特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『内閣総辞職を求める0603新宿デモ』と女性映画2題:映画『29歳問題』と『女は二度決断する』

毎度のことながら、週末が過ぎるのは早いです。


映画見て、何か行事があると、週末が全部潰れてしまう。独VWみたいに週休3日ならいいのになあ。梅雨前の最後の晴れ間と言われる今週末、新宿へデモに行ってきました。#0603新宿デモ


皆さん、そう言う方は多いと思いますが、今の政治状況を見るとため息ばかりです。国会に出されたデータは間違ったまま高プロのような国民にとってリスキーでメリットがない制度が導入されてしまうし、公文書の改ざんも政治家は誰も責任を取らない。マネジメントの責任ってどこにあるの?証人喚問も行われないまま、真相も良くわからない。で、これからアメリカから要請があったカジノ法でしょ。
それでも諦めたらどうにもなりません。『未来のための公共』の若い子たちがデモをやるということで頭数になりに行ってきました。映画を見ていたので時間ギリギリに行ったら、出発点の新宿中央公園には大勢の人が集まっていました。オールド左翼の集会やデモって時間にルーズな例が多いですが、若い子たちはきっちりしている(笑)。参加者は2000人。組織の動員は抜き!で、これだけ集まりました。
●抗議風景1




最初は自分でもいまいち、ノリが悪いなあと思ったんです。当初はフロートの後ろの方にいたからか、デモの前に映画『万引き家族(映画は素晴らしかったがデモの気分とは違う(笑)!)を見たせいか、は、わかりません。それでも、未来公共のサウンドカーの近くに近づくとリズム感があるコールで元気が出てくるのが自分でもわかりました。





この日はゴミ右翼が埼玉のド田舎から出張してきていました。道端に止めた街宣車から軍歌を流して妨害をしているつもりになっている。能無しのジジイ連中がせこい日当もらって、若い子のデモにケチをつけてどうするんだよ。恥ずかしい奴らです。そこでもう一段 声のトーンが上がります。中指も突き立ててやりました。警察も真面目に仕事しろよ。道交法違反だろうが。



『嘘つき内閣 総辞職しろ』、『安倍はやめろ、麻生もやめろ』、『高プロやめろ』、『嘘つき許すな』、『責任取れよ』などコールは様々でしたが、もう少し絞った方が周りの人には判りやすいのかなとは思いました。でも政府がいい加減過ぎて、言いたいことがありすぎるんですよね。
そういうこともあって今回は自分ではノリがいまいちな感じがしていたんですが、沿道の反応はこれまでにないくらいに良かった。主観と客観は違うという好例です(笑)。若い女の子を中心に手を振ってくれたり、笑顔の人が大変多かった。そういう反応を引き出すのはポップなプラカードやサウンドカーの音やリズム(今日はP・ゲイブリエルをサンプリング!)など明るい雰囲気もあると思いますが、今の政治はおかしい、と思っている人は想像以上に多い、と思いました。
あとは、その思いを政治につなげる回路なんだよなー。こういうときこそ野党はもう少ししっかりして欲しいです。
●沿道の風景

●抗議風景2





●今日のドラム隊はかってないくらいパワフルでした。音の迫力が違ってた。




森友・加計問題:政府を批判、市民らが新宿でデモ行進 - 毎日新聞


「隠蔽、捏造」、安倍政権に抗議 東京・新宿で退陣求めデモ - 共同通信 | This kiji is


●今朝発表された世論調査内閣支持率は更に下がっています。


https://news.yahoo.co.jp/pickup/6284893


と、いうことで、恵比寿で映画『29歳問題』(原題:29+1)映画『29歳問題』公式サイト

舞台は香港。30歳を迎えた一人暮らしの女性、ラム・ヨックワン(クリッシー・チャウ)は仕事も恋愛も順調だった。仕事では昇進し、恋人とはあまり会えないながらも結婚を意識している。だが、30歳の誕生日を1か月後に控えて、仕事のプレッシャーや恋人との擦れ違い、認知症の父親が電話をかけてくるなど悩みを抱えるようになる。しかも水漏れ事故のため住んでいたマンションを追い出され、家主の知人であるパリ旅行中の女性ウォン・ティンロ(ジョイス・チャン)の部屋に住むことになる。部屋に残っていた彼女の日記を読むうちに、自分と同じ生年月日ながら、自分とは全く対照的な彼女に生き方に触れ、ラムは自分の心が解けていくことに気が付く


