特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

安保に関する『ニュー・スピーク』と読書『中間層消滅』、0515 再稼働反対!首相官邸前抗議

ちょっと暑いけど、5月らしい穏やかな気候になりました。だけど世の中はあんまり穏やかじゃない。
                                                      
昨日 閣議決定された安全保障法制について、政府・与党は『平和安全法制』、略して『平安法』と呼称を変更したそうだ。http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150515-OYT1T50016.html?from=ycont_top_txt

まるで国民をバカにしている感じがする。安倍晋三のようなバカにバカにされる国民ってどうなんだって(笑)。
●毎度お馴染み日本人ジョーク

  
                         
時折言われることだが、最近 日本の政治家が発言する言葉がジョージ・オーウェルのSF『1984』に出てくる『ニュー・スピーク』に思える時がある。それは独裁国家になった未来社会で使われる言葉で、今までの言葉をニュースピークと呼ばれる新しい言葉に置き換えて、国民を政府の意向に沿った考え方をさせるために使われる。例えば軍備を扱う省庁は『平和省』情報統制する省庁は『真理省』強制収容所は『快楽キャンプ(Joy Camp)』など呼称が変えられ、『誠実さ(HONOUR)、正義(JUSTICE)、モラル(MORALITY)、国際主義(INTERNATIONALISM)、民主主義(DEMOCRACY)、科学(SCIENCE)、そして宗教(RELIGION)』などの言葉は存在を抹消される。これらの言葉を用いた政府の意向通りの思考は『二重思考』と呼ばれている。
                                                                                                         
昨日の記者会見で安倍晋三は『あくまで日本人の命と平和な暮らしを守るため』、『抑止力を高める』、『アメリカの戦争に引き込まれることは絶対にない』と言っていたが、ボクには納得できない。集団的自衛権の行使と自衛隊の活動範囲を拡げることがどうして『日本人の命と平和の暮らしを守るのか』、『抑止力を高める』のだろうか。アメリカに土下座して靴の裏を舐めるような演説をしてきた総理大臣(笑)がどうして『アメリカの戦争に引き込まれることは『絶対に』ない』と言い切れるのだろうか。勿論 安倍晋三その根拠は挙げていない。
●コラムニストの小田嶋隆tweet
                                                                      
良く考えると日本は『ニュー・スピーク』の元祖みたいな国だ(笑)。敗戦=終戦、全滅=玉砕、軍=自衛隊、軍人=自衛官駆逐艦フリゲート護衛艦、想定外=想定ミス、枚挙にいとまがない。八紘一宇だって、日本のアジアからの収奪の狙いを覆い隠すために使われた言葉(『昭和天皇実録』によれば、政府の構想ではアジアの国の独立はごく一部を除いて認めないことになっていた)。
こんなバカな言葉遊びをしているのは為政者の側だけではない。反原連のミサオ・レッドウルフ氏が以前 他団体との会合で『戦略という言葉を使ったら、他の市民運動団体から平和的じゃないと非難された』と言っていた(笑)。デモや集会でお決まりの非現実的なシュプレヒコールを聞いてうんざりするのはボクだけだろうか。自分も含めてだけど、日本人の多くは現実を見ない習慣があるのではないか、と思う。

例えば『平和を守れ』と良く言うけど、古今東西たいていの戦争は『平和を守るために』と言って行われている(笑)。平和を守れというだけでは現実の力にならない。なにをどうすれば平和を守れるのか具体的に議論をしていかなければならない、と思うな。原発とも一緒で、事の本質は『いい加減、ホントのことを議論しよう』ということだ。安倍晋三は確かに売国奴で低能だが、それに反対している側だってかなり酷いもんだ。平安法(笑)とか絶対安全安心(そんなものがあるわけないだろ!)とかバカな言葉で思考停止しないこと!。今の世の中を何とかするには、まず、そこから始めなければいけないと思う。

                                                                                                                             

