特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

水の上で+映画『メキシカン・スーツケース』

官邸前デモから帰ってから急いで支度して、この週末は珍しく旅行へ行ってきた。観光なんて全く興味ないんだけど、たまには遠くへ行ってみようかなあと思ったのだ。行先として思いついたのは京都の嵐山。徒然草に出ていた(笑)嵐山周辺での川遊びというものを一度やってみたかったのだ。嵐山の街中は俗悪な観光地だったが、いったん水の上に出て、灯を眺めたり、小倉山の山容を眺めたりしていると別天地のようで楽しかった。

●河の光景。


●関西人のり?だよなあ。ご出演ありがとう(笑)

●夕景

●夜景

●鵜飼。右下の鵜くんたちは文字通り体を張って稼いでいる感じ。日本の政治家より偉いな。

●子供も身じろぎしないで見てる

●鱧と大和芋の丼ご飯
 
                                        
と、呑気に遊び呆けて昨晩帰ってきて、今朝のTVニュースを見たら台風の大雨で何と、その嵐山が文字通り水に埋まっていた。文字通り、じぇじぇじぇ! 渡月橋などはほとんど冠水している。自然の力とはいえ、昨日見た光景が一変していたのには驚いた。桂川一帯の避難勧告が出ている人はなんと24万人だと言う。被害に逢われた方々には心からお見舞い申し上げます。

●9/14の渡月橋

●9/16の渡月橋(国交省ライブカメラ




新宿で映画『メキシカン・スーツケースopebet官网_opebet官方网站_ope体育app下载

2007年、報道写真家の草分け、ロバート・キャパら3人の写真家がスペイン内戦を取材したネガがメキシコで発見された。キャパのネガがなぜメキシコに?。その謎を追ったドキュメンタリー

●これがネガが入っていたスーツケース

スペイン内戦はもしかしたら20世紀最大のロマンティックなドラマかもしれない。反乱を起した軍部のフランコ将軍とスペイン共和国政府との戦い。ヒトラームッソリーニの支援を受けたフランコに対して、ほぼ孤立無援のまま戦い続ける共和国政府のために世界中から大勢の一般市民が義勇兵として救援に駆けつける。だが結果は無残な敗北。その後 独裁者となったフランコによる民主主義者への弾圧が1977年まで続いた。だがピカソの『ゲルニカ』にしろ、ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』にしろ、ジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』にしろ、スペイン内戦の記憶は世界中の人に鮮明に残っている。スペインの市民兵が撃たれる瞬間を捉えたキャパの有名な写真『崩れ落ちる兵士』もスペイン内戦が残した鮮明な記憶の一つだ。
●キャパの『崩れ落ちる兵士』。言うまでもないが、撃たれたのは軍服を着ていない市民兵であることに注目。
                                 

●撃たれた子供
     

今の研究を読むと実際の共和国政府はかなり無能だったし、極右のテロには自分たちもテロで応酬したようだし、決してヒロイズムに溢れた理想的な政権ではなかったことも判ってきているが、やはりスペイン内戦の話はたいていの人は感情が多少は高ぶってくるのではないだろうか(笑)。少なくともボクは、感情を抑えられない。

映画ではまず、キャパらのスペイン内戦での取材の模様が語られる。迫力ある写真の数々は共和国政府軍の兵士とともに戦場に立つ中で記録されたものであること、またキャパらは記録を残すことで共和国政府を支援しようとしていたこと。そういうことが生き残った関係者から語られる。
ここでは写真家でもあり、キャパの唯一のパートナーだったと言うゲルダ・タローという女性の存在が印象に残った。彼女も戦場に出て行き、塹壕の中に入り取材を続ける。今残っている写真を見ると、目元が涼やかで非常に美しい人だ(笑)。だが彼女は乗っていたトラックが共和国軍政府の車両とぶつかる事故、いわば同士討ちで命を落す。この映画ではタローの死が共和国政府の無能さの象徴のように描かれている。
ゲルダ・タロー

                     
次に描かれるのは共和国軍の敗北。軍部の弾圧、殺害を恐れて40万人の人が避難民になった。彼らは徒歩でピレネー山脈を超えてフランスへ逃れる。だがフランスの扱いは冷たかった。吹きさらしの海岸に張った鉄条網の中に避難民を放置し、その冬だけで1万5000人以上の人が亡くなったという。映画では文字通り屋根もない鉄条網の中で砂浜に穴を掘って寒さをしのいだ難民キャンプの様子が描かれている。

                                            
その避難民に手を差し伸べたのはメキシコだった。内戦で共和国政府を支援したのは世界中でメキシコとソ連だけだったが、ソ連はドサクサまぎれにスペイン政府の金準備の金塊を強奪するような連中だった。だがメキシコはインテリ、技術者が中心だったとはいえ、避難民の政治亡命を受け入れ、その結果大勢の人が大西洋を渡ることになる。
キャパらのネガはパリにあるキャパの暗室に保管されていたが、今度はそのフランスがナチスのフランス侵攻の脅威に晒される(ある意味 因果応報かも)。ユダヤ人だったキャパの助手はメキシコへ亡命するスペイン人たちにネガを託し、それが最近までずっと放置されていたそうだ。

                                   
最後に描かれるのは現在のスペイン、メキシコの姿。
出てくるのはスペイン内戦を体験した人たちの孫の世代。メキシコにしろ、スペインにしろ、今 その世代の人たちの間では真実を知りたいとする動きが活発になってきているそうだ。フランコ時代は身の危険があるから語りたくても語れなかったし、家族同士が戦ったケースもある内戦が人々に残した心の傷は深かったようだ。映画の中でインタビューに答える、殺された身内の遺骨を発掘しようとする遺族たちの表情から、それが深く伝わってくる。

発掘されたキャパらのネガも内戦の真実を雄弁に語る一助となっている。2010年にNYで開かれたネガの写真展で、スペイン内戦の避難民だったころの自分が写っているのを見つけたという人の話は実に感動的だった。

●サルベージされたスーツケース、2007年



音楽はマイケル・ナイマン。格調高く控えめな音が格好いい。感情的にならず、感動的なことを伝える、文字通り傑作ドキュメンタリー。すごく良かったです。