特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

過去が現在によみがえるお話:『最低賃金を引き上げるとファシズムになる?』と映画『ヒトラー暗殺、13分の誤算』

今週はめっきり、寒くなりました。時折 雨も降ってましたから冬物に衣替えするかどうか迷っていたのですが、強制衣替えをさせられたというかんじです。
どうして、年末になると宴会とかパーティをやりたがるんでしょうか(笑)。毎回毎年同じ愚痴で恐縮ですが、ボクは宴会というものが、ほぼ(笑)世界で1番嫌いです。美味しいものが食べられるわけではないし、他人と話す話題があるわけではないし、ボクにとって宴会&パーティは『苦痛』の一言に尽きます。大人だからニコニコしながら時間が過ぎるのを待っていますが辛くてたまりません。お客さん相手なら仕事だから我慢しますけど、それ以外はご勘弁くださいませ(笑)。
あと、ボクが大嫌いなのがパーティや宴会で使われる『ネットワーキング』(笑)って言葉。マヌケな外来語ですが最近は人脈つくりのことをこう言うそうです。確かに人脈というものはサラリーマンでも自営業者でもビジネスに役立ちますし、いざというときは自分の身を守る盾にもなります。はい、はい、おっしゃる通り、人脈は大事です。でも、いい歳こいても人見知りのボクはそういう器用なことはできません。見ず知らずの人と話すことなんかありませんよ(笑)。そういう場でも、ただ緊張するだけで、あとで気まずい空気を後悔したり自己嫌悪に陥る
                                              
不味い物食わされて、気まずい空気と不必要な緊張で嫌な思いをして、作り笑いで顔の筋肉を引きつらせ、貴重な時間を無駄にする帰りの電車も街も混むし、酔っぱらいはバカで臭くてうるさい。極力 宴会は断るようにしていますが、どうしても逃げ切れないものがいくつか出てくる。
世の中に宴会禁止を法制化してくれる政党があったら、ボクは熱烈な支持者になると思います(笑)。
と、いうことで、今週の官邸前抗議はボクはお休みです(泣)。
●今日の東京タワーと月。寒かったけど夜空は澄んでいて綺麗でした。

                                                        
今週安倍晋三が矢継ぎ早に『一億総活躍社会に対する緊急対策』として『再分配政策』を表明しました。リフレで景気回復とか言ってたバカはどこへ行ってしまったんでしょう(笑)。所詮選挙目当てのバラマキにしても、景気を良くするためには間違ってない。本来なら野党が3年前に言い出さなければいけなかった。民主の岡田は今回の安倍の施策を『財源はどうするんだ』と批判していますhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20151126/k10010320391000.html。かって自分たちが言われたことをオウム返ししているのでしょうか(笑)。アベノミクスで景気後退した今 野党が主張すべきなのは、『もっと早く最低賃金を上げる』とか『もっと低所得者対策をやる』とか『弱い者いじめの軽減税率を止める』とか、『所得税相続税の累進強化とか資産課税など構造的な問題に手を入れる』、そういうことです。安倍より良い案を作らなければ野党の存在価値なんかありません。岡田の感覚は完全にズレてます
・低所得年金者に3万円給付へ…対象1000万人http://www.yomiuri.co.jp/economy/20151124-OYT1T50170.html?from=ytop_top
・「最低賃金1000円目標」、首相が指示http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151124-OYT1T50162.html?from=ytop_ylist
●11/25日経より。

