特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

NHK『ケン・ローチ監督のインタビュー』と映画『ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語』

今回の都知事選は全く盛り上がりません(笑)。

 公約を何一つまともに果たさないばかりか、コロナ対策も遅い小池が不適格なのは明確なんだけど、野党の側も野党の側ですからね。

 ネットで見ていると、山本太郎支持者には共通している点があります。自分の言葉で理由を語らないことです。ブログなり、Twitterなりに動画を張り付けて『これを見てください』というだけの輩が大部分です(笑)。自分の言葉がない、もしくは自分の頭で理解してないとボクは理解しています。
  

 勿論 一人10万とか都債20兆とか、山本太郎が言ってることをまともに理解していたら支持できる筈がないんですが(笑)、こんな見え透いたバカを支持するバカの2乗が出てくるというのは世の中全体への信頼感が無くなってきているからでしょう。

 先週19日の金曜日、政府の言い分ばかり垂れ流すことで悪名高いNHK夜9時のニュースに、イギリスの名匠ケン・ローチ監督のインタビューが放送されました。このブログでも度々取り上げてますが、労働者階級の厳しい暮らしを取り上げた作品で世界3大映画祭を制覇した大監督です。

 コロナ渦で不安と格差が一層拡大している今の社会の現状をローチ監督は『メディアを通じてあまりに多くの偽りの言葉があふれている』と語っています。

 

「この人の言うことを聞いて」、「答えを教えてあげる」と、まるで商品を売り込むかのようだ』と言うのです。まさに山本太郎信者のことじゃないですか!

 84歳の監督は『私たちの世代は不平等、搾取、圧制、暴力がはびこる、無秩序で崩壊しかけた社会を残してしまった。私たちの世代がすべきは謝罪です』と語っています。

 それではどうしたらよいのでしょうか。
 監督はそれでも希望を語ります。『信頼できるものを見つけることが団結につながる』、それはどこかの政治家のことではありません。

 『ドアをノックして大丈夫?と声をかけてくれる人を私たちは信頼できる』そして『隣人から地域のコミュニティー、街から国へと広げ連帯を築くのだ』と言うのです。

 確かに今の世の中、国も政治家もコミュニティーも全く信用できないという感覚は多くの人が持っていると思う。ボクもそうです。まして、こんな時です。多くの人が不安に駆られているからこそ、デマゴーグが出てくる。
 ケン・ローチ監督が言うように『解決策がないと、(関係のない)他者や他の事に対して敵対心を持ちたがる。
 消費税を下げることしか言わない山本太郎だけじゃなく、大阪の雨合羽も東京の夜の街叩きもパチンコバッシングも同じです。解決策がないから、非論理的な答を求めたがる。

 今の世の中、安易な解決策なんかないと思う。
 安倍晋三電通が悪いことは間違いないけれど(笑)、こいつらを引っ込めても我々の生活は大して良くならない。
 山本太郎が言うように消費税を失くしても別に日本経済が回復するわけじゃないし、暮らしも楽になる訳がない。財源不足で福祉切り捨てや増税になるのが関の山。仮に日本でMMTをやっても円安になって物価があがり生活が苦しくなったり、株や土地のバブルを引き起こすだけです。山本のブレーンの立命館の松尾自体 少し前まで『アベノミクスで日本は好景気になる』って言ってたようなウスラバカなのを信者連中は判ってんのかなあ。わかってないんでしょうけど(笑)。

 ウィルスもそうですが、経済もワクチンのような特効薬はありません。だから我々には不安に耐える知的・精神的な体力が必要です。人々に自らの言葉で論理的かつ真情を語りかけたメルケル首相やアーダーン首相のように、今 必要なのはそういうことを語り、納得させることが出来る政治家だと思います。


 先週から 映画館が開くようになりました。
 ほぼ、徒歩圏だけで過ごす生活を続けていると、街に出ることが本当に嫌になってきました。ただでさえ人は多いし、別に欲しいものもないし、まして行政が何と言おうと感染リスクは従来と全く変わっていない(勿論、今回の自粛自体が不要だったのかもしれませんけど)。国や自治体ごときの号令に合わせて、わざわざ町の人混みへ出かけよう、という人がいるのが少し不思議ですらある。

 といいつつ(笑)、自分だって出かけています。映画館とレストランだけは仕方がありません(笑)。映画も配信でもいいけれど、配信がないもののほうが多い。
映画も見なければ見ないでいいんでしょうけど、少しは世の中と触れていないとアホになってしまう。

 やっと開いた映画館は席の間隔を空けています。こんな感じ。

 こうやって座席の間隔が空いていると、上映中スマホの電源入れたり、座席の背を蹴ったりするマナーが悪い一部の低能客を気にしなくていいから、快適です。ウィルス同様、害悪は他人と接触があるからやってくる(笑)。他人と接触があるから不愉快なことが起きる。逆に他人と接触して愉快なことは滅多にない。
 折角 他人との間隔を空けるという人間らしい習慣が生まれたところです。このまま行ってほしいなあ。


