特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『大連旅行記(食べ物編)』と映画『人生はシネマティック』

毎度のことながら週末はあっという間に終わってしまいます。週末どころか11月も終わりじゃないですか(笑)。ああー12月は嫌だなあ。忘年会なんてものが世の中になければいいのに。
●朝陽に輝く今朝の紅葉


今日 アメリカの有名雑誌『タイム』や『フォーチュン』、『スポーツ・イラストレイテッド』を発行するタイム社の身売りが発表されました。

米誌タイムが身売り 28億ドル、同業のメレディスに :日本経済新聞
驚くべきことにティーパーティーの黒幕、極右の大金持ちコーク兄弟が糸を引いていました。買収資金の約4分の1をコーク兄弟が出している。編集や経営には関与しない、と言ってますけど、関与しないのであれば買収を支援するわけがありません。これからまた、フェイク・ニュースも含め色々世論誘導をやってくるでしょう。アメリカの話だけではありません。現代の社会は一人一人の見る目が一層問われてくることを感じさせるニュースです。


さて、ボクが人生で最も興味があるものと言えば、食べ物です(笑)。大連での食べ物の感想を書きたいと思うんですが、中華はあんまりフォトジェニックじゃないんですよね(笑)。
大連は港湾都市ということで海鮮が名物だそうです。初日は魚を選んで料理してもらうという店に連れて行ってもらいました。





でかいエビや生ウニ、魚料理だけでなく刺身まであるような店でしたが、海鮮系はそんなに美味しいとは思いませんでした。調理法の問題なのかなあ。それより、どこの店でもそうだったんですが、とにかく野菜料理がおいしい。炒める前に油通ししているからでしょうか、レタスや葉物を炒めても水分が全然でてこない。あくまでも歯触りはしゃきん〜。味付けは塩味、辛い味、甘辛い味、酸っぱい味。現地の人と食卓を囲むと野菜料理6割、肉2割、残りは魚かスープという配分で食べていました。確かにそれがヘルシーだし、おいしいです。やっぱり地元の人が食べているものが一番です。
●一枚目は大根料理。酸っぱくて超美味しかった。


●だけど、この肉は超美味しかった!。羊の骨付き肉。魚でも肉でも骨付きを尊重するのは中国の人は賢いです。


ホテルの朝食はブッフェ形式です。洋・中選べるんですが、ボクは外国へ行ったらその国の料理しか食べないことにしています。外国で日本食なんか絶対食べたくない(笑)。この朝食はまあまあ、美味しかったです。



一方 企業の食堂はこんな感じ。200円くらいでおいしそうな麺類が食べられるんです。これはいい!出汁もその場で取ってる手作りですからね。ファーストフード風だけど、そうじゃない。東南アジア全般はそうかもしれませんが、こうやって朝から外食で安く美味しいものが食べられるから、家では料理を全くしない人も多いそうです。
家庭を持っている女性のコンサルタントの人たちと話していると、家事分担の話題、舅との問題とかが出てきました。日本より遥かに女性の社会進出は進んでいるけど封建的な風習、男のバカさ加減は残っているんですね。ボクの家では、毎日ボクが夕食作ってる間 奥さんはビール飲みながらTV見てるよーと言ったら、ため息つかれてしまった(笑)。


●3時頃になると食堂のテーブルの裏で従業員の人が寝ています(足しか見えないかもしれませんが)


2日目の夜に連れて行ってもらったのが火鍋。四川の料理ですが、本場並みの味がするという現地の人のお墨付きです。火鍋は日本にもありますが、味は全然違いました。辛い!(笑)




白い方は鶏スープですが、黒い方は地獄の釜の様です(笑)。四川の唐辛子と山椒の辛さで文字通り痺れるような辛さ。特に野菜を煮たら大変。辛さがしみこんじゃって、食べると文字通り意識がもうろうとしてきます(笑)。やばいと思ったので肉だけ、数切れしか食べなかったんですが、美味しいことは美味しい。帰り際に中国人の女の子から、『ホテルに帰ったら水は飲んじゃダメ、お湯を飲んでくださいね』と言われました。辛いものを食べたら身体を冷やすのは禁物だそうです。言いつけを守ってお湯を飲んで寝たら、あーら びっくり、見事なデトックス効果でした。まさに医食同源


最終日は地下にある偽物街へ連れて行ってもらいました。駅前の地下街なんですが、マジでヤバいんですよ。
●駅前はこんな感じです。


●近代的なビルの下の地下街。一昔前の日本みたいです。

●地下街を更に下り、駐車場の奥のカーテンをくぐるとこういう風景が広がっています。シャッターが閉まっていて、店の人だけが表に出ています。シャッターの裏は偽物天国です。


本当はもっとヤバいところもあるんですが、そこはさすがに怖くて写真を撮れませんでした。さらに地下へ降りていって機械室の扉の奥、電話をして鍵を開けてもらう。まじ、怖いです。中国 奥が深い〜。


2泊3日の間 支払いはホテル以外 全てスマホ電子マネーでした。レストランもコンビニも怪しい偽物屋も空港のお土産屋もぜーんぶ、we-chat(向こうのSNS)による電子決済。現金はめんどくさい、カードは手数料が嫌、だから電子マネーだそうです。駐在の人に聞くと、上海では物乞いの人も電子マネーで小銭をもらってるそうです。今や両替なんか不要な仕事になりました。成田空港の三菱UFJの両替所には7人も人がいましたけど、勝ち組の三菱UFJですらそれじゃ、競争に勝てるわけがありません。今朝も電子マネー化が進んだスウェ―デンの記事が毎日新聞に出ていましたがhttps://news.yahoo.co.jp/pickup/6262623、世の中はどんどん変わっていくでしょうね。

●これは二人カラオケボックス。歌ってるところが周りから見えます。中国人の女の子に聞いたら、楽しいよーって言ってました。


やっぱり良くも悪くもエネルギーだなーと思います。やる気もエネルギーもないボクはどう対処すればいいのか。やっぱり文化でも何でもいいから、独自性をどう打ち出していくか、です。このことは今後 日本人が真剣に考えなくてはいけない課題だと思いますね。




ということで、新宿で映画『人生はシネマティック!

