特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『どうして民主党はあんなにバカなのか?』と『ジャック・アタリ氏講演会』+1211 再稼働反対!首相官邸前抗議

 作家の野坂昭如氏が亡くなりました。
 ボクはこの人の政治的なスタンスには共感していましたが、無頼派だか何だか知らないけど見え透いたポーズは良くわからなかったし、彼の作品は読んだこともないんです。
 が、訃報を聞いて、彼に会ったことを思い出しました。高校1年生の時、彼にダメ元で手紙を書いて学校の講演会に呼んだら、何故か来てくれたんです。


 当日 彼を学校の玄関に迎えに行ったんですが、昼間からいきなり酔っぱらっている。臭い(笑)。
 子供のとき、ボクは周りに酒を飲む人が居なかったんで、その時 泥酔した大人を始めて見ました。校長室へお連れしたら、校長なんか相手にせず、ソファにひっくり返って、ずっと指定銘柄のオールド・パーを呑んでいます。1時間近く飲み続けていたと記憶しています。

 講演の内容は忘れてしまいましたが、泥酔しているにもかかわらず、至極マトモな話だったので驚いたのを覚えています。
 終わった後『お車代』の封筒を出したら『そんなの、要らないっ』と言って、一人でさっさと帰っていきました。ぶっきらぼうだけど優しさは伝わってきました
 高校生の眼から見ても、そんな彼は子供っぽかったけど、ベージュのスーツを着た後ろ姿は格好良く見えました。
 ありがとうございました。

                   
                                                                          
 さて、多くの人が疑問に感じていることがあると思います。
 『どうして民主党はあんなにバカなのか?』
 この前、定期的に話を聞いている元政策秘書氏に理由を聞いてみたんです。彼は自民にも民主にもブレーンとして出入りをしています。年金基金の損失を引き換えにした株高と非正規社員の雇用増という僅かな成果を残してアベノミクスは結局 失敗しました。
 元来 アベノミクス民主党にはチャンスだった筈です。最初から失敗するのは判ってるのだから、せめて1年前に、きちんとした対抗策=所得再分配政策を唱えていれば、政治情勢は変わっていたはずです。
●毎度お馴染み日本人ジョーク。元来アベノミクスとはこういうものだったのですから。


 あれほど偉そうに唱えていたリフレ政策はどこへやら(笑)、政府は今までと真逆の所得再分配政策に舵を切りました
 以前に触れた最低賃金を毎年3%アップというのは消費を増やすためには良い策ですし、今週発表された選挙直前に低所得年金者約1250万人に3万円ばらまくのは、長期的な視点で考えるとくだらないと思いますが、短期的視点では再分配という観点でも選挙対策としても意味があるでしょう 。年金受給者の3割に3万円 参院選前後、1250万人に:朝日新聞デジタル

 安倍晋三は 岸信介の安保騒動の後 所得倍増政策をとって支持率を上げた池田勇人の路線を狙っているんでしょう。
 連中の意図は来年W選挙で消費増税を延期して支持率維持、そのまま改憲になだれ込みたい、という話はボクはマスコミから聞いています。
 今 軽減税率でぐちゃぐちゃやってますが、消費税上げを延期すれば軽減税率もパーにすればいいという話しもある(それだけは賛成です)。相手の出方が判っているのに民主党はなぜ手が打てないんでしょうか。経済政策も野党共闘も未だにはっきりしない。不思議でなりません。

                                           
 それに対する、政策秘書氏の答えはこうでした。
今の民主党には人材が集まらないから
だそうです。
 安保法案はともかく、他の政策は何をやりたいのかわからない民主党についていってもメリットがないから、官僚や学者が全然ついていかない
 確かに政治を実際に動かすには官僚とか外部ブレーンになりうる学者や有識者が必要です。舟橋聖一氏らの『民主党政権失敗の検証』によると民主党政権当時も実務を仕切っていたのは数少ない元官僚の政治家で、そういう実務能力がある人間の数が少なすぎたことが政権がうまく行かなかった主要原因の一つだったそうです。

そう考えると、今の民主党が以前にもましてダメな理由が納得できます。


 与党の政治家が民主党より、それほど優秀とは思えません。一部には民主党より優秀な人もいると思いますが、総理大臣を筆頭にもっと酷い奴も多い
 問題なのは政治家の能力だけじゃありません。今の安倍晋三の周りには官僚や学者、手足となって動く若手政治家が集まっている、そうです。彼らが全員、日本会議のゴリゴリのバカ右翼というわけではありません。
宇沢弘文先生の弟子の吉川洋などの経済学者、民主党政権で議員、文部副大臣だった鈴木寛のような奴まで、政府の審議会や政権に加わっています。政権の周りにいれば政策も実現できるし自分たちの力を生かせるからです。アベノミクスが失敗となっても、人材がそろっているから、さっと正反対の方向へ舵を切ることができるのでしょう。
                                                                                                        
 それでも今週 遅まきながらリベラルな学者らが民主党幹部を交えた政策研究会『リベラル懇話会』を立ち上げました。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/151208/prl1512080932009-n1.htm