出生率1.8なんて出来るわけないし、法人税率下げや三世帯同居推進みたいなくだらない物も並んでいますが、最低賃金のアップの意義は大きいと思います。民主党時代も最低賃金1000円を目標にしていましたができなかった。と言っても、政府の目論見通り毎年3%上昇しても最低賃金が1000円になるのは約10年後です。ネットではパープリンの左巻きが『10年後かよ』とか言ってるのを見かけますが、いきなり1000円になんかしたら中小企業は倒産の嵐だよ(笑)。最低賃金が毎年3%上がれば、パートさんだって、派遣社員だって、正社員だって給与は上がるし、実質賃金だって物価上昇を超えて上がるかもしれません。一時的に潰れる企業はあるかもしれませんが、労働者は他の企業に転職して賃上げを享受できるかもしれない(労働者のセーフティネットだけはきちんとしなければなりませんが)。そもそもいつまでも賃上げもできないような無能な経営者は企業規模を問わず、犯罪者です。そういう無能な経営者・ゾンビ企業が退場することで経済の新陳代謝が高まり、新たな成長企業が生まれるきっかけにだって成り得ます。それくらい最低賃金の引き上げはインパクトがある。
最低賃金の国際比較、2014年(OECD)(単位=円、1ドル110.6円で換算)。GDP世界3位の日本の最低賃金はイギリス、カナダ、アメリカに続いて11位。上げる余地は充分です(笑)。OECD.org - OECD

                                                                                              
ただし、大きな問題点があります。それは安倍政権のもとで国民生活が改善することでファシズムが近づくリスクです。安倍晋三はある種のファシスト国家社会主義者であるのは多くの人が感じていると思います(笑)。http://www.kyodo.co.jp/pol-news/2014-05-12_673657/ 民主・枝野幹事長「安倍政権は国家社会主義」 官民対話を批判 - 産経ニュース 彼の保守イデオロギーだけでなく、やたらと経済に国家が介入しようとする点でも国家社会主義者の名にふさわしい。
かって第1次安倍内閣が出来た時、ボクも含めて多くの人がファシズムの到来を心配しました。でも佐藤優氏はそれを否定して、こういうことを言っていました。
ファシズムは国民に対して優しい顔をしてやってくる。新自由主義の(第1次)安倍内閣にはその心配はない。』

確かにその通りでした。第1次安倍内閣は小泉のあとを継いだ新自由主義的な性格が強かった。従来の既得権益層は叩いたかもしれませんが、新たな既得権益層へ一般国民からの所得逆再配分(笑)を行っていたわけです。それじゃあ、国民の支持拡大には限界があります。事実、そのような新自由主義政策の帰結として『生活が第一』の民主党政権交代が起きたわけです。
                                                 
ヒトラームッソリーニも日本もファシズムは大衆の支持を得て成立しました。特にヒトラーは活発な公共投資と強制賃上(笑)などで国民の生活を改善しました。組合もナチの手先になった。他にも第1次大戦に負けたのはユダヤ人の陰謀だとする『後ろからの匕首などのデマで仮想敵を作って不満をそちらに向けたり、さらに政権与党の社会民主党がとことん無能だったというのもありましたが、基本的には多くの人は自分の目先の生活さえ良ければそれで良かったのです。今も人々が目先のお金を優先したり、ネットで反知性的なデマが蔓延ってるところは同じです。
                                          
第2次安倍政権のアベノミクスは国民の生活にとってはマイナスにしかならないのは最初から判っていました。そういう意味でボクはファシズムは心配していませんでした。経済面での矛盾が溜まれば国民の不満は溜まり、いずれ安倍政権は倒れる。
だけど一時的にでも経済面で国民の生活が改善したら、そうはいきません。そうなったら今の野党の無能さ、頭の悪さを見ているかぎり、彼らには勝ち目はありません。安倍が自滅しない限り、改憲どころか、その先のファシズムまで行きかねない。ファシズムの味は当初は甘いもの、というのが歴史的教訓です。
                                               
その先のファシズム、とは何でしょうか。頭の悪いオールド左翼が言っているように、日本中が戦争で焼野原になったり、治安維持法が敷かれた昔と同じことが起きるとは思いません。そもそも戦争の形だって昔と今では大きく変わっている。徴兵制だってそう。日本の将来は弱肉強食の新自由主義と保守イデオロギーの封建主義が結びついたディストピアか。とりあえず貧乏な老人ばかりの孤立国家の姿は目に浮かびます。だけど日本会議の保守イデオロギー(別名 迷信)(笑)は、靖国にしても、女性は家庭に入れとかは、アメリカが許さないでしょうから、どんな形になるかはわからない。
間違いなく言えるのは、少子高齢化の日本は衰退は避けられないってことです。お金優先は良くないと言っても、成長が止まると医療も介護もままならなくなるのが現実です。また、ピケティ氏もライシュ氏も言っているのは、成長が止まると社会的格差は拡大するということです。歴史的に見て、それは正しい。更に日銀もあと数年で国債を処理しきれなくなります(買える国債が底を突きます。既に民間銀行は国債を買いにくくなっています⇒マイナス金利、一段と拡大 2年債の最高落札利回りも :日本経済新聞。その時どんなことが起きるんでしょうか。
                                                                                                                 
