特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ジャージー魂(ソウル)!:映画『ジャージー・ボーイズ』

週末の東京は穏やかで爽やかな良いお天気でした。1年中こんな感じだったら良いのに。本を読んで半身浴をして、ご飯を作る。毎日、こんな感じで過ごしたいです。早く定年にならないかなあ(笑)。

   
                                                                    
読売の世論調査安倍内閣の支持率が9ポイント下がったとか言ってましたが、まだ53%もあるんだって!?(笑)http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141025-OYT1T50115.html
世論調査の常で、どういう質問内容か知らないけど、ご冗談でしょ(笑)。まともな投票先がない、とは言え、日本人には相変わらず困ったもんです。
それにしても消費税再増税の話は相変わらず良くわからない。延期すれば国際市場や金利への影響のリスクもあるし、景気が悪くなるから再増税反対!じゃ、さすがに単細胞すぎるでしょう(笑)(リスクが大したことないと断言できるなら延期はアリだが、そんなことを言ってる政党はない) 与野党問わず、メリット、デメリット両方を挙げない議論は卑怯だし、それ以前に議論にすらなってません。反対だけ言ってる政党は国民をバカにし過ぎでしょ。まあ増税を延期すればアベノミクスが失敗したことが明確になるし、増税すれば景気は一段と悪くなるだろうから、いずれにしても安倍内閣の終わりが速まる、とは思いますけど。
はっきり言えるのは、問題は増税を延期するとかしないとかセコイ話(笑)じゃなくてどうやって国民の暮らしを良くしていくかの議論が必要ってことです。増税を延期したら市場の反応はどうなるか、また財政再建をどうするか、膨れる一方の社会福祉費用をどうするか、限られた社会福祉の予算はどこに優先的に使うべきなのか、どうやって成長産業を作っていくか、だ。自民党から共産党まで、トータルの話は聞いたことないぞ(笑)
今週も相変わらず、40ぺ―ジ読むのに1時間かかる(笑)『フランクリン・ローズヴェルト』を読んでいたんですが、その中に感動的な言葉がありました。政治家、特に呑気な反対ばかりしている野党は肝に銘じてもらいたいもんだ。集団的安全保障にしろ、秘密保護法にしろ、今の日本はロクでもない方向に向かう流れがあるけれども、根本的な問題はここにあるんじゃないですか。
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私たちは、真の個人の自由は経済の安定と自立なしには存在しえないという事実を明確に認識するようになったのです。『困窮した人間は自由な人間ではない』のです。空腹で仕事の無い人々は、独裁制を成り立たせる要因となるのです。』(1944年1月11日、一般教書演説)

フランクリン・ローズヴェルト 下 - 激戦の果てに

フランクリン・ローズヴェルト 下 - 激戦の果てに


                                    
渋谷で映画『ジャージー・ボーイズ
トニー賞で4部門を受賞したブロードウェイ・ミュージカルをクリント・イーストウッド監督が映画化したもの。

舞台は1950年代前半のニュージャージー。床屋の下働きをしているフランキーは天性の美声を生かして歌手になることを夢見ていた。やがて彼は地元の不良少年たちとバンドを始め、60年代に『フォーシーズンズ』として成功を手にする。だがバンドとしての成功は彼らの間に亀裂をも生じさせていった。

60年代にヒットを連発したフォーシーズンズの成功と挫折を描いた作品。『シェリー』や『STAY』などのヒット曲は知ってるけど、フォーシーズンズ自体はボクは詳しく知りません。だけどニュージャージーの音楽シーンを描いた作品として、非常に興味深かったです。ニュージャージーの音楽シーンって古くはフランク・シナトラ、それからブルース・スプリングスティーン、そのあとはボン・ジョビ、その後も色んなロッカーを生み出したところだ。ボクは一回行ってクラブ周りをしてみたいと思っている場所です。
ニュージャージーはNYの隣、工業地帯で労働者階級が多いと言われています。日本で言うと一時期の川崎のような感じか。NYの隣なんだけど、いまいち垢抜けないローカル色が強い地域のようです。映画の中でバンドメンバーたちの『ここでは若者はマフィアか、軍隊か、スターになるしかない。マフィアも軍隊も最後には殺される。だからスターになるんだ』というセリフがあります。ちょっと前 ニュージャージーのイタリアンマフィアを描いたTVドラマ『ソプラノ』というのがありましたが、まさにそういうところらしい。ちなみにニュージャージー出身のイタリア系歌手、フランク・シナトラは生涯マフィアとの関係を噂されていました。
●床屋の下働きをしながら歌手を夢見る主人公はマフィアの親分(クリストファー・ウォーケン、写真右)に可愛がられる。

