特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

外国人問題と中国映画2題:『ブラインド・マッサージ』と『人魚姫』

今年も早くも1か月が過ぎようとしています。冬は嫌いなので早く過ぎて欲しいけど、時間が過ぎるスピードには驚くばかりです。何にもしないまま毎日が過ぎていく(笑)。

           
しっかし、トランプの大統領令イスラム教国七か国出身者の入国制限って酷いですね。当初は永住資格を持っている人まで制限してたんだから滅茶苦茶です。特定国にテロリストが多いなんてデータも示さずに入国制限をするなんて差別以外何物でもない。そんなことをやっていればアメリカの衰退は一層進むでしょう。ある人に言われたんだけど、トランプは『アメリカ・ファースト』じゃない。『アメリカ白人・ファースト』です。それも『バカ白人・ファースト』
●オルブライト、かっこいいじゃん。ヘイトは何も産まない。それだけははっきりしている。



                             
この前、大荷物を抱えた中国か台湾の女子学生たちの集団が東急線の駅で、どっと降りていくのを見かけました。引率の人がいたから修学旅行かな。別の日には、そういう外国の子たちが有名スイーツの店に並んでるのも見たことある。我々も海外旅行では同じことをやってるかもしれませんが(笑)、都心から離れた辺鄙なところまで旅行者が来ているんですよね。びっくりしたけど、彼女たちのバイタリティには感心しました。
女の子たちだけでなく、最近は外国出身で働いている人も多いですよね。ボクの職場にも、取引先にも、外国出身の人は大勢いるし、お昼のカレー屋や中華料理屋は勿論 外国の人(笑)。半年に1回くらいしかコンビニに行かないボクでさえ、最近のコンビニの店員さんは外国の人が多いなあと思います。なんだかんだ言って、10年前とはずいぶん 風景が変わりました。

                                  
先週27日の金曜日 厚労省から昨年の外国人雇用状況に関する統計が発表されました。

ソース⇒http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11655000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu-Gaikokujinkoyoutaisakuka/6424474.pdf

外国人の労働者はどんな感じで増えているのでしょうか。
外国人労働者の数(青線)と就業者に占める外国人の割合(赤線)


青い線を見ると、外国人労働者は約10年前の48万人から、2015年には約90万人。2016年には108万人にまで増えています。前年に比べて約2割増!どうりで、最近良く見かけるわけです。日本の就業者全体の6400万人と比べれば、まだまだ物の数ではありませんが、外国人労働者数を就業者で割った比率も年々増加しています。赤い線の外国人が全就業者に占める比率は2015年で1.4%。個人的には皮膚感覚として納得できる数字なんですが、みなさんはいかがでしょうか。

これをどう考えたらいいんでしょう。前にも書いたかもしれませんが、例えば介護。2025年問題って、皆さんご存知ですか?団塊世代後期高齢者になる2025年には約37.7万人もの介護人材が不足する、という厚労省の試算があります。

厚労省のリリース⇒http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12004000-Shakaiengokyoku-Shakai-Fukushikibanka/270624houdou.pdf_2.pdf

介護人材の不足が約40万人って半端じゃないです。最近は1学年の人数が約100万人ですから、その4割が介護分野へ就職しなくちゃいけないってことです。日本人だけじゃカバーできっこない。介護1つとっても、こんな状況ですから、外国人の労働者をどんどん受け入れて行かなければ、文字通り日本沈没になることは間違いありません。

                        
そういうことを言ってると、外国人労働者が増えることで治安はどうなのか、という人が居ます。外国人労働者の数と外国人検挙者を時系列で見てみました

外国人労働者数(青線)と外国人検挙者数(赤線)の推移


外国人労働者は大幅に増えているけど、外国人検挙者は大幅に減っているんですね。この数値はこの前 経団連で聞いた元警察庁長官の國松氏の話で出てきたんですけど、実態は産経などが流布しているイメージ『外人怖い』(笑)と事実は全然違います。


更に犯罪率↓。2015年の警察庁の総検挙数に占める外国人の割合(赤線)は2.6%ですから、確かに外国人の犯罪率は低くない。でも近年 犯罪自体が減って検挙人数自体が減っています。その中で絶対数が増えている外国人の検挙者に占める比率がほぼ横ばい、というわけです。外国人が増えると治安が悪化する、という一般的なイメージは事実とは異なります。そもそも外国人が日本人より犯罪率が高いというデータはありません。犯罪は年齢別・性別に大きな差があるそうですけど(当然 犯罪者は青壮年の男が多い)、そこは比較できないですから。ちなみにアメリカでは不法移民の犯罪率はむしろ低いそうです。何かあれば直ぐ送り返されますから、移民は一般人より法律を守る、というわけです。
●外国人の犯罪率推移(青は件数ベース、赤は人数ベース)

