特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『原発問題の本質』(の一つ)と、見逃すには惜しい映画4題『アバウト・タイム』、『グレート・ビューティ』、『ショート・ターム』、『フランク』

年末も押し迫ってきました。もう『良いお年を』とか言ってるもんなあ。外出なんか嫌いだけど、映画を見るために街に出ざるをえません。その街の喧騒もこちらにカネを使わせるための陰謀としか思えないです。3年前は街も静かで良い感じだったけど、今はどうなってんだよ!ボクは夜10時には寝床に入る普段通りの静かな生活を続けたいだけなのに。
今日は冬至、ゆず湯でもやろうかなと思ってスーパーへ行ったら、ゆずが1個390円!さすがに断念。で、帰宅してNHK7時のニュースをみたら、動物園のカピバラくんがゆず湯に入っている映像が流れていました。大人げないと思ったがさすがにムッとしたよ(笑)。
NHKで流れたのはこの画像ではないデス(笑)

                                        


さて、この前、マスコミ関係者から、関電の話を聞く機会がありました。
                                      
 関電は高浜原発の再稼働に躍起になっています。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141219-00000165-jij-bus_all
その理由は関電が倒産の危機に直面しているからです。既に関電は2期連続赤字だが、3月も赤字だと公認会計士から『企業の存続に疑問がある』という但し書きを有価証券報告書につけられます。そうなると燃料輸入などの取引や銀行借り入れに支障が生じます。現在でも資金繰りはかなり苦しく、既に某銀行には融資に難色を示されています。そのため関電は期末の3月までに高浜原発をとにかく再稼働させようとしている、おまけに関電の会長・社長は安倍晋三とべったり、だそうです。
                                          

関電が2期連続赤字で経営が危機に瀕しているのは本当だから、実情はそういうことだとボクも思っています。巨大企業の生きるか死ぬかの話だから、なかなか止められないでしょう。やはり問題は目先のカネ、です。もともと関西電力は電力会社の中でも経営能力が低い、と言われていました。トヨタという超大口顧客のプレッシャーにさらされている中部電力、旧経営陣が一掃されて民間出身の会長が厳しいコスト削減をしている東電と異なり、関西電力原発再稼働しか経営改善手段がないそうです。
東京電力は経営合理化で黒字化して値上げを1年封印
東京電力、「再値上げ1年封印」の真意 | 資源・エネルギー | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
東北電力は昨年黒字化した(同社の決算短信)。http://www.tohoku-epco.co.jp/ir/report/statement/pdf/h26_tan.pdf
中部電力原子力安全保安院のやらせ発言依頼を浜岡の所長がはねつけました。九電とは大違い。
中部電力「やらせ発言依頼」は、浜岡原発の水谷所長がはねつけた | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
                                            
311で大被害を受けた東電も東北電力原発無しで黒字化できたのに、いくら原発比率が高いにしろ関電が黒字化できないのは不思議です。関電にしろ、九電にしろ、要するに競争にさらされない独占企業の経営者はそれだけ無能!ということなんでしょう(*社内政治や役所や政治家へのおべっかは有能かも)。


原発の問題の本質の一つは巨大な独占企業はぶっつぶさなければならない、ということです。それと比べたら、安倍晋三がどうのとか、原発ムラがどうの、とかは表面的な問題に過ぎない。巨大な独占企業は自分たちが有利なように世の中のルールを捻じ曲げようとする。経済原則を無視した原発補助金が良い例です。かといって巨大独占企業を国有化したらいいか、と言うとそれは大間違いです。ソ連やイギリス、中国の例で明らかなように、国営企業は堕落するということははっきりしています。まして経産省のような日本の役人の体たらくはどうでしょう。ボクも若い頃は、大企業はみんな国有化しちまえ、と思っていましたが(笑)、現実には国有化は解決策にならない。

解決策は、電力にも市場競争を持ち込まなければならない、ということです。そういうと嫌な顔をする人もいるでしょうが、企業は市場競争がなければ腐ります。ボクも含めて人間はサボるし堕落するものです。逆に適度な競争さえあれば、企業は世の中にメリットを生み出す、こともあります(笑)。

原発をやめるには電力会社の地域独占を止めさせることが絶対条件でしょう。独占さえ潰せば、自然エネルギーを供給する会社だって出てくるだろうし、火力で効率的に電気を作る会社も出てくる。そうなったら呑気に原発なんかやってられなくなる。ドイツが原発を止められたのは、電力市場が独占されておらず供給に不安がない、それに原発関連企業の政治力が限定されていることが大きな理由(の一つ)ではないでしょうか。日本でも一応 今は電力会社を分割して電力を自由化するということが決められているが、骨抜きにならないよう市民の側はしっかり見張っていかなければならないでしょう。そこが大きなポイントだとボクは思っています。

                                               
他には、自民の某女性議員が竹●●●の愛人であることがアメリカの共和党筋に握られたので第2次安倍内閣から外れたと言う、興味深いものもありましたが、それはさすがに自分では裏がとれないので書くのはやめておきます、って書いてるじゃん(笑)。
                                                


今日は今まで感想を書ききれなかった、今年下半期の面白かった映画をまとめて取り上げます。

最初は『アバウト・タイム』(11月)

