特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ETV特集と映画『658km、陽子の旅 』

 今日は楽しい、楽しい3連休です。連休だと、どうしてこんなに精神的に余裕が出来るんでしょうか。
 早く引退して一年中連休になるのが待ちきれません。

 現在アメリカツアー中のBabymetalの新曲『メタり』には少し驚きました。再生回数は200万回を超えていますが、いかにも外人向けで大した曲じゃありません。しかしレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロがフィーチャーされています。

 トム・モレロは以前も取り上げていますが、ハーバードの政治学科を卒業後 民主党のリベラル議員の秘書になるも『ギターを弾いた方が世の中を変えられる』とレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを結成、解散後もスプリングスティーンのツアーに参加したり、各種政治運動に関わったりしている筋金入りの人です。
 丁度 今、彼はチリの軍事クーデターの犠牲者を悼む式典に参加しています。50年前 ビクトル・ハラが軍部に虐殺されたスタジアムに立っている。そういう人です。

 お金で転ぶような人ではありませんから、今回の新曲は非常に興味深い。

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 土曜の夜のETV特集、『「断らない」 ある市役所の実践』は非常に印象的でした。


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 座間市役所にある困窮者支援を担当する課を長期取材した番組です。
 ボクの偏見かもしれませんが神奈川県座間市は東京や横浜のベッドタウンですが、米軍基地がおかれていたり、日産の大工場が撤退したりで、経済状況はなかなか厳しい地域、という印象を持っています。神奈川県にも関わらず、市の平均年収は全国平均以下だし、番組で映された町の風景もかなり寂れているように見えました。

 その中で生活に困窮した人が市役所に電話をかけてくる。例えばなぜか仕事が続かない、など普通だったら『自己責任』という言葉で片付けられてしまうような相談事です。電話を受けた座間市の支援課の課員総勢4名はとにかく話を聞きます。その根気には本当に頭が下がる思いです。それを数か月続けた上で、相談者に病院への受診や民間の支援団体への橋渡しをすすめていく。

 なぜか仕事が続かない、という若い男性にはADHDという診断結果が出ます。現在は投薬を受けながら紹介を受けた仕事を続けています。
 座間市役所は民間のNPOやボランティアと連携しながら、様々な困窮者の支援を続けています。4人の課員は皆 サービス業などからの転職組。役所が偉いとかそういう意識や態度は全くありません。相談に来る市民の話を聞くことに徹し、相談者と一緒に悩む。

 こういう仕事は効率とか市場原理とか民営化と言った言葉で測れる仕事ではありません。維新が政治をしたら直ぐ廃止されてしまいそうな仕事です。でも こういう仕事を粘り強くやってくれる人がいるから世の中は成り立っている。誰だって弱っている時だってある。理屈で全て片付けられないことだってある。それが人間です。

 日常は効率とか能力といった言葉が横行し、スピードが持て囃されるうちに、人間にとって大事なものを無くしてしまいそうな気がします。それでもこういう人たちがいる。その中で改めて世界の奥深さを思い知らせてくれるような番組でした。木曜夜に再放送があります。


 と、いうことで、今回はちょっと前に公開された映画です。新宿で映画『658km、陽子の旅

 42歳の独身女性、陽子(菊地凛子)は東京で一人、非正規雇用で働きながら、アパートで引きこもりがちの生活を送っていた。故郷の青森で父親が亡くなり、彼女はいとこの茂の車で故郷の弘前に帰ることにする。父親は陽子の夢への挑戦に反対したため彼女としては複雑な思いを抱えたままの旅だったが、途中のサービスエリアで起きたトラブルにより一人、取り残されてしまう。陽子は所持金もなくヒッチハイクをするが、その道中でさまざまな人と出会うことになる。
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 『私の男』などの熊切和嘉監督が『パシフィック・リム』シリーズなどハリウッドで活躍する菊地凛子を主演に迎えた作品です。

 この作品は上海国際映画祭菊地凛子が主演女優賞を取ったのが話題になりました。共演は竹原ピストル黒沢あすか風吹ジュンオダギリジョー、浜野謙太など。

 42歳の陽子はかって親の反対を押し切り、故郷の青森を後に東京へ出てきました。しかし東京ではうまくいかず夢を諦めて内職バイトで稼ぎながら、引きこもり同然の生活になってしまいました。そんな彼女の元に従妹の茂(竹原ピストル)がやってきます。

 父親が亡くなったというのです。

 迷った末、彼女は葬儀のため故郷の青森へ向かうことにします。ところが、ひょんなことからサービスエリアで茂とはぐれてしまい、一人、ヒッチハイクをする羽目になります。

 ハッキリ言って、お話はくだらないです。引きこもりの陽子は他人とまともにコミュニケーションを取れません。青森まで車で送ってくれるという従妹の茂にすら満足に挨拶もお礼も言うことができない。

 ましてヒッチハイクの相手にまともなコミュニケーションが取れるはずがありません。

 しかし、人間嫌いで半隠遁のボクからしたら、こんなの甘い(笑)。ボクに言わせれば、サバイバルするために我慢して他人と嫌々コミュニケーションを取っているんですよ。自己嫌悪に毎日苛まれながら(笑)。それなのに、この主人公は42にもなって何を甘えてるんだ(笑)。バカ過ぎる。

 お話の凡庸さは中盤過ぎまで続きます。主人公なりには色々あるのですが、全て自業自得。まったくシンパシーを感じません(笑)。菊地凛子の演技が確かな分だけ、イライラする(笑)。あと、浜野謙太演じるクソ男の嫌らしさぶりは素晴らしかった(笑)。

 こうやって貯まりに貯まったイライラを終盤 菊地凛子の演技が吹き飛ばします(笑)。

 人との出会いでどうの、なんて良くある話です。説得力もあまり感じない。
 それより、主人公の鮮やかな変わりっぷりには思わず引き込まれます。前半と同一人物が演じているとは思えない。ここの菊地凛子の演技は素晴らしい。

 福島や青森の厳しい自然の光景も陽子の心情にマッチしているかのようで、ラストまで一気に駆け抜けます。最後のシーンも美しかった。 

 正直 前半は凡庸だなあ、と思ったんですが、菊地凛子の演技と芸達者な脇役にも支えられて、辛うじてお話が成り立っています。でも最後は本当に美しい。ここが素晴らしかったので充分に満足出来る映画でした。


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