                                                   
さて、最近読んで、勉強になったのがこの本。『中間層消滅』。著者は慶應経済学部の教授。ピケティなど最新の研究成果を取り入れながら、日本はどのような方向に向かいつつあるのか、どういう方向を目指すべきなのかを描いている。

中間層消滅 (角川新書)

中間層消滅 (角川新書)

戦後の日本社会を支えてきたこの中間層が消滅の危機に陥っている。このままでは中間層は消滅し、戦前のように格差が拡大した社会になる。そのためにはどうしたら良いか、所得再分配と財政、両面から対策を考えたもの
ちゃんとした学者らしく目からウロコのデータが幾つかあった。『グローバル化が進んだ国ほど、政府が国民保護を進めている』『生活保護受給率が高い県ほど投票率が低い』『貧富の差が激しい国ほど、階級間の流動性が低い』。他にも最近の重要な議論、ピケティの『21世紀の資本コーエンの『大格差』などのエッセンスを織り込みながら、公平に議論を進めている。後半やや息切れしてくるが新書でこれだけやってくれるのだからお買い得だ(笑)。
●大企業や政治の問題より、機械や技術の進歩が格差を拡大しているという本。これがすべてではないが、無視できない真実だと思う。読書『大格差』と『人類の終末』(笑) - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

あと、ボクの本棚に積んだままの(笑)グレン・ハバード(コロンビア大教授、ブッシュの経済顧問でウォール街の手先) の『なぜ大国は衰退するのか』からの引用には参った。それによると日本はもう終わっているのだそうだ(笑)。
日本は94年から衰退した(過去形)。その原因は『特定利益集団や中央集権的な官僚に比べて惰弱な民主主義』と『経済成長を重商主義政策に頼ったことと大企業や銀行による損失回避

                                                      
ボクが『中間層消滅』で感銘を受けた点は3つある。

1.所得の再分配によって消費を活性化させ、経済成長につなげるべきだ、としていること。『再分配無くして成長なし』
再分配無くして成長なし、と著者が述べているのは力強い。でもそれは確かにそのとおりだと思う。経済で一番大きいのは消費だし、特に日本の場合 ピケティによれば所得性向の高い90%の層の平均年収がこの20年で3分の2になっている(約220万から150万へ低下)『ボクらが立っている場所』(トマ・ピケティ氏のデータベース)と、映画『サード・パーソン』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)。その傾向を放置している限り消費なんか増えるわけない。
                                                                                                        
だが再分配だけでは問題は解決しない、以下のようなことが必要だ、と著者は議論を進める。

2.構造転換に対応した教育の強化をしていかなければならないこと
3.日本の財政問題は深刻で人口減で今後ますます深刻になる。増税社会保障の見直しが不可避であること。

ボクも所得再分配は必要だと思っているが、どうもそれだけでは問題は解決できないのではないかと思う。一つは技術の進歩で職業が無くなったり、どんどん変化していることタイピストや株の仲買人、電話交換手みたいな職業は殆どなくなったが、そういうことはもっともっと起こるだろう。小売店が減って通販になっているのも、その一つだ。『ロボットタクシー』という会社が立ち上がったそうだが、トラックやタクシーの運転手などもあと10年経てば機械に置き換わり始めるだろう。DeNA、自動運転車のZMPと新会社設立を発表 :日本経済新聞 
                                            
さらにグローバリズムの問題がある。クリントン政権の元労働長官ロバート・ライシュ先生は、8日にヴェトナムで靴を生産しているナイキ社をオバマが訪問してTPP推進の演説をしたことについて、今週こんな指摘をしている。Robert Reich (Nike, Obama, and the Fiasco of the Trans Pacific...)

We know that when Americans displaced from manufacturing jobs join the glut of Americans competing for jobs that can’t be replaced by lower-wage workers abroad – personal service jobs in retail, restaurant, hotel, hospital, child care, and elder care – all lower-skilled workers face downward pressure on wages.