舞台は第2次世界大戦下のロンドン。売れない画家と結婚した主婦カトリン(ジェマ・アータートン)は生活のため脚本家の秘書として働いていた。ある日 彼女の書いたコピーが評価され、戦意高揚のための宣伝映画の脚本陣に加わることになる。テーマは、ダンケルクの戦いで兵士を救った双子の姉妹の感動秘話。ところが、かってスターだった老俳優のわがままや政府と軍部の検閲など様々な邪魔が入る。果たして映画は完成するのだろうか
●主人公のカトリン(右)は最初は脚本家(左)の秘書として、のちには共同脚本家として国策映画に加わります。


ちょっと前に大ヒットした映画『ダンケルク』ブームに載った実話を基にした話かと思ったのですが、違いました。純然たるフィクションです。ビル・ナイを除いて出演者も全然知らない人ばかりだし、監督とかは全然意識しないで見に行ったのですが、実は『17歳の肖像2010-05-24 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)、『ワン・デイ人生の夏、秋色の心:映画『ワン・デイ』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)デンマーク人女性監督のロネ・シェルフィグです。あやうく見逃すところでした(笑)。
●撮影に入ると老俳優(ビル・ナイ)(左)はボケてるくせに我儘ばかりで、主人公(ジェマ・アータートン)(右)をてこずらせます。男は頭が悪いから女性に面倒をみてもらえると思いこんでいるんですね。



主人公のカトリンは売れない画家と結婚しましたが生活のために働きに出ます。女性の社会的地位は低かったのですが、戦争に大勢の男が出征して、オフィスも工場も人手不足でした。カトリンは脚本家の秘書として働きますが、文才が認められ、難航していた宣伝映画の脚本家の一人として抜擢されます。
最初はいやな感じです(笑)。まず主人公の旦那がバカ。旦那はウェールズ出身で二人で駆け落ちしてきました。この旦那はバカで稼ぎもないくせにプライドだけ高い。
●カトリンは上司兼将来の恋人の脚本家(右)に心を惹かれていきます。でも こいつも頭が悪い


カトリンって聞きなれない名前です。これはキャサリンという名前をウェールズ風に読み替えたものです。ウェールズ出身の売れない画家に惚れこんだカトリンは名前まで変えているんです。周囲には主婦と言うことになっていますが、実は結婚はしていません。
カトリンの上司、やがて恋人になる脚本家もバカ。毒舌なのは良いとして、やはり偉そうです。というか、この映画に出てくる男は全部そうです。時代的背景からして仕方ないんですが、やはりバカを見ていると腹が立ちます(笑)
●主人公役のジェマ・アータートン(左)は微妙なルックスですが、ボクも段々惹かれてしまいました(笑)。右は落ち目の老俳優役のビル・ナイ


が、見ているうちにだんだんお話に引き込まれていく。監督が徐々に小さな話を積み重ねていく手腕、そしてわき役陣が非常に魅力的だからです。
セクハラオヤジとしてジェレミー・アイアンズが出ていたり、ビル・ナイが本当に素晴らしいボケ老人役で出ていたり、見どころたっぷりです。特にビル・ナイと「おみおくりの作法」のエディ・マーサンの掛け合いは超最強です。いかにもイギリス人らしい癖のあるルックスの二人の渋い掛け合いは、まさにイギリス最強の漫才コンビです!
●一枚目はビル・ナイ(映画ではありませんが、いかにもこの人らしい写真)、二枚目エディ・マーサン(おみおくりの作法 より)。二人とも如何にもイギリス人というルックス。



カトリンも最初はバカ旦那との共依存状態ですが、過酷な戦争の中 映画の脚本書きや制作にかかわるうちに成長していきます。男に頼らない、真に自立した人間像が組みあがってくる。実に見事です。それを手助けするのが周りのあっというような人たちであるところが泣かせます。
●カトリンはアパートをドイツ軍の爆撃で破壊され、地下鉄の駅で寝泊まりします。大勢のロンドン市民がそうやって空襲に耐えたそうです。


映画作りをテーマにした作品ですが、こちらも手を抜いていません。ダンケルクをテーマにしたインチキ・宣伝映画なんですが、笑わせながらシリアスなところが盛り込まれています。ビル・ナイの渾身の演技のせいもありますが、劇中劇で泣いちゃったのは初めてでした。
●カトリンは実際にダンケルクに兵士を救いに行った双子の姉妹(右)に取材して映画の脚本を書きます。


はっきり言って、この映画 大好きです。ダンケルク』の20倍は感動します死や差別、生活の厳しさなど現実の厳しさを直視しながらも、それでも見る人を鼓舞し、希望を示す人間を見る眼が温かいから、観客の心が自然とぽかぽかしてくる。どうしたら、世界に対するこういうまなざしを持つことができるのでしょうか。監督が過去に作った『17歳の肖像』や『ワン・デイ』の良いところが成熟した形で積み込まれている。大傑作とまでは言わないけど、見事な、今年を代表する傑作です。これは見逃してはいけない映画です。