特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『#0325緊急新宿大街宣』と、かなり風変わりだが、かなり感動する:映画『ダウンサイズ』

この週末はうららかなお天気でした。東京では、桜の花がほぼ満開です。
何となく華やいた雰囲気の反面、年度末はうんざりするような宴会やごたごたも多い(笑)。そんな季節に咲く桜は日本に住んでいる人の心を慰める存在なんじゃないでしょうか。1週間くらいしか咲かない桜の花に感情移入するというのは、ボクも何となくわかります(笑)。
●夕焼けと満開の桜

●有楽町で食べた、蒸し『岩牡蠣』。道端で売っているものはめったに口にすることがないんですが、大好物の岩牡蠣なのでつい、手を伸ばしてしまいました。濃厚な海のミルク!


一方 センチメンタルに陥りがちな軟弱な人間とは違って(笑)、アメリカの高校生たちはすごいです。彼らが火付け役となった銃規制強化を求めるデモ『March For Our Lives』で100万人以上が集まりました。

●高校生たちだけじゃありません。

●ワシントンの光景。左が今回のデモ、右がトランプの就任式(笑)


俳優のジョージ・クルーニーやTV司会者のオプラ・ウィンフリーが高校生たちのデモにそれぞれ約5000万円も寄付したのもカッコいいし、ポール・マッカートニーがNYのデモに参加して、ジョン・レノンが殺された周辺を歩いたのも実にカッコいい。もし自分がジョージ・クルーニーポール・マッカートニーの大ファンだったら、普通は自分も何かしようと思いますよね。全米最強の圧力団体、全米ライフル協会にビビって国会議員が動かないのなら、高校生たちは自分で動きました。政治家は頼りにならない。これは与党が圧倒的多数を占め、野党はバカばかりの日本も事情は同じです。
●NYのポール・マッカートニー、ワシントンのジョージ・クルーニー、LAのエイミー・シューマー(コメディアン/女優)



CNN.co.jp : 写真特集:銃規制デモ、ジョージ・クルーニーやポール・マッカートニーら著名人も参加 - (1/10)


銃撃事件も、原発事故も地震も、汚職も、忘却は最大の敵、です。その怒りを深め、持続させ、昇華することをやっていかなければいけないと思うんですよ。
●ニュースでも紹介された、乱射事件に遭遇して生き残った高校生、エマさんのスピーチ。亡くなった友人たちのことを語ったあと、2分過ぎから彼女は沈黙します。乱射が行われた恐怖の6分間を再現しているんです。彼女も観客も涙を流しながら沈黙に耐えている。恐怖と怒りに耐える彼女の気丈な表情には感動しました。『良く頑張ったね』とスクリーンの前で思わず声をかけたくなりました。

●同じ日に谷村新司自民党大会で歌い、ポールは高校生たちのデモに参加する。比較すること自体 ポールに失礼ですが。



この日曜日は 元SEALDsや『未来のための公共』などの子たちが主催した『#0325緊急新宿大街宣』、新宿伊勢丹前に行ってきました。この日は新宿だけでなく、大阪、名古屋など各地で同趣旨の催しが行われました。


新宿は大盛況でした。赤旗によると主催者発表で参加者は8000人だそうです。本当にそこまでいたかどうかわからないけど、2015年にSEALDsが同じ場所で開いた街宣の時よりも人数ははるかに多かったです。様子は貼りつけたtwitterをご覧ください。



志位和夫創価学会の三色旗(笑)





この日 一番 聴衆を沸かせたのは社民党佐藤あずさ八王子市議でした。若手議員として社民党の中では知名度がある人ですが、ボクは話を聞いたのは初めてです。いつも社民党福島みずほしか出てこないもんな。佐藤市議は、自分が上京して新宿に始めて来たときのことから話を始めました。スカート姿の彼女が腕章を巻いた腕を腰につけて(笑)、現在の政府に対する怒りを自分の言葉でストレートに訴えてきます。それまでの議員がどちらかというと淡々としたスピーチだったので余計に新鮮でした。定型的じゃない、自分の感情を込めた彼女の言葉で、聴衆がヒートアップしていくのが手に取るように分かります。『みんな もっと怒っていい』という言葉で場がぱあーっと盛り上がっていくのが判ります。彼女のあと、司会の子が急遽 『みんなの暮らしに税金使え』というコールを入れたくらいです。この日は彼女とそのあと話した『通りすがりの会社員さん』のスピーチで雰囲気が変わりました。
それにしても今どき腕章をつけてスピーチする人というのは久方ぶりに見ました。これがファッションじゃなく本気だったら危ない人ですが(笑)、たぶんマジなんでしょう(笑)。良くわからないけど、面白い。佐藤市議は社民党の中で爺さん連中にいじめられているようですが、さっさと社民党なんかやめればいいのに。










最後は未来公共の子たちが、『政治は政治家だけに任せてはならない』、『今 金曜に国会前で行っている抗議はサイレントエリアなど誰でも参加しやすいように工夫をしているので、気軽に参加してほしい』と訴えて街宣を終わりました。今の状況で安倍晋三を引き摺り下ろすのは野党ではありません。自民党です。国民の支持率です。当日大学生の子が言っていた通り、あんな馬鹿な政治家を選んでしまったのは国民ですが、だからこそ、国民にはあの連中を引きずり下ろす責任があると思います。


●さすがのNHKも当日の夕方6時45分のニュースで放送しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180325/k10011378391000.html