 メンバーには伊勢崎賢治東京外語大教授や北田暁大東大教授みたいな人も居ますけど、世の中の実務に関わる経済関連や法律関連の学者はほとんどいない。こりゃあ、なかなか厳しい(笑)。

 更に今週 民主と維新が統一会派を作ることで合意したそうです。
民主党アーカイブ | 岡田代表が維新の党松野代表と会談 基本的政策と統一会派結成を合意

 だけど政策の中身はあまり期待できない。
 当たり障りのないことばかりで、間違いではないけどエッジが聞いてない。圧倒的な勢力を持つ与党が当たりさわりのない全方位戦略を取るのはいいです。でも第2党、第3党なんですから、一部分だけでも、特に経済政策のところだけでも特徴をはっきり出さなければ有権者を引き付けるような魅力なんかありません。対抗軸をはっきりさせる集中化戦略が必要なんです。

 例えば相続税所得税の累進税率をアップして若者に回すとか、弱い者いじめの軽減税率を止めるとか(普通に知能指数があれば理解できるはずです)キャピタルゲインへの課税アップ(20%から60年代並みの30%へ)国民不在の意思決定過程に見る28年度税制改正の課題(下) | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン、それにピケティ先生が言うような資産課税。与党が絶対に出来ない政策、だけど正論を打ちだせばいい。
要するに基本的なマーケティング戦略ができてない。今まで選挙ではっきりしているのは、国民の最大の関心事は『経済』だってことです

 話が進んでいるSEALDsなど市民連合による野党統一候補』というのはいいと思いますhttp://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201512/CK2015121002000142.html。ボクも望みを託したい。でも安保だけでは選挙に勝てません。それも確かなことです。

 安保法案に反対だけじゃ、世の中は変えられない。世の中を本当に変えたいのなら人材を集めなければいけない。そのためにも現実的なヴィジョンを一人一人が考え、声を挙げていかなければなりません。そのためには自分自身のレベルを上げていかなくちゃいけない。まして『国会に突っ込め』とか『警官と闘え』みたいな呑気なことを言ってる左巻きバカにかかわっているヒマはありません。
●SEALDsの子のtweet。彼は判っているようですが。


 昨日は、来日したジャック・アタリ先生の講演会へ行ってきました。
 この人は経済学者で思想家。社会党ミッテラン大統領補佐官を務めたあと、欧州復興開発銀行の総裁。サルコジですら、この人を自分の諮問委員会に招聘しました。リーマンショックを予見した『21世紀の歴史』はベストセラーになって、当時はNHKでも正月に2日間の特集が組まれました。

 この本はリーマンショックだけでなく、グローバリゼーションの進展で世界は不安定化することも予言しています。
 最近 ISなどのテロが起きているのを聞くと、この本の内容は基本的には正しかった、とつくづく思うんです。ロックスターでもアイドルでも学者でもデモでも仕事でも、基本的にボクは現場を見たい。とりあえず講演会場に潜り込んできました(笑)。

 折しもパリでテロが起きたばかりです。『グローバル・ガバナンス』というタイトルの1時間余りの講演もそれを色濃く反映したものでした。長くなりますが、メモを取ってきたので内容をご紹介します。

・テロが起きたのはパリだけではない。この数週間の間にパリ、マリ、ロシア、シリア、イラク各地でテロが起きている。世界は危機的な状況にあるのではないか。これからはテロだけでなく、金融危機、第3次世界大戦のリスクすらあると考えている。なぜなら21Cの現在の状況は20C初頭に似ているからである。新しいテクノロジーの出現、テロリズムニヒリズム保護主義ポピュリズムの台頭1910年以降 各国がポピュリズムに走ったことが1980年代の冷戦終結までの悪夢を引き起こしてしまった。今こそ短期的な問題だけでなく長期的な傾向を考えて事象を考えなくてはならない。

                                                                               
・2050年に起きることは既にある程度決まっている。人口の動向は修正できないからだ。将来はこんなことが起きるだろう。現在75億の人口が95億に増える。都市に人口が集中する。平均寿命は10年くらい伸びる。男女の人口差がいびつになる(特にアジアは男性過剰)、現在2億人の移民が、約15億人になる。日本、ロシア、ドイツは人口が減少し、アフリカは現在10億の人口が20億になる。インドは世界最大の人口になるだろう。人口が減少するのを放置するのは国家にとって自殺行為である。人口が増えないと年金も経済も回らない。日本はなぜ移民を検討しないのか
                                          
・これからは4つの技術が世の中に影響を与える。『IT&デジタル』、『遺伝子テクノロジー』、『ナノテクノロジー』、『ニューロ・サイエンス』(AI)。カネ、情報、エネルギーは余剰になるだろう。現在 世界の実態経済は80兆だが、資産は既に300兆にも達している。世界の市場経済への移行により、中産階級が台頭し、民主主義が台頭していく。テクノロジーファイナンスを生かして、明るい未来がやってくる可能性もある。
                                                      
