特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

2016年の映画ベスト20

そろそろ2016年も終わりです。あっと言う間でした。個人的には1年間、無事に過ごせたことに感謝しています。多かれ少なかれ、自分が影響を受けてきたデヴィッド・ボウイとプリンスが亡くなったのはかなりショックでした。

もっと広く世の中を見渡すと、日本も海外も世の中はきな臭い方向へ進んでいて、大丈夫なのか、と思えるような年でもありました。たぶん、大丈夫じゃない(笑)。きっとこれから我々自身が試されていくんでしょう。
●10月に『男と女』の舞台挨拶を見たばかりの目指せ!エロジジイ?:映画『ある天文学者の恋文』と『男と女』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)ピエール・バルー、この年末に亡くなってしまいました。音楽を愛し、80を過ぎても女性に投げキッスを振りまいていた人生。舞台挨拶の時と同じように、心臓発作で運ばれる救急車の中でも救急隊員に歌を歌っていたそうです。彼も最後まで素敵でした。


でも、希望はあります。2016年は今までのパラダイムを乗り越えるような、新しいものがほとばしるように現われてきた1年でもありました。世の中は変わるんです。良い方へ行くか悪い方へ行くかはボクたち次第。
皆さんはどう思われますか。
           
●真ん中のおっさんはレッド・ホットチリペッパーズのドラマー、チャドくん。やられちゃったみたい(笑)。




今回は今年最後の更新となります。ブログを見てくださった方、コメントしてくださった方、ありがとうございました。11月から同名のツイッターも始めてみたし(このブログ以上に超マニアックな世界の情報収集用)、ネット上も思わぬ広がりがあった1年でした。ネットと実生活は別!ですけどね。

1年間 我ながら勝手なことばかり並べ立ててきました。お付き合いいただいた方、ありがとうございました。感謝しております(一部を除く)(笑)。 皆さま 良いお年をお迎えください。



最後に今年見た映画のベスト20を。毎年ベスト10でやっていましたが、今年は大豊作でとても絞り切れませんでした。今年 映画館で観た映画は94本(笑)。我ながら何をやっているんでしょうか。良い映画を見損なったら人生の損失だ!と思うからなんですが、この執念を実生活や仕事に行かせないのか、と我ながら思います(笑)。ま、いっか(笑)。
一応 大まかに順位づけしてますけど、どれも素晴らしい作品ばかりです。タイトルの後の月はボクが見た月で公開は多少前後しています。

                 
スト20位から11位(順不同)
くまちゃんの可愛さと内容が両立した『パディントン』、現代の核心を突く知的でほろ苦いエンターテイメント『マネーショート』(3月)、感涙のドキュメンタリー『ジェンダー・マリアージュ』(3月)、日本のマスコミとは大違いのアメリカの地方紙を描いた『スポットライト』、人間もファッションも美しく格調高い『キャロル』(3月)、ピリ辛ユーモアが溢れる『神様メール』(5月)、エヴァンゲリオン風政治映画『シン・ゴジラ』(8月)、福山雅治二階堂ふみちゃんのコンビぶりと東京の夜景が美しい『SCOOP』(10月)、芸達者な若手俳優たちがかっての自分のように思える『何者』(10月)、2大女優の演技合戦と高い志に感動する『ハンズ・オブ・ラブ』(11月)

                       
どれも素晴らしい映画ばかりでしたが、特に邦画の『シン・ゴジラ』、『SCOOP』、『何者』は今までボクは見なかったような作品だったので、自分の幅が広がった?ような気がしました。とくにSCOOPが描く東京の雰囲気は実に愛おしい。ボクが昔感じてた六本木の雰囲気が良く出ていました。ユーモアにあふれたマネー・ショートは現代を生きる人間はぜひ見るべき映画です。えっちなお姉さんの解説などを借りながら(笑)、この映画が指摘していることが今の世の中の問題点の7割くらい?を占めているはずです(笑)。ストレスに耐えながら、現代を動かす大きなシステムに対して孤独な闘いを続ける登場人物たちに感銘を受けました。ストレスがたまると独り部屋に籠って、轟音でロックをかけながら楽器をかき鳴らすクリスチャン・ベール、あれ、ボクも全く一緒なので、すごくシンパシーを感じました。彼らとは稼ぎもルックスは全然違うけど(笑)。


                     
10位:ズートピア(5月)『7月参院選 投票に行こうよデモ』と、強力なアンチ・ヘイト映画『ズートピア』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
うさちゃんの姿を借りて性別、人種などの差別に反対する2016年ならでは映画。全然押しつけがましくない、笑って泣かせる完璧なアンチ・レイシズム(差別反対)映画。女性やイスラム教徒への憎悪を煽るトランプの当選で、この映画の重要性は更に高まったと思います。

               
9位:さとにきたらええやん(8月)『この国の中にある二つの国』と映画『さとにきたらええやん』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
大阪、西成区の児童向け施設を描いたドキュメンタリー。子供たちに笑わされ、泣かされ、学ばされます。子供らしい子供の姿を久しぶりに見たような気がします。
映画『さとにきたらええやん』公式サイト


