特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『晩秋のキノコ狩り』(と社民党の解体)、映画『スパイの妻』

 先週は本当に寒くて、季節が一気に進んだ感じです。
 駒沢公園の並木もすっかり色づきました。今週は少し寒さは和らぐようですが、冬の足音はもうすぐそこまで来ています。自分の人生も冬、かなあ(笑)。

 
 ということで、近所のレストランへ晩秋のキノコ狩りへ行ってきました。徒歩圏内で暮らしていると楽でいいな(笑)。

 これは『ハタととび色舞茸』。ハタって美味しい魚ですよね。クエやフグと同じ種類で、あのプリプリした食感です。ハタ系は魚の中で一番好きかも。とび色舞茸は黒舞茸と白舞茸の中間、黒の香りと食感、白の色落ちしない特徴を併せ持つ、山形の山の中で自生する菌を繁殖させたものだそうです。

 これは『自家製ソーセージ(サルシッチャ)と香茸のパスタ』。香茸は岩手の山の中で捕れたのを干したもの。ポルチーニの様に味と香りが濃厚です。
 

 こちらは白トリュフ。コロナの今年はヨーロッパは外食どころではありません。だから価格は例年より少し安いそうです。それでも価格はキロ✖️円(笑)だって。なんなんだよ(笑)。
 

 手打ちのパスタに現地産のバターを絡め、その上に削ったものをかけただけで立派な料理になります。トリュフと同じ産地のワインがお供です。ボクはお酒はあまり飲めないのでよくわかりませんが、湿った土の香りはワインもキノコも共通している気がします。それだけでもう、お腹いっぱい(笑)。


 やっと 社民党が解体、大部分が立憲民主との合流の道を歩むことになりました。
 先日のアメリカ大統領選は投票率は67%にも跳ね上がりました。勢力が伯仲してこそ、国民の関心も高まります。その為には自民党に対抗出来る野党がどうしても必要です。

 生きているのか死んでいるのか分からない、ゾンビ化した社民党の立民への合流は余りにも時間がかかり過ぎましたけど、それでも実現したのはよかったと思います。大分など社民党の強い地方組織は合流組だそうですし。
www3.nhk.or.jp

 社民党はそのままでは存続できないのは誰にだってわかることですが、この期に及んで分裂するというのは意外でした。社民党の状態はこういうことなんだろうなあ。

 合流に反対する福島瑞穂らの旧日本軍並みの現実逃避に、かって辻元氏が嫌気がさしたのはわかります。社会民主主義という方向性は兎も角、福島氏は組織のリーダーとしては本当に無能かつ無責任だと思います。

 かって沖縄の基地問題民主党との連立政権から離脱したときも反対するだけで福島氏は何も解決策を示さなかったし、何もしなかった。ボクはあれで社民党に見切りを付けました。何もしない。口だけ。その時も今回も方向性すら示さない。楽でいいなあ(笑)。



 と、いうことで、銀座で映画『スパイの妻
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wos.bitters.co.jp

舞台は1940年。神戸で防衛機会社を経営する夫(高橋一生)は映画を撮ることが趣味だった。満州へ渡った彼は731部隊の秘密を知ってしまう。自分の良心に従い秘密を国際的に発表しようとする夫を、妻(青井優)は何とか支えようとするが。
●映画館に貼ってあった映画紹介のイラスト

 

 世界3大映画祭の一つ、ベルリン映画祭で監督賞を取った話題の作品。黒沢監督の映画は03年の『アカルイミライ』は本当に大好きなので、ホラー以外は見に行くことにしています。

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 と言っても、この人の映画、ホラーが多い(笑)。だから半分以上は見ていないという事になります。それでもキョンキョンが出た『トウキョウソナタ』も深津絵里の『岸辺の旅』もとてもよかった。長沢まさみの『散歩する侵略者』や前田敦子の『旅の終わり、世界の始まり』はまあまあ、だったかな。

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 この人の映画は、現代社会を風刺しながらも常に不穏な雰囲気が漂っていて、どんな作品にも現状に対する結構強烈なアンチテーゼをボクは感じます。
 黒沢監督の芸大での教え子が脚本を書いた、と言う今作はどうでしょうか。

蒼井優高橋一生が神戸の貿易商夫婦を演じています。

 まず映画で描かれた1940年の神戸は独特な雰囲気が有ります。どちらも現実には見たことありませんが、当時の上海もこんな感じだったんでしょうか。国際性と土着性が入り混じってる。