・それに対する現代の脅威は2つある。一つは『市場経済と民主主義の問題』である。元来、市場経済と民主主義は結びつくはずのものだが、根本的な矛盾が発生している。市場経済はグローバルなものだが、民主主義はローカル、ナショナルなものだ。市場経済が発展していくにつれ、グローバルな法治メカニズムがないことが世界の矛盾を深めている。ソマリア市場経済があるにもかかわらず、無政府状態が数十年続いていた。今は『世界のソマリア』が進行していると言える。リーマンショックはジャンクボンドをモニタリングできなかったことから引き起こされた。各国の政府は多大な債務を抱えており、金融緩和も財政政策も限界を抱えている。将来の経済危機はもっと酷いものになる可能性はある。我々にはグローバル・ガバナンスが必要なのだ。
もう一つは世界的にアナーキーが起きつつあることだ。個人の経済的自由を追求しすぎることで世界の中で矛盾が発生している。このような状態は長続きしない。原理主義の台頭は多神教の国も含めて世界上で起きている。
                                                                                                     
・20C初頭の世界は自由より安全保障、市場より保護主義を選んでしまった。一方 現在起きていることは『金利は低いが企業は投資をしないで、自社株買いをしている。』、『先進国の公的債務は増えるばかり』、『気候変動などへの対策は手つかず』など。リーマンショックで各国政府がやったのは公的債務を増やして金融緩和をしただけで、構造的な問題は手つかずだった。バーナード・マドフと各国の中央銀行総裁の違いは牢屋に入っているかだけで、やったことに本質的な違いはない。
                                  
・将来のバッド・シナリオを避けるには、それが起きることを見越して準備をしておくことだ。具体的なバッド・シナリオは以下のようなことが考えられる。『AIによる管理社会』『気候変動とそれによるアフリカなどの社会の不安定化』、『金融危機、特にEUの崩壊。EUが崩壊するようだとグローバルガバナンス自体が成り立たない。』、『第3次世界大戦ウクライナ、アフリカ、中東、アジア(日本/中国/北朝鮮)など世界各地に可能性がある』
                               
・これから重要なのはグローバル・ガバナンスの確立である。TPPやタックス・ヘヴンへの規制もその現実的な第1歩に成り得る。また我々は『ポジティヴ・ソサイエティ』を目指していかなければならない。政治家は選挙を、企業は株のことばかり考えるが、そのメカニズムの中に次を考える仕組みを埋め込まなければならない。暴力は貧困が引き起こす。そこから逃れるためには利他的なイデオロギーが必要である。

                                                                     
 講演はフランス語でべらべら喋るのかと思ってたら、全篇流暢な英語でした(笑)。欧州の知識人はそうですよね笑)。

 基本的な内容は『21世紀の歴史』とは大きな違いがありません。10年近く前の本は本質的に正しかったと言うことなんでしょう。

市場経済はグローバルで民主主義はローカル/ナショナルなものだから、お互い矛盾が起きている』というのは鋭い指摘です。日本を含めた第3次世界大戦のリスク、というのは彼に言われるとショックでした。

 それに『TPPやタックス・ヘヴン規制はグローバル・ガバナンスに発展する可能性がある』というのは夢にも思いつかなかった。新自由主義、市場の跳梁を防がなければならないというのは多くの人が抱えている問題意識です。でもそれを克服するための具体策を述べる人は殆どいません。せいぜい皆でデモをしよう、くらいじゃないですか(笑)
 ジャック・アタリのような人達は苦心惨憺してEUというものを実現させてきましたから、説得力があります。まず一歩を踏み出さなければならないということなのでしょう。
           

 今朝の毎日新聞朝刊でインタビューでジャック・アタリ氏:テロ「文明と野蛮性の衝突」 フランス経済学者 - 毎日新聞、アタリ先生は『NATOは存在意義を失った。将来 NATOはロシアを引き込み世界の警察的なものに発展させるべきだ。中国も日本も参加すれば両国の平和にも資するのではないか』と言っています。『日本も軍事的貢献に参加が必要』という見出しで一瞬 ぎょっとしましたが、NATOが将来 そういう組織に発展するのであれば、一理あります。

 ロバート・ライシュ先生もそうですが、こういう人は経済が判ってるだけでなく歴史も哲学も判ってるし、銀行や閣僚などの実務も出来る。日本にはいないタイプの知識人です。幅広い知識と実務経験がある人の判断力って、学者や政治家とは少し違います。ボクは机の前に座っているだけの奴は信用しません(笑)。
大変 ためになった1時間でした。


 と、言うことで、今週も官邸前へ。朝方は大雨、大風だった今日の東京の最高気温は24度!どうなってるんでしょうか。
 今日の参加者は主催者発表で750人。まあ、年末の金曜日、わざわざデモに来ている方もおかしいかも(笑)。でも原発に反対してるぞ、という声があることを示しておくことは大事だと思うのです。
●抗議風景





 今日のような日に来ている人は当然の事ながら、やる気があります。ヒステリックに叫ぶような人も居ないし、静かに、だけどしっかり自分の声を出して原発に対する抗議をしています。ま、安倍は今日はインドへ行って不在なんだけど(笑)。人数は少ないけど、いい感じの金曜の夜でした。
●今日は嬉しいゲストも参加。お父さんに肩車されてタンバリンを振ってます。