特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『日露ファシスト対談』と『ムーンライダーズLive@中野サンプラザ』、それに映画『灼熱』(ザグレブからアレッポヘ)

今 現在 反政府軍が支配していたシリア第2の都市アレッポへの政府軍の侵攻で大量虐殺が行われています。その責任の一端はシリア政府を支援して空母まで繰り出して空爆をしているロシアにありますプーチンの来日は最低最悪のタイミングになりました。
メルケル首相とオランド大統領は状況は『 破滅的 』とシリア政府の後ろ盾のロシアとイランを非難しました。そして、国連安保理でも討議が行われています。 
米国のサマンサ・パワー国連大使は、シリアの政権軍やロシア軍が子供を含む市民をテロリストと称して殺していると指摘した上で「情け容赦ない。恥を知るべきだ」と非難した。過去24時間で11人の女性と13人の子供を含む少なくとも82人の市民が親政権軍に殺害されたと訴えた。安保理、アレッポ人道危機でロシア非難 緊急会合で欧米 :日本経済新聞

                         
残念だけど、犠牲は82人では済まないでしょう。アレッポの市民、約5万人が危険にさらされているという報道もあります。
安倍晋三は何をやってるんでしょうか?(恥)。大量虐殺を止めさせるために何か努力したんでしょうか日本のマスコミはなぜ、このことを指摘しないんでしょうか。既にEUは今回の虐殺に対して来年1月末までだったロシアへの経済制裁を延長する方向で進んでいます。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016121300890&g=int

                  
パリではアレッポの人々に連帯の意志が表明されています。

                                     
これが普通の人間の感覚じゃないですか。人をさんざん殺している奴に、な〜にが3000億の経済協力だよ、バカ! やることが逆だろって。今 この瞬間にも大勢の無実の市民が殺されていることを無視したままのプーチン安倍晋三日露ファシスト会談日本の恥を世界に晒しました。

●ドキュメンタリー『シリア・モナムール』よりポケモンの涙:映画『シリア・モナムール』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)




さて、今週は官邸前抗議は宴会で欠席です(泣)。今日は750人の参加者で行われたそうです。

                          
アレッポで今 行われていることを考えると、いつものように呑気に宴会の悪口を書いているような気分にはなれません。それでも備忘として、昨日行ってきたコンサートの感想を書いておきたいと思います。
ムーンライダーズ Final Banquet 2016 ~最後の饗宴~

                                  
ボクが日本人のバンドで一番好きな、ムーンライダーズのコンサートです。このブログの第1回は蛯子能収先生が詩を書いたムーンライダーズの曲『だるい人』(笑)を取り上げたくらい、ボクは影響を受けています2007-10-25 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
                                         
ムーンライダーズというのは当初はアグネス・チャンのバックバンド(笑)、その後 フォーク・ロックバンドとしてデビュー、それから直ぐニューウェイヴ・バンドへ転向(笑)、以降 ずっと一癖ある独自のサウンドを展開し続けています。様々な伝説があって、昔は『コンサートに来る女性客が最も可愛いバンド(笑)』、『東京以外ではコンサートをしないバンド』と雑誌などで言われていました。それに資生堂ミノルタカメラを始め、様々なTVCMに曲が使われても、全くブレイクしなかった(笑)ことでも有名です。要するに、一般受けしない、ひねくれた知的な音楽をやっていて、客もお洒落だけど一癖ある人たちが集まっていたんです。シングルヒットもなければ、武道館公演もやらず、それでも一部の熱烈な支持で今年で結成40年。現存するバンドでは恐らく日本最古!(笑)。 音がかっこよくて、演奏が超うまくて、(男の子の心情を歌った)歌詞に共感できて、ルックスと歌はちょっと問題あり(笑)、そんなバンドです。
                                   
2011年に活動休止したのは(2014年にメンバーの死去で1回だけ再結成)本当にがっかりしました(やっぱり)薔薇がなくちゃ生きていけない:ムーンライダーズ TOUR2011 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)。でも今年『活動休止の休止』(笑)を発表したんです。寒い冬の夜にもめげず、わざわざ中野サンプラザまで出かけました。 客席は元美少女と元美男、それにそうでない男(笑)で満員 (笑)。基本的にボクより上の年代の人たちが多いんですが、20代くらいの若い人も若干(笑)。

                            
演奏は7時ぴったりから始まって、2時間半休みなしでした。これでメンバーは皆60歳過ぎですからね(笑)。
●写真OKタイムあり。うまく写ってませんが、『犬にインタビュー』という曲だったので、メンバーは犬のお面をかぶっています。