じゃあ、お前は安倍晋三最低賃金上げをしない方が良いのか、と言われるかもしれません。もちろん、そんなことはありません(笑)。ボクが言いたいのは、安倍晋三やその徒党に反対する側は連中以上に賢くならなければならない、そういうことです。もっと判り易く言うと、ネトウヨと同じレベルじゃ(笑)しょうがないってことです。世の中にはわからないこと、理解できないことがいっぱいあります。今回のニュースもそうですが、何か事件が起きる度に、自分はもっと勉強しなくちゃと思うのです。いずれにしても、平和を守りたいんだったら、まず経済が問題です、昔も今も。
そういえばマルクスも似たようなことを言ってましたっけ(笑)

                                            
                                                  

そんな時代を描いた映画が公開されていました。渋谷で映画『ヒトラー暗殺、13分の誤算映画「ヒトラー暗殺、13分の誤算」公式サイト

1939年11月、ミュンヘンのビアホールで爆弾がさく裂して8人が亡くなった。そのビアホールではヒトラーが演説しており、濃霧のため13分予定を早めて切り上げたため難を逃れたのだ。犯人として逮捕されたのはゲオルク・エルザー、36歳の平凡な家具職人。本人は単独犯だということを主張するが、あまりにも大それた犯行にヒトラーは黒幕がいると確信し、強引な取り調べが行われるが

                                                 
第2次世界大戦末期 ドイツの敗色が濃くなってきてからのヒトラー暗殺事件学生たちのヒトラー打倒運動『白バラ』については映画化もされて、世に知られています。ですが第2次大戦直後、ドイツが連戦連勝の絶頂期にたった一人でヒトラーを止めようとした男の話はボクは知りませんでした。政党も団体も何のバックもない彼は、ドイツでも単なるテロリスト扱いされて黙殺されてきたそうです。ところが最近になって再評価が進み、昨年メルケル首相がわざわざ彼を称えるスピーチをしたそうです。
映画の冒頭、こんなクレジットが出ます。私生活以外はすべて史実に基づく、と。
                                                                 

お話はミュンヘンのビアホールの柱に主人公が一人で爆弾をセットするところから始まります。そのビアホールでナチスの蜂起(ミュンヘン一揆)が始まったことを記念して、ヒトラーは毎年 そこで演説をするのを恒例にしていたそうです。爆弾をセットして国境へ向かった主人公は不審者として警察の取り調べを受けます。その間に爆弾が爆発、彼は不審者から容疑者に変わります。そこから映画は警察・ゲシュタポの過酷な取り調べと主人公の過去が交互に描かれながら進んでいきます。彼はなぜヒトラー暗殺を決意するに至ったのでしょうか。
ミュンヘンのビアホールにて。


主人公は都会で時計職人をしていましたが、飲んだくれの父から母を守るため、郷里の田舎町へ戻って家具職人になります。休みの日には女の子たちと湖へピクニックへでかけ、夜は仲間たちと音楽を演奏する暮らしは楽しそうです。やがて主人公は夫のDVに苦しむ人妻との恋に落ちます。
●主人公と人妻は恋に落ちます

                                     
ですが、そんな暮らしは長くは続きません。酒場ではナチス党員と地元の有力者が理不尽に威張りだし、労働者たちと対立が起きます。主人公はどこの党や組織にも属していませんが、友人は共産党に入っていたりします。ナチスが政権を取ると共産党員は弾圧され、ユダヤ人が苛められるようになります。その中には主人公の元カノだった女の子も居ます。彼女はユダヤ人というだけで村の広場でプラカードを持たされて晒し者にされるのです。主人公の友人の共産党員は逮捕、丸刈りにされて強制労働に従事させられます。主人公は次第に危機感を抱くようになります。
●ナチの敬礼を拒否する主人公。どこかの府政で君が代を無理やり歌わせる光景はこんな感じなんでしょうか。                           

