特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

エキタスの『新宿アルタ前大街宣』と、ユーモアは病気にも差別にも負けない:映画『ビック・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』

東京は早くも桜が咲き始めました。今年の冬が寒かったから、とは言え、ちょっとびっくりです。例年のこととは言え、お花見のレストランの予約はいつに予約するか悩むところです(笑)。
●道端の桜も少しずつ。



内閣の支持率が急落しています。

内閣支持率30.3%第二次安倍政権で最低|日テレNEWS24


それでも3割も支持があるというのはボクには信じられません(笑)。安倍が辞めてもあとはどうするんだ?と思われる人はいるかもしれません。安倍以外ならだれでも良いんです。自民党の岸田でも石破でも結構。タカ派の石破だって、ここまで国家を私物化はしないでしょ。今の野党では政権担当能力はないですが、国家を私物化するような大臣は退陣に追い込まれるという規律は最低限ないと、日本が民主主義国家として保ちません。
先週末の官邸前抗議の様子を伝えるtweet小泉今日子キョンキョンが所属事務所のアカウントで『いいね』をしてくれています。さすがというか、素敵!です(笑)。やっぱり、判る人には判ってます。ああいう仕事をしていても、小泉今日子は自分の頭で考える人だから、なんでしょう。

今週金曜も官邸前で安倍晋三に対する抗議があります。



さて、この土曜日は高度プロフェッショナル制度に反対するエキタスAEQUITAS /エキタス(@aequitas1500)さん | Twitterの街宣『新宿アルタ前大街宣〜 #高度プロフェッショナル制度もやめろ!!〜( #0317アルタ前 )』に行ってきました。


裁量労働制の拡大はいったん、中止となりましたが、高度プロフェッショナル制は今国会での導入が狙われています。高度プロフェッショナル制は法律に年収要件が書いてあるので、あまり心配していませんでしたが、多くの働く人を危うくするとんでもない制度だということがだんだんわかってきました。今回の街宣では様々な人がその危険性を訴えました。





*上西教授のスピーチ全文はこちら⇒欺瞞に満ちた「働き方改革」。労働時間規制を撤廃する高プロ導入は認められない( #0317アルタ前 )(上西充子) - 個人 - Yahoo!ニュース


人のスピーチを聞くのってあまり好きではないんですが、今回は政治家ではなく、現場の人たちの話が多かったので、感じるところがありました。
まず、高度プロフェッショナル制度は他人事ではない、ということです。現在の案には年収1075万程度という縛りがあるわけですが、これは残業代込という政府の国会答弁があります。例えば年収が500万ちょっと、残業が500万ということになれば、対象になるわけです。極端かもしれませんが、確かにこういう働き方をしている人も存在します。年収500万ということだったら、それこそ平均的なサラリーマンの多くが対象になるわけです。
また、経団連や政府は対象となる年収を将来は400〜500万程度にまで引き下げることを狙っていることが今迄の発言で明らかになっています。
高度プロフェッショナル制度は年間休日以外の労働時間の保護規定はありません。政府は『時間に囚われない働き方』と言っていますが、それこそ『働かせ放題』になります。こんなバカな制度はつぶしておかなくてはなりません。






もう一つは先週の国会で行われたワタミ創業者の参院議員、渡邊美樹の暴言です。渡邊は国会で、旦那さんが過労死した遺族に対して『週休7日なら幸せですか』とバカにするような発言をしました。今回の街宣でその遺族の方がスピーチしたのですが、渡邊が答弁したのは自民党本部の指示だそうです。
ワタミ社長当時の渡邊は社員に『死ぬまで働け』と公言していましたし、事実 社員を過労死させています。ブラック企業として社会的非難が強まり渡邊は謝罪しましたが、こいつの性根は全く変わっていないことは明らかです。こんな腐った奴は国会議員にしちゃいけないし、こんな奴に答弁させた自民党自体の姿勢も明らかです。
ボクは昔からいくつかボイコットしている会社があります。
主なところは東芝忌野清志郎の反原発CDを発売中止)アパホテル(当然)、ミキハウス(社長が原発擁護)、東横イン、そしてワタミです。
ワタミにはブラック企業の非難を受けて、隠れ蓑で他のブランドで展開している店がいくつもあります。うまく行ってるかどうかは知りませんが、宅食事業もあります。ボクは居酒屋なんか殆ど行きませんが(笑)、渡邊美樹のような人間が関わっている企業は速く潰れた方が、世の中のためになると思います。これらの店↓には一切行きません。ワタミグループをこの世から消し去りましょう!


