特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

読書『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』と『0207再稼働反対!首相官邸前抗議』

 今朝の東京は今冬初めての氷点下。もう立春過ぎですが、温かくなったり寒くなったり、2月いっぱいは寒いのは仕方ないですね。
 ボクはダイエットのために毎朝 5キロ歩いて通勤しているのですが(行き返りで毎日10キロ)、7時台でも朝陽がまぶしくてサングラスが必要なくらいになってきました。確実に暖かくなってきているのを感じます。
●1か月前はまだ開きかけだった駒沢公園の梅もほぼ8分咲きになりました。


 新型肺炎の方は相変わらずヒステリックな報道ばかりです。横浜に入ってきた客船がどうとか、ニュースのトップで報じるような話か!っていうんです。ホント、テレビってバカばっかり。

 アメリカでは肺炎どころじゃなく、この1年 インフルで1万人!も死んでいるそうじゃないですか。テロよりひどい(笑)。規制緩和、民営化の行き過ぎで高額医療費を放っておくような社会になるとどうなるか、ということですよね。そちらのほうがよほど恐ろしい。
www.nikkei.com


 感染防止や治療法の対策は出てくるにしても、輸出にしろ、インバウンドにしろ、経済面での影響はこれから、でしょう。かなり大きな影響になるんじゃないですか。
 観光地、京都なども清水寺の辺りですらガラガラ、今こそ、行くのはチャンスじゃないですか!(笑)。今は無理だけど定年になったら、こういうチャンスには直ぐ行っちゃいますね(笑)。 

 現地の人に話を聞いたら、中国では春節が一週間延長されて工場も止まっていますが、それだけでなく物流も止まっているから店も殆ど閉店状態だし、食料や日常品も中々買えないらしい。
 工場は来週から当局の許可を受けて稼働開始が可能になるそうですが、出稼ぎの人ばかりの工員さんがいつ戻ってくるか、外注さんがいつ稼働するのか、また工員さんに品切れ状態のマスクを毎日2つ支給しろとかの当局の無理難題などで、まともに稼働するのにはまだまだ時間がかかるようです。

 日本のマスクだって殆ど中国工場で作っているんでしょうし、中国から輸入している原材料・部品だって入ってこなくなるから、これから日本国内の生産や消費にだって問題が出てくる。ホンダ・トヨタの自動車の生産遅れや任天堂の新ゲーム機が発売遅れが報じられていましたが、パソコンなんか納期すらわからないと言ってますからね。これから日本でもモノ不足は起きるかもしれない。
 昔のSARSの時と違って、今の日本は中国なしじゃ生きていけないんですよ。嫌中とか言ってる奴はホント、バカ。
 
 今年は戦争とか米大統領選挙とかバブルとか様々なリスクが言われましたけど、こんなリスクがあるとは思ってもみませんでした。やはり人智というものには限りがあるものです。



 さて、読書の感想です。『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』(現代書館

 著者の田中信一郎千葉商科大学准教授(政治学)ですが、もともと国会議員の田中秀征中村敦夫の秘書をした後、民主党政権当時の『行政刷新会議』と『国家戦略室』でスタッフ、その後 長野県で5年間 環境政策の立案に従事したという人です。だいたいスタンスが判ります(笑)。民主党政権の内実を間近に見てきた学者です。

 twitterで見て、まともな人だなと思ったので、著書を読んでみました。ちょうど今週、この本の内容と被る彼の論考が今週のヤフーニュースに大きく出ました。
●論点が整理されていて面白いですよ。全文 無料で読めます。

hbol.jp
安倍首相と枝野代表の「施政方針演説」を比較してみた(HARBOR BUSINESS Online) - Yahoo!ニュース


 この本ではまず、戦後の経済構造や政治の流れを振り返ります。そして現在に日本が、何故こうなってしまったか。誰にでもわかる、非常に平易な筆致です。
 著者によると、過去の日本は人口増・高度成長をベースにした部分最適解を追求する政治構造』としています。そこから脱することができないから、人口減や低成長などの環境変化に追いつくことができていない、と。