香港で12年も上演されている舞台を映画化したものだそうです。映画も香港では20万人を超える大ヒット。未婚の29歳がどうのなんて 今どき古臭いし、ノーチェックだったのですが、予告編を見たら良い感じだったので見に行ってきました。


主人公のラムという女性の造形が良いです。大学を卒業後 マーケティングの仕事で頑張っている。朝から晩まで仕事に追われながら、女子力(笑)にも気を使っている。まあまあ美人だし、仕事もあるし、彼氏もいる。彼女は頑張っている。友人たちはそろそろ結婚を焦り出しますが、当人は余裕綽々です。主役のラムを演じるクリッシー・チャウという人が良いです。大きな目で表情豊かな演技をする彼女の姿には惹きつけられました。
●主人公のラム・ヨックワン(クリッシー・チャウ)。目が大きくて表情が豊かで、この人だけで芝居を引っ張るパワーがあります。

始まって1時間くらい台湾映画と勘違いしていました(笑)。流れる音楽もエバーグリーンっぽいし、仕事帰りの女子会ではワインを痛飲する登場人物の暮らしぶりもモダンだし。ちなみに香港は一人当たりのGDPは日本をはるかに超えています彼らの方が我々より豊かなんです。
●香港のOLたちも仕事終わりは女子会でワインを痛飲します。


しかし彼女は頑張りすぎている。あくまでも大人だからみっともないところは見せませんが、どこか無理をしている自分に気づく。彼氏とも擦れ違いが激しくなる。仕事のプレッシャーもきつくなる。環境も年齢も違いますけど、いつか主人公に感情移入してきます。
●充実した毎日ですが心のどこかでは、仕事も彼氏も行き詰まりを感じています。




そんな折、マンションを追い出された彼女が転がり込んだ部屋は、同じ生年画月日の女性のものでした。彼女の名前はウォン・ティンロ(ジョイス・チャン)。1か月の予定でパリに旅行中。部屋に残っていた彼女の日記を読むと、その女性は自分とは全く対照的でした。真ん丸顔のおデブちゃんで、マニアックなレコード屋に勤めていた。性格が良くて、いつも笑っている。難しく考えない。幼馴染の男の子がボーイフレンド。必ずしも恵まれた環境で育ったわけじゃないけれど、周りの人の善意に囲まれて生きてきた彼女です。30歳を目前にして広い世界を見てみようと仕事をやめ、まず夢だったパリへ長期旅行に出かけることになりました。しかし、彼女の身に『病』という思いもよらぬ問題が発覚します。
●お金もあるわけじゃないし、仕事も将来性があるわけじゃない。でも、この子、屈託のない笑顔が良いです。毎日を目いっぱい生きていることが判る。説得力があります。

●ボーイフレンドもぱっとしないけど、のんびりした良い子です。

●しかし、30を目前にした彼女に思わぬ出来事が起こります。


この映画はとにかく、人間を見る目が温かい。驚くべき、というくらい、ホンワカしている。中国の人というと自己主張がはっきりしているというイメージがありますが、この映画はほんわかしている。そのペースには戸惑いも覚えますが、段々心地良くなってきます。
●楽しかった想い出もささやかな願望も映画は暖かく包み込みます。


だから、そんなウォンの抱える悩みに触れたとき、主人公のラムだけでなく、観客も心が解けていくのが判ります。笑いながらパリへ出発するウォンの姿を主人公のラムも観客も思わず応援してしまう。映画的な仕掛けもばっちり入っていて、これも観客を泣かせます。


