特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

小異を捨てて大同につく(笑)=『0604最低賃金上げろデモ』と『0605全国総がかり大行動』、それに映画『ひそひそ星』+『園子温という生き物』

関東甲信越は梅雨に入ったそうですね。
梅雨前の最後の好天?の土曜日、渋谷へAEQUITAS(エキタス)AEQUITASの『最低賃金上げろデモ』へ行ってきました。

                                      
AEQUITAS(エキタス)若い人たちが中心に最低賃金アップを主張している人たちです。SEALDsの子たちと重なってるメンバーもいると思います。ボクは彼らの言ってることに100%賛成はしていません。最低賃金を上げる、それも1500円くらいにまで上げなければ景気もどうにもならないというのは10000%賛成ですが、最低賃金を今すぐ1500円に』とか『中小企業に税金回せ』は完全な間違い(笑)。賃金は時間をかけて少しずつ上げていかなければ副作用だってあるし、中小企業をひとくくりに優遇するような言説は時代錯誤です。ブラック企業と言うと大企業、有名企業が良くやり玉にあがりますけど、現実には中小企業こそブラック企業の宝庫です。
                                  
だけど、水野和夫先生もスピーチした彼らの新宿の街宣『最低賃金を1500円に。3月20日AEQUITAS新宿街宣』と不動産に関する映画二題:『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』、『ドリームホーム 99%を操る男たち』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)へ行って、ちょっと印象が変わりました。彼らや集まっている人たちの切実さを非常に感じたんです。生活がかかっています。若い人たちがそう考えるのは当然だな、と。かって組合が影響力をもっていたのもそう言うことだったんだろう、とも感じました。この日、SEALDsの奥田君が『今までAEQUITAS(エキタス)には行く気がしなかったけど、今日は参加した』とツイートしてましたが、多分似たようなことを感じていたんでしょう。この日は他にもSEALDsの子たちが大勢参加していました。その他の参加者は保育士の人とか組合(個人参加)の人とか。SEALDsよりちょっと年配ですが20代後半くらいが中心です。子供を連れた人も多い。だから余計に切実に感じるんです。
●抗議風景











デモ出発前にスピーチした新宿ルミネ地下のレストラン『ベルク』{{{ƒrƒA•ƒJƒtƒFBERG‚ւ悤‚±‚»I{{{の経営者、井田氏がボクの気持ちを代弁してくれました。『個人的にはエキタスの言ってることに賛成だけど経営者の立場としては最低賃金1500円というと?という気持ちがある。ベルクは時給で約900円から始まります。賃金は上げたいけれど、むやみに上げたら、店は潰れてしまいます。でも、大事なことはごまかすんじゃなくて経営者と労働者、立場が違うのを認めることです。その上で本音で話し合いをしていくことで、世の中が変わっていくのだと思います。』そんなことを言ってました。ベルクはルミネに立ち退きを要求されて闘ったことで有名になりましたが、店頭にSEALDsのプラカードを貼ってるようなお店です(笑)。
他の人のスピーチもリアルで嘘がない。意見に全てが賛成出来るわけじゃないけど、リアルで嘘がないってことは大事なことです。特に建設労働者の組合の人の話は自営の経営者としての立場と組合員の立場、両面から話していて、とても良かった。『小異を捨てて大同につく』、これですよ(笑)。
●新宿のレストラン『ベルク』の経営者、井田氏

●組合の腕章をしてる子供。組合の幟とかマークは大嫌いですが、これならOK(笑)!

●写真一枚目、真ん中の青い服を着た後ろ姿の女性は共産党参院議員の吉良ちゃん。先日の新宿のデモでもそうでしたが、特にスピーチをするでもなく一人でやって来て参加しています。エライ!

デモはサウンドカーを先頭にエキタスの諸君のコールに先導されます。非常に良かった、SEALDsのようなラップでもなければ、ティーンズ・ソウルの高校生たちのようなBPM160(推定)のEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)でもない。テンポの速いドラムン・ベースです。これでコールをするって言うのはとてもクリエイティヴだと思います。ビデオをご覧ください。とても良かったですよ。
最低賃金1500円、上げろ!

●税金使って暮らしを守れ!

