特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

オバマ氏の演説とジョージ・クルーニーの新作『ヘイル、シーザー!』

あっと、言う間に5月も終わりそうです。今さらながら時が過ぎるのは早いものです、特に週末は(泣)。
                                             
オバマ氏の広島での演説を改めて新聞で読みましたけど、やっぱり感心しました。広島に関する個人の想いから始まって、それを普遍的な事物に展開した上で話を広島に戻し、その未来への意義にまで話を昇華させて終わっている。見事なレトリックと格調の高さです。こんな文章、なかなか書けませんよ。昔のアテネペリクレスとかの演説を読んでいるような感じです。

原爆投下が他人事に聞こえるとか、具体的なことを言ってないと言う向きもありますが、オバマ氏は演説で多くの人が納得できる最大公約数的なもの、理念を少しでも多くの人に届けることを目指したのだと思います。彼はイデオロギーや国籍に関係なく誰にでも受け入れられる言葉、けれど伝えなければいけない言葉を選んで話している。そういう言葉を選ぶことができるのも知性だと思います。

案の定 謝罪なしの訪問を最初に持ちかけたのは日本だそうですけど(笑)オバマ広島訪問、米国内はどう受け止めたのか (5ページ目):日経ビジネスオンライン、謝罪の有無なんて、どうでもいいとボクは思います。日本人だって非戦闘員を散々殺してきたし、東京大空襲の責任者に勲章までだしている。おまけに今もアメリカの核の傘の下にいるわけです。そういうことを頬かむりしてアメリカ謝罪しろって、それを言う資格がある人ってどれだけいるんでしょうか。とにかく クズ総理は真珠湾へ行って土下座して来い!(笑)
                                                    
今回のオバマ氏の演説は、911でビルが倒壊するところを実際に目の前で見た38歳の大統領副補佐官が書いた原稿にオバマ氏が手を入れたものだそうですけどオバマ大統領「広島演説」は一大叙事詩だった | 「コミュ力」は鍛えられる! | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準バターン死の行進で生き残った捕虜を連れて来たり、非難を封じる用意周到ぶりも含めて大したものだと思いました。

理想は大事ですが、実行は同じくらい大事です。大きいことを実行するには現実をきちん把握し、綿密な計画を立て、多くの人を巻き込むというプロセスをたどらなければなりません。民主党や日本の左翼の多くがダメなところ、頭の悪いところはそういうところがまるで出来てないところじゃないでしょうか。要するに社会人としての訓練、しつけができていない(笑)。

土曜日のTBS報道特集で『今回の訪問はオバマ氏が政権に就いた時からのストーリーどおりだった。』とオバマ政権で最初に広島へ訪問したルース元駐日大使が語っていましたけど、そのリアリズムこそ我々が学ばなければならないことでしょう。
オバマ氏の演説の言葉を借りれば『(犠牲者の)魂は我々に内面を見つめ、我々が何者であるか、これからどのようになっていくのかを考えるように語りかけている。』 今もアメリカの傘の下にいる我々自身のことを真剣に考えてみなければいけないんじゃないか、と思いました。


さて、消費税延期がニュースで流れています。W選挙になるかどうかは政権内でも揉めているようですが(笑)。
サミットは『財政出動のお墨付きを得るどころか、安倍晋三が妄言を吐いて大恥をかいて終わった』、というのが正確なところでしょう。エコノミスト小幡績は『サミットで各国に借りを作って、恥をかいて、評判を落とし、今後信頼されなくなり、自分勝手と烙印を押される、という大きなコストを払った』とまで言っています。

個人としては消費税の延期が良いのかどうか判断に苦しみますが、本当は消費税増税をしながら給付金などの低所得者対策をやればいいのでしょうけど、直近の景気が持たんぞというのは確かだし、安倍と野田が同意した税と社会福祉の一体改革というのは完全に沈没したというところでしょう。財務省の言いなりになって消費増税を推進した菅直人も、税と福祉の一体改革なんて言って安倍に騙された野田もホント、救いがたいアホだった。もちろん膨れる一方の社会福祉費はなんとかしなければいけないから、相続税所得税の累進税率アップだけでなく、たぶん受益負担の見直しと消費税アップは避けられないとは思います。日本の社会も税金は高くても福祉が充実するヨーロッパ的な方向、できれば効率と福祉を両立させる北欧的な方向を目指していけばいいんじゃないですか。今まで優遇されてきた金持ちから税金は取るにしろ、福祉を充実させて税金も下げるなんてことは多分ムリです。それを政治的に説得できる政治家が出て来ないといけないんでしょう。野党がそこまで言えて初めて、もう一度政権交代がリアリズムを持って国民に捉えられるのではないでしょうか。
●今回のサミットでアベノミクスは名実ともに失敗したことが世界的に認知されたんじゃないでしょうか(笑)。

