特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

この週末は暑かったです。
少し前まで、休みの日には身体が冷えるから足湯をしようとか言ってたのがウソみたい。4月も最終週になってしまいました。もはやゴールデン・ウィークだけが今週の生きる希望です(笑)。


さて、お怒りモードが続いています(笑)。麻生太郎が傲慢で無知なのは今に始まった事じゃありませんが、週刊新潮によると、あのゴミ男、『記者をみんな男性に替えれば済む話だ』といったそうです録音禁止ルールは誰を守るのか 記者とセクハラ、音声データ提供の是非は(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース

ボクはこう思います。
大臣や次官をみんな女性に替えれば済む話だ!って。
麻生太郎しかり、石原慎太郎しかり、福田淳一しかり、手違いで(笑)権力を握ってしまったアホジジイはさっさと死んでほしいです。酒と野球とゴルフしか能がない、こういうバカがいるから、新しい発想、新しい産業が出てこないんですよ。少子高齢化も進むんです。右とか左とか年齢も関係なく、こういう腐臭漂うオヤジ社会こそが敵!だとボクは思っています。もちろん女性だから良いというわけじゃなくて、稲田朋美山谷えり子丸川珠代みたいなオヤジ社会の手先そのものの右巻きの低能ババアも消えて欲しいですけど。
●セクハラというと、昨年末からずっと上映が続いている名画『バーフバリ2 王の凱旋』の名シーンが思い出されてなりません。



●クリックすると拍手喝采の名シーンが見られます。↓
洋画台詞&シーンbot on Twitter: "「何があった」
「列に並ばせるふりをして、女の体をなで回していた。私の番が来たので、指を切った」
「そなたが悪い。切り落とすべきは男の指ではない…首だ!」
(バーフバリ 王の凱旋)… "

●元SEALDsや未来公共の有志の子たちが街宣をやるそうです。




さてさて北朝鮮が核実験やICBMの発射を中止すると発表して、テレビでは大騒ぎしてましたが、ボクは非常に違和感を持ちました。核実験やICBMアメリカには関係あるけど、日本には関係ないじゃないですか(笑)。拉致被害も家族にとっては大変な問題でも国全体にとっては大した問題ではない。生死だって不明だし、特別扱いしすぎでしょう。拉致の政治利用はやめろって。日本にとっては中距離ミサイルの方が問題だし、別にミサイルなんか使わなくても原発にテロでも仕掛ければいいんだから(笑)、こりゃ、防ぎようがない(笑)、ちゃんちゃん。


アホの安倍晋三が今迄 散々強硬論を煽ってきてしまったので、今 日本に出来ることは米朝会談がうまくいくことをお祈りするのと(笑)、どこか適当なタイミングで対話を始めるしかない。どうせ蚊遣りの外だし(笑)。それにしても将来 韓国と北朝鮮が統一でもされたら、日本にとってえらいことになるでしょう。そういうことに備えて今のうちから中国と仲良くしておくとか考えておいたほうが良い。


ただ、思うんですよ。隣にこういう国があった場合、どういう風に対処すべきか。威勢が良い強硬論は判りやすいけど、戦争のリスクは高まります。いくら軍備を強化したって、たとえ日本が核ミサイルを持ったって、国土が狭くて人命のコストが高い日本は守れっこない。かと言って、言葉が通じないような相手だったらどうするか(ボクは北朝鮮は金くんの生存欲求がありますから、言葉は通じると思います)。


今回はそういうことを考えさせる映画です。



ということで、映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』オフィシャルサイト

1940年5月 第2次世界大戦勃発後、ナチス・ドイツの快進撃が続く。イギリスはノルウェイで敗北、ベルギーやオランダは降伏、フランスの陥落も近い中、イギリス軍はダンケルクに追い詰められていた。絶望的な選挙区の中 英国首相に着任したばかりのウィンストン・チャーチルゲイリー・オールドマン)はヒトラーとの和平か徹底抗戦かという難問を突き付けられ……。


第2次大戦時のイギリス首相、ウィンストン・チャーチルの1940年5月の約20日間を描いた作品です。昨年話題になった映画『ダンケルク』と同じ時期、向こう岸の出来事です。ドイツの快進撃が続き、ベルギー、オランダ、ノルウェイが降伏、フランスも風前の灯となっている時期です。


ボクはチャーチルという人には興味があります。イギリスへ行った際 議会の前で撮ったこの写真をtwitterのアイコンにしてるくらい(笑)。


冷静に彼のことを評価すると、はっきり言ってロクでもない人間です。帝国主義者反共主義者。戦争や冒険が大好きで若い時だけでなく、大臣になっても首相になってもやたらと自ら前線に出かけたがります。態度は尊大で毒舌家。おまけに朝はスコッチ、昼はシャンパン、夜はワインのアル中、近年は強度の躁うつ病患者であったことも判っています。
政治家としても失敗はかなり多い。第1次大戦当時 海軍大臣だった彼は戦車を開発させるという圧倒的な先見の明がありましたが、ガリポリ上陸作戦という大失敗作戦を立案、実行して、数万人の犠牲を出して、辞任させられています。その後も蔵相になって金本位制を導入、これも大失敗、イギリス経済に大混乱をもたらしました。インドなど植民地の独立にも絶対反対、ガンジーを乞食扱いしていました。
ボクが彼と同時代に生きていたら、無能な戦争屋!と このブログで散々罵っていたと思います(笑)。


