特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『奈良県立図書情報館の展示』と映画『コーダ あいのうた』

 今朝は寒かったですねー。
 今年はあまりの寒さに、零下30度でも大丈夫だと言うカナダグースの山用ダウンを買ったので、1時間半の徒歩通勤でも寒さ自体は平気です。文明の利器は大したもんだと思いました。ただ、このメーカー、そこいら中で若い子やママチャリに乗った主婦が大勢、着ているのでちょっと恥ずかしい(笑)。

 twitterでこんなものを見つけました。
 奈良県立図書情報館という施設が石原慎太郎の死を機に特集をやっているのですが、展示した本の写真をよく見ると石原の暴言を否定するようなものも沢山 展示しています(笑)。

 これが『抵抗』、『組織人の良心』というものだと思います。組織は時に理不尽な命令を押し付けてきます。従わざるを得ないときもある。でも、可能な限り、自分で頭を使って戦えばいいと思うんですよね。一人一人がゲリラ戦をやればいい。そういうことをやる人が増えれば、世の中は少しずつ良くなると思う。

 有名ホテルチェーンのプリンスホテル外資に売却されることになったそうです。建物や土地をシンガポールのファンドに売るとのことで、運営はそのままだから利用者には判らないですが、これもまた、日本の凋落を表すような出来事です。
 ちなみにボクは昔からプリンスホテル系列は大嫌いです。値段が高くて、質が悪い。館内に下品さが漂っている、と思うのはボクだけでしょうか。

www.nikkei.com

 親会社は異なりますが、西武デパートも売却されることになったそうで、今月いっぱい交渉が続けられるそうです。

www3.nhk.or.jp

 (ボクは昔から嫌いでしたが)バブル期はホテルもデパートも『西武』という名は一世を風靡しました。ずいぶん時間はかかりましたが、いよいよ昭和の残滓は世の中から消えつつあります

 円安で輸出振興再びというバカな夢を追ったアベノミクスが典型で、昭和が残っているのは政治家の頭の中だけなんですよね。昭和どころか戦前に戻ろうとする輩までいる始末ですから(笑)。

 まともな企業や若い人はどんどん海外へ目を向けていく流れは加速していくでしょう。少子高齢化の日本に残るのは、ますます貧乏で夜郎自大のバカウヨの年寄りだけになりそうです(笑)。


 と、いうことで、六本木で映画『コーダ あいのうた

gaga.ne.jp

 とある海辺の町。耳の不自由な漁師一家の中で唯一耳が聞こえる女子高生のルビー(エミリア・ジョーンズ)は学校へ行きながら家業の漁業を毎日手伝っていた。新学期、彼女は気になっていた同級生のマイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)と同じ合唱クラブに入り、顧問の教師から歌の才能を見いだされる。名門音楽大学であるバークレーの受験を勧められるルビーだったが、彼女の歌声が聞こえない両親から反対されてしまう。

 フランス映画『エール!』(15年)のリメイク。
 コメディ色が強かったオリジナルをより繊細に描いたという触れ込みで、サンダンス映画祭で観客賞、最高賞、監督賞、アンサンブルキャスト賞など史上最多の4冠を撮った作品です。Appleサンダンス映画祭の史上最高額2,500万ドル(約26億)で買い付けたことでも話題です。
 題名のCODAとは音楽用語で最終章という意味ですが、ろうあ者を親に持つ子ども(Child of Deaf Adults)という意味でもあります。


 映画は主人公一家が漁船で漁をしているところから始まります。父親、兄、主人公である妹。妹は大声で歌を歌っていますが、父親と兄は気にもかけません。主人公の一家は彼女以外耳が聞こえないのです。彼女は幼い時から耳が聞こえない家族をサポートしてきました。

●主人公一家。粗野とも言えるくらい個性的ですが、皆仲良し。
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 高校に通う主人公はイケメンに釣られて合唱部に入ります。そこで教師に歌の才能を見いだされ、音楽教育の名門、バークレー音大への進学を勧められます。しかし彼女が遠く離れた大学へ進学してしまうと耳が聞こえない家族は漁ができなくなってしまいます。
 
●主人公役の女の子(エミリア・ジョーンズ)は瑞々しくて凄く良かった。
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 主人公を演じる女の子は目力が強い。障害を持った一家、それに貧しい漁師の娘ということで周囲から差別されている彼女ですが、強さと弱さを緩急分けて演技する姿は素晴らしいです。瑞々しい。
●美しいシーンです。この男の子が出ていた『シング・ストリート』の一場面かと思った。
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それに役柄に説得力を持たせるくらい、歌もちゃんと歌える。 

●この子が結構歌えるのは感心しました。もちろん歌えないと役柄に説得力を持てないのですが。
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 この映画の特筆すべき点は聴覚障碍者を描いた演出です。詳しくはネタバレになってしまうので書けませんが、眼からウロコのシーンが散りばめられています。音楽映画なのに聴覚障害を描くという無理難題が見事にクリアされている。繊細な描写を見てなるほどというか、反省したというか、己の無知を思い知らされました。

●主人公以外は実際に聴覚障害を持つ俳優さんたちが演じています。その演技は素晴らしい。
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 感動的なシーンは多々あって、素晴らしい映画ではあります。インディ制作の小品ですが、作品賞と父親役のトロイ・コッツアーが助演男優賞アカデミー賞に引っ掛かるかもしれないと言われています。障碍を抱え、経済面でも厳しいにも関わらず、それに負けない仲良し家族の姿も非常にユニークだし、感動的です。ボクは家族愛とかあまり好きじゃないですが、コンプレックスなんか微塵も見せない、この屈託のなさは素晴らしい。

 それより、ボクが好きなのは10代の瑞々しさが見事に表現されているところ。主人公の女の子の魅力に負うところが大きいんですが、それを素直に生かした演出も素晴らしい。今時珍しいくらい爽やかな青春映画です。
 ジョニ・ミッチェル作の『青春の光と影』が効果的な使い方をされています。やっぱりジョニ・ミッチェルって凄いんだよなー。
●最近、60年代後半の未発表のライブ&デモ5枚組が出たばかりです。聞いているうちに頭痛くなった(笑)。

 ただ、ドラマとしてとどめの一撃が無かった。映画の設定上 仕方がないかもしれないけれど、音楽映画ではないんですね。折角 主人公は歌えるんだし、映画からは芸術に対する愛も感じられたのに、そこは深堀されず、他のテーマへ行ってしまった。それはそれでわかるけど、ボクはやや物足りなかった。
 見る前の期待が大きすぎたんでしょう。インディの映画にも拘わらずアカデミー賞に引っ掛かるかもと言われるくらい、多くの人に好かれる映画だと思うんですが、個人的にはその灰汁のなさがやや物足りないのかな。
 でも、間違いなく良い映画です。この爽やかさは見る価値があります。
 

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