけど、ユニークな視点は面白い。お話は粗も目立つけど、最後はちゃんと感動するように出来ています。パンクの初期衝動そのものを体現した’’X・レイ・スペックス’’の主題歌も良かった。こういう曲を聴くと自分もやりたくなります。


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 何よりもロンドンを舞台にパキスタン系の子供たちがカンフーで活躍?する、そんな奇想天外な映画が作られてしまう自由な発想が素晴らしい。B級だけど、パンクスピリッツに溢れた映画です。
 他人が押し付けてくる『男らしさ』とか『女らしさ』みたいな規範なんかクソくらえ。言いたいことがあったら大きく口を開けて、声を挙げろ
 タコツボで閉塞感に覆われる日本とは異なるイギリス社会の多様性を感じる、楽しい2時間でした。


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