                                                                                        
ナチスのやり方は巧妙でした。共産党ユダヤ人の陰謀をでっち上げて仮想敵を作って人々のうっぷんを晴らさせる一方、当時最新の娯楽だった映画の上映会を田舎でも開いて人々の歓心を買います。今の日本と似てますよね。
●AKBの娘と高村の写真が表紙の本。SEALDsの本そっくりなところがセコい(笑)。この娘も丸善ジュンク堂に続いて、ボイコット対象に決定(笑)。

選挙ってなんだろう!?

選挙ってなんだろう!?

                                                                                     
そうやって、一般の人はナチスの経済政策にのせられていきます。当時は国債をバンバン発行してアウトバーンなどの公共工事をやってるんだから景気は良いんです。更に組合をナチス化して組合員にだけ高給を保証します。強制賃上げです(笑)。目先の景気さえ良ければいいんだ、という人々の姿は今とそっくり、です。
しかし、主人公はこのままいけば戦争になる、と直感します。異論を唱えられない世の中の雰囲気、ユダヤ人や共産党員が受ける弾圧や威張り腐ったナチス党員や資本家、どう考えても世の中がおかしい。やがて彼は工場で大量生産している兵器を目撃して、直観は確信に変わります。誰かがヒトラーを止めなければ大変なことになる。彼は決心します。迷惑がかからないように愛する人とも距離を置き、孤独な準備に取り掛かります。
やがてドイツの財政は国債でパンク寸前になり、国民の不満をそらすためにヒトラーは領土拡張を始めます。あとは皆さん、ご存知の通り(笑)。

●主人公はアウトローでも何でもなく、普通の青春を楽しむ若者でした。

                                       
ナチに捕まった主人公は酷い拷問を受けます。取り調べの責任者は親衛隊の保安局長ネーベとゲシュタポの局長ミューラーでした。拷問を受けても口を割らない主人公でしたが、最愛の人、エルザが捕まると、彼女を救うために告白を始めます。ですが、ナチは彼が一人でやったと言うことはどうしても信じません。材料を手に入れ、精巧な時限爆弾を作り、セットするのを本当に一人でできたのか。それにナチスとしてはプロパガンダのためにも連合国か共産党の陰謀ということにしたいのです。
取り調べが進むうちに保安局長のネーベは主人公の知性と使命感に心を打たれ、単独犯と言うことを信じるようになります。そのネーベはやがて反ヒトラー運動に身を投じ45年3月に処刑されます。主人公は強制収容所に送られ5年間を生き永らえますが、ヒトラーが自殺する直前 ミューラーの処刑命令で命を落とします。
                                                          
主人公は一人で考え、一人で実行しました。決してナチには弱みを見せない主人公でしたが、供述を記録する女性秘書には『巻き添えで死んだ8人の犠牲者の家族に心からの謝罪を伝えてほしい』と頼むような人間でした。彼は世の中を拗ねた外れ者でもテロリストでもない、ごく普通の人間だったのです。
●数年後 自分もヒトラー暗殺に加担するネ―ベ(左)、心の底までゲシュタポのミューラー(右)                         

                                                                  
この映画は細かなディテールにまでこだわり、だんだんと戦争に進んでいく世相をうまく描いています。監督は『日本人もドイツ人も世の中の流れにのせられやすいと思う。だから、この映画を作ったんだ』と言ってます。主人公の強い思いが伝わってくる作品でした。暴力を否定していた一人の男が、何故あのような行為に至らなければならなかったのか。多くの人が独裁者のデマに同調し、流されていった時代の悲劇でもあります。
エンドロールで実在のゲオルク・エルザーの写真が写るのですが、映画のエルザー役とそっくりで、文字通り度肝を抜かれました。実に気合の入った、良い映画です。最初はスルー予定だったのですが、観てよかった〜。と、同時に昔の話ではない、と非常に考えさせられる作品でした。