特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

写真展『植田千晶’’2015’’』と『週間報道LIFE』(BS-TBS,12/27)、それに2015年映画ベスト5

恥ずかしながら、休みに入って風邪で倒れてしまいました。が、いつまででも寝ていられるのがいい!まさに『自由』を実感しているところです(笑)。
                                                               
それでも先週末はSEALDsに参加している写真家(日芸の子)が写真展をやると言うので見に行ってきました。
植田千晶’’2015’’
                                   
京橋のビルの4Fのギャラリーが会場です。その名の通り2015の夏 国会前や新横浜、銀座などで行われていた抗議の模様と参加者の表情を写した写真展です。

被写体は大学生、高校生たちが中心ですが、国会前で仁王立ちする福山哲郎の姿や憮然とした顔をしている福島みずほも面白い。参院公聴会が行われた新横浜でラッパーのECD氏らが議員たちの公用車の前でシット・インしている姿もありました。(*これで議会開催の時間を約1時間遅らせたのです。柳条湖事件が起きた9月18日に安保法案が可決されたら中国との関係が大変なことになったんですから、日本人は全員、新横浜でシット・インした人たちに感謝しなければいけないとボクは思います)、渋谷の集会でスチャダラパーを囲んだ写真は皆嬉しそうです。京橋でサウンドカーの上でコールする学生の足元で警官が群衆を制止する写真では、なんと、その警官がニコニコ笑っている。3〜40枚くらいの写真は理不尽な政府への怒りだけではなく、喜びや笑い、悲しみ、決意など人々の感情の起伏を捉えています。今夏の抗議の断面が生き生きと切り取られていました。
                                             
他にもスピーチする子の足元に『(そろそろ)話をまとめろ』とカンペが出ている写真は面白かったし、不安定な脚立の上に立つ子の足を大勢の手が支える写真は実に美しかった。この写真のことをTwitterで『これがSEALDsの真実だ』と言っている子が居ましたが、ボクが現場で見た彼らの姿もこれと一致します。
                                                
まだ3か月前の話ですが、遠い昔のことのように見えます。雨のなか懸命になっている若い人たちの表情には美しささえも感じます。いわゆる『遠い夏の日の記憶』ってやつです。だけど、ボクたちは回顧モードに入ってはいけないわけです。そんなヒマはない(笑)。でも将来のためにも2015年夏のことがヴィヴィッドな形で記録に残って良かった。写真を撮った植田さんと言う人は良い仕事をしました。
学生さんだけあってプリント代も大変なんだろうな、とかも思ったりしたのですが、今年を振り返るには相応しい催しでした。


言うまでもなく安保法に関することは今年の大きな出来事でした。ボクにとっては希望と呆れを両方感じさせるものでした。希望の方は言うまでもなく若い人たちが個人として立ち上がったこと、です。ボク自身、色々学ばせてもらいました。
彼らが影響力を持った最大の要因は『言ってることがマトモ』だったからだと思います。彼らの中では安保や自衛隊憲法に対する意見は様々だそうですけど、『憲法に違反していることが濃厚な法案をまともに審議しないまま押し通そうとする政府のやり方はおかしい』という点で一致しています。この点は右だろうと左だろうと多くの人が納得できたのではないでしょうか。それを表現する言葉もどこかの誰かや組織が言ってることでもなくネットのデマを真に受けている訳でもなく、あくまで個人の立場として考えた意見ですから、やっぱり説得力があります。だからこそ多くの学者も味方したし、それが大きな世論になっていった。SEALDsの子たちのデモの美的・音楽的なセンスがあるスタイルも素晴らしいとは思いますが、それは枝葉末節のことでしょう。
                                            
