特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画3題:『アリスのままで』、『マッドマックス4 怒りのデス・ロード』、『海街diary』

毎日、朝日、共同通信、各社の世論調査では安倍内閣の支持率が急落、不支持が支持を上回りました 安倍内閣支持率急落 共同通信、毎日新聞調査とも4割切る : J-CASTニュース。『憲法違反の疑いが濃厚な法律を、まともな説明や議論もなしに強行採決した』のだから支持率が下がらない方が不思議です。でも支持率が30%台半ばなんてまだまだ高い。未だに支持している人はどうしてなんでしょうか。
今の戦略は安倍晋三の支持率を落とすこと。そして倒閣に追い込むことだと思います。支持率を下げるためには、デモでもプラカードでも周りの人と話すのでもいい。私はこう思う、と意思表示することでしょう。野党がダメだから、と匙を投げている人は民主主義は他の誰かにかなえてもらうものと思っているのと同じです。政治家に頼り切っているということです。代わりの内閣がどう、なんて考えなくても良い。右とか左とかもどうでもいい。そんなことより『憲法を守らないような内閣は続かない』のを示すことが法治国家にとって1億倍も重要ではないでしょうか
                                     
先週のデモ3連投で冷蔵庫の在庫を使い果たしてしまったので、今日はおかずの作り置きで忙しかった、です(笑)。今週も忙しそう。関東地方は梅雨明けしたそうですが、今年の夏は暑くなりそうです!
●反原連のツイート


●SEALDsのツイート
●今日のNHKニュースで報じられた『安保法制に反対する学者の会』の記者会見。ノーベル賞受賞の益川京大名誉教授。隣は上野千鶴子東大名誉教授。

                                            
ラサール石井のツイート:傍観者にはなりたくない、ってことなんでしょう。
                                                                                                            
さて、忙しいんだけど、観なければいけない映画も溜まっているんです。今日はまとめて3本の感想。実際に一日に3本も見たんです。頭がおかしくなりそうになりました(笑)。
まず『アリスのままで』(原題Still Alice)

主人公アリス(ジュリアン・ムーア)は50歳、名門コロンビア大の言語学教授。家族は医学部教授の夫(アレック・ボールドウィン)と出産間近の長女、医学部インターンの長男、売れない演劇をやっている次女(クリスティン・スチュワート)。自身のキャリアにも家族にも恵まれ、唯一の心配は離れて西海岸で暮らす次女くらいだった。物忘れがひどくなったアリスは医者の診断を受けたところ、遺伝性の若年性アルツハイマーと言い渡される。症状は段々進行していき、記憶はどんどん失われていく、というのだ。懸命にリハビリを試みるアリスだが、次第にジョギングへ行っても帰り道が判らなくなったり、家の中のトイレの場所まで忘れてしまうようになる。彼女と家族はどうするだろうか。
                   
言うまでもなく、今年のアカデミー主演女優賞の獲得作品です。辛い、救いのないテーマを描いた映画でもあります。認知症は人間の意志とか努力は全く通じない病気であるばかりか、今のところ 根本的な治療方法すら見つかっていないのだから。社交的な人は比較的かかりにくいそうですが、一人でいるのが好きなボクには他人事とは思えません。まして、主人公のアリスは頭脳明晰なことを自身の存在証明にしてきたような大学教授、皮肉なことに言語学の教授だ。キャリアも男も自分の意志で手に入れてきた、自他ともに認める肉食系(笑)という役柄だ。う〜ん(笑)。

そういう人だったどうするか。まず、主人公がやったのは自殺用の薬を入手し、自分あてのビデオメッセージを作ってパソコンに保管することだった。いざとなったとき自殺する為に、知覚が衰えた自分に手順を丁寧に説明するメッセージだ。このシーンを見ていると、文字通り『自裁』という言葉が浮かんできます。悲しい話だけど、ボクが彼女でもきっと同じことをするだろう。だけど、現実はそれより遥かに悲しい。認知機能が衰えたら、自分で自分の始末をつけることすら出来ないのです。