警察白書https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kokusaisousa/kokusai/H27_rainichi.pdf#search=%27%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E7%8A%AF%E7%BD%AA%27

すくなくとも外国人労働者が増えることで、犯罪が増えるということは今のところないわけです。


医療や介護の2025年問題は外国人を受け入れるだけで解決する問題ではありません。膨れ上がる一方の社会福祉費用をどうするのか、それにロボットとかの技術開発も必要でしょう。でも、今後 日本の社会に外国の人を徐々に受け入れていくのか、もしくは『プア・ジャパニーズ』、『貧乏な高齢者ばかりの社会』になるのか、この数年が分かれ目でしょう。戦前は日本人がカリフォルニアや東南アジアへ主に肉体労働者として出稼ぎへ行ってたんですから、今はまだ日本に来てくれるだけ 幸せですよ。
                                      
ボクは閉塞感漂う日本(笑)を活性化するには、外国の人を徐々に受け入れていくことは非常に良い方法だと思います。シリア難民の子供だったスティーブ・ジョブスみたいな人が一人でもでてくれば、受け入れコストなんか軽くペイして、お釣りがじゃらじゃら来るに決まってます。ホント、トランプってバカ(笑)。自分の爺さんも奥さんも移民だったくせに(笑)。

●有楽町の慶楽の『豚の角煮焼きそば』。創業60年くらいは経ってるこの店だって店員さんは殆ど中国系。こちらからニコッと笑って仲良くなっちゃえば居心地いいです。感情がダイレクトな分だけ気持ちいいかも。とにかく角煮がふっかふか!とろとろじゃないんです。ふっかふか!色んな意味でやばい(笑)



と、いうことで、新宿で映画『ブラインド・マッサージ

舞台は南京のマッサージ店。そこではさまさまな盲人たちが働いている。出稼ぎ労働での苦難の末に共に出資して店を経営するようになった沙と張。その沙のもとに、かつての同級生だった王と恋人の孔が職を求めてやってくる。全盲だが美貌で評判の都紅。完全に失明してしまう前に愛する人との婚礼を目に焼きつけたいと願う金嫣。無口な青年・小馬は風俗店の娘に初めて恋愛感情を抱くようになる。彼らの生活はふとしたことで、平穏な日常にさざ波が立ち、やがて大きなうねりが生じていく。やがて彼らはそれぞれ人生の決断を迫られることになる。

                                  
この映画を撮ったロウ・イエ監督の『天安門、恋人たち』はボクの生涯ベスト10に入る作品なんです2008-09-27 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)天安門事件を背景に当時の女子大生とその後を描いたこの作品は、ヌーヴェルバーグのようなお洒落な画面に激情と虚無感が流れていて非常な衝撃を受けました。『人生の夏、そして、その夏が終わったらどうしたらよいか』、を描く作品です。ちなみに天安門事件を描いたこの作品は中国では上映禁止、監督も5年間製作禁止の処分を受けましたが、その後も彼はゲイを主人公にした『スプリング・フィーバー』など全然めげない作品作りを続けています。

スプリング・フィーバー [DVD]

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今回の『ブラインド・マッサージ』は中国で文学賞も取ったベストセラー小説を原作にしているそうです。
ブラインド・マッサージ (エクス・リブリス)

ブラインド・マッサージ (エクス・リブリス)

           
                             
冒頭、お話の中心人物らしき青年 小馬がいきなり自殺を図ります。交通事故にあって担ぎ込まれた病院で医師から失明したことを言い渡されたからです。画面に広がる彼の真っ赤な鮮血。いきなり、鮮明なイメージが与えられます。
●群像劇ですが、一応、主人公の小馬

                            
命を取り留めた小馬はマッサージ店に就職します。自分で自分の食い扶持は稼がなくてはなりません。そこには先天的に失明した者、後天的に失明した者、うっすらと見えている者、徐々に視力を失って行く者、さまざまな人たちがいます。
●沙院長。お見合いに臨みますが、盲目ということで相手の親の許しを得ることができませんでした。泣き笑いする彼の表情!