                                                                                                
さてさて、大傑作『はじまりのうた

で大好きになったジョン・カーニー監督の新作『シング・ストリート 未来へのうた』の7月の日本公開が決まりました。ニューウェイブ勃興期のダブリンの話だそうです。それだけで泣ける(笑)。U2のボノが大絶賛しているそうですけど、そりゃ、自分たちのことだから当然だろって(笑)U2・ボノも大絶賛した『はじまりのうた』監督の最新作『シング・ストリート 未来へのうた』予告編が胸アツすぎて期待大 - AOL ニュース。今から公開が楽しみでなりません。ま、あんまり期待が大きくなるとハードルが高くなりすぎて ロクなことにならないんですけどね。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160428-00000066-the_tv-ent



こちらは、みんな大好き?ジョージ・クルーニーコーエン兄弟監督の新作です。新宿で映画ヘイル、シーザー!
舞台は1950年代初頭のハリウッド。大手映画会社のキャピタル・スタジオの部長エディ(ジョシュ・ブローリン)は撮影所のトラブル解決に奔走する毎日だった。芸術家肌の映画監督(レイフ・ファインズ)は大根役者の西部劇スターを自分の文芸作品に押し付けられたと言って激怒している。水着の女王(スカーレット・ヨハンソン)は表沙汰にできない恋愛ばかりして、後始末に苦労させられている。おりしも莫大な予算をつぎ込んだ大作『ヘイル・シーザー!』の主役の大スターのウィッドロック(ジョージ・クルーニー)が謎の失踪を遂げてしまう。双子のゴシップ記者(ティルダ・スウィントン)も何か嗅ぎ付けたようだ。エディは果たしてどうしたらよいだろうか


1950年代のハリウッド黄金時代を描いた作品です。
豪華スターの配役も楽しくて、とても面白いです!西部劇のアクションシーンや水中バレエに水兵たちのミュージカル、本当に見事な完成度で再現されています。元ネタをあまりわからないボクでも本当にワクワクしました。そして、おバカで我儘なスターたち。大スターのウィッドロック(ジョージ・クルーニー)はアルコールと女ばかりで台詞を覚えるのが苦手です。だけど人が良いんです。彼はスタジオの待遇改善を求める脚本家などの共産主義者グループに誘拐されるのですが、あっさり彼らの言い分に納得して味方になってしまいます。
ジョージ・クルーニーは人が好くてリベラルで頭の悪い大スター役を、楽しそうに演じていました。

                                                    
スカーレット・ヨハンソン演じる水着の女王は次から次へと男を取り換え、とうとう妊娠してしまい、エディにスキャンダルのもみ消し役が回ってきます。だけど呑気な彼女は太り始めた身体に水着が入らないと周囲に当り散らしている始末です。当時はスターにも清廉潔白さが要求された時代でした 。
●スキャンダル満載の水着の女王役のスカーレット・ヨハンソン(左)。トラブル解決係のエディ(右)(ジョシュ・ブローリン)の世話を焼かせます。


                  
大スターのウィッドロックをさらったのはスタジオで働く共産主義者たちでした。彼らはより良い世の中を作りたい、また映画会社は自分たちを搾取しているとして映画会社に身代金を要求します。彼らの正義感とインテリ然とした人の良さ、そして実はソ連のスパイに騙されているだけのお人よしの描写もうまい。それに感化されてウィドロックもあっさり同調するのですが、人が良くてだらしがなくて、セリフの覚えが悪いスター役をジョージ・クルーニーは楽しそうに演じています。
                                             
次から次へと発生する難題を、やたらと人をぶん殴って問題を解決するエディはジョシュ・ブローリンの芸風でしょうか(笑)。真夜中まで激務に追われる彼ですが、実はロッキードからの引き抜きを受けています。『これからは映画の時代じゃない、飛行機の時代だ、転職すれば給料も労働条件も今より遥かに良くなる』というスカウトの誘いにさすがに悩んでしまいます。
●チャ二ング・テイタムのミュージカルシーン(1枚目)は超感動しました。頭の悪い大根役者に手を焼くレイフ・ファインズの文芸作品専門の名監督役(2枚目右)も笑わせてくれます

スキャンダルを狙う女性ゴシップ記者のモデルは赤狩りの際 暗躍した実在の記者ですが、登場人物の多くはジョン・ウェインを始め、モデルがいます。絶頂期のハリウッドは次第に衰退の色が見え始めています。と、同時に赤狩りの暗い影は次第に濃くなってきます。
●売れさえすればデマだろうが、赤狩りだろうが何でもいい記者役のティルダ・スウィントン(右)。彼女の役にもモデルが居ます。赤狩りに一役買ったゴシップ記者だそうです。

                                                                                                                                     
黄金期のハリウッドへの憧憬と暗部を夢のある映像、それに皮肉な笑いで高レベルで再現した作品です。大スターばかりの配役がセルフパロディになっているのも楽しい。いわゆる大当たりの映画。すっごく面白かった、満足度の高い作品でした。