症状が進行していく主人公を家族は献身的に支える。だが本当に心が通じたのは今まで主人公と度々衝突していた次女だった。エリート家族の中では落ちこぼれの次女が最も人間の弱さを知っていたのだ。主人公がアルツハイマー病の患者の集いでスピーチする場面は感動的だ。記憶がどんどん抜け落ちていく主人公は、原稿をアンダーラインで色付けしながらスピーチをする。どこまで読んだか覚えていられないからだ。だけど、それでも彼女はやり通す。薄れゆく記憶と闘いながら自分は闘っているんだ、という意思表明をして見せる。
●ラインマーカーを持ちながらスピーチする主人公。力強いが、どこか所在無げな表情。

                        
お話というより、ジュリアン・ムーアの演技を楽しむ映画ではある。次第に認知能力が無くなっていく主人公の表情の変化は確かにすごい。意識が明瞭な時の彼女が映ったビデオを、症状が進行した彼女が見るシーンがあるのだが、全然表情が違う。年齢も20以上老けてみえるし、とにかく同じ人とは思えない。このシーンは本当にびっくりした。この演技ならアカデミー主演女優賞に文句を言える人はいないだろう。

暗い語り口でもないし、お涙ちょうだいの映画ではないけれど、何とも言えない感慨が残る映画ではある。人付き合いが嫌いなボクとしては、『早く認知症アルツハイマーの治療法ができますように』と祈るしかない(笑)。思わず認知症予防の本をアマゾンで買ってしまいました。


                                                  
次に見たのは『マッドマックス4 怒りのデス・ロード
マンガ『北斗の拳』の元ネタとなったことでも名高い作品の30年ぶり(笑)の新作。こういう映画は原則見ないんだけど、あまりにも評判が良いのとフェミニズム映画?だ、という話も聞いたので、とりあえず大画面で見に行ってみました。


舞台は近未来。核戦争で地球は汚染され、人類の寿命は従来の半分以下になっていた。生き残った人類は石油と水、食料を求めて、弱肉強食の戦いを繰り広げていた。元警官のマックス(トム・ハーディ)は過去の心の傷を抱えて荒野をさまよっていたが、水源地を支配するイモータン・ジョーの軍団に捕えられ、輸血用血液のための人間輸血袋にされてしまう。そんな中 イモータン・ジョーの軍団の大隊長フュリオサ(シャーリーズ・セロン)はイモータン・ジョーの子供を産むために監禁されていた妻たちを連れて、自由を獲るために脱走を図る。

背景を説明する最初の3分くらいを見ただけで、これは傑作だ、と思った。すごい情報量を手際よくまとめて観客に提示しながら、説得力ある映像でこれから始まる展開を期待させたからだ。
●映画の冒頭 マックスは捕まり、マスクをかぶせられたまま人間輸血袋にされる。

あらすじがどうのこうの言う映画じゃないけど、お話は分かりやすく余分なところもありません。描かれるのは人間の贖罪と再生。フュリオサ役のシャーリーズ・セロンは殆ど主役の役割を演じている。彼女は映画界で1,2を争う美女だと思うけど、ここでは片腕でスキンヘッド、顔も黒く汚れたままです。だが彼女が時折見せる表情が美しい。そのフュリオサの贖罪(Redemption)の旅を手助けするうちに、生ける屍だったマックスも人間の心を取り戻すに至るのです。
シャーリーズ・セロンのこの表情

周囲の人間の描写もおざなりではない。魅力的だ。特にイモータン・ジョーの軍団を裏切ってマックスたちの手助けをするニュクス。当初は誰かの命令に従うしか能がなかった彼は次第に自分の意志を発揮するようになる。憎めないキャラと思ってみていたら、全然怖くないゾンビ映画の佳作『ウォーム・ボディ』でキュートなゾンビ役を熱演していたニコラス・ホルト君でした。最高です(笑)。
●白ずくめのアンちゃんがニコラス・ホルトくん。悪の手先だったが途中から女性たちの脱走を手助けする。

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私たちはモノじゃない(We're Not The Thing)』と書き残して脱走したイモータン・ジョーの妻たちも成長していきます。当初は何もできなかった彼女たちは紆余曲折ありながら次第に自立した人間としての姿を見せていく。ちなみに、この映画は女性描写のためにフェミニズムの活動家をコンサルタントとして雇っているそうです。これらを最低限のセリフで、登場人物の表情と行動だけで描いているのだからすごい、と思います。
●自由を求めて目覚める女たち

