特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『里山資本主義』と『内部留保』、それに『1004 再稼働反対!首相官邸前抗議!』

 NHK広島の取材班と藻谷浩介氏が書いた『里山資本主義』は実に面白い本でした。

 中国山地の山間部は古来からたたら製鉄もののけ姫にでてきた奴です)が盛んだったそうですが、今も昔も森林資源を生かした林業などで生計を立てている地域だそうです。いわゆる里山と呼ばれる地域ですが、目玉となる資源や産業もないし、悪いけど流石に大変な地域だろう、と想像してしまいます。
 この本にはNHKが取材した、里山の資源を生かして自立した産業を興している人たちのことが書かれています。いわゆる地域おこしの話です。

                             
 例えば製材で出てくるおがくずを使ってバイオ燃料を作り始めた製材業者。いまでは岡山県真庭市のエネルギー全体の11%を賄っているそう。
 また広島県庄原市ではユニークな人たちが活動しています。ドラム缶を加工したエコ・ストーブを広めている人、空き家を利用して福祉施設を経営している『過疎を逆手に取る会』(笑)。農家の半端野菜を利用してレストランを経営しお年寄りの憩いの場を作り、その脇には保育園を併設しています。子供もお年寄りも元気になる。支払いは地域通貨。その地域でだけ使うことができる通貨です。

 里山と言うことで言えばオーストリアの例も紹介されます。オーストリア憲法原発を禁止しましたが、木材のペレットを使った最新式の高効率のボイラーを開発し石油の半分のコストでエネルギーを生み出しているそうです。それだけでなく、ペレットボイラーを各国に輸出して雇用も生み出しているそうです。

 この本には里山の資源を活かして、自立した経済を築きつつある例がいくつも載っています。企業誘致や高速道路では活性化しなかった中国山地の村々ですが、ここで紹介された地域では地元でお金を回し、みんなが少しずつ豊かになる仕組みができつつあると言うです。

                                      
 最初は斜め30度くらいの視線、要するに疑いながら読み始めましたが、途中から夢中になってしまいました。条件としては最悪に近い地域でも、自分たちで自分たちの運命を切り開くことが出来る、という素晴らしい例だからです。

 そういう例はこの本に出ているものだけではありません。前にも書いたイタリアのスローシティー運動もそうだしスローなうなぎにしてくれ。:スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町 - 特別な1日お年寄りが木の葉を拾って高収入を得ている徳島の上勝町(彩り事業)や山の中に光ファイバーを引いてIT企業を集めた神山町、 あまちゃん』でも出てきた三陸の魚網を使ったミサンガのように大成功している例だってあります。個々の商店レベルで言えば日本全国 小さな成功例は数え切れません。
三陸のミサンガ
浜のミサンガ 環 - Wikipedia
三陸に仕事を!プロジェクト 浜のミサンガ 環

 この本を読むと、原発補助金がないと過疎地は成り立たないなんて言っている連中は恥を知れ、という感じがしてきます(笑)。

 もちろん全てが大成功しているわけではありません。そりゃあ、簡単じゃない。短期的利益優先の今のシステムとは違った少しマシなシステムを作っていくことは簡単じゃないけど、少しは出来ることもあります(笑)。少なくとも、少しは何かやったほうが面白いことは確かです

 あと、日本全体が里山資本主義で行けるか、というのは厳しいでしょうね。日本全体としては海外から資源を輸入しなければやっていけない。その分を稼ぐだけの産業があってこそ里山資本主義が成り立つ、というのは現実的な線でしょう。



 消費税を来年から上げるという。アベノミクスの円安で既に物価は上がっているし、庶民の生活は結構 厳しくなるのではないか。今は住宅などの消費税駆け込み需要があるから目立たないかもしれないが、それが終わった来年4月以降、なかなか厳しいものがあるでしょう。

 景気対策といえば、選挙のときから共産党が『大量に貯まっている企業の内部留保を吐き出させればいい』と言っています。あまりにも幼稚でバカらしかったので今まで何にも書かなかったけど、一応書いておきます

 6月2日付けの日経新聞の記事によると、いまや上場企業の約半分が『実質無借金』だそうです。バブル期は日本企業は欧米企業に比べて借金漬けだとか言われていましたが、日本企業の財務体質は堅固になってきている。
実質無借金、上場企業の5割超 財務体質を強化: 日本経済新聞

 共産党は、その実質無借金を支えている『内部留保』を差し出せ、と言っています。だが、そこには基本的な認識不足というか、無知があります。『私有財産』を保障した日本国憲法に反する、憲法違反じゃないかということは置いておくにしても、だ(笑)。物理的にムリ(笑)
企業の事業構造を財務諸表、バランスシートから見てみます。

