特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

#2/3を取らせない『小川敏夫 東京大街宣@新宿三丁目』&笑えるけど、笑えない映画:『帰ってきたヒトラー』

この週末はうだるような暑さでした。
日曜日は映画を観た後 新宿で民進党小川敏夫氏の街宣に行ってきました。

                                                        

ボクは民進党は支持していません。でも改憲を防ぐために、市民連合の候補に投票します。その日 会場で『東京選挙区で2/3を取らせない』というプラカードを見て、ハッとしました。東京もそうだった。どの新聞を見たって現在の情勢認識は共通しています。定数6の東京で自民と公明で3人、蓮舫氏と共産の山添氏は通るかもしれないが、小川氏と田中康夫が拮抗しているようです。他の候補は選挙には関係ない(笑)。もし小川氏が落ちれば東京でも改憲派が3分の2を握ってしまいます。勝ち目が薄い泡沫候補に投票しても単なる死に票です。自分で自分の首を絞めるという点ではイギリスの労働者がEU離脱に投票したのと一緒でしょうか。

●この数字を見れば、普通は誰に投票したらはっきり判ります(笑)。好き嫌いで投票するなんて愚かなことです。*付記 週刊現代7月9日号のデータ


      
●おまけ:クリックするともっと新しい予測、週刊現代7月16日号に掲載された各社の予測が見られます。最初に挙げたツイートは3表に分かれています。クリック先を拡大してみてください(笑)。週刊現代という雑誌はボクは見たことないので、信頼性は判りません。その点は悪しからず。
青木正美さんのツイート: "NHK 共同通信 新聞各紙の参院当落の最終予想出た。「週刊現代」7月16日号から
@aki21st @iwakamiyasumi @Kitsch_Matsuo @yamamototaro0… "

                                                  
rimaさんのツイート: "oO(ん❓真山勇一さんは金子洋一より優勢❓✨
森ゆうこさんは気を引き締めて最後の追い込みだね😃… "
                   
                                        
この日の街宣は完全にSEALDs(市民連合)主導になっていたのには驚きました。司会は奥田君、応援スピーチも本間君や溝井さんなどSEALDsの子が前面に立ってます。民進党は完全に裏方に回っている。ボクは聞かなかったのですが菅直人も喋ったそうです。7月1日に国会前で話したような無責任な話をして逆効果にならなかったか心配です(笑)。
●プラカードの波


                                 
小川敏夫氏。炎天下の下、スーツで大変です。

●SEALDsの溝井さんの応援スピーチ。確かにその通りです。小川氏は反原発の集会にも安保法反対の集会にも散々来てくれた。

非常に感心したのは民進党の山尾氏の話です。彼女は3つのことをやっていきたいと話していました。
1.育児・教育:多くの学生が奨学金と言う名の借金を仕組みでいいのか。株式譲渡税を20%から5%だけ上げれば、給付型奨学金だって充分導入できる。
2.雇用:アベノミクスで増えたのは65歳以上の非正規雇用ばかり。非正規雇用の待遇改善などを進め、安心して就職できる環境づくりを進めたい。
3.年金:株式に年金資金を放り込んでいいのか?既に5兆円も損している。このままでは皆の年金が危なくなるのではないか。
                                 
全てその通りです。正しいことを言ってるだけでなく、この人は本気でしゃべっている。『この1年 市民の意見を聞き、一緒に活動するのが政治なんだと感じた』と、彼女は言ってました。与党や小沢一郎流の利益誘導スピーチとは全く違います。政治家と市民で一緒にやろう、という気持ちが伝わってきます。まだ一部かもしれませんが、昨年の出来事は確かに政治家をも変え始めています
山尾志桜里


                             
                  
最後に奥田君が『小川氏の事務所にはまだ人手が足りていません。手伝える人はラインで登録してください』と呼びかけながら、こんなことを言っていました。

                                               
確かにその通りです。7月1日の金曜日に国会前で西谷修外語大名誉教授が『有田芳生候補の事務所に1日、宛名書きを手伝いに行った』という話を聞きました。彼は65歳を過ぎて初めて、そういうことをしたそうです。偉いとは思いましたが、その時ボクはどこか他人事でした。あくまでも個人として行動する、組織や政党には関わらない、というのが自分の中の大原則ですから、そういうことは全く意識してなかった。でも、こんな状況です。自分が出来ることはやらなければいけなかった。日曜日くらい、まともな候補者の手伝いに行けばよかった。まさに奥田君が言ってることが正しい。有権者の責任として、政治家を一人にしてはいけない市民の声を聴くように政治家を変えていかなければいけないのですから。今回の選挙は間に合いませんでしたが、これからはそういうことも考えなくちゃ。個人的に猛省しました。

●左からSEALDsの本間君、菅直人、山尾氏、小川敏夫氏、溝井さん、奥田君



帰り際 100メートルくらい離れたところで社民党福島みずほが無所属候補の応援でスピーチをしてるのに気が付きました。社民だって市民連合と組んでる筈ですが、言ってることも集まっている人もだいぶ違います。女性候補と言うこともあってか運動員も昔からやっているような老婦人ばかりだし、スタイルも昔からのやり方です。事情はあるのかもしれませんが距離感を感じるというか、硬直してるよな〜。この人たちは真剣に世の中を変える気がないのか 疑ってしまいます。違うかな。
●真ん中が浴衣姿の福島みずほ