                                     
恐らくこの映画を見た人の感想は暴走アクション・サイコー!(笑)というものが多いと思うし、それは否定しないけど、ボクは違う感想を持ちました。ここで描かれた世界は今の新自由主義社会の戯画だと思ったのです。
イモータン・ジョーは弱肉強食の世界で人々を支配し搾取している。ただ強権だけでなく、水源という富や宗教的な熱狂を利用して人々を自発的に従わせることに成功している。人々の大勢は自ら進んでイモータン・ジョーに従っている。幸福なのだ。TVなどの安っぽい娯楽やインチキ・リーダーの威勢の良いキャッチフレーズに一喜一憂する現代人にそっくりです

例えば人間輸血袋の描写はまるで悪趣味な冗談のようだけど、現実にはそれと似たようなこと、お金に困った人が血や臓器を売ったりする事実は現実に存在しています。イモータン・ジョーが子供を産む機械として美女たちを監禁しているのだって、全く笑えない。現実に第1次安倍内閣には『女性は子供を産む機械』って発言をした厚生労働大臣柳澤伯夫)も居たし、石原慎太郎は『子供を産まない女性が生きているのは罪』と公の場で発言した。ボクらはそういう世界に生きているわけです! ちなみにボクは石原慎太郎安倍晋三ならイモータン・ジョーのほうがまだマシかも、と思います。コトバが通じるもん(笑)。
石原慎太郎より男前のイモ―タン・ジョー(右)

                                                 
もちろん奇想天外なノンストップ・アクションと造形は凄い。特にイモータン・ジョーの軍団のなかに、ドラムと火を噴くギタリストを載せた車があるのは気に入ってしまった。ドラムをドンドコ叩きまくり、メタルギターをガンガン弾きまくりながら火を噴いて、ずっと追いかけてくるのだ。ボクもやりたい〜(笑)。

●さっそく真似してる奴が居る(笑)

                                                  
一見オバカ映画のように見えて隅々まで計算されつくした知的な映画。アクションだけでなく、画面も脚本も大した完成度です。一人の人間の贖罪と再生が多くの人を巻き込んでいきます。想像していたよりヴァイオレンス・シーンも少なかった。実に面白かったです。

                                                 
そのあと見たのが『海街diary

予告編で『綾瀬はるか長沢まさみ夏帆広瀬すずが4姉妹』というのを見て、『そもそも4人の顔が全然違うし、こんなウルトラ美人4姉妹がいるわけないだろっ(怒)。』と思ったのでパスするつもりだったけど、これも評判が高かったので、とりあえずトライしてみた。

鎌倉の古い家屋で暮らす3姉妹。母親と別の女性と暮らすために家を出て行った父親の葬式で、自分たちと腹違いの娘(広瀬すず)に出会う。3姉妹はその娘と一緒に暮らすことを提案する。
●長女(綾瀬はるか)は腹違いの妹に同居を提案する。

こんな4姉妹がいるわけないだろ!という感想は変わらないけど、美人姉妹が画面に出ているのを眺めているだけでも目の保養(笑)。環境ビデオみたいだ(笑)。長沢まさみって綺麗だなあ、足長いなあ。綾瀬はるかは芋臭くて嫌いだったんだけど、あと10年くらいしたら良い女優になるかもと思った。何気ない出来事を丁寧に、でも腹7分目で積み重ねていく演出も良い。上品だ。人の気持ちはそう簡単に動かない。古い日本家屋の中での暮らし。ゆっくりと時間を積み重ねていくことで人間の気持ちが変わっていくのが観客に着実に伝わってくる。


                      
登場人物たちも根っからの悪人はいないが、完全無欠の人間もいない。母親以外の女性に心を移した父を憎みながらも、自分は不倫を続ける長女、ダメ男ばかりに引っかかる次女、スポーツ用品店に勤める一風変わった三女、心の傷を抱えたままの4女。風吹じゅんやリリー・フランキーなど周囲の人物たちもどこか欠落したものを抱えている。それは映画を見ている観客と同じだ。

                                    
4姉妹の異常な美貌以外は(笑)、ごく平凡な登場人物たちが鎌倉の四季の中で過ごす時間が画面の中でゆっくりと流れていく。その時間が如何に豊かで、かけがえのないものかを描くことに映画は見事に成功している。これはラジオの解説で指摘されていた話だが、冒頭 長澤まさみが男と寝るところから始まって(生)、葬式で終わる、生と死を描いた見事な構成も恐ろしいくらいだ。

見ていて楽しいし、大人の鑑賞に耐える良い映画でした。