(意訳)
今日のアメリカでは、(比較的賃金が高かった)製造業の職は海外へ流失してしまい、国内に残された職業へ人々は殺到している。それは小売りやレストラン、ホテル、育児や介護などだ。それらスキルが低い労働者は賃下げの圧力に直面し続けている。
                                                                                 
ライシュ教授の指摘は日本でもそのまま当てはまる。日本では正規・不正規の問題が取りざたされるが、格差拡大の原因はそれだけではない。今週も味の素が100年続けていた国内生産を止めた、というニュースが流れていた。http://www.asahi.com/articles/DA3S11750014.html?ref=yahoo 家電、半導体、そういう例は枚挙にいとまがない。技術の進歩やIT化も相まって、産業や職業の構造自体が変化しているのだ。某政党のようになんとかの一つ覚えで大企業だけを責めても仕方がない。原因が違うんだもん。
技術の変化やグローバル化に対応するためには労働者保護規制を強化するだけでなく、個人でも新しいスキルや知識を身に付けて行かなければならない。それを堤未果のように大企業や政治家だけに責任転嫁しても、結局 バカを見るのは自分だ。そのためにはピケティ氏もライシュ氏も言うように教育を強化するしかない、と思う。
                                                                         
あともう一つ、増税の問題。評判の悪い話だが、教育を充実し、福祉を守るためには特に日本の場合 増税はやむを得ない、と、この本は述べている。その部分になると記述が総花的になって迫力がなくなるんだけど(笑)、日本の財政状況や諸外国と比べての税負担の低さを考えるとやむを得ない、とボクも思うようになってきた。ただし増税社会保障の見直しは景気を悪化させるから、それを、どういうタイミングで、どういう風にやるかが問題だ。一つは消費を増やし景気を良くする唯一の税=相続税だ(笑)。他にも著者はいくつかアイデアを挙げているけど絶対的な答えはない。ボクもまだ考え中。それはまた別の機会に(笑)。
中間層消滅』は新書だから読みやすいし、平易な論調で論点を幅広く、公平に拾っていると思う。最新の社会状況を考える入門書として非常に有益な本でした。


                                                                     
と、いうことで、今週も官邸前へ.
午後6時の気温は23度!ちょっと前まで震えていたのになあ。過ごしやすい陽気のせいなのか、安倍晋三に頭に来ている人が多いのか(多分両方だろう)、今日の参加者は久しぶりに多く感じた。官邸前は1000人くらい、国会前他で500人くらい、併せて1500人くらいだろうか(主催者発表1400人)。
●抗議風景







今日は久方ぶりに子供連れの人がいた。暖かくなってきたからだろうか。やっぱり、普段見かけない人たちが来ると嬉しいな。そういう光景を見かけたのはほぼ昨年の夏以来だから余計に嬉しい。

●子供さんの姿もちらほら見かけた、嬉しい。

今日はスピーチに立ったタクシーの運転手さんが良いことを言っていた。
『自分が若い頃は、組合でデモをしても、あたりを汚しちゃいけないなんて考えもしなかった。でも、今のデモは終わった後 会場にゴミひとつ落ちてない。参加している人が後に続く若い人たちのことを考えているのだと思う。アメリカ先住民と同じ考えをしていると思う。』
ま、そう考えると参加者に年配の人が多いのも良いことのように思えてくる(笑)。確かにその通りだし。
                                  
●国会前



怒ってもしょうがないとは思ってるんだけど、さすがに今週はボクは頭に来ているんですよ、安倍晋三を筆頭にしたバカ政治家と低能マスゴミに。スピーチを聞いても道端の会話を聞いても今日来ているのはそういう人ばかりだった気がする。勿論 怒ってるだけじゃ屁のツッパリにもならない。怒りの分だけ勉強しなくてはいけないと思った。

あ、あと大阪の人たちは住民投票に行ってくださるようお願いします。改憲に積極的な橋下のようなアホを国政に引き出さず、大阪だけで檻に入れておいてください。大阪の皆さんの良識に期待しています。
●今日の写真