●マッサージ院には若い娘たちも大勢います。映画の雰囲気も暗くないんです。

盲人たちの世界を見るのは新鮮な体験でした。当たり前ですけど、彼らだって我々と同じようにお金を稼ごうと思っているし、趣味を楽しんだりするし、結婚をしようと思っている。恋人を作ろうとも思っているし、性欲だってある。映画には大勢、本当の盲人の人が出演しているそうですけど、とても面白かった。特に恋人同士を描いたところは素朴だけど、実に可愛らしかった。見ていてボクは嬉しくなりました。
深圳からやってきた王と彼女。彼女は自分の視力が完全に失われる前に結婚式を挙げたいと願っています。

                              
面白かったのは美貌で評判の都紅という女の子のエピソード。美人の彼女はマッサージ店にくるお客さんの中でも評判になります。沙院長もその評判を聞いて、彼女のことを意識し始めます。でも、どのように彼女が美しいのかが彼には判らない。それを知ろうとして苦しみ続けます。一方 都紅は自分のルックスを疎んじています。眼が見えない彼女にとっては、自分の美貌は価値があるものではないんです。周りとのギャップに彼女も苦しみ続けます。
●都紅(左)と小馬

哲学的でしょ(笑)。



小馬は先輩に無理やり連れて行かれた風俗店の女性に恋をします。初めての恋です。彼女の顔は判らないけれど、彼は懸命に彼女のことを愛おしむ。
●顔を触ることでしか、小馬は彼女の顔を認識できません。

                         
いつしか彼女も小馬に心を許すようになります。こういうナレーションが印象的でした。
『彼女の嘘だらけの話も小馬には楽しかった。どうせ自分には本当かどうかわからないのだ。だから彼は彼女の話を心から楽しんだ』
素敵じゃありませんか。恋の本質ってこういうことじゃないかと思ってしまいました(笑)。



やがて、盲人たちにも転機が訪れます。厳しい世の中ですが、それでも彼らはなんとか生きていきます。その中で小さな希望を掴むものもいます。ラストシーン、湯気で曇った視界に温かさを感じてしまったのはボクだけでしょうか。お話がややとっ散らかったり、くどい描写もないわけじゃありませんが、かなり、良い作品です。何よりも温かな気持ちになれる映画です。



もう一つ、香港映画『人魚姫

青年実業家のリウ(ダン・チャオ)はリゾート開発のため、香港郊外の美しい自然保護区を買収、埋め立てを始めようとする。しかし、そこには絶滅の危機にひんする人魚族が住んでいた。人魚族は、美しい人魚のシャンシャン(リン・ユン)を人間の女性に変装させて、彼を暗殺しようとする。ところがリウとシャンシャンは本当に惹(ひ)かれ合ってしまう

少林サッカー』で有名なチャオ・シンチー監督の作品、香港のみならず中国などでも大ヒット、アジア圏での歴代興収NO1、世界でもその年の9位の興行成績を収めた作品だそうです。でも東京では小劇場2か所でしかやっていません。まあ、こういう作品は見る前からだいたい想像はできるんですが、評判も良いので見に行ってみました。
●このヒロインの娘、半端じゃなく可愛い。

                                              
大阪の喜劇にも通じるようなベタなギャグの連発、超可愛い女優さん(12万人のオーディションから選ばれた新人だそうです)、派手で時には(わざと)インチキくさいVFX、ロメオとジュリエットみたいな単純だけど判りやすいストーリーはまさに娯楽映画〜という感じです。
●人魚族の面々。彼女以外はマヌケなルックスを揃えています。菅井きんそっくりの人魚もいた(笑)。

●人魚族の住む海を埋め立てようとする青年実業家。当初はマヌケそのものですが、だんだん顔つきが変わってきます。

                                                    
香港映画らしい?えぐい血の描写が後半に若干出てくるところは嫌いですが、それ以外は文句なし。穏やかで平穏なラストシーンはボク、大好きです。
●青年実業家と組んで埋め立てを進めようとする大富豪の娘。


特に当初はインチキ感満載の実業家が人魚の女の子とデートするうちに、どんどん変わっていくところが良かったです。ベタなんだけど、女の子の可愛さも相まって、説得力すら感じられる。最後には不覚にも落涙してしまったほどです(笑)。

                                           
中国映画で『いくらカネを儲けても、綺麗な水や空気がなければ意味がない』なんてメッセージが出てくると思いませんでしたよ。誰が見ても楽しめる娯楽作として、見て損はありません。アジア最大のメガヒットというのもうなずけます。何も考えずに笑える楽しい映画でした。