過労死遺族にワタミ渡辺氏を質問者に選ぶという自民党からのメッセージ(佐々木亮) - 個人 - Yahoo!ニュース



あともう一つ。先日ご紹介した『新・階級社会2018-02-16 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)橋本健二早大教授が載った『今や日本は階級社会 働く人の15%「アンダークラス」』と題された16日の毎日新聞の記事です。派遣などの規制緩和によって日本の社会がどんなに歪みつつあるか、雄弁に語っている数字だと思います。今回の労働基準法改正はその歪みを更に大きくするものです。



特集ワイド:今や日本は階級社会 働く人の15%「アンダークラス」 - 毎日新聞
●日本の実質賃金の現状



と、いうことで、新宿で映画『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ映画『ビッグ・シック』公式サイト

アメリカで弁護士として成功したパキスタン移民の息子、クメイルはスタンダップ・コメディアンとしての成功を夢見て、シカゴの場末のライブハウスに立っていた。ある日 ステージを見に来ていた大学院生エミリー(ゾーイ・カザン)と恋に落ちる。しかし、パキスタン人の家族はお見合い結婚が常識で、恋愛結構などしようものなら一族から村八分になる掟になっている。それを言い出せずにいたクメイルはエミリーを傷つけて別れてしまう。数日後 エミリーが原因不明の病気で昏睡状態に陥り、クメイルは仕方なく付添うことになる。慌ててやってきたエミリーの両親は娘を傷つけたクメイルを毛嫌いするが


主役を演じているパキスタン人移民出身の俳優、クメイル・ナンジアニの実話をプロデューサーのジャド・アパトーが気に入り、映画化した作品。アメリカでは限定公開から始まり、全米に広がる異例の大ヒットとなりました。トランプがイスラム圏への偏見をまき散らしている最中でも、パキスタン人が主人公のラブコメディでもヒット作を作れたわけです。今年のアカデミー脚本賞にもノミネートされています。アカデミー賞ゴールデン・グローブ賞も受賞作だけでなく、候補作の方が面白かったりすることはよくあります。これも、その一つかも。


ジャド・アパトーと言えば、権力も常識も笑い飛ばすお下劣コメディの監督・プロデューサーとしてアメリカでは大ヒットを飛ばしています。『ブライズ・メイズ』や『俺たちニュースキャスター』、『スーパー・バッド 童貞ウォーズ』、『エイミー・エイミー・エイミー』などヒット作は数知れません。昨年の『俺たち ポップスター』はサイコーでした。

それだけでなく、この人は大名作『はじまりのうた』のようなハート・ウォーミングでロマンティックなお話しも手掛けています。この作品は後者の系列に属します。とにかく、ボクはジャド・アパトー印のものはとりあえず見ることに決めているんです。パキスタン系のクメイルとユダヤ系のエミリー、二人のロマンティック・コメディです


今作の主人公クメイルはパキスタン人移民の息子です。一応 イスラム教徒ですが、信仰に熱心ではありません。お酒も平気でたしなむ普通のアメリカの若者です。父親は50歳を過ぎてアメリカの大学を出て弁護士として成功しました。息子は親の心、子知らずで堅い職業ではなくお笑い芸人(スタンダップ・コメディアン)としての成功を夢見ていますが、はっきり言って全然面白くない(笑)。