 人口が増え、経済が成長していくことが当たり前の世の中では、政治の役割は経団連や医者会、中小企業団体、各種業界団体、宗教団体などの組織に利益配分することで良い。それぞれの団体、組織は全体のことはそれほど考えずに自分たちにとっての最適解(部分最適)を追求すればよい。そうすれば構成員(国民)に多かれ少なかれ利益がしたたり落ちる。過去はそういう構造だったというんですね。

 確かに自民党はそういう構成で成り立っていました。各種業界団体や宗教や地域の組織が自分たちの利益(部分最適)のために人々を束ね、集票することで長期政権を支えていた。政府は利益配分でそれに報いた。しかし、それら組織が衰退して無党派が増えてくると、自民党創価学会というもう一つの集票マシーンを取り込むことで延命している、それが現在です。

 しかし今後は人口増や経済成長を前提とすることはできません。人口は減っていくし、経済成長も難しくなってくると利益配分も出来なくなってくる。特に環境問題に取り組むためには利益配分どころか、一部の業界の利益を損ねることも必要になってくるかもしれません。

 つまり、従来の経済成長を前提にした部分最適体制の利益配分では今後は政治の役割は果たせなくなる、というのです。
 かといってアベノミクスのインフレ誘導や、れいわの消費税廃止やMMTによる国債発行は弥縫策に過ぎず、根本的な問題解決にはなりません。一時的にしか続けられないそれらの政策は持続可能性が低いからです。

 著者は『野党がやるべきことは経済成長を前提とした今の体制を延命することではなく、持続可能な社会を目指す政権構想を確立するべき』、と訴えています。インフレ誘導もMMTも過去の政治体制の延命策に過ぎないんです。

 著者の結論を整理すると、こうなります。

 政権交代が必要なのは安倍晋三だけの問題ではなく、今の部分最適を基にした自民党体制では人口減・低成長など今後の環境変化に対応できないからだ。野党は環境問題や持続可能な経済に重きを置いた全体最適を基にした政権構想を作り、新しい時代に対応するべきだ。

 前述の記事からも引用しましょう。別の言い方ですが、主旨は同じです。


 ボクの感想です。自民党を中心とした体制は部分最適解の集まり』というのは面白い指摘だし、鋭いと思いました。著者の社会に対する分析も7割がた同意できる。
 ただ、部分最適解の集まりということで考えれば、立憲民主も国民民主も共産党もれいわもそれほど違いはない。

 組合を無視できない立憲民主や国民や社民、組合や民商などが支えている共産党、消費税を下げれば経済はうまく行き、経済がうまく行けば世の中うまく行く?という二重の妄想に取りつかれているれいわ、どれも過去の部分最適の集まりで、抜本的に持続可能な社会体制を作っていこうという傾向は非常に薄い。

 ちなみにこの本のアマゾンのレビューには、財政支出削減とか、この本には全く書かれていないことでいくつも批判が載っています(笑)。著者は野党共闘の足を引っ張り続けるれいわをtwitter上で厳しく批判しているので、書いたのは山本太郎の支持者なんでしょうけど、ほんと、アホは困ります。
 れいわの支持者はデマ屋の集まり、とまでは言いませんが、デマ・陰謀論者が非常に多い。れいわにこれだけバカが集まってくるのは、かって三宅洋平と組んでたことからも判るように山本太郎自体がデマと親和性が高いのが理由でしょう。ムサシの不正選挙や地震兵器(笑)すら否定しないらしいし(笑)。
 そもそも自分たちがやってることが安倍晋三のサポートに過ぎないことすら判らないのだからどうしようもない。バカに政権交代なんかできるはずがありません


 自民党だけでなく野党も変わらなければいけない、野党がもっと国民の側を向かなくてはいけないんでしょう。そのためには国民の意識自体も変わっていかなければいけないのだと思います。


