特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

これがクール・ジャパンだ!(笑):映画『パシフィック・リム』

以前も書いたが、ちょっと前 役所が景気対策ヒアリングをして回っていた。表向きはアベノミクスとか威張っていても、実体経済がどうしたらよくなるか、彼らだってわかってないのだ。ネクタイを外しただけでクール・ビズになると思っているような服装をしたお役人が『これからはクール・ジャパンも支援しようと思うんです』とか偉そうに言ってたから、『でも、お役所がかかわっちゃうと、それだけでもう、クールじゃないですよね〜』と申し訳なさそうに(一応、そういうポーズをした。ボクは大人なので)(笑)と言ったんだけど、あんまりわかってないみたいだった(笑)。
                      

いわゆるクールジャパン、海外で受けている日本物、ちょっと前ならPUFFY、最近ならきゃりーぱみゅぱみゅにしても、園子温の映画にしても、敢えてもっと言うと(笑)井口昇の映画にしても(電人ザボーガー片腕マシンガールetc)、マニアックなところ、どこかいかがわしいところがあるからこそ、海外で受けてるのだ。どこかバランスを欠くくらい(笑)、何かを好きで好きでたまらないからこそ、今までにない新しいものを生み出してくるのではないか。日頃から万遍なくバランスを取った、当たり障りのないものを目指すお役所とクール・ジャパン正反対の存在であるのは当然だろう。


                     
新宿で映画『パシフィック・リム
12.11 ブルーレイ&DVDリリース レンタル/VOD 同時開始 11.27 ダウンロード先行発売|映画『パシフィック・リム』公式サイト
見に行くべきか1か月以上も迷った末に出かけたら、上映も終盤で吹き替え版3Dしかなかったのは残念。客席は女性一人客が多かったのが意外だった。

海から突如現れた巨大生物『カイジュウ』に3つの大都市を壊滅させられた人類は、人型巨大ロボット兵器『イエーガー』(狩人の意味)を開発し、懸命の戦いを続けていた。だが時間を経るにつれ巨大化し、強くなるカイジュウに対して、人類は劣勢に追い込まれ、世界に残るイエーガーもわずか5体のみになっていた。地球の危機に、かって戦闘中に兄をカイジュウに殺されて引退していたパイロット、ローリーは、カイジュウに家族を殺されたマコ(菊池凛子)と一緒に、残された旧式のイエーガーに搭乗して、戦いを決意する。
                                                    
日本の特撮やアニメが大好きだというメキシコ人監督ギレルモ・デル・トロがそれをそのままネタにして、ありあまる予算?をぶち込んで作った特撮映画。映画評論家の町山智浩氏曰く、小学生がノートに書いた落書きを200億円かけてそのまま映画にしたもの、だそうだが、まさにその通り。あらすじとかを期待しても仕方がない。


                                                                    
見に行くべきかどうか1ヶ月以上悩んだのは、あまりにもバカで、さすがにあほらしくなるんじゃないかと思ったからだ。ロシアのロボットなんか頭が原子炉で名前がチェルノ・アルファだもん(笑)。が、見てみたら、全然そんなことなかった。
やっぱりCG使いまくりの特撮スゲー。映画館で見ると物凄い迫力だ。鳥型カイジュウが飛びながらロボットを何度も地面に叩きつけたり、成層圏に連れて行ったり、こんなのは昔の特撮じゃできないよなあ。他にもカイジュウが一瞬でロボットの腕を食いちぎったり、体を突き破ったりするシーンは大迫力。それに、ただ技術に走っているだけじゃなくて、元ネタが判るようにでてくるんだよね。これは元ネタを尊重してるってことだ。ゴジラに、マジンガーZに、ジャンボーグAに、エヴァンゲリオンに、ネタは他に一杯あるんだろうけど、そこいら辺は重箱の隅まで電子顕微鏡並みに突いて書いている人が一杯居るだろうから、ボクは書きません(笑)。

●主人公の二人。着ている服は搭乗時 液体が満たされるところまでエヴァンゲリオンのプラグスーツそっくり。

                                        
●操縦はジャンボーグエースの二人羽織版

                                    
原発型の頭を持ったロシアのロボット、チェルノ・アルファ。これ、只のネタだろって!

                 
変な世界観とか自意識とかを押し付けてこないのもいい。もうちょっと終末観みたいなものがあると雰囲気が出て良かったとは思うけど。文字通り手に汗握る大活劇を最初から最後まで素直に楽しむことができた。
そのなかで菊池凛子だけ真面目に演技してた(笑)。だけど周りから浮いているとかそういう感じじゃなくて、それなりに可愛いく写ってたのは意外だった。この人、海外の仕事がますます増えるんじゃないか。あと、カイジュウの臓器ディーラー(何て職業だ)役のロン・パールマン、いつもながら顔がすげえ。カイジュウより怖い!どんなCGより生の顔が怖い!
ロン・パールマン。2枚目はwikiより。映画に出ている時と普段とが、ほとんど変わりがないのが凄い。


                               
ボクが言いたいのは、こういうのがクール・ジャパンじゃないかってこと。マニアックだけど、何かを好きで好きでたまらないんだろうなあってこと。ここには先人や自分の作品に対する『愛』がありますよ。
冒頭の格闘シーンには伊福部昭先生風の音楽が流れるし、最後には(アルゴ探検隊などを作った、特撮の父と言われる)レイ・ハリー・ハウゼンと(ゴジラを作った)本多猪四郎に捧ぐ、とくる。文字通り かゆいところにまで手が届く感じだ。それをオタクの独りよがりでなく、ちゃんと商業ベースにまで昇華させて、勝負してる。おばかだけど(笑)。

                             
パシフィック・リム』を見ていると、クール・ジャパンとか、日本独特とか、おもてなしとか、威張ってたら直ぐ追いつかれちゃうよ〜って思う。今後 日本でこれだけの特撮作品を作れるだろうかって色んな人が言ってるけど、まさにそうだろう。本気で好きじゃなきゃ、こういうものは作れない。そもそもクール・ジャパンって、ブレア政権の『クール・ブリタニア』のパクリで、そう言いだした時点で既にダメかも(笑)。まあ、これからの日本でも、政府や役人とは関係なく、良いものを作っていく民間人はいるだろうけど。もちろん、ボクは良いものだったら日本の作品でも海外の作品でもどちらでもいいです。非国民ですから(笑)。