イギリスの片田舎に暮らすティーンエージャーの主人公はある日 父親から一族の秘密を打ち明けられる。彼ら一族の男子はタイムトラベルができるのだ。地味で奥手な主人公はその後、どんな人生を歩んでいくのか
ブコメディ、しかもタイムトラベルものなんてくだらない(失笑)と思って公開後2か月無視していましたが、毎日 名文でブログを綴っておられる、ぷよねこさんが『「ガープの世界」テイスト』と書いておられたのを読んで、思わず見に行った作品2014/11/8 未来から来た人間だと思って…。 - ぷよねこ減量日記 2016。『ガープ』はボクの生涯ベスト1なんだよ。
この映画、舐めてました。市井の人間の平凡な人生の素晴らしさが、イギリス人らしいシニカルなユーモアとともに描かれています。画面も美しいし、音楽も良い。タイムトラベルができるようになって『またディケンズを読み直せる』と喜ぶセリフがこの映画の根本的な価値観を表しています。自分の葬式にニック・ケイブをかけさせるビル・ナイのロックジジイぶりには恐れ入るし、主人公の恋人役のレイチェル・マクアダムスも美しい。なんだかんだ言って東京では9月から12月まで超ロングラン公開されているのがこの作品の素晴らしさを示しています。ぷよねこさん、教えていただきありがとうございました。
●主人公と変人のロックオヤジ(ビル・ナイ


                         
2つ目は『グレート・ビューティ』(9月)

ローマに暮らす初老の男性作家。人生の黄昏に向かいつつある彼の人生を、過去からの遺産に彩られたローマの美しい光景とともに描く。
今年のアカデミー外国語映画賞を受賞した作品。あらすじは殆ど、ありません(笑)。ローマの美しさと黄昏を迎えた人生の感慨をひたすら堪能する作品。こういう映画は感想を書くのは難しいですが、ボクは大好き。やや観光客向け映画という感じもするが、美しい画面と散文調の美しいセリフを浴びるように味わえます。コロシアムの脇のアパートメントの屋上での深夜パーティ、主人公と元共産党の美しい中年女性との会話シーンなんか良かったなあ。ボクにとって、この映画は今年のベスト10候補。早くDVDでないかなあ。
●メランコリーに沈む主人公。こんな古代遺跡を使って画を撮ればカッコいいに決まってる。これは卑怯です(笑)。


                               
3つ目は『ショート・ターム』(11月)

家庭環境に問題がある子供たちを短期預かりを行う保護施設。自分も保護施設出身で、子供たちを立ち直らせようと奮闘する女性職員とその恋人の姿を描く。
決して明るくはない話。DVに近親相姦、人種差別に貧困、子供たちの厳しい現実を正面から描いています。生き辛さと言う点では日本に住む人間にとっても他人事ではありません。だが、この映画は社会の負の部分をリアルに描いていますが、将来へのほのかな希望を説得力を持って提示することにも成功しています。作り手の側に絶望に逃げ込んで目を閉じてしまわないだけの知性と勇気があるのだと思います。美しいアコースティックな音楽、主人公の女性職員(ブリー・ラーソン)の熱演も相まって、さわやかな余韻が残る、とても良い映画でした。
●主人公の女性職員。良い顔している。


                                                                          
最後は『フランク』(10月)

イギリスの片田舎に住む音楽好きの主人公は、ツアーにやってきた奇妙なバンドにひょんなことから加入することになる。バンドのリーダーの名前はフランク。彼は常に被り物をかぶっており、ステージだけでなく、寝る時もシャワーを浴びる時も食事の時も被り物を外そうとしない。その他のメンバーも自殺未遂をしたり、凶暴だったり、おかしな人間ばかりだ。主人公はスコットランドの片田舎に連れて行かれ、レコーディングのための1年間の合宿生活を続ける。フランクの音楽的才能に驚嘆はするものの、自然の中でひたすらリハーサルを繰り返す生活に飽き飽きした主人公はYouTubeでバンドの様子を公開したところ話題になり、バンドはテキサスの有名ロックフェスに呼ばれることになるがーーー

フランクを演じるマイケル・ファスベンダーは『それでも夜は明ける』など渋い作品だけでなく、二枚目として『Xメン』などメジャー作品にも出演する旬のスターの一人です。実際『フランク』の上映館にもファスベンダー目当てであろう若い女性が一杯いました。満員の観客の半分くらいがそうだったのではないでしょうか。
ところがこの作品ではファスベンダーは殆どずっとお面を被っています!ざまあみろ(笑)。この風変わりな映画の説得力を高めているのは音楽のかっこよさ。ロックバンドにテルミン(原始的な電子楽器)を加えた雑音交じりの音に奇天烈な歌詞を加えた音楽が格好いい。フランクは幼少時の心の病から、常にお面を被って暮らすようになった。それが普遍的に見えてしまうのが現代に生きる者の性なんでしょう。ボクだってお面を被って生きている。だから最後に彼が人前に素顔を晒して、無言で演奏を始めるところは心に染みました。
●お面を被っているのがマイケル・ファスベンダー(笑)。その右側が主人公