一方 呆れたのは既存左翼のダメさ加減です。今までは『そういうものかぁ』と思って遠慮して悪口は書かなかったんですが、今夏 若い子たちの創意工夫に富んだ生き生きとしたコトバを聞いているうちに、『やっぱり、この人たちはアホだったんだ』(笑)と言うことに改めて気が付きました(笑)。SEALDsの子たちにはまがりなりにも『安倍晋三の支持率を落として安保法案の成立を阻止しよう』という戦略がありました。一方 社民系・共産系の市民団体が安保法反対に結集した『総がかり行動』の人たちには悪いけど戦略も知性も感じられませんでした。彼らにあるのは旧日本軍そっくりの『がんばりましょう』とか『戦いに勝利しましょう』とか訳の分からない話や精神論だけです。しかも話が長い、退屈、やたらと肩書にこだわる(笑)。一昔前の会社に良く居た、仕事のできないジジイと一緒です。彼らは誰も知らない団体の小汚い幟を持ってくることに拘りますが、あんなもの、何の意味があるのでしょうか。他の参加者にとっては見通しを遮られるから邪魔だし、あれを見た一般の人は敬遠するってことくらい、いい歳こいて判らないんでしょうか。集会の現場で誘導をやっている人を比べたって学生たちは汗だくになって一生懸命やってるのに対して、総がかりの連中はぼけ〜っと懐中電灯をぶらぶらさせているだけでした。今時の役所だって、もうちょっとは緊張感を持って行動している。自分たちの集会に過激派が参加してても何もできない、驚くほど無能な彼らが衰退するのは当然です。物事には理由があるんですね。
まして今夏久方ぶりに太陽の下に出てきた過激派、あれは酷かった。人民のための革命を自称しているジジイどもが、国会前で『国会へ突っ込め』と無責任にアジったり、警察を暴力的に挑発した揚句、多くの人たちに『帰れ』コールされてすごすごと去っていく姿はミジメ極まりないものでした。連中こそ『人民の敵』そのものです。見ていて『あれが70年安保の成れの果てか』と思いました。人間はどこまで下劣になれるのかってことを彼らは身を持って証明しています。
                                                                                  
今年は野党勢力の結集ということが問題になるでしょうけど、既存左翼のマヌケ連中と真面目に組んでも、イメージダウンはあってもプラスはない拒む必要はないけれど適当にあしらってるくらいが丁度良い、かもしれません。あんな連中は相手にせず、もっと一般の人を味方につけることを考えた方がいい。今までの選挙結果から判るように、原発や安保だけでは大勢の人の支持は得られません。安倍晋三ですら、それくらいのことは判っているわけで、それだからあわててバラマキを始めたわけです(笑)。反対する側だって、少しは頭を使わなければ。                  
                                                                 
同じことは27日の夜に放送されたBS-TBS週間報道LIFE 週刊報道LIFEでも感じました。内容は『戦後70年 SEALDsが刻んだ言葉』、映画監督の想田和弘氏を迎えてSEALDsの2年間を振り返るという特集でした。TBSはSEALDsが結成される前から取材していたらしい。この番組、時々面白いことをやってるんですが、提供は安倍晋三や田母神の支援をしているアパグループです(笑)。勿論 ボクは絶賛ボイコット中(笑)。このところ政治や大資本からのマスコミへの圧力が取りざたされますけど、こういう番組が実際に放送されるのは如何に現場の志が大事なのかってことを示しています。
番組では想田和弘氏が憲法を守れ、秩序を守れと主張するSEALDsの学生たちは左でもなければ過激でもない、むしろ保守である。だからこそ多くの人が共感したのだろうと指摘していました。彼らの言ってることは穏健で保守的、民主主義の最大公約数をすくい取ろうとするものだ、とボクも思います。想田氏が安保法に反対する左翼の側の人からもSEALDsに対して批判がある。批判もいいけど、彼らも自分たちで何かやればいいのにと言っていたのはまさに、その通りです。世の中の常として何もできない奴に限って、他人の足を引っ張るものです(笑)。
想田氏は更に『(野党も市民も)皆がSEALDsに寄り掛かっちゃいけない』と言ってました。先週の藤田嗣二を取り上げた番組もそうですが、『いかに個人の立場に立ち続けるか』ってことを考えさせられた年末でした。