良いお天気でコールも格好いい。参加者は500〜800人くらい?写真にも写ってますが、子供の手を引いたお母さんも居るし。歩いているうちにお母さんと子供がノリノリになっていくのが印象的でした(笑)。渋谷から青山、表参道、大変充実したデモでした。沿道の反応も凄く良かった。好意的な反応が7割くらい、残りはびっくりして眼を丸くしている(笑)。ボクの目の前で沿道から入ってくる女性もいた。賃金上げろって誰でも共感できる話ですからね。『安保法制』がどうのと言うより、全然反応が良いんです。考えさせられました。と、同時に 楽しく充実したデモでした。
        
                         
日曜日は国会前で『明日を決めるのは私たち―政治を変えよう!6.5全国総がかり大行動
戦争をさせない1000人委員会 : 明日を決めるのは私たち―政治を変えよう!6.5全国総がかり大行動
主旨には賛成なんだけど、この大仰なネーミングがマヌケです(笑)。そもそも社民系と共産系の市民?運動が一緒になって安保法案に反対するという『総がかり行動実行委員会』戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会にはボクは批判的です。
主旨はともかく、彼らのスピーチは意味不明の事ばかりだし、それ以前に彼らには戦略も展望も集会の運営能力もまともにない。行動のスタイルも40年前と変わってない。例えば彼らは2000万人署名に注力してるみたいですけど、あれがどういう意味があるのかさっぱり意味が分からない(それでも一応 署名はしました)。『戦い抜きましょう』とか『頑張りぬきましょう』が彼らの常とう句ですが、何を頑張るんだよ。彼らの話を聞いていると、戦略も戦術もなしに闘い続けた旧日本軍を連想してしまいます(笑)。古臭いコールと言い、意味不明のスピーチと言い、わざわざ無党派層を遠ざけようとしているような気さえする(笑)。彼らの孫みたいな(笑)SEALDsの子たちと比べるとスタイルだけでなく、知性の差を文字通り感じてしまいます。以前は旧来の運動はああいうものだ、と思ってましたが、あれじゃ明日は無い、と再認識させてくれたのがSEALDsの若い人たちでした。
今日の国会前の集会もどうしようかと迷ったのですが、主催にはSEALDsや学者の会などの『市民連合』 市民連合 – 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合も入っているし、小異を捨てて大同につく(笑)、ということで行ってきました。


                              
定刻の15分くらい前に国会前へ着くと大勢の人が集まっています。クソ右翼の街宣車まで来ている。ヘイトスピーチさながら、国会前に続く道路で口汚い言葉で罵っている。こいつらも知性がない連中です。連中の前へ行って思い切り中指を立ててやってから、集会へ向かいました。今日は20台近くも街宣車が集まってかなりうるさかったようです。それでも30分で退散していきました。所詮 商売でやってるクズどもです。

●抗議風景







集会は山口二郎のスピーチから始まり、民進党の枝野、共産党の副委員長の山下、社民党の吉田と続き、湯川れいこ氏(彼女はなんと今年 80歳だそうです!)その後弁護士と大学教授、SEALDsの奥田くんと続きました。まともなスピーチが続いて助かった(笑)。司会の総がかりの菱山は相変わらず、死ぬほどリズム感のない昭和のコールでやる気を削いでくれましたが(笑)、総がかりの連中のデレデレ長い意味不明のスピーチを聞かなくて済んだのは良かったです。それはそれで良いですけど、ここにきている人は全員 自民党に反対している人ばかりで、どうしようかなと迷っていたり、政治に関心がない人はいないだろう、とも思いました。世の中の大多数の人を呼び込めないそこが問題なんです。山口二郎はスピーチで、投票率が6割になったら世の中が変わると言ってました。確かに。でもリズム感皆無の昭和コール(笑)では投票率が下がりそう(笑)。所詮 仲間内のマスターベーションと言われるでしょう。前の日のエキタスのデモでは子供もお母さんもボクの眼のまえで段々ノリノリになっていきました。沿道からデモに入ってくる人もいた。安保法制反対も、もっと楽しかったり、明るかったり、共感を得られるものにしていかないといけないんでしょう。
                              
奥田君がスピーチしてましたけど、選挙情勢は今のところはよろしくない。野党が勝つなんて寝ぼけたことを言ってないで、とにかく改憲勢力議席3分の2を阻止する。それが目的なんだと思います。安保法案への関心を喚起するのは良いけれど、どの世論調査を見たって国民の関心は社会福祉や景気の方へ向いています。事実は事実としてみないと。帰りは総がかりではなく、いつも頼もしいママの会の人たちにカンパして帰りました(笑)。ベビーカーは強いですよ(笑)。
●こういう声も上がっていました。総がかりの連中が無能なのは相変わらずでした。ジジイばかりの癖に社会人としての一般常識すら疑問を感じるレベルです。

                                                         
今日の参加者は主催者発表で4万人だそうです。国会前だけじゃなく、各地で同様のデモ・集会が行われました。自由ヶ丘駅でも2000万人署名集めをしている若い人が大勢居ました。この駅でそんな光景は見たことなかったんでびっくりしました。ボクはすでに署名はしたので、彼らに手を振って会釈をして帰りました。
                                      
しかし、我ながらうるさいですね(笑)。右左関係なく、あーでもない、こーでもないと文句をつけながら、デモへ行っては大声を出す(実際は大声を出してるわけじゃありません)(笑)。だけど主旨に100%賛同しなくても、最大公約数を見つけて一緒に動く、これが政治だと、ボクは思っています(笑)。


