特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

世界系(笑)の映画二題:映画『たかが世界の終り』と『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』

今日 アカデミー賞が発表されましたが、毎年、この時期は見逃せない作品が多くて忙しいんですよね。
この前 映画が始まる前に15分だけ時間があったので、渋谷で流行っているという排骨担々麺のお店に行ってみたんです。排骨って中国風のとんかつですが、それが担々麺の上に載っている。なんとご無体な。暴力的な組み合わせが、どこか魅力的(ファンタスティック)(笑)。我ながら、でかいトンカツとかそういうものに弱いんです(笑)。

                                         
食欲という欲望を果たしてみたら、不味くはないけれどすごく美味しいってわけでもない。我に返ってみたら、炭水化物が多くて太りそう(笑)。なによりも満員のお店でコートを膝に置いて、映画の時間を気にしながら食べるのは消化に悪い気がしました(笑)。
●おまけ:先週 デモのあと食べた(笑)白アスパラ。上に載ってるのは海苔じゃありませんよ(笑)。お店の人に『2月なのにもう、白アスパラがあるんですか』と尋ねたら、『毎年出てくる時期がどんどん早くなってる』って言ってました。地球温暖化のせい??(笑)




今日の映画は何故か題名に『世界』という言葉が入っています。
まず、恵比寿で映画『たかが世界の終り』。映画『たかが世界の終わり』公式サイト
天才監督とその名も高いグザヴィエ・ドランの新作です。出演はナタリー・バイ、マリオン・コティヤール、レア・セドゥのフランス人俳優の豪華キャスト、昨年のカンヌ国際映画祭でもグランプリ(次席)を受賞。こうなると期待値のハードルはかなり高いわけです(笑)。

10年以上家から離れていた34歳の劇作家の主人公、ルイが実家に帰ってくる。家族に自分が死ぬことを告げるために。


グザヴィエ・ドランという人はまだ27歳、フランス系カナダ人。『私はロランス』、『トム・アット・ザ・ファーム』、『マミー』と今まで見た作品は外れなし、傑作揃いです。この人の映画は要するに『LGBT&マザコンから見た世界』ということではあるんですが(笑)、抜群のセンスの映像と音楽、それに迫真の脚色にはびっくりさせられてばかりです。また彼は俳優としても活動しています。多くの人が言うようにボクもこの人は天才だと思います。それにハンサム(笑)。あ、女性ファンの方、この人は女性には興味ないですからね!(笑)。今回の映画では出演せず、監督に専念しています。
グザヴィエ・ドラン監督。自ら主演を務めた『トム・アット・ザ・ファーム』のポスター

●俳優として主演(左)した昨年公開の『エレファント・ソング』。これもまさにドラン映画っぽい作品でした。

                   

12年ぶりに帰宅したルイ(ギャスパー・ウリエル)を迎えたのは母親(ナタリー・バイ)、妹(レア・セドゥ)、兄(ヴァンサン・カッセル)、兄嫁(マリオン・コティヤール)の4人。母親は厚化粧と派手な衣装ではしゃぎまわり、妹は兄に耽溺し、兄は冷たくふるまい、兄嫁はなんとか仲を取り持とうとする。
●母親役のナタリー・バイ(左)の動から静へと豹変する表現力はさすがでした。

●唯一まともそうに見える兄嫁役のマリオン・コティヤール(奥)。手前は兄役のヴァンサン・カッセル


終末感が漂う夕陽のような色彩が続く映像は素晴らしいです。光の中に埃が舞っていたりする静の表現やドライブシーンでのスリリングな演出、テクノを多用する音楽も相変わらずカッコいい。何よりも俳優さんたちの演技合戦は凄い、と思います。ナタリー・バイの前半と後半でガラッと変わる演技はさすがだし、レア・セドゥなんか表情の重みがあって、ボンドガールやってる時と同じ人とは思えなかった。
●兄を熱愛する妹役のレア・セドゥ