                                 

                                       
ということで、銀座で映画『帰ってきたヒトラー

1945年に自決したはずのヒトラーが2014年のドイツにタイムスリップしてきた。戸惑った彼だったが持ち前の頭脳で現代の情勢を理解して、再び野望を抱くようになる。やがて彼はヒトラーのコスプレ芸人としてネットやTVなどのメディアを使って、反移民感情を煽って人気者になっていく。

現代のベルリン、総統司令部の跡の公園で軍服を着たおっさんが目を覚まします。ヒトラーです。当初 余りにも変わってしまったドイツの現状に戸惑いますが、新聞屋の売店に泊まり込んで新聞を読むうちに、ドイツが負けて平和な時代になったという情勢を理解します。
●総統官邸で自殺寸前、タイムスリップしてきたヒトラー

現代のドイツ人は彼から見れば軟弱そのものです。失望した彼ですがネットやTVなど彼が得意とするプロパガンダの技術が山ほどあるのを知ると狂喜するのです。
●新聞屋に救われた彼は片っ端から新聞・雑誌を読んで、ドイツが全く変わってしまったことを理解します。

                                  
一方 彼を発見した現代のドイツ人たちは彼をヒトラーのコスプレ芸人だと思い込みます。やたらと迫力がある、本物にそっくりなおっさんだな、と(笑)。視聴率にやっきのTV局幹部は視聴率稼ぎの為に彼をTVに出すと、混迷する現代の問題に対して、判り易い結論を言い切る彼の迫力に視聴者は大受けするのです。
●TV局の受付嬢と(笑)。

         
                                                        
この映画はコメディです。ヒトラーが絵が下手なところ(彼は落第した画学生)、現代とのギャップ、そういうことを描くたびに客席から大きな笑いが巻き起こります。現代の政治情勢に対するヒトラーの解説も面白かった。中道も左翼もだめ、極右も軟弱すぎるからダメ、と彼は評します。現代によみがえったヒトラーが最も共感するのは緑の党(笑)です。国の自然環境を保全しようとする態度こそ真の愛国者だ、というのです。しかし、原発を廃止しようとするのだけは理解できない。せっかく核兵器が作れるのに、と付け加えます(笑)。またヒトラーがネットで親衛隊を募集したら、集まったのは超軟弱なネトウヨばかりだった、というのも面白かった。
●判り易い言葉で複雑な物事を決めつける彼の発言を多くの人が歓迎します。

ヒトラーが現代の人と接触する場面はドキュメンタリー仕立てになっています。彼がドイツ各地を回って、現代のドイツ人の気持ちを理解していくところなどは本当にドキュメンタリーとして撮ってるんじゃないかと錯覚するほどリアルです。経済問題や移民問題に関する素朴な不安をヒトラーに訴える人々(全て本物の素人だそうです)の姿にも大きな笑いが巻き起こりました。
ヒトラーが生きていた当時 TVがあったら、文字通りえらいことになっていたんじゃないでしょうか

                                              
だけど、ボクはあまり笑えなかった。現代のドイツが抱える諸問題、経済や移民などについて、ヒトラーがかって述べていたような政策は人々の気持ちにぴったりと当てはまるのがひしひしと判ります。映画の中で、私はキミたち自身の一部だとヒトラーが述べるシーンがあります。彼が選挙で選ばれたことも含めて、確かにそうなんです。

                                                
実際のヒトラーは小男だったそうですけど、役を演じているオリヴァー・マスッチと言う人は193センチの大男です。でも迫真の演技です。彼は『表に出るキャラクターとしては、いわゆるヒトラーの、プロパガンダで演説している姿に近づこうとはせず、困っている国民の話を聞き、父親のように包む姿をイメージして役作りをしました。でもそういうキャラクターにすることで、昔とぜんぜん変わらないヒトラーの主張が機能してしまうことは、私にとってはすごく驚きでした。大衆がいかに騙されやすいか、いかに歴史から学んでいないかわかりました。』と語っています”優しいヒトラー”を演じれば、大衆は「世界征服」という主張も受け入れてしまう(渥美志保) - 個人 - Yahoo!ニュース。確かに彼が述べる演説にはつい、納得してしまいます。そして時折見せる凶暴な面、腹立ちまぎれに犬を射殺したり、ユダヤ人と聞くと文字通り顔色が変わったりするところは本当に恐ろしかった。

                         
よくできているし、客席からは笑いが絶えなかったし、多くの人が楽しめる映画です。実際 かなりヒットしているみたいです。でも、ボク自身はあまり笑えなかった。あまりにも現代に当てはまり過ぎる。EU離脱や外国人排斥に賛成する人はヒトラーのような奴が現れたら、熱狂的に支持するでしょう。直近で言えば三宅洋平やトランプを支持する人を思いだしてしまいます。こういう人たちは何かを考えているのではなく、単に判りやすい答えを出してくれる人を求めているだけ、じゃないでしょうか。もし『答え』があるとしても、苦心惨憺して自分で見つけなければいけないものなんですけどね。
                                         
現代によみがえったヒトラーは最後に格好のターゲットを見つけます。ドイツにやってくる移民、です。その時の彼の表情と言ったら。う〜ん。
色んな意味で良くできた映画だと思います。ただボクは心底から笑うような気分にはなれませんでした。う〜ん。