70年代、80年代の曲が全体の8割くらい(名曲揃いだから仕方ない)ですが、半分くらいはアレンジを全く変えている。21世紀になってからのドラマー二人体制の重いビートではなく、今回はドラマーは一人、その点は前の方が良かったけど、演奏は相変わらず超上手いし、名曲にはほろりと泣かされる。高校生の時に聞いた曲、大学生の時に聞いた曲、社会人になって聞いた曲、思い出が自然と浮かんでくる曲ばかりです。それが懐古趣味じゃなく、バリバリに攻撃的なアレンジで現代の音楽として提示されるからいいんです。『Don’t Trust Anyone Over30』(30歳以上を誰も信じるな)という名曲は、『Don’t Trust Anyone Over 60』(60歳以上は誰も信じるな)に替わっていましたし(笑)。
                              
メンバーも客も、みんな歳を取りました。でも『何も信じない』、(だけど心に)『薔薇がなくちゃ生きていけない』、このバンドから教わった精神はボクの中で、ずっと変わりません。
良かったです!コンサートで久々に大声を出して歌ってしまいました(笑)。お願いですから、ムーンライダーズをこのままずっと、一生続けてください。
●最後にメンバーが去った舞台に40の文字が浮かび上がりました。今年で結成40年。

●これは5年前、活動休止時の映像。

●こちらは20年前くらい?NHK出演時。

●こちらは約37年前のTV出演時の映像。この曲の歌詞が本当に大好き!昨日は客席の中に飛び込んで、この曲を歌ってました。





ということで、青山のイメージフォーラムで映画『灼熱映画『灼熱』 公式サイト

クロアチア紛争を挟んだ1991年、2001年、2011年の3つの年代を舞台に、クロアチア人とセルビア人の若いカップルに起きた出来事を描いたオムニバス。3つの別々の話を同じ俳優が演じている。
『イェレナとイヴァン』:1991年、紛争の危険が高まる中 セルビア人の娘イェレナ(ティハナ・ラゾヴィッチ)とクロアチア人青年イヴァン(ゴーラン・マルコヴィッチ)はお互いへの憎しみが広がっている村を捨て都会へ引っ越そうとするがーーー
『ナタシャとアンテ』:2001年、紛争が終結して、兄をクロアチア人に殺されたナタシャは荒れ果てた自宅に帰って来た。また故郷に住むために彼女はクロアチア人の大工アンテに修理を依頼するがーーー
『マリヤとルカ』:2011年、休暇で帰郷したクロアチア人の大学生のルカは、かって妊娠させたが周囲の反対で別れたセルビア人のマリヤに逢いに行くがーーー

そんなに詳しくはありませんが、ユーゴ解体後のクロアチア紛争、ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争、コソボ紛争は現代に生きる我々にとって非常に衝撃的な出来事だったと思います。ナチや大日本帝国が滅んで以来、少なくとも先進国では野蛮な紛争は行われていませんでした。それを、ド田舎とは言え、ヨーロッパで、口にすることすら憚られるような残酷な出来事、例えば虐殺や民族浄化(他民族への組織的な強姦や強制妊娠)(怒)が行われたのは衝撃でした。マトモな人間にはそんなこと思いつきませんよ。でも、セルビア人もクロアチア人双方がそう言う行為を繰り返したし、虐殺の責任者を多くの人々が庇いました。平和的な外交手段で戦争は防ぐことが出来ると考えていた者にとって、匕首を突きつけられたような事件です。
                                               
あんな滅茶苦茶なことが目の前で行われているときに、悠長に平和的手段を、と言っていて良いのかどうか。紛争当時、ベトナム以来ずっとアメリカの戦争に反対してきた、評論家のスーザン・ソンタグNATOセルビアへの空爆を支持して議論を呼びましたが、ボクも軍事的手段の必要性について改めて考えさせる事件でした。

そういうユーゴの紛争ですから、様々な映画になってます。最近だったら、民族浄化を告発したアンジェリーナ・ジョリーの初監督作『最愛の大地に』が記憶に残っていますオリンピックの災厄と映画『最愛の大地』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)。映画としては説教臭いので嫌いですが、当時行われていた民族浄化の有様をこの目で見せられると絶対に許せない気持ちになります。
オリンピックの災厄と映画『最愛の大地』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

最愛の大地 (字幕版)

最愛の大地 (字幕版)