そろそろ適齢期を迎えた彼に親は次から次へとお見合いの話を持ってきます。パキスタンではお見合い結婚が普通で、恋愛結婚でもしようものなら親不幸者として村八分になるそうです。母親が手配したお見合いで次から次へと連れてこられるパキスタン人のお嬢さんたち。アメリカで成功したパキスタン人のコミュニティってあるんですね。
●クメイルの家族。中央は父親。左は兄。兄もお見合い結婚です。


ところがクメイルはライブハウスに来ていた大学院生、エミリーと恋に落ちます。彼女はパキスタン人どころか、典型的なアメリカの女の子です。


演じるのはゾーイ・カザン。有名な監督・脚本家のエリア・カザンの孫娘です。バリバリのユダヤ系(+ギリシャ系)がイスラム教徒と恋に落ちる。以前 彼女が脚本を書いて主演した『ルビー・スパークス』でもそうでしたが、超々可愛い。とびぬけた美人という訳ではないんだけど、口が悪くて、気が強くて、頭が良くて、オフビート感があふれていて、本当にかわいい。もう、彼女が画面に出ているだけでボクは満足です(笑)。

●知的な会話を楽しむ仲良しカップルでしたが。



気が弱いクメイルは親が次から次へと持ってくるお見合いのことや恋愛結婚なんかしたら一族から村八分にされるパキスタンの慣習を彼女に中々言い出せません。結果的に彼女を傷つけて別れてしまいます。ところが、その数日後 彼女は謎の病気で倒れてしまい、昏睡状態になってしまう。クメイルは知り合いがいない彼女の入院に付添うことになります。ここから心配して駆けつけたエミリーの両親とクメイルとのお話しになっていきます。
●エミリーの両親(左)とクメイル。エミリーの母はアカデミー賞女優のホリー・ハンター


当初はエミリーの両親は、彼女を傷つけたクメイルを許そうとしません。それでも人が良いクメイルはエミリーに付き添っています。ぎこちなかったクメイルと両親ですが、原因不明の難病という逆境のなかで時間を共有するうちにお互いの苦悩も気持ちも判ってくる。ユーモアが気持ちを解きほぐしていく。年齢の差だけでなく、異なる文化、宗教、それらの違いを互いに乗り越えていく。難病も乗り越えていく(実話です)。ユーモアは難病と闘う最良の武器なのかもしれません。
終盤 クメイルが舞台で演じた『アメリカのパキスタン人社会には序列がある。一番偉いのがエンジニア、次が弁護士、それからビジネスマン、その下がISIS、一番下がコメディアン』というギャグには腹を抱えて笑いました。が、絶えずそういう眼で見られながら、クメイルたちは生きているわけです。人間だったら誰でもそんな状況に思うところはあるはずです。映画の最後に登場するゾーイ・カザン嬢もまばゆいばかりに美しい。

●全く面白くないクメイルの芸人仲間もいい味を出しています。



知的でロマンティックで心が温まる、質が高いコメディです。人種差別を、宗教を、文化の違いをお互いがユーモアと思いやりで乗り越えていく。逆境にいるからこそ、皆が和解できる。 主演のクメイルが出がけた脚本はちょっとピリッとしないところもありますが、丁寧にできています。人生の苦悩を笑い飛ばしながらも、思慮深さを忘れないし、思いやりに満ちている今年のアカデミー脚本賞ノミネートも当然です。全ての登場人物が愛おしい


ジャド・アパトーはトランプの当選にいち早く怒りの声を上げた人です。そして、主演&脚本のクメイルはアカデミー脚本賞にノミネートされた先日5日の授賞式で『ボクは白人のヒーローが活躍する映画が好きだった。イスラム教徒が活躍する映画を白人が好きになってくれることもあるはずだ』とスピーチをしていました。この映画が作られ始めたのは2015年の末だそうですが、こういう映画が今公開されたのは大いに意味があるでしょう。主演の二人の演技も素晴らしいし、脇を固めるエミリーの両親役も素晴らしい。『はじまりのうた』程ではないにしろ、実にいい映画です。個人的にはアカデミー作品賞候補の『スリー・ビルボード』や『シェイプ・オブ・ウォ―タ―』より、ボクは好きです。