 だから今後の方向性について著者は『消費税廃止』など安易な具体的な答えを出すことを控え、根治的な経済・社会の体質改善を図るには政策決定過程の透明化や民主化等を進めていくことが重要としています。そこはその通りだと思います。


 今の世の中がどうやって形成されたのかを平易に整理・解説した上で、誰かに頼るのではなく、どうやって変えていくかを一人一人に考えさせる本です。
 ブログでもコメントでも、仕事でもそうですが、平易に表現できるということはたいてい、その人は物事を良くわかっている、ということです(デマの時もありますが)。ささっと読めますので、読む価値はある本だと思います。
●これじゃ、ムリ(笑)



ということで、今週も官邸前へ #金曜官邸前抗議
 東京はこの冬一番の寒さ、午後6時の気温は5度。でも朝が寒いからあまり寒く感じません。人間なんていい加減なものです😊。参加者は100人ちょっとくらいかも。
●抗議風景

 福島第1で溜まり続けている汚染水は昨年末時点で約120万トン、22年夏に用意したタンクがいっぱいになるそうです。汚染水の処理方法を検討していた経済産業省の小委員会は31日 、『汚染水の処分方法は海洋放出と水蒸気放出が「現実的な選択肢」』との報告書を出しました。



www.nikkei.com

 
 原発に対する賛否にかかわらず、こういうことはただでさえデマ、風評、決めつけが多いです。元ネタを読まないとだめだと思って、報告書を読んでみました。
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/017_00_05.pdf

 まず報告書は前提条件として、以前 処理済み汚染水への混入が問題になったトリチウム以外の放射性物質ストロンチウムなどは再処理して取り除く、ということにしています。それは当然です。

 報告書はその上で『地層処理』や『海洋放出』、『水蒸気として大気に放出』など5つの処理方法の得失を挙げています。海洋放出は日本を始め世界各国で、水蒸気放出はスリーマイル島の事故の際に実績があります。
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 確かに汚染水放出は34億円と最もコストは安い。過去の実績もある。ご存じの通り放射性物質トリチウムは毒ですが、水と分離できません。汚染水、もしくは気体の形で世界各国の原発トリチウムを薄めて排出し続けています。

 ちなみに今まで日本全体の原発ではトリチウムを海洋に年間380兆ベクレル放出していたそうです。福島第2は年17兆ベクレル、韓国の古里原発の放出量は年間45兆ベクレル、台湾の馬鞍山原発は年40兆ベクレル。この福島第1の汚染水を放出する場合は22兆ベクレル/年を予定しています。
 そう考えると汚染水放出というのは合理的な処分方法として理解はできます。
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 ただし、問題は住民の心理的な問題、風評被害だってありますから『海洋放出』が良い、と簡単に決めつけることはできません。風評被害リカバリーコスト(広報費や補償など)を考えたら、海洋放出も349億円という水蒸気放出とトータルコストは一緒かもしれませんし。

 いずれにしてもボクは『海洋放出絶対反対』とも言えないし、賛成とも言えないな。少なくとも『海洋放出』は議論の価値はある。いずれにしても報告書の内容の妥当性や放出しないで40年間タンクを増設し続けることも含めて、まだ包括的な議論が尽くされていない。
 もちろん、トリチウムみたいなものを放出しなくてはいけなくなるから原発には反対なのですが。

 一番の問題は、汚染水処理の問題ですら、総合的に話し合い、責任を取る主体がいないこと。漁業者や福島県は海洋放出反対でしょうし、政府・東電はとにかく早く放出したい、けれど政治家は責任を取りたくない。

 これはまさに田中信一郎氏が言っていた『部分最適の意思決定構造』です。だから有耶無耶のまま、進んでしまうんです。かといって野党が政権をとっても、きちんとした意思決定ができるとは思えない。国民がメリット・デメリットを冷静に考え、熟議していく、そして透明性を確保した意思決定をしていくしか解決策はない、と思うんです。