                              
今回の『灼熱』は紛争で引き離された若い男女を描いた物語で、カンヌ映画祭で『ある視点』部門の審査員賞を獲得、アカデミー外国語映画賞クロアチア代表になるなど高い評価を受けている作品です。邦題は『灼熱』ですが、流れている時間は非常に穏やかです。英語題は『The High Sun
セルビア人とクロアチア人、若いカップルの3つのエピソードを同じ俳優が演じるオムニバスです

                           
最初のエピソードでは、セルビア人の娘とクロアチア人青年の駆け落ちが描かれます。セルビア人と言われても、クロアチア人と言われても、ボクなんかは外観を見ても良くわかりません。セルビア人は正教会クロアチア人はカソリックだそうですけど、せいぜい十字架のマークが違うくらいにしか、ボクには違いは判らない。
100万人近くも殺されたルワンダの虐殺を描いたアカデミー賞ノミネート作品『ホテル・ルワンダ』を見た時も、殺しあうツチ族とフチ族の違いは全く判りませんでした。関係のない第3者が見たら差は全然判らない、民族の違いなんてその程度じゃないんでしょうか。バカバカしいの一語に尽きる。違いますか?                                       
民族を超えて惹かれあう二人は家族や村人たちから白い目で見られています。でも彼女らは好きな相手と一緒になることに何の問題があるのか、さっぱり理解できない。家族や村人たちは二人を妨げようとしますが、そこで悲劇が起こります。
●右側がクロアチア人の彼氏。人の良さそうなアンちゃんです。こういう人、ボクは好き。

                                         
この映画で最も面白かったのが2番目の2001年のエピソード。紛争終結後、生活を再建する為に故郷に戻ったセルビア人女性の元に雇われたのはクロアチア人大工でした。兄をクロアチア人に殺されたセルビア人女性はセルビア人大工に対して心を閉ざします。しかし内面には激しい思い・欲望を抱いています。それが爆発するまでの過程、そして二人の間に訪れる静かな許しは素晴らしい。

                                 
3番目のエピソードは2011年ということで、一見 戦争の傷は癒えたかに見えます。大学生たちが集まって、クスリをやりながらレイブ・パーティーをやっているくらいです。これは驚き。しかし、心の中にはとげがある。クロアチア人同士、セルビア人同士の間にも抜けない棘が刺さっている。彼らの間に癒しは訪れるのでしょうか。
カップルを演じる俳優さんは女性(ティハナ・ラゾヴィッチ)も男性(ゴーラン・マルコヴィッチ)も非常に魅力的でした。特に女性役の人。最初のエピソードでは男となぐり合うような気の強さ、2番目のエピソードでは生命力が解き放たれたかのような激しい欲望と穏やかな赦し、3番目のエピソードでは困難に静かに耐える強い女性を演じ分けていました。彼女が各地の映画祭で高く評価されたのは納得できます。

                          
この映画は、『時間はかかるけれども、傷ついた人間にも相手を許すことができる、そして癒されることができる』と語っています。かの地では信じられないくらい酷いことがあったけれど、生きている限り救いはある、と。
                                  
果たしてそうでしょうか。
この映画で描かれたのと同じようなことが、今 シリアで起きているわけです。twitterを見ていると、アレッポで政府軍に圧迫されて最後の時を迎えようとしている市民の声が聞こえてきます。ドキュメンタリー『シリア・モナムールポケモンの涙:映画『シリア・モナムール』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)では、政府軍は普通の市民、女性も子供も動物も平気で殺していました。子供や女性にも拷問して、見せしめのためにネットで流している。日本のTVでは殆ど報じませんが、今 この瞬間も市民の殺害が続いているのでしょうか。

http://jp.reuters.com/article/idJP2016121301001127

「最後のメッセージです」アレッポ市民がTwitterに投稿した別れの言葉 | HuffPost Japan


  
何とも胸に詰まります。どうしたらいいんでしょう。

この映画は、手ひどく傷ついた人間もいつか癒されるであろう、ということを描いていますが、それを証明しようとはしていません。ただ、人間はそうあってほしいという優しい心情が反映されている。それはこの映画が大勢の人が亡くなった場所で作られたからだと思います。
セルビアでもアレッポの虐殺への抗議が行われています。

                                      
ボクには信じるしかありません。民族だの、国家だの、どんな理由があろうと憎しみ合ったり、殺しあったりするなんてバカらしいってことを。この映画は若いカップルの寓話を借りて、そういう真理を伝えています。
誰もが一見の価値がある作品だと思います。残酷な場面もないし、若いカップルの生命力も感じられる。完成度が高い、良い映画です。