                                               
さて、色々あった1年でしたが、勝手なことばかり書いている、このブログを読んでくださった方々に感謝しております。どうか良いお年をお迎えください。                      
今年 映画館で見た映画を数えたら99本ありました。最後にその中でベスト12を選んでみました。
●ベスト6〜12位
ケン・ローチは歳を取ってますます絶好調で『ジミー、野を駆ける伝説』はドラマ性とメッセージが程よくブレンドされた作品でした。キング牧師を描いた『グローリー』とイタリアの野党書記長が失踪する『ローマに消えた男』は政治がテーマですが、まさに今の日本にあてはまるお話でした。『黄金のアデーレ、名画の帰還』、『マミー』は圧倒的な完成度で心を揺さぶられました。あと孤独な中年男の淡々とした日常と死を描いた『おみおくりの作法』は他人事とは思えなかったし、過酷な人生を生きてきた1人の女子プロレスラーを描いたドキュメンタリー『がむしゃら』はマイノリティを排除する現代の日本の断面も描いていて素晴らしかった。

                         
●5位:スーパー・ローカル・ヒーロー2015-03-23 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
尾道レコード店を営みながら、福島からの避難民の支援をしているノブエさんを描いたドキュメンタリー。無口でいつもニコニコしているだけの中年男性、ノブエさんがバタバタ走り回っているうちに周りも支援をせざるを得なくなって、避難民のサロンやチャリティーコンサートが実現されていく過程は殆ど奇跡のようでした。映画を撮った監督自身もノブエさんをみているうちにほっておけなくなったと言っていました。やっぱり『やるかやらないか』なんだってことを判らせてくれる、観る人に勇気を与えてくれる映画です。

                                      
●4位:彼は秘密の女ともだち『安全保障関連法案に反対する学生と学者による街宣行動@新宿伊勢丹前 歩行者天国』と映画『彼は秘密の女ともだち』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
親友をなくしたばかりの新婚女性と親友の夫だった女装癖の男性とのラブストーリー。と言っても意味が分からないかもしれませんが(笑)、要するに人間はどこまで自由になれるかを描いている作品です。切なくて知的で美しい。素晴らしい映画でした。

                                     
●3位:君はいい子抱きしめることで世界に抗う:『君はいい子』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
日本でも大きな問題となっている『子供の貧困』をさりげなく、温かい視線で、だけど撮影から演出まで圧倒的な完成度で描いた作品です。この映画は『誰かを抱きしめることで理不尽な世界に抗おう』としています。なんとラディカルな作品でしょうか。呉監督の前作『そこのみにて光り輝く』はエモーショナルな面でも完成度の面でも素晴らしい作品でしたが、それを軽々と凌駕しているのには驚きました。

●2位:パレードへようこそ君の武器はプライド:映画『パレードへようこそ』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

1位と2位は順位を決められない、どちらもボクの生涯ベスト10には絶対入る大好きな作品。この2つの作品に出逢えて幸せでした。こちらは80年代のイギリスの炭鉱ストを支援した性的マイノリティ(LGSM)の実話。笑って、泣かせて、最後には嬉し泣きに変わります。彼らの戦いが大きく実を結んで、昨年イギリスでは同性婚が合法化されました。サッチャーは今頃地獄でほぞをかんでるでしょう。●1位:はじまりのうた音楽映画二題:映画『味園ユニバース』と『はじまりのうた』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

 
NYの街角で音楽を制作していくことで救われる若いカップルと中年男性とその家族の姿を描いた作品。予告編を見たときは『くだらね〜』と正直 思ったんです(笑)。ところが観たら圧倒されてしまいました。音楽にしろ、映画にしろ、小説にしろ、芸術が人生を変えてしまうことってあると思うんですが、その瞬間を見事に描いた、殆ど奇跡のような作品に思えます。この映画で描かれた、何もかもが愛おしいサウンドトラックもサイコー、です。

はじまりのうた-オリジナル・サウンドトラック

はじまりのうた-オリジナル・サウンドトラック