特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

クリスマス蕎麦と映画『ほかげ 』

 寒い週末でしたが、街は凄い人出でした。
 ボクはいつも通り映画を見に行っただけですが、六本木はこの有様。阿鼻叫喚です。何でクリスマスになると人は外出するんでしょう??

 お昼ご飯を食べに麻布十番の更科本店へ行きました。何十年ぶりですが(笑)、さすがにクリスマスは関係ないだろうと思ったからです。

 ボクはすぐ入れてもらいましたが、蕎麦屋ですら、この有様。わけがわかりません。

 まあ、久しぶりに食べた手打ちの更科蕎麦はまずくはなかったけど、クリスマスの時期に外出するもんじゃありませんね。ボクは普段通りの生活をしたいだけなんだけどなあ。


 この国の政治家も相変わらず、訳のわからないことを言っています。
 子供が自分自身のことを好きか嫌いかまで、国が干渉しようというのでしょうか。あくまでも自分で物事を考える人間を作りたくないらしい。
 

 平和主義を自称している癖に平和に結びつかないばかりか、ジェノサイドを幇助するようなことを言っている、バカな左翼も相変わらずです。どうしてこんなに頭が悪いのか。

 これも↓全く同感です。

 ボクが呑気に蕎麦を食べている時 世界を見回せば、クリスマスでも子供が殺されています。イスラエルのナチどもを止められない大人の責任です。我ながら情けない気持ちになります。



 と、いうことで、渋谷で映画『ほかげ

 終戦直後の日本。半分焼け残ったバラックのような居酒屋で、家族を戦争で亡くした女性(趣里)は身体を売りながら暮らしていた。ある日 浮浪児(塚尾桜雅)が盗みに入って以来 女性の家に入りびたるようになる。浮浪児は食べ物を探すうちにテキ屋の男(森山未來)と知り合うが。

hokage-movie.com

 世界的な評価を受けた『鉄男』、『野火』などの監督で、マーティン・スコセッシの『沈黙 -サイレンス-』などで俳優としても活躍する塚本晋也監督の新作です。スコセッシは『鉄男』のファンだったそうです。

 『ほかげ』とは何だろうと思ったのですが、映画では特に説明はありません。『火影』、空襲の火の影、業火の影の物語なのでしょう。主演はNHKの朝ドラ『ブギウギ』の趣里、実質的な主役である浮浪児役は塚尾桜雅、それに大森立嗣や森山未來らが出演しています。

 人肉食も含めてフィリピンの日本軍の惨状を描いた『野火』はとにかく凄かったわけですが、その続編ともいえる今作はどうでしょうか。

 女は廃屋のようなバラックで女は日がな寝ころんで暮らしています。怠けているというより、焼け跡の絶望がそうさせているのか。

 お話では彼女が住むのは焼け残った居酒屋ということになっていますが、一見では全くわかりません。そんなところで女は一人、暮らしている。夜になるとやってきた男たちに酒を一杯ひっかけさせて商売をする。つまり身体を売っている。

 ある日 浮浪児が食べ物を盗みに忍び込んでくる。

 追い払う彼女ですが、その日以来 浮浪児は女の家に入り浸るようになります。女は追い払おうとしない。同じ匂いを感じたのでしょうか。家族を亡くした者同士の疑似家族のようです。

 奇しくも先日見た『ゴジラ‐1.0』と同じ展開です。もちろん お話のリアル感、切迫感は比べるまでもありません(笑)。ゴジラVFXで再現された戦後の光景は凄いと思いましたが、『ほかげ』と比べると冗談にしか見えない。

 登場人物たちは空襲で家族を亡くし、荒んでいます。焼け野原に着の身着のままで生き残った。誰もが夜には悪夢にうなされているのが非常に印象的です。

 戦後間もない日本です。闇市では弱肉強食、容赦のない生存競争が繰り広げられています。そしてガード下には身体や心に傷を負った元兵士が放置されている。いずれ死んでいく。野垂れ死に、です。やっとの思いで戦争を生き残った彼らもまた、一人の人間です。

 塚本監督はボクとほぼ同年代、しかも同じ渋谷育ち。彼は幼時に渋谷のガード下にいた物乞いをしている戦傷兵士を見て育ったそうです。ボクも同じです。
 60年代半ばまで、そういう光景がありました。その頃のボクは何もわからなかったけれど、包帯を巻かれたままアコーディオンを弾いて物乞いをする兵士たちは子供心にも恐ろしかった。
 人々は目を背けて早足で通り過ぎる。彼らの姿には何とも言えない雰囲気があったからです。子供としては、彼らの姿より、その救いのなさが恐ろしかった。これは先日見た鬼太郎の映画とも重なります。

 女と浮浪児はつかの間の間 心を通わせるようになります。そして昼間の正業で暮らしていこうとする。やがて浮浪児の前に、大金で仕事に誘うテキ屋の男(森山未來)が現れます。

 人々を描く塚本監督の視線は容赦ないです。

 女役の趣里の演技は迫力があります。この子のやたらと怒鳴る芝居は好きになれなかったけど、時々見せる表情は動物的と言ってもよい本能の迫力がありました。塚尾桜雅や森山未來も素晴らしかった。

 救いがない、凄惨な映画のように見えますが、希望が込められているように見えます。単に戦争での犠牲や破壊というだけではない。人間の醜さが一気に現れる悲惨すぎる状況の中で、女も浮浪児もテキ屋の男も『人間として』生きようとするからです。

 同時代のことを描いた先日のゴジラとどうしても比べてしまうのですが、低予算でもこれだけ違うのか、という見本のようでした。
 見る前は『野火』同様に怖い、容赦のない描写を覚悟していたのですが、映画のなかに込められた希望が勝りました。
 終わった後の感触は何故かすがすがしい。そんな映画でした。


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