 ハイカラな神戸の街にも戦争が近づいて息が詰まるような雰囲気は、黒沢清が得意な不穏な雰囲気描写とすごくマッチしている。神戸の異人館や衣装、撮影も重厚で、すっごく良いです。ちなみに製作はNHKということで、街のセットは『いだてん』のものをそのまま使い、予算不足を補ったそうです。

 また神戸の裕福な貿易商の妻を演じる青井優の存在感は素晴らしいです。感情がコロコロ変わる、理屈では割り切れない不条理なところもある役ですが、彼女の存在感で押し切っている。かといって佇まいは静かで、きゃんきゃん言わないのも良い。夫役の高橋一生という人は良くわからないけど、何となくインチキ臭いところが役どころにあっているかな。

 夫妻は裕福ということもありますが、常にクラシックな洋装です。世の中がきな臭くなるにつれ、ハイカラな神戸にも次第に国民服や和装、軍服を着た人が増えてくる。お話が進むにつれ、二人は街の風景から徐々に浮いてくる。ここも今と通じるなあと思って観ていました。自粛警察なんか、まさにそうじゃないですか。

 
 夫婦は平穏に暮らしていました。夫は妻に心の奥底を見せないところはあるけれど、仲睦まじいカップルです。ところが夫は満州へ出張して以来、何かを隠しているかのようになった。妻は夫に疑いを抱くようになります。外に愛人でもいるのではないか?

 ここからお話は盛り上がります。実は夫は満州731部隊の人体実験を見てしまったのです。夫はいかにも貿易商らしく、この秘密を世界のマスコミに暴露しようとします。だが憲兵隊はかねてから海外と交流がある夫を見張っていました。憲兵隊は盗聴も尾行は勿論、脅迫も拷問も厭いません。

 政治的な話ではない、と監督は言ってましたが、政治サスペンス色は非常に濃厚です。演出も巧みだし、731部隊の記録フィルムもやけにリアルです。本物かも。間違いなく、黒沢監督は狙ってます(笑)。今作ではそれに加えて、画面の光と影のコントラストが素晴らしい。雰囲気が重厚です。

 画面からは登場人物たちが段々と真綿で首を絞められてくるような息苦しさが伝わってきます。やっぱり黒沢監督は今に通じることを描いています。

 戦時下、というより、今に通じる日本の全体主義的な『空気』の下で個人の良心が追い詰められていく。やっぱり監督は不穏な雰囲気つくりは得意なんでしょう。
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 話題の東出昌大は初めて見ましたが、妖しい風貌が冷酷な憲兵隊長という役柄とマッチしていてすごく良かったです。ちょっと鈴木清順の映画の登場人物みたいでしたね。色気があると同時に、組織に疑問を持たず盲従する人間がこんなに不気味なものなのか。
東出昌大という人、ハンサムな分だけ不気味で、組織の歯車になりきる憲兵隊長とマッチしてました。この人、スキャンダルで消えてしまうのは勿体ない。

 一方、お話はあまり好きじゃない、です。というか、ボクにはいまいち理解できなかったです。黒沢監督はドロドロした人間の感情を撮ったのは初めてだそうですが、そういう人情噺ってボクは嫌いなんです(笑)。

 夫のためなら法律も良心も常識も関係ない。殺人すら厭わない、という妻の発想は判るけど、いまいち理解できません。一途過ぎる妻に真正面から向き合わない夫の方も発想は判るけど、いまいち理解できない。

 ただし、映画はそれを蒼井優の演技力で押し切ってしまう(笑)。

 最後まで妻と向き合わない夫、最後まで夫を追い続ける妻、お話としては判るけど、人間関係なんて、相手に向き合うとか向き合わないとかどちらかに決めつけることなんかできないんじゃないでしょうか。それこそ、ファンタジーだよな。
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 と、いうことで雰囲気や映像はすごく良かったと思います。4K撮影の時代劇というのも画面が綺麗だけど当時の雰囲気が出ていて素晴らしかった。おなじセット・撮影スタッフの『いだてん』のもうワンランク上を言っています。

 ただ夫婦愛みたいな人情噺はボクは興味ないんで(笑)。でも、蒼井優の存在感も相まって、見る価値がある作品になっていると思います。集団狂気に陥りがちな日本では自ら狂わなければ生きていけない。面白かったですよ。

『スパイの妻<劇場版>』90秒予告編