 ということで、新宿で映画『ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語

 舞台は南北戦争当時のアメリ東海岸。父親が北軍の従軍牧師として従軍したマーチ家は、しっかり者の長女メグ(エマ・ワトソン)、男勝りの次女ジョー(シアーシャ・ローナン)、ピアノを弾くのが好きな三女ベス(エリザ・スカンレン)、人懐っこくて絵が好きな四女エイミー(フローレンス・ピュー)、愛情に満ちた母親(ローラ・ダーン)の5人で暮らしていた。ジョーは女性というだけで仕事や人生を自由に選べないことに疑問を抱いている。ジョーは幼なじみの隣人、ローリー(ティモシー・シャラメ)からの求婚を断って、作家を目指していく。


 今年のアカデミー賞数部門にノミネートされた話題の作品です。
 監督は『レディ・バード』などで独特な感性が注目されている女優兼監督のグレタ・ガーウィグ。主演は近年話題作が続くシアーシャ・ローナンティモシー・シャラメ、昨年『ファイティング・ファミリー』で女子プロレスラーをやってたフローレンス・ピュー、

 男女平等・環境保護の活動家としても知られ、つい最近グッチなどのブランドを持つコンツェルン、ケリング・グループの社外取締役に就いたばかりのエマ・ワトソンメリル・ストリープ、今年アカデミー助演女優賞を取ったばかりのローラ・ダーン、フランスの男前ルイ・ガレル、と、超豪華なオールスター映画でもあります。

 内容は日本でも多くの女性が読んだ大ベストセラー『若草物語』をリメイク、一部改編した作品です。肝心の『若草物語』自体、ボクは読んでないので、的外れの部分があったらご容赦ください。

 若草物語同様、作者のルイザ・オルコットの人生を次女のジョーになぞらえて語る作品です。原題は普通に『若草物語(Little Women)』ですから、変な邦題ではありますけど、内容はあっている。
シアーシャ・ローナン、エメラルドのような緑の瞳が人間離れしている(笑)

 内容はまさに現代を描いた作品。監督曰く、オルコットが考えていたであろうこと、つまり 女性が仕事や人生を選ぶことができない抑圧とどう戦っていくかを中心に描いていきます。

 お話はジョーにとっての過去と現在が交錯しながら描かれていきます。最初はやや戸惑いますが、慣れてくると、それが実に巧みに場面が組み合わされていることがわかってきます。

 過去と現在が折り重なって描かれることで、お話の伏線になっていたり、話を自然に展開させて押し付けがましさをなくしていたり、構成は本当によくできている。綿密に計算された映画、というのが最大の特徴だと思います。見事な完成度です。

 登場人物それぞれに見せ場がある。
 主人公のシアーシャ・ローナンが生き生きとしているのは当然なんですが、それだけではありません。例えば、お金ではなく結婚に夢を求めた長女役のエマ・ワトソンフェミニストとしても有名な彼女とは違う、結婚が人生の目的と考える女性の役柄を喜々として演じています。
 今の時代、バカじゃないか(笑)と思われるような役柄ですが、それが説得力を持つ、というところがこの映画の凄いところです。〇か×かのような単純な人物描写はないし、俳優さんもそれに応えています。


 昨年の女子プロレスラー役の印象が強いフローレンス・ピューも(肩幅広いんだもん)、愛らしさと計算高さを持ちつつもジョーへのコンプレックスにも悩む、という複雑な役を好演しています。彼女がこの映画の目玉かもしれません。


 今作のティモシー・シャラメ君も呆れるような綺麗な顔立ちで、しかも可愛げある人物像を好演してるし、

 ルイ・ガレルの繊細な男前ぶりもさすが、としか言いようがない。

 ローラ・ダーンの母親役も複雑な性格で一筋縄ではいかないのが判るし、

 金持ちの叔母役のメリル・ストリープは最後の逆転でしてやったり、と思ってるはず。


 とにかく、主だった登場人物の人物像全てに理由があり、見せ場があるところが、この映画から押し付けがましさを一掃しているだけでなく、楽しさも観客に提供している。男も女も誰が見ても楽しめる。


 まだ若い、インディペンデント出身の女性監督、グレタ・ガーウィグですが、オールスターを使って、なんと完成度の高い映画を作ったことか。すごい腕です。同じシアーシャ・ローナンを主役にした前作の『レディ・バード』は自伝的な面もあって、ちょっと自意識過剰だと思ったんですが、今作ではより客観的な視点を獲得している。

レディ・バード [Blu-ray]

レディ・バード [Blu-ray]

  • 発売日: 2019/07/03
  • メディア: Blu-ray

 女性の自立という現代的な視点にたちつつ、当時の時代背景も考慮している。なによりもメッセージ性がありつつ、押し付けがましくなく、誰が見ても楽しめる作品になっている。

 個人的な感情の入れ込みとかは持てなかったけれど、これだけ面白くて、メッセージも伝わってきて、なおかつ完成度が高いと、もう、文句の言いようがありません。
 あ、アカデミー賞を取った衣装も豪華で本当にすごいよ~。ちょっとびっくりするくらいで、目の保養になりました(笑)!、

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』6月12日(金)全国順次ロードショー

シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソンら四姉妹が想いを語る!『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』特別映像