ただ、会話劇なのに会話がいまいちなんです。主人公は家を離れるときに自分はゲイであることをカミングアウトしています。故郷を捨てた彼が突然帰ってきた。自分の気持ちをなかなか言い出せない主人公に対して周囲の家族は内心を察しつつも言葉にできない。その複雑な心境は判るんですが、登場人物たちのセリフが凡庸で会話がピンとこないんです。ほぼ家の中で演じられる会話劇でそれは辛い。そうか、グザヴィエ・ドランにも、ここに弱点があったかーという感じです。その分 俳優さんたちの演技で勝負していて、それはそれでカッコいいんですが、やっぱり会話劇だからフランス映画らしい台詞の冴えを求めてしまいます。
●ぎこちない会話がぎこちないまま進んで行きます。登場人物たちの無言の行間はいいんですが。


この映画の原作者もエイズで亡くなっているそうですし、ドランが持っているであろうエイズに関する危機感がボクとは違うのかもしれません。映画の方は『これから面白くなるんだろう』と思いながら見ているうちに、終わってしまった(笑)。
●繊細でハンサムな主人公役のギャスパー・ウリエルはまるで監督の分身のように感じました。好演です。


ということで、水準以上の作品ではあることは間違いないんですが、今迄の凄すぎるドラン作品に比べると驚くような点はないし、ボクは今いちに感じました。美しいし面白いんですけどね。次作に期待します。



次は、どうしても見たくなって、滅多に行かない二子玉川までわざわざ出かけた映画です。世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方映画『世界で一番のイチゴミルクのつくり方』 2017/2/11(土・祝)より109シネマズ二子玉川ほか全国にて元気にロードショー!

ドイツの真ん中にある平凡な村、ボーラスドルフ。その平凡な村に乗り込んできたマーケティング調査会社に純朴な村人たちは影響されて新製品に夢中になり、邪魔なおじいちゃん・おばあちゃんたちを老人ホームに押しこめてしまう。今まで老人たちに遊んでもらっていた幼稚園児たちは村を特別なところにすれば皆が帰ってくると思い、幼稚園を脱走し、仲間の賢いアカハナグマと一緒に調査会社に対して、断固立ち上がる。


ドイツ発の子供向け映画です。全然ノーチェックだったのですが、日経の『文化往来』欄で褒められていたんです。子供たちとクマが暴れまわる映画と聞いたら、絶対 見逃せない(笑)。
●子供たちは仲良しのハナグマ(右上)といつも遊んでいます。名付けて『ハナグマ・ギャング団』

                       
子供向け映画でお話がどう、というものではありません。でもそれを補って余りあるものがあります。
まず画面が超楽しい。実写映画ですが、模型などが多用されて観客をまるで夢のなかに居るような気持ちになります。監督は自分の子供にどんな映画が見たいか尋ねたら『飛行機と消防車、機関車や船が出てきて事故が起きる映画』と言われたのをそのまま反映したそうです。見事なできばえです。
●子供たちは今まで一緒に遊んでいたおばあちゃんやおじいちゃんたちを老人ホームから救い出すために立ち上がります。

展開も面白い。ミュージカル仕立てになっていて楽しいだけでなく、本当に子供たちとハナグマが思う存分 暴れまわるんです。老人たちをホームから解放するための子供たちの抗議デモも可愛くて、これだったら無敵だなーと思いました。
●子供たちのうた。演技とはとても思えません。


子供たちが役所にデモを仕掛けても、心が凍り付いた大人たちは言うことを聞きません。子供たちは断固として戦いを始めます。このキレ具合がカッコいい。ここまでやるかというくらい徹底的に暴れまわり、壊しまわる。


   
                                  
それを演じる子供たちもいかにも子供〜という感じで演技とはとても思えない。みんな超可愛い。一方 子供たちをたすける天才ハナグマくんは器用にちゃんと演技してる。
●ハナグマって熊じゃなくアライグマの仲間なんですね。


子どもが子どもとしてちゃんと描かれている素晴らしい映画でした。こういうのは久しぶりに見ました。文句なしに面白いです。幼稚園児たちとクマが大暴れ。子供たちが歌い、踊り、暴れる、まさに理想の世界です(笑)。社会派テイストも入ってるけど、誰も傷つかないし、悪人も出てこない。ただ画面の中には夢と笑いが溢れてる。こういう作品としてはダントツじゃないでしょうか。地味な映画だけど、ボクは大好きです!