特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

緊急更新:細川護煕・小泉純一郎立ち合い演説会@自由が丘

基本的にボクは、物事はなるべく自分の眼で確認したいと思っている。仕事でもそうだし、官邸前の抗議もそうだし、三宅洋平もそうだし、先週見た宇都宮氏もそうだ。本やネットなどで知識を持っておくのは勿論だが、できれば現物を見て判断しようと思っている。

ということで、細川・小泉コンビの立会い演説を見に行ってきた。場所は自由が丘駅前。
始まる前から大勢の人が集まっている。この駅前ロータリーが政治家の演説で今までこれだけ埋まったことはないだろう。昨年 みんなの党の渡辺が来た時の4倍か5倍、以前 石原慎太郎のバカが来た時の2倍か3倍くらいだろうか。聴衆は小泉見たさの人も多いが、原発を止めたいという一般の人が想像以上に多い気がした。東京電力の子会社のヘルメット(笑)をかぶっている工事のおっさんもいたし、自由が丘らしい品の良い白髪のご婦人が陣営の運動員に『お友達に投票を呼び掛けるハガキはないの』と詰め寄っているのも見かけた(笑)。こんな風景を見るのは初めてだ。


●駅前に集まった人、人、人

●東電子会社のヘルメットをかぶった工事のおっさん

時間より15分遅れで演説会がはじまった。護衛のいかついおっさんは結構いるけれど、チラシを配ったりする運動員はあんまりいない。やはり細川陣営はかなり準備不足のまま選挙戦に突入したようだ。
まず細川がマイクを取る。その横には小泉が文字通り仁王立ち。それだけでも結構迫力がある。彼は最初にこんなことから話し出した。
私と小泉さん、併せて148歳です。本来だったら選挙になんか出たくありません。しかも今回の選挙出馬でマスコミから、あることないこと、いや、ないことないことばかり云われて散々にバッシングされています。それでも立候補しようと思ったのは、原発事故がなかったかのように再稼働させようとする動きを見て日本の将来に危機感を抱いたからです。
そのあと政策を一つ一つ淡々と述べる。抑揚がなく、あんまり迫力はない。だが話は分かりやすいし、筋もだいたい(笑)通っている。場や空気を読むってことは、この人あんまりしたことがないし、空気を読む必要もなかったんだろうな。
●赤いマフラーを締めた細川。


●細川の脇で文字通り仁王立ちの小泉

                                                   
スピーチは正直、これならボクのほうがうまいかな?と思ったけど、彼が自分の言葉で話しているのはわかる。その証拠に20分以上の演説は殆ど淀みもないし、おかしな論理の話はなかった。バカではこういう話はできないよ。特に『最初は私はオリンピック誘致は反対でしたが』と前置きしたうえで、東北とオリンピックを共催しようという話はとても良かった。決め台詞らしい『原発なしのオリンピックが出来るってことを世界に発信したいんです』というのは一般向けキャッチフレーズとしては悪くない。
                                                                
昨日 都の金町浄水場に行ってきました。人体に害のない範囲のようですがセシウムが溜まっているそうです。
ここで、聴いている人たちは今までと違う反応を示した。途端に自分たちの話になったからだ。
私が都知事になったら、まず泥をさらいたいと思います。
いや、それはそうなんだけど(笑)。ここで一気に畳み掛けなくちゃ。盛り上げるのが下手な男だ。だが原発の話になると途端に饒舌になり、感情がこもる。彼は間違いなく本気だ。
                                                          
原発都知事選挙のテーマじゃないと言われます。そんなことはありません。都知事のもっとも大きな仕事は都民の命と生活を守ることです。原発はひとたび事故が起これば都民の生命も暮らしも危うくしてしまいます。だから脱原発都知事選挙の大きなテーマなんです。
                                                      
この演説会の前に外国人記者クラブで会見をして、記者から『細川は政治家としての質が他と違う』と評されたそうだが、確かに彼は遠くの光景を見ている。官邸前などでさんざん聞いた議員のスピーチ、話は上手いけど党の方針通りに誰もが同じことを話す共産党、最後はいつも市民をバカにした利益誘導スピーチで締めくくる生活の党、そういう面々とはだいぶ違う。
宇都宮氏のようにわかりやすくもなければ、迫力もないけれど、細川のスピーチはこちらがきちんと聞けば内容は立派だということがわかるスピーチだ。その証拠にスピーチを終えた細川が受けた拍手はなかなか大きなものだった。
                                                                                                                                                    
そのあと 小泉がマイクを取る。昨日 ユニクロでダウンを買った話から始める。細川の高尚な話とは対照的な庶民的な話に、思わず聴衆が引き込まれているのが判る。
私は総理大臣を辞めるとき、もう楽が出来ると思っていました。だけど311でこのままでいいのかと思いなおしたんです。』
小泉は代案もなしに原発ゼロなんて無責任だと言われます。代案なんかいいんです。原発をすべて廃炉にするまで40年も50年もかかります。代案はみんなで考えていく。原発を止めることはそれだけ大きな、世の中全体で考えていかなければいけない問題なんです。

小泉の番になると結構ヤジも飛ぶ。ボクだってそうだが、嫌いな人間もかなりいるんだろう。だが彼は野次が飛んでも顔色も変えず、ネタにしてしまう。
『(今さら出てくんな〜という野次を受けて)そう、私は別に選挙になんか出てきたくはなかったんです。でも、あの311を体験して、自分は何かしなくちゃいけないんではないだろうか、と思ったんです。寄付をするだけでいいのかと思ったんです。自分の力で何かしなくてはいけないんではないかと思ったんです。』
私が総理在任当時 周りの専門家はみんな、原発は安全でコストも安い、と言ってました。だけど自分で勉強してみると、そんなことは嘘だということがわかりました。嘘だったんです!
確かに私は原発を推進してきました。(ここでニッコリして)過ちては則ち改むるに憚ること勿れ!