自由党から保守党に復帰した1930年代 彼は政治的に不遇になります。そんな中で古典を読み、油絵を描き、レンガ積みを始め 生活を楽しむ。その一方 国際情勢の情報を集め続け、「ヒトラーは危険」と警告を発し続けた。第二次大戦前 イギリスもフランスも戦争を避けるためにヒトラーとは妥協的でした。チャーチルだけがヒトラーの野望、その本質を見抜いていた。大勢の中で一人、警告を発し続けるというのは並大抵のことではありません。その判断力はどうやってもたらされたものなのか。これは非常に興味があります。今の北朝鮮情勢を見たって、圧力と対話、どちらが正しいのか、時々そう考えちゃうじゃないですか。もちろん対話が最も大事に決まってますが、100%それだけで良いかというとそうでもないでしょう。


それにチャーチルは人間としても面白い。中学生の時、彼の若年時代の自伝『わが半生』を読んで、非常に感銘を受けました。
●幼少期から議員に初当選するまでを綴ったこの本は下手な冒険小説より痛快です。もちろんノーベル文学賞を取った『第二次大戦回顧録』も面白いです。ちなみに当人はノーベル平和賞が欲しかったので文学賞に不満だったそうです(笑)。こういう図々しさも笑ってしまいます。

わが半生 (中公クラシックス)

わが半生 (中公クラシックス)


成績の悪かった幼少時代から、晴れやかな軍服に憧れて軍隊に入隊、お金を稼ぐためにボーア戦争に新聞の特派員として参加し、敵軍の捕虜になったが脱走して敵地を縦断して帰還する冒険談はめちゃめちゃ面白い。口も悪いし態度はでかいけど、自分を笑い飛ばすユーモアを忘れません。何よりも権力やカネのためではなく、純粋に自分の楽しいことを追求する姿は人間として共感できます。公爵の三男で蔵相だった父親の息子にもかかわらず、地盤とかは関係なく、独力で国会議員になりましたし。独立独歩、ただの世襲議員とは全く違います。庶民の暮らしなんか判らない超お坊ちゃま育ちの彼ですが、決して庶民のことををわかったふりなんかしない。庶民に媚びない。でもチャーチルの身分は平民で、この映画の中でも爵位を持っている議員に敵意を燃やすシーンもあります。そういうところも面白い。
安倍晋三が秘書官連れて、この映画を見に行ったそうですが、そもそも独立独歩で国を救ったチャーチルと私利私欲のために国を利用するだけの三世議員のお前とは根本から違うから!


映画はゲイリー・オールドマン演じるチャーチルが首相に任命されるところから始まります。当時はドイツ軍にボロ負けしているイギリスにとって八方ふさがりの時期です。首相に任命される晴れがましさとかはほとんどありません。
チャーチル本人も起き抜けに新任の個人秘書に癇癪をぶつけ、妻に『態度が悪い』とたしなめられて、しゅんとなる。暗い重苦しい雰囲気の中でも、どこかユーモラスです。
シャンパンにスコッチ、狩猟に葉巻、贅沢な生活でいつも火の車だった家計をやりくりした妻に、チャーチルは生涯 頭が上がらなかったそうです。


国王のところに赴いても、国王に提案された定期ミーティングを『その時間は昼寝をするので』と断ってしまいます(笑)。国王の前で自分ひとりだけシャンパンをガバガバ飲みながら、そんなことを言う臣下はあまりいないでしょう(笑)。ボクはこういうところが好きなんです。緊急事態だろうが、国王だろうが、自分のスタイル、嗜好を優先させる。
キングジョージ6世(右)は保守党から労働党まで集めた挙国一致内閣を作るため、チャーチル(左)を宮殿に招きます


意外だったのは国王は当初はチャーチルのことが大嫌いだったんですね。チャーチルは公爵の家の生まれですから王室への忠誠心は篤い。でも毒舌と傲慢な態度で、ロクでもない奴と思われている。おまけに保守党の中でも嫌われている。自由党と保守党を行ったり来たりしたチャーチルの過去もさることながら、過去の失政も大きい。彼が首相になったのは前首相のチェンバレンヒトラーとの融和外交を繰り広げたため、立場が全く異なる彼でなければ野党の労働党の協力を得て挙国一致内閣を作れなかったからです。映画の中でも当初 チャーチルにエールを送るのは野党の労働党ばかりです。
キングジョージ6世。『英国王のスピーチ』の人です。兄の退位に賛成し、しかも毒舌家のチャーチルのことが最初は嫌いでなりませんでした。


