明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします。
こちらはうちのマンションの正月飾りです。おせち料理も買って済ませるようになったし、正月らしいことは、これでいいや(笑)。
お正月休みで良いことは時間を気にしなくても済むことです。改めて、これは快適だなーと思いました。
映画を見て、散歩して、お茶を入れて、食事を作って、ギターを弾いて、1日が終わる。時計は殆ど見ない。明日の朝 起きる時間を気にしなくていい。
仕事をしている今はそういう生活は年に数日しかできません。だから日常の雑事になんか邪魔はさせない。元日に届く年賀状の束は輪ゴムを巻いたままゴミ箱へ直行です(笑)。休みの日にまで仕事や日常の人間関係を押し付けてくるバカげた風習です。ふざけんな。
世界のどこでも。戦争するな。殺すな。#FreePalestine #CeasefireNOW#殺すなアクション pic.twitter.com/FfhXt8dzzv
— mipoko (@mipoko611) 2023年12月31日
昨年で新聞を取るのをやめましたし、テレビはもともと殆ど見ない。特に最近のテレビはNHKも含めて録画物ばかりですね。昔から俗悪でしたけど、最近はそれに加えて制作予算減で貧乏くさい。『孤独のグルメ全話特集』が一番マトモでした。
ついこないだまで誰も見てなかった大学の助教が有名になった途端に色々と吠えたがるのと同じだから。 https://t.co/IoWeFavlKZ
— 北丸雄二💙💛 (@quitamarco) 2023年12月31日
紅白も録画しておいて、New Jeans以外は削除してから見ました。New Jeansがアメリカで売れた、というのはよく判りました。楽曲はアレンジも含めて良くできている。リズムが高級(笑)と思った。結局 紅白で価値があったはその5分だけ(笑)。あの番組をフルでまともに見た人なんているんでしょうか。
NHK紅白歌合戦に、作曲家で文化庁長官の都倉俊一が指揮者として登場。
— HOM55 (@HON5437) 2023年12月31日
都倉氏は統一教会系の政治団体「国際勝共連合」を賞賛し、機関紙「思想新聞」に連載コラム執筆してきたなど、広告塔というべき活動をしてきた人物です。
統一教会とズブズブだった人を紅白に出すとは最低だな・・。 pic.twitter.com/FYBO2kkO5x
今の若い人がテレビを見ない、というのも良くわかります。こんなものばかり見てたらアホになる。新聞もテレビも役割を終えた。
あとは滅びるだけでしょうが、大手マスコミの代わりがデマやフェイクばかりのネットの荒野、というのも希望がありません。人間はただ、バカなポピュリズムと政治や大資本の権力に右往左往させられるだけの存在なんでしょうか。
テレビは今晩 放送される毎年恒例のNHK『欲望の資本主義』欲望の資本主義2024 ニッポンのカイシャと生産性の謎 - BSスペシャル - NHKだけは期待しています。
ああ、お正月休みもあと半分か(泣)。
「最低賃金上げたら企業が潰れるぞ」
— 愛国心はなまけ者の最後の逃避場 (@UniButterPasta) 2023年12月30日
→潰れろ
「労働時間なんて守ってたら企業が潰れるぞ」
→潰れろ
「体調不良で社員休ませてたら企業が潰れるぞ」
→潰れろ
「本当に男女平等にしたら企業が潰れるぞ」
→潰れろ
むしろそこからが本当のスタートだろ。
今はスタートラインにすら立ててねーよ。
と、いうことで、六本木で映画『PERFECT DAYS』
平山(役所広司)は墨田区の古いアパートに一人暮らしをしている。昼間は東京・渋谷のトイレの清掃員として毎日 黙々と働いている。同じような日々を繰り返すだけだが、その中で彼は新鮮で小さな喜びを探しながら生きている。夜は古本の文庫を読み、空き時間には小さなフィルムカメラで木々を撮影する。そんな彼の生活にある日 変化が訪れる。
役所広司が第76回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したことで話題の作品。今度のアカデミー賞にもノミネートされています。監督は『ベルリン 天使の詩』などのヴィム・ヴェンダース。
共演は柄本時生、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和など。
題名は映画でも使われているルー・リードの同名曲から取られています。この映画がカンヌで受賞したニュースを聞いたとき、この曲を思い出して、友人と『本当に暗い曲だよなー』と話したのですが、映画の内容もそれに近い。
一見のどかな日々を淡々と表現しているように見えて、精神的な深い傷が背景にある歌です。
主人公の平山は極端に無口な男です。東京スカイツリーの下の古いアパートに一人、住んでいます。
毎日 早朝道路を掃除する竹ぼうきの音で目を覚まし、部屋で育てている植物に水をやる。制服に着替えて部屋のドアを開け、空を見上げる。何度も繰り返されるこのシーンで、平山が一度もドアの鍵を閉めなかったのが気にはなりました。
そのあと家の前の自販機で缶コーヒーを買って古いカセットテープ!を聞きながら、軽バンに乗って渋谷へ仕事に向かう。車の中でかかるのはオーティス・レディングやパティ・スミス、ヴァン・モリソン、そして、ルー・リード。
これは平山ではなく、ヴェンダース監督の趣味です(笑)。