                             
8位:トランボ(7月) 『ローマの休日』に隠された物語:映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
ハリウッドの赤狩りで追放されるも、偽名を使って『ローマの休日』などで2度もアカデミー賞を取った不屈の男の実話。トランボ役の男優ブライアン・クランストンはアカデミー主演男優賞にノミネートされた名演でしたが、娘役のエル・ファニングは可愛いくて、賢くて、逞しい、男親から見た理想の娘像(笑)。日本だって赤狩りみたいなことはありそうです。政府に都合の悪い意見はあまり流れない、今のTVなんか既にそうなりつつあるでしょ。このドラマは他人事じゃありません。自分はどうやって生きていったら良いか、考えさせられました

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7位:サウルの息子(1月)バーニー・サンダース氏と映画『サウルの息子』と『パディントン』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
アウシュビッツで働かされるユダヤ人を忠実に再現したアカデミー賞受賞作。映像もお話も凄すぎ。こういうのを映画的体験、って言うんでしょう。文字通りの地獄をこの目で見ました。ですが、観て良かった。観た人の心を強くさせる映画です。

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6位:グランドフィナーレ(4月)映画『グランド・フィナーレ』と『最高の花婿』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
高級保養地で過ごす老作曲家をゴージャスな映像と音楽で描いた作品。アカデミー賞を取った『グレート・ビューティ』のパオロ・ソレンティーノ監督の新作。この映画もお話はどうでも良くて、音楽も衣装も建築もインテリアも台詞も、46歳のレイチェル・ワイズの水着姿まで(笑)、ひたすら美しい。主人公が水の上を歩くように見えるシーンだけでも恐れ入ります。主題歌はアカデミー主題歌賞にノミネート。原題は『YOUTH』、そのテーマはどうやって死んだらいいのか年老いても美は紡ぐことができる。泥酔したときのお伴というか、心が疲れた時はこういう映画が必要なんです。

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5位:これが私の人生設計(3月)雑誌『現代思想3月号』と映画『これがわたしの人生設計』、『幸せをはこぶ歌』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
男性優位社会である建築業界で孤軍奮闘する女性建築家を描いたラブコメディ。仕事、失業、差別、同性愛、繁栄に取り残された都市の暮らし、色んな要素が詰まってるけど、面白さだけだったら、この映画が今年1番、思い切りゲラゲラ笑いました。女性主人公は撮影後、監督と結婚したそうですが、ヒロインの生き生きした表情と彼女を美しく撮ろうとする監督の気持ち、文字通り幸せな瞬間が画面に詰まってます

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4位:LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版(2月)神戸から三陸、そしてフクシマへ:映画『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
ボクにとっては生涯ベスト10に入る映画その街のこども、ドラマ『あまちゃん』、『トットTV』に続いて井上剛監督、大友良英(音楽)のコンビの新作。福島を舞台に、神戸の震災をテーマにした『その街のこども』の続編のようなお話です。神戸から三陸を経て福島へ、癒されない傷を抱えて人間はどうやって生きていくか。まさかE-Girlsの女の子(石井杏奈)に泣かされるとは思いませんでした。サントラもサイコーです。井上監督は19年の大河ドラマを撮るそうですが、どうなるのでしょう。

                              
<ベスト3>
この世界の片隅に (11月)、

ただ、生きることで理不尽な世界と戦う。:映画『この世界の片隅に』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
『PK』 (10月)、


暗闇の中で拍手が沸き起こる。映画『pk』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

『シングストリート 未来へのうた』 (7月)

『参院選の結果』と未来を選ぶ物語:『シング・ストリート 未来へのうた』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
        
                                  
この3作は順位はつけたくないんです。どれも一生忘れられないボクの『人生の宝物』となった作品だからです。映画の満足度調査なんかを見ると、この3作がベスト3を占めてましたから、多くの人も高く評価しているのでしょう。上映時間3時間のPKは1回しか見られなかったですが、 『この世界の片隅に』は3回、『シング・ストリート』は劇場で4回見た(笑)。『太平洋戦争下の生活』、『宇宙人』、『高校生のバンドもの』とテーマはバラバラですが、どれも大傑作で、笑って泣かせて勇気をくれるというのは共通しています。ユーモアと勇気と知恵に溢れた作品たち。どれもエンドロールが終わった後 大声で号泣したくて困りました(笑)。
この世界の片隅に』は理不尽な戦争を生きた個人の生活に現代人を正面から向き合わせる、白井聡言うところの『永続敗戦』に終止符を打つ作品だと思うし、『PK』も完成度が超高いだけでなく、まさに今の世界につながるお話です。素っ裸の宇宙人とダンスとラブロマンスでテロに立ち向かってるんですよ!(笑)
個人的な好き嫌いで言ったらシング・ストリートは別格。この映画には監督の『すべての兄弟に捧げる』というクレジットがあるんですが、間違いなくボクもその兄弟の一人であるからです。この齢でアイルランドに兄弟ができるとは思いませんでした(笑)。自分のために作ってくれた映画、そう思っている人が男も女も、この地球上に何万人もいるはず、そんな作品です。