特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

 今年ももう、半分が終わってしまいました。
 会社にいる時間は早く過ぎて欲しいけど、お休みの時間ばかり早く過ぎてしまいます(笑)。
 湿っぽいお天気ですけど、道端には色々な花が咲いています。それがせめてもの慰めです。


 別に蓮舫を支持するわけじゃありませんが、小池百合子って最悪だと思うんですよね。公約では原発ゼロ、満員電車ゼロと言ってたはずですが(笑)。

 小池は女性に人気があるそうですが、なんでなんだろう。

 男社会の中でとっかえひっかえ、時の権力者に媚を売ってのし上がるって、女性が一番嫌うタイプだと思うんですが、違うのかなあ。

 自民党の中ですら二階以外は小池の味方がいないそうですが、小池に女性の人気があるというのはどうしても理解できない。

 選挙情勢はだいぶ蓮舫が追い付いてきたようですが、肝心の無党派層の支持では石丸ごときにも負けているそうですから、やはり共産党の応援が裏目に出ているのか。左派の支持なんかまとめたって無党派層の方が遥かに多いんだから意味ないもんな。

 何とか小池を追い落としてほしいけれど石原慎太郎を延々と知事にしていた東京都民ですから、あまり期待はしません(泣)。


 と、いうことで、渋谷で映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

 舞台は1970年、ボストン近郊にある名門の寄宿学校。生徒や教師が皆 クリスマス休暇を家族と過ごす中、堅物で嫌われ者の古代史の教師ポール・ハナム(ポール・ジアマッティ)は学校に残り、複雑な家庭環境のアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)を始め、家に帰れない生徒たちの子守役をすることを校長から命じられる。一方、食堂の料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)は一人息子をベトナム戦争で亡くし、息子と過ごした学校で年を越そうとしていた。孤独を抱える3人は誰もいなくなった学校で年末を過ごすのだが。

www.holdovers.jp

 日本でもリメイクされた『サイドウェイ』などのアレクサンダー・ペイン監督とポール・ジアマッティが組んだドラマです。
 今作は小品にも関わらず、アカデミー賞助演女優賞を受賞、作品賞・主演男優賞・脚本賞編集賞にノミネート、ゴールデングローブ賞では主演男優賞、助演女優賞を受賞、作品賞にノミネート、という高評価の作品です。

 アレクサンダー・ペインという人はボクは大好きなんです。アメリカ人の監督では一番好きかも。インタビューで『日本の詫び寂びを表現したいと思っている』というような人ですが、日本人より遥かに詫び寂びを理解していると思います。『サイドウェイ』だけでなく、『アバウト・シュミット』、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』、前作『ダウンサイズ』など過去の作品もすべて外れなし、です。

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 舞台は金持ちだらけのエリート寄宿学校。政治家や大会社の社長、外国の金持ちの息子などがゴロゴロいます。
 その学校で古代史を教えているのがポール・ハナム(ポール・ジアマッティ)。授業は厳しく、大口寄付をした政治家の息子でも容赦なく落第させて、一流大学への推薦をパーにします。斜視で夕方になると体臭がきつい。おまけに超毒舌、全く空気を読まない。

 生徒たちからは嫌われているのは勿論、学校の上層部からも疎んじられている彼は生徒や職員が帰省するクリスマス休暇に学校に残って、帰省できない生徒たちの監督をすることを命じられます。

 食堂の料理長メアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)はシングルマザーとして息子を育ててきました。職員の特典として子供をこの学校で教育を受けさせることができましたが、大学の学費までは工面できなかった。他の生徒が一流校へ入学して徴兵を猶予されるのをしり目に、彼女の息子だけはベトナムへ従軍、戦死したばかりです。傷心の彼女はクリスマス休暇も学校に残ることにします。

 態度が反抗的な生徒、アンガス・タリー(ドミニク・セッサ)は裕福な家庭に育っていますが、母親が継父と再婚した結果、家では邪魔な存在になっています。クリスマス休暇でも家に帰れない。悪態をつきながら、彼も学校に残ります。

 様々な事情を抱えた3人は広く、寒々しい学校で2週間のクリスマス休暇を過ごすことになります。

 強烈に時代を意識した作品です。舞台は1970年。ベトナム戦争や性や人種差別などに対する反乱の火の手が上がった68年でもなければ、ベトナム戦争の講和会談が始まった72年でもない。誰の目から見ても社会の矛盾は明らかになってきている。貧富の差は社会に横たわる壁のように横たわっている。しかし世の中は旧態依然として変わっていない。

 タイトルロールからエンドロールの形式は勿論、ファッションも音楽も70年代初頭そのまま。しかもボストン辺りだとこんな感じなんだろうなーと思わせられます。行ったことはありませんけど(笑)。表立っては人種差別も感じられないほど価値観はリベラルだけど、感性は保守的。ド田舎(笑)。

 登場人物の二人、ポール・ハナムとアンガス・タリーは本当に嫌な奴なんです(笑)。前半はかなり不愉快で、まったく感情移入ができなかった。

 偏屈で態度が偉そうな歴史教師、甘やかされて育った(ように見える)金持ちのお坊ちゃん。単体でも嫌ーな感じなだけではなく(笑)、お互い仲が悪い。こんな連中、判りたくもありません。
 ところが(笑)、中盤から話が段々変わってきます。ポール・ハナムもアンガス・タリーも嫌な奴なのには理由がある(笑)。ここいら辺の説得力は、さすがアレクサンダー・ペイン監督です。

 嫌な奴が反省するとか、心を入れ替えるというような話ではありません。 

 寒いボストンの冬の物語です。地味だけどお互いの小さな積み重ねが彼らの凍った心を少しだけ溶かしていきます。

 映画の中では大したことは何も起こりません。骨太で非常に強靭な物語です。登場人物たちは確固たる信念を体現している。
 人生はうまくいかない。世の中は理不尽です。人間は間違いも侵すし、凡人にできることにも限りがある。それでも、この映画はそんな小さな人間の人生を祝福している。

 ラストシーンのすばらしさ!孤独で不器用な二人の表情と背中が言葉以上に深い余韻を醸し出します。話の深さはアカデミー作品賞の『オッペンハイマー』を遥かにしのぐ高品質の作品でした。アレクサンダー・ペイン監督の作品に外れ無しというのは今回も更新されました(笑)。


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