平山は若い同僚から『やりすぎ』と言われるくらい、いつも丁寧に渋谷のデザイナーズトイレを磨いています。穏やかそうに見えて、実はエキセントリックな男です。
仕事が終わると銭湯へ行き、いつもの店でいつもの一杯を楽しみ、部屋に戻って古い文庫本を読んで寝る。それが平山の毎日です。
映画はそんな生活を淡々と描いていきます。
ほとんど台詞がない役所広司の演技は実に雄弁です。確かに主演男優賞に値する。
三浦友和も良かったなあ。
主人公の生活には心から共感します。なんの変哲もない、平和な毎日が続くことが如何に貴重か。この映画は平凡な日常から美をすくいあげ、愛おしむことの大切さを訴えています。
日常の美は長くは続かない。だからこそ美しい。
古い東京と新しい東京の対比も面白い。スカイツリーと古い平山のアパートとの対比、渋谷と下町との対比、地下鉄浅草駅の古い地下アーケードと新しい改札の対比なんか『こう来たか』と思いました。実にうまい。
ヴェンダースがそこまで東京を知ってるとは思えないので、日本人スタッフのロケハンの勝利でしょう。兜町と下北沢がすぐ近くにあるような描写は?と思いましたけど。
ただし、映画はめちゃめちゃ美化されています。
まず公共トイレの汚さが全く描かれないのは、かなり違和感がある。映画が東京の公共トイレの課題解決をテーマにしたアートプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の一環として製作されたとはいえ、です。
●映画に出てくる安藤忠雄設計のトイレ
映画に出てきたトイレは宮下公園、代々木上原、代々木公園、幡ヶ谷、渋谷育ちのボクには馴染みのところばかりです。博報堂出身で奥さんがCA、チャラいことで地元の町内会の年寄り連中に顰蹙を買っている渋谷区長(笑)が作ったデザイナーズトイレばかりが出てくるのもなあ(笑)。
彼は反対を押し切って同性婚条例を推進したから、一概に非難する気はないですけど。
ちなみにトイレ改修プロジェクトもこの映画もユニクロの柳井の次男が個人でお金を出しているそうです。ヴェンダース監督を連れてきたのも彼だそうです。その点も素直に評価します。
だけど、せっかくヴェンダース監督が作っているんです。公共施設である宮下公園を三井不動産に売り渡したかのようなジェントリフィケーションを取り上げろ、とまでは言わないけど、ホームレスらを排除する排除アートみたいなものには目を向けてもらいたかった。
この映画にも田中泯が演じるホームレスが出てくるのだから、それはない。区がホームレスを排除した宮下公園もホームレスの女性が殺された幡ヶ谷だって出てくるのに。女性が殴り殺されたのは映画に出てくるトイレのすぐ近くのバス停です。
それに石川さゆりが演じるママが酔客のギターの伴奏でアニマルズを絶唱してくれるようなスナックがある筈がない(笑)。しかも酔客のギターがやたらと上手いと思ったら、あがた森魚じゃん(笑)。それもない(笑)。
今時の若い娘がパティ・スミスの『Horses』に感動するのもさすがに設定に無理があるんじゃないか(笑)。
何よりも、東京ではこんなに人との距離を置いた生活はできません。
ボクも職場でも日常生活でも、殆ど誰とも口を利かない日が有ります。静かにルーティーンを繰り返し、ただ平和に暮らしたいと思いながら生活しています。だから、主人公の生活には親近感がある。愛おしい。
けれどスマホ見ながら歩いてるバカや子供を乗せた自転車で歩道を暴走するアホ母親、それに満員電車の中の殺伐とした乗客たちと、なんだかんだ言って、東京のような日本の大都会では他人との距離を考えずに土足で入り込んでくる田吾作が大勢いる。
時折 外国に行くとホッとすることがあるんです。欧米は勿論、アジアだって個人の存在を認めるから、もっと人と人との距離があります。すれ違う相手を尊重する。
ところが東京では人間の存在を無視して土足で踏み込んでくるバカだらけです。ボクがこの街で最も嫌いなところです。東京だけでなく、日本全体がそうかもしれませんが。
今の世界では主人公のようにマスコミや商業主義の雑音を拒否し、孤独な日常の中に密やかな美を見つけて精神的に対抗していくしか正気を保つすべはないとは思います。しかし東京のように密集した地域で、一人心安らかに平和な暮らしをやっていくのはかなり難しい。
テイストは新宿を描いたソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』に似ています。ボクはあの映画が大好きなんですが、あちらは戯画的とは言え、コッポラの実生活に基づく違和感も提示していました。この映画は単に東京を肯定するだけなので、勘違いする外人が大勢出てくるような気がする(笑)。
それでも、すごく良い映画です。感動しました。役所広司の演技は素晴らしいし、お話も説得力がある。永遠に続くものはないという無常感は美しいです。
撮影の勝利で東京も非常に美しく描かれています。東京がこれだけ美しく描かれたことは今までないんじゃないか。
なんだかんだ言って、昨年の邦画では一番良いかも。趣味も良いし、何度も見たくなる映画です。ボクは好き。
ただ、今の東京を美化するだけでいいのか。『ベルリン 天使の詩』のようにおとぎ話と割り切れば良いかもしれませんが、話の詰めが甘い。良くも悪くも、こういう甘さはヴィム・ヴェンダースの特徴でもある。
それだけでは生きていけないのよ、東京では(泣)。