特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

2013年の映画ベスト10

年の暮れまで、あまりこういうことを言いたくないが、2013年の特徴を表現するとやはり『偽』という言葉になってしまうのではないか。
年初からアベノミクスは『偽薬』と言われていた。金融緩和で経済を良くするという掛け声だけで実体経済には何も効果がない、というのだ。実は多くのエコノミストやマスコミ関係者もそれはわかっていて日経などは、偽薬でも何でもいいから景気を盛り上げる記事を書け、という指示が出ていたらしい。結果は日銀からの銀行への資金供給は増やしたけれど、民間への資金供給(銀行貸出)は殆ど増えていない。安倍政権発足『』の昨年の10月頃から円安になり株価は上がったが、円安で日本トータルとしては損をしているし、実際円安メリットが出ているのは日本経済の3割を占める輸出企業だけだ。それも役所がボクのところにまでヒアリングしに来るくらい、数量ベースでは輸出は増えていない。労働者の賃金は増えていないし、失業率は下がったけれど増えているのは派遣などの非正規労働者だけだし、冷静に考えると経済の中身がよくなっているという話は殆ど見当たらない(笑)。これからは株その他のバブルから、どこで降りるか、ということが問題になってくるだろう。それでも円安で株が上がったということは良かったし、民主党時代は経済無策だったことを考えると安倍晋三が経済を良くしよう、という掛け声をかけたことだけは評価する。それだけだけど(笑)。
それでもって夏には選挙があり、秋にはすべての原発が止まった反面、原発ムラがこりもせず再稼働申請を行い、年末には安倍が靖国を参拝して愛国者ぶりを発揮して、2013年は終わろうとしている。
                                                                            
それでも明るいことが全くなかったわけではない。参院選での三宅洋平の『選挙フェス』や年末の秘密保護法に抗議する人たちの多さや多様さ、には驚かされた。可能性という『芽』は閉塞感溢れる日本のそこかしこに、実は芽吹いているのではないか。マスコミや偉い人の言ってることなんか当てにせず、自分の眼で現場を見て、ひとりで良く考えてみる。そうすることで違ったものが見えてくるような気がする。
現場で、眼を見開いて可能性を見ていくことが大事だなあ、と実感した1年だった。個人的な感想、勝手なことばかり書いているこのブログも思いもかけず多くの人に読んでいただき、感謝しています。ありがとうございました。皆さま、良いお年をお迎えください。


そんな2013年、ボクが見た映画のベスト10はこれ。
1位.きっとうまく行く
往年のクレージーキャッツみたいなインド映画だが、それがワザとらしくもなければ、インチキ臭くもない。笑って泣かせて、終盤に描かれた北部インドの青空のようなすがすがしさが残る映画だった。映画『きっと、うまく行く』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

                 
2位.アルバート氏の人生
19世紀のアイルランドを舞台に、グレン・クローズが男装の執事を演じたアカデミー賞3部門ノミネート作品。彼女の演技が素晴らしいというだけでなく、困っているもの、抑圧されている者の傍らにそっと寄り添うような映画。19世紀のアイルランドでも現代の新自由主義社会でも、誰もが仮装をして生きている誰もが仮装をして、生きている:映画『アルバート氏の人生』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

                     
3位.日本の悲劇
生活保護、リストラ、家族の離散、貧困、孤立。現代の日本をまるで鉈で切り取ったような白黒画面。イラク人質事件や老人介護、貧困などを描いてきた小林政広監督の真骨頂が仲代達也の名演技を得て炸裂した感じ(笑)。良い映画は暗いテーマを描いても、見る者の心情を暗くしたりしない。この映画はまさにそうだ。アベノミクスよりアマノミクス!:映画「日本の悲劇」 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

                                    
4位.セッションズ
障害者の性を描いたコメディ!という大胆な映画。いつもながらヘレン・ハントがさりげなく素晴らしいが、この映画の価値は見ている者を笑わせ、突き落とし、手を差し伸べるところにある。誰もが当事者である普遍的な物語。一生寝たきりだった主人公にできるなら、ボクたちも心の壁を崩せるはずだ。観る者が当事者になる。:映画『セッションズ』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

                    
5位.フラッシュバックメモリーズ3D
交通事故で記憶をなくしたミュージシャンの再起を描いた実話。独創的な3D画面にも躍動感あふれる音楽にも、登場人物の切ない愛情にも圧倒されました。消えていく記憶、消えない希望:映画『フラッシュバックメモリーズ3D』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

          
6.塀の中のジュリアスシーザー
実在のイタリアの刑務所内で演じられたシェークスピア劇をそのまま映画にしたもの。素晴らしいアイデア、ものすごい存在感。文字通り息をもつかせない。『希望の死』を考えながら、過去と未来に想いを馳せる(笑):『小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』と映画『ルーパー』&『塀の中のジュリアス・シーザー』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

        
7.私はロランス
性同一性障害で性転換した男性とストレートの女性との約20年の軌跡を驚くべき映像美で描いたもの。その中で愛というものを真正面から愚直に描いて、実に説得力があった。知的で過激、そしてシャイ(笑):相対性理論『幾何1』と映画『私はロランス』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

                                           
8.かぐや姫の物語
これほど鮮やかで美しい色彩を久しぶりに見た。ラディカルなストーリーが独創性あふれる表現で普遍的な物語に昇華されている。ジブリ映画2題:『夢と狂気の王国』と『かぐや姫の物語』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

                                      
9.クロニクル
ふとしたことで超能力を手に入れた3バカ高校生。低予算映画でも、これだけ面白いものが撮れるとは文字通り驚き。

                                              
10.もらとりあむタマ子
引きこもりのダメダメ女子の1年を元AKBの前田敦子が演じた。何も起きない日常がいかに豊穣なのかを教わりました。

                                        
その他 大好きな映画
ヴィクトリア朝時代のイギリスを舞台にバイブレーターを発明した医者と女性参政権のために闘う女性を描いた『ヒステリア』、センスが良くてロマンティック、体ではなく心が温かくなる『ウォーム・ボディーズ』、エロクマちゃんは大好きだけど、こんな辛辣な映画がなんで大ヒットしたんだかわからない『TED』、スペイン市民戦争当時のロバート・キャパの失われたネガの行方を追った『メキシカン・スーツケース』も実に面白かった。