これで辺りを圧倒してしまう。大きな拍手も湧きおこる。確かにその通りで、これは文句をつけようがない。今は過去のことをグタグタ言っても将来に向けて何のメリットもない。真剣に考えれば、自民党とだって共闘しなければ脱原発はできないのだ。

最初は控えめに話していた小泉だが、だんだんボルテージが上がってくる。腕を振り、声も大きくなってくる。
海外では原発をやっている企業、ジーメンスもGEも『既に』退いています。
ドイツでは自然エネルギーで40万人も雇用を生んでいるそうです。日本の技術なら自然エネルギーを活用して経済成長していくことなんか10年もあればできるに決まっています。原発に使っていた金をそちらへ向ければいいんです。今が世の中を変えるチャンスなんです!
今まで若い代議士に政治には上り坂、下り坂、まさか、というものがあると良く話してきました。自分でも70過ぎて、まさか!こんなことをするなんて夢にも思わなかった。

ボクもまさか!自分から小泉の演説を聞きにいくとは夢にも思わなかったよ(笑)。

世論調査では今 細川さんが2位だという。それを聞いて私は一層燃えてきました。こうやって応援してくれる皆さんの姿を見ると、私は少しも寒くなんかありません。皆さんの力があれば追いつける。勝てる。
私はもう70を過ぎています。40年も50年もかかる廃炉が終わるまで生きていないでしょう。原発をなくすことは本当は若い人の問題なんです。
年寄りでも、死ぬその時まで社会を良くすることに関わっていようじゃありませんか。そして若い人は明るい未来を作っていきましょうよ!
                                                                                                                                  
発言の一言一句まで正確ではないけれど、大意はこんな感じ。うなずけることばかりだ。
小泉の20分余の演説が終わるとあたりは万雷の拍手。『頑張って〜』と声も上がる。確かに説得力もあるし、迫力もある。郵政選挙の時は『こいつはヒステリックに何を訳の分からないことを言っているんだ』と思っていたが(笑)、今回は言ってることは全然間違いじゃないから、文句のつけようがない。
                                                                               
宇都宮氏と細川、直接 話を聞いた印象では、宇都宮氏は優秀な現場のリーダー細川、小泉はもう一段スケールの大きな、文明論的なことを考えているという感じだろうか。さらに言えば細川は、本人の頭は悪くないが実行面では周りから担ぎ上げられる看板役、小泉はカリスマ創業者タイプという印象だ。細川、小泉は視野・識見は立派だが実行役としては?がつくのはわかる。参謀次第ではあるだろう。*細川の参謀は古賀茂明氏らしい。
だが、宇都宮氏はどうだろうか。優秀な現場のリーダーというものは往々にして視野狭窄に陥りやすく、特に大きな組織を動かす場合 うまく行かないことが非常に多い。日本軍だってそうだったし、歴史を見ても自分の体験からもボクはそのことはよく知っている。仕事ではそんなのばっかり見てきたよ(笑)。リーダーが大局が読めないと間違いなく全体を不幸にする。だから候補の一本化もできないような宇都宮氏が巨大官僚機構を動かしたり、都議会を調整しながら都政を進めていくことができるか、にはもっと大きな疑問符がつく。いずれにしても完ぺきな候補者なんかいないボクらにできるのはよりマシな方を選び、市民の方で一本化することだけだ。
●会場全景。

                                                                                   
演説が終わった後もあたりでは『良かったなあ』、『立派だなあ』と言っている人が結構いた。マスコミの報道では判らないけれど、驚くような盛り上がりだ。確かに細川の選挙は予想以上に準備不足のようだし、大勢の市民が加わった選挙でもない。彼の貴族的な感じは大衆受けはしないだろう。だけど、この晩 演説が終わったあと聴衆が互いに『良かったなあ』と言いあうような場になったのは事実だ人々からそういう気持ちや意欲を引き出す看板役もリーダーの立派な仕事だ。民主主義の一つの形だ。それに扇動役の小泉が加わる(笑)。各地でこの勢いが続けば面白いことになるのではないか。
                                         
あとは脱原発を望む人が片意地はらずに現実的に判断すればいい。問題は細川か宇都宮かではない。とにかく今は舛添を当選させないことが最も大事じゃないのか。
とにかく2月9日は選挙に行こう。そして各自が冷静に判断して、よりマシな候補、勝ち目がありそうな脱原発候補に投票する。それだけで東京から原発をなくす風を世界に向かって吹かすことができるのだ。大チャンスじゃん!