 右側の『純資産』の中に『内部留保』があります。正確には内部留保という項目ではなく、今までの利益の蓄積が何とか引当金などの名目になっていますが、それは現金で存在しているわけではない内部留保はこの表の左側の資産、例えば在庫だったり、工場だったり、土地に化けています。多少は現金にもなっているけれど、全体から見ればごく僅かです。

これで、どうやって内部留保を吐き出せって言うんですか?(笑)
共産党が言っている『企業は内部留保を吐き出せ』は、企業を解体して潰せ、ということと同義です。
共産党が失業者を大量生産してどうすんの?(笑)。


 ちなみに企業がこうやって無借金体質を目指してきたのは、90年代後半以降の銀行の貸し渋りが大きな原因です。政府があんなにいい加減で、銀行があんなに簡単に貸し渋りをするのを見てしまったからです。

 半沢直樹?がどうのこうの浮かれてる場合じゃないんだよ。洋の東西を問わず、腐った大手銀行をどうコントロールしていくかは重要な問題です。そんな世の中だったら企業の経営者は、アホじゃない限り無借金を目指すに決まってます。ちなみにリチャード・クー先生によると世界大恐慌の後もアメリカ企業は同じことを考えて、約30年は金利水準が戻らなかったそうです。

 アベノミクスでいくら金融緩和しても(マネタリーベース)、資金供給が増えない(マネーストック)のも当然といえば当然です。経営者が借金しようと思ってないんだもん。

 企業と雇用者との所得配分は見直さなくてはいけない。だけど日本は一応(笑)、自由主義経済。だから所得配分の見直しは、金持ち優遇になっている所得税の累進強化金融資産への課税EUで実際に検討されている経営者の高額報酬制限が先決です。


 この前の選挙の特番で共産党の志井和夫がどこかのキャスターにどうやって企業の内部留保を吐き出させるのか、と突っ込まれたとき、ごにょごにょと不明瞭に答えた後、恥ずかしそうな表情をしていたのが印象的でした(笑)。
 勿論 彼は判っています。意味も判っているし、物理的に出来ないことも判っている。選挙対策として、確信犯としてデマを飛ばしているのです。

 共産党にも良いところはあります。だけど、こんな低レベルのことを言っている様じゃ子どもに笑われるだけでなく(商業高校の学生でも大笑い)、いつまでたっても自民党の天下は続いてしまう。
それじゃ困るんだよ。
●参考記事
日経BP



 フクシマの汚染水もタンクが傾いて漏れた、とか未だに信じられないようなことを言っていますが、自民の中でも東電解体という案が出てきているそうです。http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131002/254122/?P=1
今のままでは東電はマネジメントの面でも財政的にも汚染水の処理も廃炉もできやしません。何よりも退職者が一向に減らないそうです。東電によると、同社の平成22年度の依願退職者は134人。福島第一原発事故発生後の23年度は465人、24年度は712人と急増しました。25年度は4〜6月までの3カ月間で109人が退職した。年間約400人のペースで、震災発生前の約3倍となっています。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130924-00000020-fminpo-l07
もちろん 優秀な奴からやめているはず(笑)。

 最強の原発推進団体、東電が原発事故で潰れたとなれば他の電力会社は安全対策を疎かに出来ないし、原発を諦める会社だって出てくるでしょう東電の解体は脱原発の第一歩。


 
 ということで前書きが長くなりました。それでも今週も官邸前へ(笑)★1025 再稼働反対!首相官邸前抗議! | 首都圏反原発連合
 気温は19度と上着を着てちょうどいいくらい。今日集まっていた人は官邸前1500人、国会前1000人弱、トータル2500人くらいか。先週よりちょっと少ない(主催者発表2600人)。
●抗議風景

●振り上げられる手、手。国会前

 最近、ファミリーエリアは人数も増えて、雰囲気がどんどん良くなっている。それでも一番人数が少ないエリアだが、バカみたいに怒ってる奴もいないし、話をする人も普通の人が多く、その話も考えさせられることが多い。

 共産党の吉良ちゃんもファミリーエリアでスピーチしていた。カメラや大勢が集まっているところ以外に目配りする、この人はえらい。最近は共産党の議員も東電解体のことばかり言う。これは良い傾向です。

共産党の吉良ちゃん

 今日は伊方原発から20キロのところに住んでいる人が話をしていました。事故があったら彼は逃げられない。東京で毎週抗議が続いていることに対して、あんな遠くからわざわざ、礼を言いに来たのだそうです。そのあと彼は『ありがとうございます』とだけ言って、さっさと壇を降りてしまった。
 井戸川元双葉町長もそうだったが、純朴そうな人でした。決まった誰かを非難する決まりきったようなスピーチや鮮やかなレトリックより、そういう人の素朴な話のほうが遥かに心が動かされます。
不思議だよね(笑)
●ファミリーエリア。写真1枚目、左側が伊方から来た人