ゲイリー・オールドマンは肥満体で真ん丸顔のチャーチルとは全く似ていません。だけど詰め物をして、メイクをした顔はまさにチャーチルのように見えます。顔のアップのシーンも多いですが、メイクしていることすら全くわからない。アカデミー主演男優賞の演技は、もちろん素晴らしいです。演説のシーンなんか、もともと名文のチャーチルの演説をゲイリー・オールドマンが朗読するんですよ。まるでクラシックの名演奏を聞いているみたい。見ているだけでも非常に楽しい。とても贅沢な体験です。
また、彼の演技は人格的に欠点が多いがどこか憎めないチャーチル像をうまく作っていると思います。保守党内では嫌われていたけれど、庶民には人気があったというキャラクターを良く体現している。それが後半のチャーチルの変貌につながっていくところは見事です。


Darkest Hour』という原題どおり、画面が全般的に暗いです。それはこの時期はイギリスにとって最もつらい時期だったからです。ヨーロッパ各国はナチスに降伏し、戦っているのはイギリスだけです。アメリカのルーズベルトは同情的ですが、米議会は欧州の戦争に巻き込まれることを恐れているから大っぴらには援助できない。
そんな中 今や30万人のイギリスの兵士たちがダンケルクに押し込められています。イギリス陸軍の大部分です。絶望的な戦局に、内閣の中も前首相のチェンバレンハリファックス(外相)など、チャーチルを蹴落とそうとする和平派が優勢です。それは判ります。徹底抗戦を呼号するチャーチルですが、ボロボロになって大英帝国が生き残ったとしても、良いことない。ある意味 和平派の云ってることは正しい。
●和平派のハリファクス外相。保守党の主流派で伯爵の爵位を持つ貴族院議員の彼は、平民から貴族まで挙国一致の体制を作るため首相を辞退したため、チャーチルが首相になりました。公爵の子孫でありながら平民のチャーチルは、ハリファクス爵位を持っていることも気に入りません(笑)。


一方 チャーチルは、ヒトラーの欲望は際限がなく、交渉して一時的に平和になっても最後は約束を破ると考えています。ヒトラーの本質そのものが悪、だと。しかし四面楚歌の状況に、さすがの彼も和平交渉に傾きかけます。10年以上 政界で孤立してきた彼ほど孤立に強い人間は稀だと思いますが、それでも絶望的な状況だった。
一方 ダンケルクの兵士たちも孤立しています。救い出すための輸送艦駆逐艦も足りない。窮したチャーチルは渡し舟や漁船など民間のボランティアを募ります。
●挙国一致のためにチャーチルの政敵である保守党主流派を引き入れた内閣では和平か、戦争か、激論が交わされます。


政界では独立独歩、悪く言えば孤独なチャーチルです。だが、あることをきっかけにチャーチルの心境に変化が訪れます。そして言葉を武器に彼は立ち上がる。暗かった画面に少しずつ明かりが入ってきます。最初はごくたまに、後半は少しずつ。『Darkest Hour』が明けていく。だが暗闇は明けていくが明けきることもない。この照明の変化がこの映画のもっとも印象敵なところでした。明るさの変化は彼の鬱病も重ねているとも思います。いろんな意味で重い、複雑な描写です。
チャーチルが庶民に混じって地下鉄に乗る後半の展開はちょっと作りすぎだろ、とは思いましたが、チャーチルが空襲を受けたロンドン市民たちを度々見舞っていたのは史実ですので、そんなに奇想天外なことではないかもしれません。


重厚な時代劇を見ているようで、非常に面白かったです。ボクは昨年の映画『ダンケルク』の10倍は面白かった。あちらは肉体的な話ですけど、こちらは精神的な話です。チャーチルの判断力、意志の強さ、性格の悪さ、傲慢さ、自分をも笑い飛ばすユーモア。いろんな要素が折り重ねられています。
ヒトラーが倒れた後、イギリス国民が選挙でチャーチルを退陣させ、労働党政権を選んだのも感心します。どう考えても、この人は復興向きではない。それでも困難な時代でチャーチルは一人、ヒトラーの本質を見抜いていました。本当に大局的に考えると彼の判断が正しかったのかどうかは判りません。ヒトラーを倒すために兵士や民間人が何千万人も死ぬ価値があったのか?でもヒトラーを倒しておかなければ、もっと多くの人が死んだかもしれません。どちらが正解か、ボクは自信がありません。
もちろんチャーチルルーズベルトヒトラー大日本帝国をぶっ潰してくれたからこそ、我々はこうしていられるわけです。ヒトラー大日本帝国が残っていたら、こんなブログを書いてたら即刻死刑になってるでしょう(笑)。そんなことまで考えさせてくるのが、この映画のもっともすぐれた点かもしれません。
単なる伝記映画の枠を超えて、現代の時代に置き換えても学ぶところが多い映画です。欠点だらけの人間でも、絶望的な状況に直面して、断じてあきらめず戦い続ける姿は感動せざるを得ません。