特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

読書『危機とサバイバル』と★0328 再稼働反対!首相官邸前抗議!

この1週間で見る見るうちに暖かくなって、サクラまで咲き始めた。若い頃は花を見ても何とも思わなかったけど、歳をとるにつれ楽しみになってきた。せわしい日常の中で、そういうものを見ることが心の慰めになる。歳をとる事って、こういうことなんだろうか(笑)。
                                                           
今月は映画を見るのが忙しくて(12本見て、あと2本見る予定)、あまり本が読めなかった。その中でも根性で読んだ(笑)数少ない本の一つがジャック・アタリ先生の新著『危機とサバイバル
この人はフランスの経済学者、思想家でミッテランの補佐官、欧州復興開発銀行総裁などをやった人。リーマンショックを予測した『21世紀の歴史』はずいぶん話題になって、NHKでも何年か前の新春にインタビュー番組が放映されたりした。思想的な裏づけと現実的な経済の知識が両立している人で、この人の意見は長期的なことを考えるには非常に参考になるとボクは思っている。

今回の内容はこんな感じ。
(1)世界はリーマンショックによる金融危機から立ち直りつつあるとされているが、世界各国の公的債務に付け代わっただけで問題は解決していない。金融緩和のマネー氾濫によって新たなバブルが発生しており、いずれ崩壊するだろう。
(2)市場(企業)は国家に対してどんどん優位になってきており、公共サービスや共同体の規範などは崩壊しつつある。また地政学的なリスクで偶発的な紛争が発生するリスクは高まりつつある。政治の面では極右と極左の勢力が伸長している。今後10年 世界は不安定な危機的状況に直面する可能性が高い
(3)これからの時代を生き残るには個人・企業・国家ともに1.自己の尊重、2.緊張感、3.共感力、4.レジリエンス(復元力)、5.独創性、6.ユビキタス(多様性)、7.革命的な思考力が必要。
(4)将来的には世界中の人が合理的利他主義の考え方を持つようになっていかないかぎり、地球は存続できないだろう。
                                        
この人は日本という国の将来に対して厳しい見方をしている。日本には『自己の尊重』はあるが、『緊張感』、『共感力』に欠けるとしている。ちなみに他国の立場に立って考える共感力に欠ける国として彼はアメリカ、イギリス、日本、イランを挙げている(笑)。
面白かったのは彼が国家の将来性を考えるファクターとして『人口の増減』、『料理』、『音楽』の3つを挙げているところ。人口は国力、料理は文化、音楽は創造力をあらわしていると言うのだ。日本は『料理は◎』だが他はダメ。良くわかってるなあ(笑)。
彼によると、日本は何よりも人口の減少と、それがずいぶん前から判っていても何の手も打てないのが問題だという。
お説ごもっともで、日本という『国』の前途はかなり暗いだろう。少子高齢化は実は自然現象ではなく、移民受入や女性の社会進出に消極的だった日本人の永年の思考停止の結果だからだ。実際2020年代にはインドやロシアにGDPが抜かれて日本の経済規模は世界第五位になり(ロシアは疑問だが)、将来的にはブラジルやインドネシアにも抜かれるらしい。ちょうど今日 NHK9時のニュースで、このまま人口が減れば全国で義務教育を維持できないと文部省が言い出したことが報じられたが、こうやって人口減の影響はボクのような凡人には想像できないようなところにまで出てくるのだろう。で、気が付いたら手遅れ(笑)
                                                                  
もっとも日本の『国力』は下がっても、住んでいる人にとっては一人当たりGDPが問題なので、そういう意味ではボクはそれほど悲観してない。いずれにしても日本という『国』の形なんかどうだっていいし、ボクは個人としてのサバイバルしか興味ない。まあ、個人単位でどこまでできるかわからないけど。ちなみにアタリ先生も危機を脱するには、個人が『自己を尊重しながらも、革命を起すような思考力を持っていくことが重要』と指摘している。人類の自滅に向けた現在の歩みに服従しない人々の決起が必要、だと言うのだ。

口述筆記じゃないかと思ったくらい軽めの本だったが、金融危機はまったく解決されていないという指摘や、最近話題になったばかりのビットコインの危険性も既に指摘していることなど、このおっさんは鋭いなあ、と改めて感嘆する本だった。



今日 週刊ダイヤモンドのオンライン版に大変感心した記事があった。『再稼働説を支える3つの神話と1つの真実』というタイトルで阪大の八田達夫教授(経済学)が書いたものだ。再稼働説を支える3つの神話と1つの真実――八田達夫・大阪大学招聘教授 | シリーズ・日本のアジェンダ 私たちは原発をどうするのか | ダイヤモンド・オンライン
要約するとこうだ。