内閣支持率、最大の下げ幅 揺らぐ総裁選圧勝シナリオ :日本経済新聞




ということで新宿で映画『ダウンサイズhttp://downsize.jp/

人口増加や地球温暖化の危機から人類を救うため、人間を14分の1サイズにする技術が開発された。身長を13センチに縮小すれば、住居費や食費など生活にかかわるコストも縮小できるため、現在の資産でも悠々リタイヤして富豪生活になれる。夢の一戸建てを買いたくて悩んでいた理学療法士のポール(マット・デイモン)は妻のオードリー(クリステン・ウィグ)と縮小に参加する。


アレクサンダー・ペインの新作はなんとマット・デイモン主演のSFです。『アバウト・シュミット』、『サイドウェイ』、『ファミリー・ツリー』、『ネブラスカ』と市井の平凡な人々の幸せ探しを、ある時は辛口に、だけど常に温かい目で描いてきた、ボクの大好きな監督です。繊細な感性はアメリカ人とは思えない人(笑)です。
●お人よしだけど冴えない中年男、ポール(マット・デイモン)は専業主婦のオードリー(クリステン・ウィグ)と共に夢のリタイヤ話を夢見て、人体縮小に参加します。


映画の前半は人体縮小とその後のドタバタが描かれます。
人体縮小の技術が開発されましたが、アメリカではそれが完全に産業化されます。縮小から、縮小後の生活、家や食べ物まで企業がセットで売り出して、言葉巧みに消費者に売り込まれる。如何にも人が好さそうな、マット・デイモンと妻がその誘いに乗っていくさまは まさにアメリカの消費社会のパロディです。というか、ほぼ現実のものにしか見えません。サブ・プライムローンなどはこうやって売り込まれていったのでしょう。非常にリアルです。
●縮小手術も縮小後の家も生活も業者がセット売りしています。いかにもアメリカの消費社会らしい。


縮小された人たちは砂漠に作られたドーム型の都市でコロニーを作って暮らしています。昆虫や動物などが入って来ないようにスクリーンが作られ、人々は豪華な、そして趣味の悪いアメリカ風の家で暮らしています。コロニーでは仕事も、医療などの救急サービスも縮小した人たち同士で供給しています。
●縮小後は普通のクラッカーはこんなサイズになります。食費も住居費も安くつくわけです。

これもアメリカの老人ホーム、リタイヤ生活のパロディです。何もしなくていい。コロニーの住民は一日中ゴロゴロして、バーベキューをやったり、ボランティアをやったりしています。若くして念願のリタイヤ生活を手に入れたかに見えたポールですが、気持ちは沈んだままです。一緒に縮小生活を始めるはずだった妻が、縮小寸前に気が変わり、彼は一人になってしまったからです。

ポールは、若い女性を呼んで連日連夜パーティを開いているセルビア人の爺さん(クリストフ・ヴァルツ!)と知り合います。彼のパーティに参加して薬をやって人事不省になったポールの目が覚めると、家に女性の掃除人が入ってきます。乱痴気騒ぎの後片付けまで外部業者にやらせるんですね。
●お人よしのポールは迷惑と思いつつもセルビア人のパーティーピープル(笑)の爺さん(右)(クリストフ・ヴァルツ)と友人になります。


掃除人の中に足を引きずっている東洋系の女性がいました。お人よしの理学療法士、ポールは片足を引きずっている彼女のことが放っておけず、手伝いを始めるようになります。
縮小技術も良いことだけではありません。独裁国家は技術を悪用して政治犯も縮小していました。彼女もベトナムで反政府活動に加わり縮小され、アメリカに逃げてくる途中で片足を失ったのです。そして金持ちだらけのコロニーで掃除人として生計を立てている。ポールはコロニーの端っこには彼女たち、縮小された移民たちのスラムが広がっているのに今まで気が付きませんでした。
●お人よしのポールは彼を常に罵り続ける義足の東洋系の女性(左)(ホン・チヤウ)と仲良くなります。


ここからお話は一気にシリアスになっていきます。元反体制活動家の彼女にこき使われるうちに、ポールは移民問題、貧困問題、そして地球温暖化の問題にまで直面します。さらにポールは、自分とは何かという問題に向き合わなくてはならなくなる。頭がくらくらしそうな展開ですが、非常にうまくできている。観客はついていくのは大変ですが、非常に見事な脚本だと思います。


人が良いんだけど物事全てに挫折してきた中年男役、マット・デイモンが良く似合っていました。だらしがない中年太りまで再現していましたからね。あとクリストフ・ヴァルツの怪演はやっぱり名優だと思いました。彼が出てくるだけで底知れない人生の奥深さ、割り切れなさが表現されてくる。


あと、ベトナム人の反体制活動家を演じるホン・チャウという人。マット・デイモンを常に早口で罵りながら、スラム街を義足で歩き回り、最後に可愛さを見せる彼女はゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされました。すごく魅力的な人でした。彼女は本当に元ベトナム難民で、アメリカの大学で演劇を学んで女優になったそうです。


ちょっと体験したことがないくらい非常にユニークなお話しです。風変わりということで話題のアカデミー賞候補作の『スリー・ビルボード』より変わっているかもしれません。賛否両論、戸惑う人もいるかもしれませんが、ボクはOK。笑えて心がほんのり温かくなる、いつものアレキサンダー・ペイン節です。今回はそれに移民の女性が加わることで、より幅の広い魅力と社会性が加わった。面白かった。感動する一本です。