30歳を目前にした未婚女性の悩みとかセコイ話じゃありません。もっと普遍的な話です。仕事、病、恋人との関係、親との関係、色んなことがあるけれど人生の転機に自分はどういう選択をするのか、自分は毎日をどうやって生きて行ったらよいか。そんな大事な話がほんわかした2時間の映画の中に詰まっています。なんと説明して良いのかわからないけれど、思い出すうちにまた 泣けてきました(笑)。人生は良いことばかりじゃないし、どんな生き方を選んでも大変です。一つだけはっきりしているのは、それでも生きていかなければならないということ。心の解毒薬みたいな優しい女性映画です。見てよかった〜。


もうひとつ、ちょっと前ですが、恵比寿で映画『女は二度決断する映画『女は二度決断する』公式サイト

ハンブルクで暮らすドイツ人のカティヤとクルド系移民のヌーリは結婚して幸せに暮らしていた。ヌーリはかって麻薬の売買に関わっていたが、今はまじめに働き、息子にも恵まれて一家は幸せに暮らしていた。だがある日 ヌーリの勤務先の前で爆発が起き、夫と息子が命を落とす。苦悩しながらも真相を究明しようとするカティヤだが、ある日ドイツのネオナチによるテロだということが判明するが


カティヤを演じるダイアン・クルーガーが昨年のカンヌ映画祭で最優秀女優賞を獲得した作品です。監督はドイツに帰化したトルコ系移民のファティ・アキン。このブログでも以前 トルコ系移民がレストランを開く彼の作品『ソウル・キッチン』を取り上げたことがあります。今回の作品は2000年代に移民系の中小業者や警官に対するテロを繰り返し2011年に捕まったドイツの極右組織NSUの実際の事件がモチーフになっているそうです。
●ドイツ人女性のカティヤ(中央)はクルド人難民のヌーリ(右)と結婚します


たまたま移民と結婚しただけの女性がテロで家族を全て奪われてしまう。なんとも理不尽な話です。おまけに捕まったのは若いカップルのネオナチでした。カティヤは法廷でバカ・ネオナチが作った釘爆弾で亡くなった我が子の様子を聞かされます。普通の人間だったら法律に関係なく、犯人に報復しますよね。彼らの親でさえ『この子たちは愚劣で卑怯だ』と裁判で証言しているのに、第一審では証拠不十分で無罪になってしまう。
全くどうしたらいいんでしょうか。この理不尽さは観ている方もやりきれなさがいっぱいになります。
●カティヤと息子。彼女が夫の勤め先に息子を預けている間にテロが起きました。

主役を演じるダイアン・クルーガーの演技が素晴らしいです。寡黙ですが、文字通り魂を剥き出しにするような名演を見せます。怒り、悲しみ、苦悩、声高に訴えるシーンは少ないですが、観るものにダイレクトに感情が伝わってきます。この映画での彼女の演技は本当に素晴らしいです。
●カティヤは裁判で父子の死体の損傷の様子を聞かされます。被害者にとって拷問のような時間です。

ネオナチのバカップルは釈放後 裁判で偽証をしたギリシャの極右組織のメンバーの元へバカンスに出かけます。SNSに投稿された、海辺で戯れるバカ2人の写真を見てカティヤは彼らの行く先を知ります。そこでカティヤはどんな決断を下すのか。
●このバカ女が爆弾を仕掛けました。ネオナチです。

●連中は裁判ではしらを切りとおし、ギリシャのネオナチがアリバイのために偽証します。


●カティヤは連中を追ってギリシャへ向かいます。


救いがないような映画を想像していたので、そうではないところは良かったです。愚かな人間と対照的なギリシャの海辺の光景が美しい。カティヤの沈思黙考のシーンに余計に深みを持たせています。
このような無知と偏見による殺人が実際に起きているわけです。どうにもやり切れませんが、世界はきれいごとだけではできていない。人間は人間で完全なものではないけれど、少しくらいの良心や優しさを持つことができないわけでもない(ネオナチのような例外もいますが)。非常に考えさせられる、良くできた映画です。この割り切れなさはなんと言ったらよいのでしょうか。