八田教授は『原発再稼動論者の根拠には以下のようなものがある。1.電気が足りない、2.CO2対策、3.化石燃料輸入による電力代高騰、4.中東からの石油輸入リスク(ホルムズ海峡の閉鎖など)』と指摘した上でこう述べている。

1は問題はピーク時だけなので電力料金設定を工夫すればよい。2は日本がCO2を減らすより途上国のCO2削減の技術支援をしたほうが地球温暖化防止には遥かに有益、3は原発を再稼動しても経常赤字は消えない。重厚長大産業中心の構造転換を進め、海外からの直接投資やサービス業の生産性向上が抜本的な対策』、だから『1〜3は間違っている』
ただし、『4についてはエネルギー輸入の多様化を進めることが必要だが、時間がかかるのでその間は限定的に原発再稼動する必要はあるかもしれない。安全対策と電気料金制度の改革などをすすめると同時に、原発をなくすコスト負担のための新税を導入するべきである。』と。
                                                            
今まで安全性や倫理面からの意見は別にして、再稼働の論理を論理的かつ総括的に否定したものはあまり見かけなかった。ボクもこの意見に賛成だ。原発を再稼動させなければ日本はやっていけないというのは大嘘だけど、原発を即廃止するのもリスクもあるしコストもかかる。だから、そのリスクとコストに目をつぶるのは間違っている。ボクは所謂 『集会』というものが好きでないのは、一方的で短絡的な話を聞かされると、そのマヌケさにイライラするからだ(笑)。*あと、センスが無くて時代錯誤、それに死ぬほど幼稚で下手くそな日本語フォークを聞かされるのが大嫌いです(笑)。

前に原発をなくすコストは5兆円、一人当たり5万円(1回だけですよ)という概算をしたが原発を止めるには幾らかかるか(笑)と、0228 再稼働反対!首相官邸前抗議! - 特別な1日(Una Giornata Particolare)、それくらいの負担は今の日本なら出来る。今年の消費増税への景気対策1回分で原発とおさらばできるのだ。原発を本気で止めたいのなら、それを堂々と主張すればいい。原発を止めるのにもリスクとコストがあることくらい誰にだってわかる。原発を止めたいと思うのなら、原発を止めるリスクとコストも真剣に考え、それを覚悟することも必要だと思うのだ。



そういうことを思いながらも官邸前抗議★1116再稼働反対!首相官邸前抗議 | 首都圏反原発連合
考える事と行動する事、やっぱりバランスが大事だと思う。たいしたことはできないけれど、文句だけ言っているのは自己完結しているみたいで気がひける(笑)。

今日で官邸前抗議が始まって満2年だそうだ。今日の参加者は主催者発表で2200人、最盛期の10万人以上の参加者には比べるすべもないけど、この何十年も日本で1000人以上のデモとか抗議は数えるほどしかないだろう。それが毎週続いているのだから、驚くべき話だ。
今日の午後6時の温度は16度。ちょっとひんやりした風が心地良い。
●抗議風景






                                                                      
川内原発が再稼働されるかもしれないということで、今日の抗議の声はそれに集中する。比較的反対の声が少ないということが再稼働の理由の一つ、らしいが、鹿児島の人はそれでいいのかね?川内原発周辺の人たちが読んでくれていたらいいなと思うのだけど)川内原発周辺の人たちが自ら人身御供になる覚悟があるのなら、その人たちの選択の自由、という気がしないでもない(笑)。川内でフクシマみたいなことがあっても東京までは放射性物資は届かないだろうし。
だけど川内原発の立地に火砕流が届くかもしれないことは置いておいても、避難計画をまともに作ってもいないのに再稼働なんて、マヌケな前例ができたら日本中が困るんだよ!あれだけの目に会っても、まともな避難計画を作ってないなんて信じられないよ。本当は真面目な避難計画を作ったら、渋滞や交通手段などの問題で数万の人が避難するなんて不可能なことがわかってしまうからだろう(笑)。

●国会前+旧ファミリーエリア



                                 
いずれにしてもスパッと割り切れる答えなんか、現実にはありはしない。リスクもなければ、コストもかからないことなんか、世の中にはない。現実から目を背けないようにしながら、どこまで粘り強く生きていけるか。ジャック・アタリ先生は『人類の最大の敵は人類』と喝破しているが、結局は自分との我慢比べのような気がする。毎年、毎年 きれいな花を咲かせる桜を見習わなくちゃな(笑)。

●国会前に咲く桜