                                    
この映画の登場人物たちも殆どイタリア系。主人公のバンドメンバーたちも時にはコソ泥や盗品売買をやりながら、バンド活動を続ける。前半部のメンバーがかわるがわるに刑務所へ入る描写なんかとても面白いです。出所記念コンサートとかやるんだけど、要するに刑務所なんかそれほど気にすることはない、ってことでしょう。
●近所の悪ガキ連中が楽器を持ったと考えると判りやすい。

                                           

メンバーが女の子をナンパするところや、子供が出来て直ぐ結婚、その後 子育てで若夫婦の間は大揉め、というのもいかにも典型的で面白い。今も日本のヤンキーはこんな感じなのかもしれないですが(笑)、昔はこうだったんだ〜と思いながら見ていました。映画の登場人物たちがカソリックということも影響しているのでしょう。
●ロマンチックに口説いたあとは往々にしてこうなる(笑)。

                                       
イーストウッド監督は撮影の際 実際に俳優たちに演奏させたそうですが、劇中 演じられる音楽が『生きている』ことに驚かされます。演奏が達者なだけでなく、ちゃんと音楽のノリが表現されているのです。俳優・スタッフが音楽を本気でやっている、判っているということでしょう。画面の中から音楽を演奏することの楽しさが実によく伝わってきます。

                                        

彼らが成功を手にしたのもつかの間 フランクたちの面倒を見ていたバンドのリーダーが高利貸から莫大な借金をしていることが明らかになります。普通だったら、そこで仲間割れが起きて解散なんだろうが、彼らは自分たちのやり方で決着をつけます。映画では『ジャージー・スタイル』と表現されていましたが、カネより自分の気持ちを優先させるというのが、人情に篤いジャージー気質なんでしょう。

                                    
こういうのはフォーシーズンズだけではありません。ニュージャージーの音楽シーンの後輩、スプリングスティーンのEストリートバンドもニュージャージーのバンド仲間が中心ですが、刑務所暮らしをしたメンバーが何人もいるし、メンバーには黒人もいる(昔は珍しかった)。メンバーが亡くなればその甥を加入させるし、大スターになっても10代のころのバンド仲間と今でもステージを一緒にやっています。ついでにスプリングスティーンの奥さんは昔のバンド仲間のバックコーラス。更に若いニュージャージーの大スター、ボンジョビも、かって自分たちがファンだったが商業的成功とは程遠いニュージャージーの先輩ミュージシャン、サウスサイド・ジョニーをたびたび自分たちのステージにあげて共演しています。シナトラとサミー・デービスJrとの人種を超えた絆だってそうです。


ニュージャージーの音楽シーンにはカネにも法律にも邪魔させない、人種も関係ない、仲間同士の深い絆があるようです。この映画の裏テーマはここだ。カネとかビジネスの話ではない、価値観の問題です。フォーシーズンズの面々も仲互いしても根本のところでは仲間を裏切らない。一度人を信じたら、自分で自分の責任を取る。この物語が観客をひきつけるのはそういう主人公たちのソウル(魂)の在り方にあるのでしょう。フォーシーズンズの音楽は下層階級の白人が貧苦にあえぐ黒人の歌い方を真似した、いわゆる『ブルーアイド・ソウル』だが、これはスタイルだけではなく、ハートの問題です。


それにしても名曲『君の瞳に恋してる』(Can't take my eyes off you)の誕生の裏話は感動的でした。全然知らなかったよ。
●『君の瞳に恋してる』の歌唱シーン

                                  
バンドを解散しても、家庭生活に不幸が見舞われても、フランキーはクラブ周りをしながら歌い続けます。そして物語は90年に『ロックの殿堂』の表彰式で、メンバーたちが恩讐を超えて数十年ぶりに再会し演奏するところで終わります。これがジャージー魂だ!(笑)。


イーストウッドお得意の栄光と転落、挫折を描いたお話だから暗くなりがちのように思えるが、全然暗くありません。ジャージー魂がそれを乗り越える!(笑)。それにミュージカル仕立てなのは大正解。グッドミュージックに載せられてテンポよく進んで行くお話は見ていて単純に楽しいです。
登場人物が勢ぞろいする最後のミュージカルシーンも楽しかった&泣かせるし(もっと派手でも良かったけど)、マフィアの親分役のクリストファー・ウォーケンは適役過ぎてサイコーでした。元になった原作は実際のフランキーたちが書いているんで、実際はどうだったんだろうと思わないでもないけれど、自分でも作曲するイーストウッド監督は音楽の楽しさ、本質を良くわかっていると思いました。2時間 幸せな気持ちになれるミュージカルでした。
●予告編

●昔のハリウッド映画みたいな感動の大団円。今となっては新鮮だ。