                              

ということで、新宿で映画『ひそひそ星』、『園子温という生き物

舞台は未来。宇宙は人工知能が支配し、人間はどんどん数を減らし絶滅危惧種になっていった。生き残った僅かな人間は宅配便で互いにモノのやり取りをしている。瞬間電送ができる未来になぜ、人間はものをやり取りしているのか。一体どんなものをやり取りしているのか。惑星間の宅配便を届けるアンドロイド、鈴木洋子(神楽坂恵)を描く。



全篇 白黒、登場人物たちは殆どひそひそ声で話す、文字通り静かな映画です。宇宙船はなぜか昔のアパートの部屋を模しています。洋子はアンドロイドという設定ですが、神楽坂恵(園監督の奥さん)は普通の人間の格好です。白黒画面での彼女は普段の3割増しくらい美しく撮られています。



映画が始まってしばらくして、『人類はあれから大きな災害と大きな失敗を繰り返した。そのたびに人は減っていった。』 という字幕が流れます。画面に映るのは、それにふさわしい景色。荒れ果てた土地、枯れた木、打ち上げられた船、骨組みだけが残る建物。人は殆どいない。

この映画は福島の南相馬浪江町の光景がそのまま使われています。宅配便を受け取る人たちの多くは実際の浪江町の住人です。園監督は2013年の『希望の国』でいち早く原発事故を現地ロケして描いています。その時に知り合った住人の人たちが出演しているのです。

希望の国

希望の国

ボクはゴダールの60年代のSF作品、『アルファヴィル』を思い出しました。独裁政権下の未来都市という設定でしたが、広がるのは現実のパリの街の姿。それでも画面には荒涼とした光景が広がっていました。

アンドロイドの洋子は人間たちが宅配便でモノのやり取りをしようとするのか、不思議でなりません。送るものは着古した服であったり、フィルム、コップなど、金銭的な価値が高いものでもありません。人間たちはモノのやり取りをしているのではなく、過去の記憶をやりとりし、愛おしんでいるのです。30デシベル以上の声は出さないように、互いにひそひそ越えで話しながら。



これは、過酷な環境の中で何とか生き延びようとする人間の姿を描いた映画です。園監督がシナリオを書いたのは20年以上前だそうですが、福島で撮影することによって新たな命が宿った。311後の現代の映画になった。実験的な映画であるにも関わらず、視点はシャープで苛烈です。映画の主役は荒廃した浪江町南相馬の光景です。実に雄弁な映画です。

穏やかな画面、静かな音の2時間で、ボクが見ているときは隣席のクソデブのいびきが非常に迷惑だったのですが(怒)、優れた映画であることは間違いありません。一見の価値はあります。


同時に観た『園子温という生き物』は園監督の姿を描いたTV番組『情熱大陸』の監督が撮ったドキュメンタリーです。

ボクはそのTV番組は見たことないんですがスポンサーがアサヒビールなので、お酒を飲むシーンはOKでも、泥酔するシーンはNGだそうです(面白いですね)。ところが園監督は普段は泥酔してばかり(笑)、だから監督は改めてドキュメンタリーで園監督を撮ったそうです。


このドキュメンタリーも酷く泥酔した園監督がキャンバスに絵の具をこすり付けて絵を描くシーンから始まります。とにかく、何か表現したくてたまらない人なんですね。昨年は4本も監督作が公開されるなど日本で最も売れっ子の映画監督となりましたが、それまでは下積みが何年も続いていた。それでもあきらめないだけの情熱があるってことなんでしょう。奥さんでもある女優の神楽坂恵のインタビューが面白かったです。監督と知り合い、付き合い始めた当初のことを話しているうちに泣き出して、インタビューが中断してしまうんです。彼女は流れてしまった化粧を直しながら『変な女もいたし』とかブツブツ言ってましたから(笑)、そういう人なんでしょう。


それでも園氏は監督としての腕は確かです。彼がドキュメンタリーの監督を説教する場面があります。映画『ひそひそ星』のロケに同行するのですが、東電の社員が『今まで直接お詫びできなかったので』と映画に出演した多くの住民にお詫びして回っている姿、それに映画で使われた廃墟と化したショッピングセンターの扉を東電の社員と住民が一緒に閉める姿を撮っていなかった、と言って怒っているのです。確かにそういうシーンがあれば、このドキュメンタリーももっと感動的なものになったかもしれない。


                                
園監督は今後、国内では自分のオリジナル脚本のものだけを撮影し、海外でのみ商業映画を撮るそうです。海外で高く評価されている園監督ならでは、です。ボクは映画が面白ければ、監督はどんな人間でも良いんですけど、大変興味深い人ではありました。芸術作品は、文字通り心血を注げる人でないとダメなんでしょうね。